イチジクの剪定のコツは?植え方と品種別に6つの方法を紹介します!

いちじく

イチジクは家庭菜園でも育てやすい植物ですが、美味しいイチジクを育てるためには剪定が重要です。イチジクの剪定には最適な時期があり、植え方や品種によって押さえておくべきポイントがあります。植え方別、品種別に6つの剪定方法をご紹介します。

イチジクの特徴を知ろう

イチジクは夏から秋にかけて果物売場に並びますが、梨や柿に比べると馴染みが薄い果物でもあります。しかし意外にも歴史は非常に古く、日本では江戸時代から食べられています。

イチジクは珍しい特徴を持った植物です。漢字では「無花果」と書きますが、実際にはイチジクの花は誰でも見たことがあります。知れば知るほど実際に食べたり育ててみたくなります。

イチジクの特徴や歴史、品種をご紹介します。

植物?それとも果実?

イチジクはフルーツとして扱われますが、一般的に食べられている「イチジクの実」は果実ではなく花です。

イチジクは漢字で「無花果」と書きますが、花がないのではなく外から見えないだけです。イチジクの中には小さな粒々がぎっしりと詰まっていますが、この粒々がイチジクの花です。

それぞれの花の中に小さな果実があります。「イチジクの実」というと思い浮かべる涙形の果実は、実ではなく肥大化した花軸です。

イチジクの歴史

イチジクの歴史は非常に古く、古代エジプトの壁画や旧約聖書に登場します。旧約聖書で禁断の果実を食べたアダムとイブが裸を隠すのに使われたのはイチジクの葉です。ギリシャ神話にも登場し、豊穣の女神デメテルがイチジクの栽培方法を伝えたとされています。

イチジクはたくさん実がなるので多産や豊穣の象徴とされ、トルコでは神聖な果物とされています。栄養価が非常に高く、古代ローマでは「不老不死の果物」とされています。

日本には伝わったのはいつ頃?

イチジクが日本に伝わったのは江戸時代です。中国から「蓬菜柿」という品種が伝わったという説と、西ヨーロッパから長崎へ伝わったという説があります。当時は主に広島県で栽培されていました。

不老長寿の果実とされていたイチジクは江戸時代の日本でもイチジクは薬として扱われ、胃の働きをよくするなどの薬効が書物に残されています。現代でもイチジクは食物繊維が豊富で便秘にいいとされています。

日本の主な産地

イチジクの生産量日本一は愛知県です。栽培面積、出荷量ともに愛知県が1位です。愛知県では、イチジクに田楽みそをつけて食べる郷土料理があり、夏至にいちじく田楽を食べる風習があります。

そのほかの主な産地は、和歌山県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県などです。南国原産のイチジクは寒さにあまり強くない植物です。温暖な西日本の気候がイチジクの栽培に適しており、6割以上のシェアを占めます。

≪ポイント≫

  • イチジクの実は果実ではなく「花」
  • 古代エジプトや旧約聖書に登場するほど古い歴史を持つ食べ物
  • 日本に伝わったのは江戸時代
  • イチジクの主な生産地は愛知県

イチジクの剪定方法

いちじく

イチジクは手をかけなくても大きく育つ分、放っておくと大規模になってしまうので剪定が必要になります。イチジクの剪定には適した時期があります。時期を間違えると病気などのトラブルが発生しやすくなります。

イチジクの剪定は、栽培方法や品種によっても異なります。品種に合った剪定をしないと、実がならなくなります。イチジクに適した剪定方法をきちんと確認しておきましょう。

まずは栽培方法別の剪定方法をご紹介します。

鉢植えのイチジク剪定方法

鉢植えのイチジクは、「開心自然形仕立て」と呼ばれる剪定方法がおすすめです。開心自然形とは、「基本的・一般的な樹形」のことです。

  1. 1年目の夏には3枝ほど残す樹姿を作ります。冬には残した枝を20㎝から30cmの位置で剪定します。
  2. 2年目からは、冬に長い枝を剪定します。先端は角度や充実度が最もよい枝1本を選び、それ以外の枝を間引きします。
  3. 込み入った枝や枯れ枝など、不要な枝を間引きます。長い枝は、先端を1/3ほど切り詰めます。

