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わさびの旬と収穫時期
わさび(山葵)の旬は、あの独特の鼻にツンとくる辛味を存分に味わうという意味では、寒くなった晩秋から冬にかけてがわさびの旬の時期です。
わさびは多年草なので、根の部分は一年を通していつでも収穫することができます。ただし、夏場は辛さが和らぎますが、冬のわさびは堅く、刺激的な味わいがありますので最も美味しいわさびの旬は12月~2月といえるでしょう。
春に咲くわさびの花を食べたことはありますか?わさびの花は、さわやかな香りにしゃきしゃきした食感で、わさびの茎と同じに鼻にツンとくる辛味があります。また、わさびの花特有の苦味が好きな人にとって、わさびの花の天ぷらは絶品ですね。
珍しさとその風味、季節感も味わえますので、もし機会がありましたらわさびの花もぜひ使ってみてください。
わさび(山葵)とは
わさびの旬は寒い時期ですが、わさびを栽培するにあたり、水質、水温、土壌などの条件がとても厳しいうえに、収穫できるようになるまで日数がかかりますので、希少価値が高くとても高価な食材です。
アブラナ科ワサビ属に分類されるわさびは、日本原産の多年生水生植物で、古来は山間の涼しい谷川の浅瀬に自生していたものを、平安時代には薬草として使っていたようです。英語名はJapanese horseradish。
食材として使われるようになったのは江戸時代に静岡県の有東木で自生していたものを移植して栽培したのが始まりで、美食家で有名な徳川家康がわさびを気に入り、現在の静岡市で栽培するようになったと伝えられています。
わさびの種類
わさびは「沢わさび」「畑わさび」「西洋わさび」「ユリわさび」「アイヌわさび」などがあります。「沢わさび」と「畑わさび」は、栽培方法が違うだけで旬も同じです。
「沢わさび」は山間の湧き水が出るところや清流が流れる川で育てる「本わさび」のことですが、「畑わさび」は、湿気が多い冷涼な地域の畑種に種子をそのまま蒔いて栽培したもので、主にわさび漬けや練りわさびなど、加工用として使われています。
沢わさび(本わさび)とは
綺麗な清流を使って栽培される沢わさびは「水わさび」とも呼ばれています。旬は寒い時期ですが、日当たりが良い場所を好みながらも直射日光を嫌う性質があります。
8~18℃の水温だと栽培可能なのですが、中でも12~13℃が最も好ましい水温です。生育の条件が厳しく、夏場でも16℃以下の澄んだ清らかな清流と豊富な水量を要するため、ごく限られた場所でしか作ることができません。
沢わさび(本わさび)は、大きくわけて「実生」と「真妻(まづま)」の二種類に分けられます。
実生わさび
実生わさびは成長が早く、早苗を植え付けてから約1年~1年3ヵ月ほどで収穫できます。少々水っぽく辛味も真妻(まづま)より薄く感じます。茎の伸びも真妻(まづま)に比べて長く、茎の色もわさび自体もどちらも緑色が強いのが特徴です。
真妻(まづま)わさび
日本で一番優れた品種といわれている真妻種わさびは風味が抜群。ねばりがあって、味は辛さの中にほんのりした甘みがあります。茎の色は紫色で、わさび自体は深い緑色なのが特徴です。
実生わさびと旬は同じですが、実生に比べて成長が遅く、苗を植え付けてから約1年半~2年と収穫まで長い日数が必要なうえに、実生ほど大きくなりません。生育が遅いうえに水を選びますので、他の品種より栽培が難しく値が張るのもうなずけます。
「西洋わさび」と「本わさび」の違いは?
西洋わさびとはヨーロッパ原産のわさびで、「わさび大根」「ホースラディッシュ」「山わさび」などがあり、価格も本わさびに比べてリーズナブルです。
西洋わさびも本わさびも辛味成分は「アリルからし油」なのですが、西洋わさびの辛さは本わさびの1.5倍あり、練りわさびなどの加工わさびの原料として使われています。店頭で販売されている安いわさびは西洋わさびの確立が高いですね。
「生わさび」と「本わさび」の違いは?
ご家庭で食べるわさびは、多くの人がスーパーで購入したチューブのわさびを使っていると思います。この「生わさび」と「本わさび」、2つの違いを理解したうえで選んでいる方は、そんなに多くはいないのではないでしょうか?
