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食べれる貝と食べれない貝の違い
「食べれる貝」と「食べれない貝」の主な違いは毒性の有無です。
貝そのものが毒を持っているわけではありません。貝がエサとしている植物プランクトンの中に毒を持っているものがいて、アサリなどの二枚貝が必然的に食べてしまいます。
毒を持った植物性プランクトンを食べ続けた貝が体内に毒を蓄積してしまうことを「貝毒」と呼んでいます。しかし、毒を持ってしまった貝を私たち素人では見分けることができません。
毒を蓄積した貝を食べるとどうなる?
貝毒にはいくつかの種類があります。神経性貝毒・記憶喪失性貝毒・麻痺性貝毒・下痢性貝毒などです。日本ではとくに麻痺性貝毒と下痢性貝毒に注意しなければなりません。
麻痺性貝毒の貝を食べてしまった時
麻痺性貝毒の原因である毒を持った貝を食べてしまった場合には、食べてから30分後くらいに顔面・唇・舌に痺れの症状が出ることがあります。
時間が経つほどに全身へと広がります。重症化すると体を動かせなくなることがあります。呼吸困難によって死に至る可能性もある恐ろしい毒です。
下痢性貝毒の貝を食べてしまった時
下痢性貝毒の原因である毒を持った貝を食べてしまった場合には、食べてから30分後くらいに下痢・吐き気・嘔吐・腹痛などの症状が起こることがあります。症状はつらいものですが数日で回復します。下痢性貝毒での死亡例はこれまでに発生していません。
食べれない貝の種類
イモガイ
生息地域 | 房総半島から南、能登半島から南、暖流の影響が強い地域 |
種類 | 細長い円錐形、葉巻貝と呼ばれている |
採れる場所 | 浅瀬から深海まで |
危険度 | ★★★★[4] |
500種類ほどいるとされているイモガイは猛毒を持つ貝です。千葉県・和歌山県・高知県などの黒潮に接する地域に多く生息しています。
鹿児島県や沖縄県ではとくに種類が多く、沖縄県では110種類ほどのイモガイが発見されています。浅瀬にも生息しており、イモガイに刺された経験を持つ人は数多くいます。
種類によって毒性にも違いがあるのですが、人が刺されて死亡した例が日本にもあります。
アンボイナガイ
生息地域 | 伊豆半島、紀伊半島から南 |
種類 | 細長い円錐形、葉巻貝と呼ばれている |
採れる場所 | 潮間帯~水深25m、サンゴ礁の砂地 |
危険度 | ★★★★★[5] |
アンボイナガイはイモガイの一種で13cmほどある大型の貝です。プランクトンではなく魚をエサとしています。猛毒を持ち、口の中に毒針を隠しています。
イモガイの中でもアンボイナガイに刺されたことによる重傷者または死者が多く、潮干狩り・潜水・漁の時に刺された例がほとんどです。「殺人貝」と呼ばれるほど危険な貝です。
とくに沖縄県や鹿児島県に多く生息し、鹿児島県では8人ほどの死亡例が報告されています。
タガヤサンミナシガイ
生息地域 | 三宅島、紀伊半島、山口県北部 |
種類 | 細長い円錐形、葉巻貝と呼ばれている |
採れる場所 | 潮間帯~水深50m |
危険度 | ★★★★[4] |
タガヤサンミナシガイはイモガイの一種で猛毒を持つ貝です。弓矢のような歯に毒があります。
奄美大島・沖縄・小笠原で目撃されていますが、夜行性の貝なので潮干狩りで目撃することは少ないと思います。
刺されると激しい痛みがあり、痺れ・めまい・嘔吐などの症状が起こります。重症化すると呼吸困難に陥り、死亡した例があります。
アンボンクロザメガイ
生息地域 | 八丈島、土佐湾から南、奄美大島から南 |
種類 | 細長い円錐形、葉巻貝と呼ばれている |
採れる場所 | 潮間帯~水深50mの岩礁域、サンゴ礁の間、砂地、泥の中 |
危険度 | ★★★★[4] |
アンボンクロザメガイはイモガイの一種で猛毒を持つ貝です。クロフモドキというイモガイの一種と模様がよく似ています。どちらも猛毒を持っています。
食用の貝としては認められていませんが、食べたことがある人によると筋肉の部分が美味しいそうです。ただ、とにかく殻が硬くて割ることが難しいため食べる人は滅多にいないようです。
ナンヨウクロミナシガイ
生息地域 | 房総半島から南、能登半島から南、暖流の影響が強い地域、沖縄 |
種類 | 円錐形の貝、葉巻貝と呼ばれている |
採れる場所 | 潮間帯~水深50m |
危険度 | ★★★★[4] |
ナンヨウクロミナシガイはイモガイの一種で猛毒を持っていますが、殻の美しさが評価されています。インテリア・標本・装飾品として人気が高く、コレクターの多い貝です。
殻の模様の美しさに惹かれて手に取ってしまいそうですが、唾液腺から槍のようなものを出して毒を注入します。人が刺されれば死に至る危険があります。
潮干狩りで採れる貝の注意点
潮干狩りで採れる貝は全て食べることができます。基本的に食べれない貝はいません。潮干狩りが行われている海岸では定期的に二枚貝の貝毒の発生状況を調査が行われています。
貝の可食部に含まれる毒の量を検査し、基準を超えている場合には出荷の規制が行われます。市場に出回ることもありませんし、潮干狩りへの注意喚起も行われます。
安全に潮干狩りができるかどうかを知る方法
安全に食べることができるとされている種類の貝も毒を持っている可能性があります。しかし、潮干狩りが行われているということは調査や検査によって安全であることが証明されたということです。
もしも潮干狩りに出かけたい海岸がある場合は、都道府県の公式ホームページで確認することができます。貝毒の調査報告や検査結果を見ることができます。「貝毒調査 ○○県」などと検索するのがおすすめです。
潮干狩りの旬は3月~7月の春から初夏にかけてです。とくに人気の高いアサリが旬を迎え、産卵前の身がプリっと太った頃が食べ頃だからです。また、春から初夏の昼間は潮が最も引くため潮干狩りに適しています。
死んでいる貝は絶対に食べないで!
潮干狩りで採れる貝には基本的に食べれない貝はいません。しかし、死んでいる貝が混じっている可能性があります。採った時には生きていても持ち帰った後に死んでしまうことがあります。
死んでから時間が経つと腐敗臭がします。砂抜きをしている時に口を開いて管を出しますが、死んでしまうと口を閉じず管も出たままになります。
生きていて健康で安全な貝であれば、砂抜きをしている時に口を開けて管を出し、指で軽く触れるだけでパッと管を引っ込めて口を閉じます。加熱したにも関わらず口を閉じたままの貝は死んでいる可能性が高いです。
死んだ貝は絶対に食べないでください。腹痛・下痢・吐き気・嘔吐・食中毒などの症状が起こる可能性があります。
最後に
食べれない貝は貝毒と呼ばれ、体内に毒を蓄積してしまった貝のことを言います。貝そのものに毒はなく安全に食べることができます。
しかし、海の中の植物性プランクトンが毒を持っていることがあり、エサとして食べてしまうことで貝毒になってしまいます。
潮干狩りで採れる貝は全て安全に食べることができる貝です。貝毒の調査や検査が十分に行われています。ただし、死んでいる貝は絶対に食べないでください。
潮干狩りでは滅多にお目にかからないかもしれませんが、イモガイには十分に注意してください。人が死に至るほどの猛毒を持っているため、刺された場合には早急に適切な処置を受けなければなりません。浅瀬にも生息していますので、海でのレジャーの際には十分にご注意ください。