露地植えのイチジク剪定方法

露地植えのイチジクには、杯状形の仕立て方がおすすめです。杯状形の仕立ては日差しが当たりやすく、手の届く範囲で収穫できます。

  1. 1年目の冬には、3、4本ほど生育のよい枝を残して枝の先端を整え、不要な枝を付け根から切ります。
  2. 2年目の冬は、夏に実をつけた枝や、左右に生やした枝から生えた小枝を剪定します。
  3. 3年目以降は、樹高が1.5mから2mになるように剪定し、枝が込み合った部分を間引きしながら育てていきます。

一文字仕立てのイチジク剪定方法

一文字仕立てとは、主枝を2本左右に開張させ、水平に仕立てる栽培方法です。一文字仕立てにすると、剪定や収穫が楽になります。

  1. 1年目の5月頃、勢いのいい枝2本を主枝に決めたら主枝だけを残して30cmから40cmほどの高さで剪定します。
  2. 2年目の冬は地面に対して水平になるよう支柱で固定し、左右に誘引します。
  3. 2年目の6月以降、ひもなどでまっすぐに誘引します。枝は30cmから40cm間隔にし、間の枝は1芽残して間引きます。

【品種別】イチジクの剪定時期と剪定方法

Fresh figs isolated on white background.

イチジクは夏果、秋果、夏秋果と実る時季が異なるため、剪定では品種ごとに注意すべきポイントが異なります。

イチジクの剪定に適した時期は12月から2月の休眠期です。どの品種もこの時期に剪定しますが、生育状況は品種により異なるので木の状態を確認しましょう。

剪定方法を間違えると、本来実るべきだった枝を切り落としてしまい、収穫できなくなってしまいます。剪定方法で注意するべきポイントを、品種ごとにご紹介します。

夏果

夏果の剪定を間違えると、その年の夏に実がつかなくなってしまいます。

剪定の際には枝の先端を整えますが、夏果は枝の先端に花芽があります。夏果は新しく伸びた前年の枝の先端に芽がつき、これが成長して次の年に実ります。

枝の先端を切り落としてしまうと、花芽も一緒に切り落としてしまい、実がつかなくなってしまいます。

夏果の剪定は、着果させたい枝を切り詰めず、長いまま残しておくようにしましょう。

秋果

秋果の剪定は、夏果のように神経質になる必要はありません。秋果は、その春に伸びた新しい梢に実がなります。そのため、剪定する時期である冬にはまだ花芽がありません。

間違って花芽を切り落としてしまう心配がないのです。前年の枝の中から2~3芽残し、伸びきって長くなった枝はすべて剪定してしまって問題ありません。

夏秋果

夏秋果の剪定は2種類の方法を併用しますが、秋果を優先します。夏果がたくさん実るようにしてしまうと、取り切れない夏果は梅雨の時期に腐ってしまいます。剪定をしておかないと秋果はほとんど実らなくなります。

夏果が2年前の枝に花芽をつけ、秋果はその年の新しい枝に花芽をつけます。秋果のために新梢の一部は残しておきます。夏果のためには2~3芽残してあとは剪定してしまいます。

イチジク剪定時の注意点

figs

イチジクの剪定時には注意するべきポイントを押さえておかないと、実がつかなくなったり大切に育ててきた木が枯れてしまったりします。

家庭菜園初心者には剪定と言われてもどの枝を切ったらいいのかわからず、難しく感じられるでしょう。しかしイチジクが健康に育ち実をつけるためには、剪定は不可欠です。

イチジクの栽培にあたり覚えておきたい注意点をご紹介します。

剪定時期は厳守しよう

イチジクの剪定時期を間違えると、実がならなくなったり木が枯れてしまったりする可能性があります。

イチジクの剪定に適した季節は冬です。木によっては冬になる直前まで実をつけている場合もあるので、木の状態を確認しながら行いましょう。

成長力が弱まる冬に剪定すると木への負担も最小限ですみます。春から秋にかけて剪定してしまうと、切り口から樹液が出て病気になったり、実がならなくなったりします。

剪定後はカミキリムシがつかないように

イチジクが大好きなカミキリムシは、イチジクにとって一番の敵です。カミキリムシの被害にあうと、最悪の場合イチジクの木が枯れてしまいます。

カミキリムシの幼虫は内部の木質部を食べてしまい、木の中が空洞化してしまうためです。春先に樹皮の変色やヤニのようなものがあれば、カミキリムシが産卵した可能性があります。幹に穴が開いて木くずが落ちていたら、幼虫が中に入り込んでいます。専用の薬剤などで駆除しましょう。