結論を言えば、調味料会社が、様々な混ぜ物をしたり違う種類の山葵を使うから、こうした曖昧な表示をせざるを得なくなってしまったのです。「本わさび」は、日本原産の山葵を強調する意味であり、「生わさび」とは、実は「本わさび」と「西洋わさび」のミックス品のことなのです。
ちなみに、「本わさび入り」と表示されているものは、本わさびの使用率が50%未満。「本わさび使用」と表示されているものは、本わさびの使用率が50%以上と覚えておきましょう。
香りの違いは大きく、香り成分が多く含まれている本わさびの方が、西洋わさびに比べて、爽やかで甘い香りがするのが特徴です。
わさびの主な生産地
沢わさびの生産地
沢わさびの二大産地とは静岡県と長野県で、全国の90%以上を生産しておりどちらのわさびも旬の時期は同じです。
他にもわさびを栽培している地域は何か所かありますが、もともとは静岡県伊豆で自生しているものを使ったのが発祥のようです。現在でも有東木にはわさび山と呼ばれる一大産地があり全国に出荷されています。
沢わさびのひとつである真妻わさびの主な生産地は伊豆天城なのですが、地元の伊豆の旅館や料亭で使われることが多く、市場にはほとんど出回らない希少なわさびとされています。富士山のすそのの御殿場附近でも栽培されていますが、真妻わさびが栽培されている量は他のワサビと比べ少ないです。
畑わさびの生産地
畑わさびの場合は岩手県が一大産地で、全国の70%を占めており旬の時期は5月~9月です。他に大分県や北海道でも生産していますが、栽培している地域は非常に少ないです。
わさびの栄養と効果
わさびは旬にかかわらずたくさんの栄養を含んでいます。
カリウム
体内の余分な塩分を排出する働きを持つカリウムは、100gあたり500mgと豊富に含まれていますので体内の塩分濃度が原因で起こる高血圧やむくみの改善が期待できます。
カルシウム
わさびには牛乳にも匹敵する量の100gあたり100mgのカルシウムが含まれています。カルシウムは骨を作るのに必須の栄養素となっており、丈夫なからだを作るのに欠かせない栄養素です。
アリルイソチオシアネート
わさびの主な辛み成分である「アリルイソチオシアネート」には殺菌作用があります。殺菌作用だけではなく、寄生虫やカビなども予防できるという研究結果が発表されています。
刺身や寿司にわさびをつけて食べるのはそのためで、生魚など菌や寄生虫が心配な時はわさびも一緒に食べることで食中毒の予防にもなります。
わさびスルフィニル
わさびに含まれる「わさびスルフィニル」が血の流れを改善し、血栓の原因となる血小板が凝結しやすくなるのを防いでくれます。脳梗塞や動脈硬化にならないように、わさびを食べてサラサラ血液を作っていきましょう。
また「わさびスルフィニル」には、抗がん作用もあります。がんの原因一つである活性酸素を抑制し、酵素を分解する解毒酵素を活性化させたり、また胃がんや胃潰瘍の原因といわれているピロリ菌の増殖を抑えるなど、がんの予防にも効果が期待できます。
ワサビチオヘキシル
わさびに含まれる「ワサビチオヘキシル」は、鼻炎にも効果があるといわれています。くしゃみの原因となるヒスタミンサンの放出を抑制してくれますので、花粉症で困っている人はわさびを食べることで、くしゃみと鼻水を軽減できるかもしれません。
美味しいわさびの選び方
わさびの旬を知っていても、おいしいわさびの見分け方を知らないともったいないですね。
色は緑色
わさびは鮮度が落ちるにつれ、緑色が薄くなり黄色に変わってきますので、鮮やかでみずみずしい緑色のものを選んでください。ところどころが黒くなっているものも鮮度が落ちていると考えていいでしょう。
形は円柱形
根茎は中太で、根から茎が付いている上の方まで同じような太さのもの、つまり円柱形のわさびを選びます。
根茎の表面にある凸凹をみる
成長する速度が遅ければ遅いほど肉質が緻密で美味しいワサビになります。葉が付いていた跡の凸凹が、まばらなものは早く育ってしまったということですが、ゆっくり成長した良品は、凸凹の目が詰まった感じになっていますので、良品かどうかの判断をする目安にしてください。
ずっしりと重いもの
手に持った時にずっしりと重みを感じるものは、水分もしっかりと含み、肉質も緻密な良質なものが多いです。
わさびの保存の方法
数日で使い切る場合
ぬらした新聞紙やキッチンペーパーなどで包み、その上からさらにラップでまくか、もしくはビニールやポリの袋に入れてから冷蔵庫に入れて保存します。
1ヶ月程度保存する場合
グラスなどにわさびを立てて入れ、頭が出る位に水を張り、冷蔵庫に入れて保存します。こまめに水を換えれば、1ヶ月くらい持たせることができます。
1年程度保存する場合
わさびをそのままラップに包み冷凍庫に入れて保存します。
使用する時には、冷凍庫から出したわさびを解凍せずに冷凍状態のまますりおろします。残ったわさびは、すぐラップに包み直し冷凍庫に戻しておきましょう。必要な時、必要な分だけすぐに使えるという便利で長持ちする保存方法です。
このやり方は1年余り鮮度が落ちずに保存しておけるのですが、一度解凍したものを再冷凍すると風味と辛味が飛んで無くなってしまいますのでご注意ください。
最後に
わさびはいつでも収穫が可能なのですが、季節によって風味が変ります。秋から冬にかけては茎に栄養が集まりますので実が引き締まって辛みが増えます。
わさび特有の辛みが強いものは冬の時期に収穫されるので、その時期がわさびの旬と言えるでしょう。わさびは2月頃から花を咲かせて種が実りますので、この時期がわさびの花の旬になります。
わさびは、金物との相性が悪いのでサメ皮の目の細かくザラザラしたものを使ってすりおろします。ゆっくりと円を描くようにすりおろすと細胞が破壊されて、酵素がたくさん働き、辛味成分が生成されます。
「わさびは笑いながらすれ」という格言がありますが、これは、なるだけ力を入れずに、きめ細かくすりおろすようにということなのでしょう。