イチジクの育て方

いちじく 無花果

イチジクは家庭でも栽培しやすい果樹です。イチジクは観葉植物としても、家庭菜園で果実を収穫する植物としても楽しむことができます。イチジクは手のひらのような大きな葉がおしゃれで、観葉植物として人気があります。

家庭で栽培すれば、実の収穫を楽しめます。完熟のイチジクは流通が難しいので、完熟を味わえるのが家庭菜園の醍醐味です。イチジクの育て方や、注意するべきポイントをご紹介します。

土や肥料

イチジクを栽培するには、水もちと水はけのよい土が必要です。イチジクは根が浅いので、水もちの悪い土では十分に水分補給できません。水はけが悪い土だと生育不良になります。

肥料は元肥を11月から1月に与えます。追肥は6月から7月にし、夏果は9月中旬、秋果と夏秋果は10月下旬にもう一度施します。肥料は元肥、追肥ともに果樹や野菜用の化成肥料や、堆肥などの有機肥料、緩効性化成肥料などを施します。

育てる場所の温度

イチジクの生育に適した温度は15度から30度未満です。イチジクは日当たりがよく風通しのよい場所が栽培に適していますが、季節によっては注意が必要です。

夏は鉢植えを日陰に移動したり、寒冷紗で遮光したりして高温になりすぎるのを防ぎます。イチジクは寒さにも弱いので、寒冷地では冬は室内に入れられるように鉢やプランターで栽培するのがおすすめです。大きな葉は強風の影響を受けやすいので、台風の季節も注意が必要です。

水やりのタイミング

水やりは、表面の土が乾いたらたっぷりと与えます。鉢植えなら、鉢底の穴から少し流れ出るくらいの量を与えましょう。

イチジクは大きな葉からたくさん水分が蒸発するので、水切れは禁物です。雨が降ったから水やりは必要ないと思っても、大きな葉が傘になってしまい鉢の土には水がかかっていないこともあります。手で土にじかに触れて乾燥具合を確認し、水やりのタイミングを確認しましょう。

日本で流通しているイチジクの主な品種

fresh figs

イチジクにはたくさんの品種があります。

家庭菜園用や海外で流通しているものなど数多くの品種があります。イチジクと言われると涙形の果物を思い浮かべますが、丸いものや小さなものなどさまざまな種類があります。

イチジク属の植物自体、800種類あると言われています。日本で流通しているイチジクの主な品種をご紹介します。

桝井ドーフィン

桝井(ますい)ドーフィンは日本で8割以上のシェアを占める品種です。明治42年(1909年)に、広島県の桝井氏が日本で初めて栽培を始めた歴史ある品種です。

実がつきやすく育てやすいですが、寒さには強くありません。生産量一位の愛知県で主に育てられているのも桝井ドーフィンで、イチジクの中では皮が硬めなので流通にも適した品種です。甘味が薄いと言われがちですが、完熟させると別な果物のように味が変わります。

蓬莱柿

蓬莱柿(ほうらいし)は中国から日本にもたらされたとされる品種で、日本イチジクとも呼ばれます。

実は桝井ドーフィンより色が薄く小ぶりですが、桝井ドーフィンよりも甘味が強く味がよいと言われています。完熟すると同時に果実のお尻の部分が割れてしまうため、流通には向いていません。

以前は地元で消費されていましたが、流通方法の改善で全国に出回るようになりました。生産量が少なく、希少性が高いです。

とよみつひめ

とよみつひめは福岡県が開発したオリジナルブランドのイチジクです。

福岡県農業総合試験場豊前分場で育成された品種で、2006年に品種登録されました。福岡ブランドのイチジクなので、許諾契約を結んだ福岡県内の生産者だけが栽培しています。

名前の「みつ」は甘い「蜜」のことで、強い甘味が特徴です。いちごの「あまおう」よりも高い糖度を誇ります。従来のイチジクとは異なる果肉の厚さも特徴です。

セレスト

セレストはイチジクの中で最高級の甘味が特徴のイチジクです。

糖度は18度と高く、ねっとりとした濃厚な食感です。実は小ぶりで、皮が薄いので皮ごと一口で食べられます。ドライフルーツにしたり、ケーキやシャーベットなどのお菓子の材料にも使われたりします。

イチジクは寒さに弱い植物ですが、セレストは寒さに強い品種で、北海道南部でも栽培されています。豊産性でたくさん収穫できます。

≪ポイント≫

  • 【桝井ドーフィン】日本で初めて栽培されたイチジク。現在も8割以上のシェアを持つ。
  • 【蓬莱柿】甘味が強く味がよい品種。生産量が少なく希少性が高い。
  • 【とよみつひめ】高い糖度の品種。2006年に登録された新しいブランド。
  • 【セレスト】最高級の甘味を持つ品種。寒さに強く北海道などでも栽培されている。

イチジクの収穫時期は?

イチジクは品種により収穫時期が異なります。

イチジクは秋の果物のイメージがありますが、実際には初夏から味わえます。

ほかの果物と同様に、イチジクも旬の時期がもっとも美味しく食べられます。品種によって旬が違うので、時期によってさまざまなイチジクを味わえます。

夏果

夏果は、前年に伸びた枝に6月から7月にかけてイチジクが実ります。冬を越してじっくりと育つので、夏果は味がよいとされています。

代表的な夏果の品種はビオレドーフィンやザ・キングです。ビオレドーフィンはジューシーで甘味が強く、皮ごと食べられる品種です。収穫時期が梅雨時なので品質が不安定になりやすいです。

ザ・キングは黄緑色の皮が特徴で、皮ごと食べられます。肉質はなめらかで、味は淡白ですが甘味があります。

秋果

秋果の収穫時期は8月中旬から10月です。品種によっては11月まで収穫できるものもあります。夏果よりも長い期間楽しめます。

蓬莱柿やセレストが秋果になりますが、セレストは早生品種なので8月中旬から9月中旬に収穫できます。秋果は夏果よりも小ぶりなものが多いですが、たくさん実ります。糖度が高く甘味が強いのも秋果の特徴です。ヌアールドカロンという品種は糖度30度もあります。

夏秋果

夏秋果は2回旬があり、品種によって異なりますが収穫時期は6月から7月頃と8月から10月頃です。夏秋果は1本の木に夏果と秋果が実ります。同じ木でも夏果は大ぶりで秋果は小ぶりなどの違いがあります。

桝井ドーフィンは夏秋果で、旬は6月から8月と8月から10月の2回あるので非常に長く楽しめます。とよみつひめも夏秋果で、収穫時期は8月中旬頃から10月下旬頃までです。手軽に買える旬の時期は8月下旬から9月までです。

≪ポイント≫

  • 6月中旬から7月中旬に収穫できる「夏果」
  • 8月中旬から10月に収穫できる「秋果」
  • 夏も秋も収穫できる「夏秋果」

イチジクのトリビア

カットした無花果カットしたイチジク

イチジクはリンゴやみかんに比べて馴染みが薄いですが、知れば知るほど奥が深い植物です。果物を普段食べる習慣がない方なら、イチジクと聞いてもどうやって食べればいいのかわからないでしょう。

イチジクの美味しい食べ方や、イチジクはどんな植物の仲間なのか、知れば誰かに話したくなるイチジクのトリビアをご紹介します。

イチジクの美味しい食べ方

イチジクは生でも加工しても美味しく食べられ、デザートとしてもおかずの一品としても食べられます。

イチジクは皮をむいて丸かじりできます。イチジクのヘタを曲がっている方向の反対側へ折ると、バナナの皮をむくようにきれいに皮がむけます。

イチジクはクリームとの相性がいいので、アイスクリームやクリームチーズと一緒に食べると美味しいです。ワイン煮やジャム、生ハム巻きやマリネサラダにしても美味しくいただけます。

イチジクに似た実

イチジクに似た実として有名なのはイヌビワです。名前に「ビワ」とついていますが、実はイチジクに似ています。「イヌ」は食べられない植物につけられることが多い名前ですが、イヌビワは熟すれば食べられます。

イヌビワはクワ科イチジク属の植物です。同じイチジク属にはゴムの木やガジュマルがあります。観葉植物として有名なこれらの木にも、イチジクに似た実がなります。

ポイントを押さえてイチジクを上手に剪定しよう!

Colorful fruit pattern of fresh figs

イチジクの剪定は、美味しいイチジクを収穫するために非常に重要です。

剪定時期を間違えたり、品種に合った剪定をしないと実がならなくなってしまうので難しく感じられますが、ポイントをきちんと押さえておけば問題ありません。家庭菜園でイチジクを育てれば、めったに食べられないとれたての生のイチジクを味わえます。

剪定のポイントをしっかり押さえて、豊かな収穫を目指しましょう。

この記事のタイトルとURLをコピーする

カテゴリから記事を探す

すべてみる
カテゴリを見る