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お盆ってどんな日?仏壇にお供えする理由とは
毎年夏になると、お盆の時期がやってきます。お盆とは、亡くなったご先祖様の魂が戻ってくる期間のことで、地域によっては7月13日~16日、一般的には8月13日~16日の4日間です。この期間は、ご先祖様に感謝を伝えるため、仏壇にお供え物をして供養します。
仏壇に供えるものには「五供(ごくう)」という基本があります。これはお線香、花、ろうそく、きれいな水、ご飯やお菓子などの飲食物の5種類を指します。これらを供えることで、故人への敬意や感謝の気持ちを表すことができます。
しかし、中にはお供えすると失礼になったり、タブーとされるものがあります。
仏壇にお供えしてはいけないもの
仏壇にお供えする際には、故人への敬意を示すためにも、避けるべきものがあります。ここでは、お供えに適さないものを具体的な理由と共に見ていきます。
肉や魚などの生もの
肉や魚などの生ものは、仏教の考え方である「殺生を避ける」に反するため、お供え物としてふさわしくありません。生き物を殺して得た食べ物は、故人の魂や仏様に対して失礼に当たるという考えがあるためです。また、生ものは腐敗しやすく、衛生的にも問題があります。お供えした食べ物は後で遺族が食べる習慣もあるため、食品衛生の観点からも適していません。
もし故人が生前、特に肉や魚を好んでいた場合には、十分に調理して、短時間だけお供えするようにしましょう。また、肉や魚の形を模したキャンドルなど、代替品を使って気持ちを伝える方法もあります。
にんにくやネギなどの強い香りの野菜(五辛)
仏壇には、「五辛(ごしん)」という野菜をお供えしてはいけません。五辛とは、具体的に以下の野菜のことを指します。
- にんにく
- ネギ
- 玉ねぎ
- にら
- らっきょう
これらは非常に香りが強く、仏教では修行の妨げになると考えられているためです。仏壇は故人やご先祖様の魂を敬い、落ち着いた気持ちで手を合わせる場所です。強烈な匂いや刺激がある食べ物は、その神聖さを乱す可能性があります。
また、葬儀や法要で参列者が仏壇の前に集まる際にも、強い匂いの野菜は他の人に不快感を与えてしまいます。故人を敬い、仏壇周りの落ち着いた環境を守るためにも、これらの野菜は避けるようにしましょう。
傷みやすい食品や溶けやすいお菓子
生菓子やケーキ、チョコレートやアイスクリームなど、常温ですぐに傷んだり溶けたりする食品は避けるべきです。これらの食品はお供え中に腐ったり溶けたりして、仏壇や仏具を汚してしまう恐れがあります。また、傷んだ食品は遺族の健康を害する可能性もあります。
お供え物として選ぶ際は、常温で最低でも1週間は日持ちするものを選びましょう。具体的には、個包装の焼き菓子やおせんべい、缶詰のフルーツなどが適しています。
お酒やアルコール入りのお菓子
お酒やアルコール入りのお菓子を仏壇にお供えすることも避けましょう。仏教の教えには「不飲酒戒」という考えがあり、飲酒は心を乱す原因として戒められています。そのため、仏壇にアルコールを含む飲み物やお菓子をお供えすることは、本来ふさわしくありません。
ただし、故人が生前お酒を非常に好んでいた場合などは、例外的に少量を短い時間だけお供えすることがあります。その際も必ずご遺族の了承を得て、配慮しながらお供えを行うことが大切です。また最近では、ビールや日本酒を模したキャンドルなどもあるため、それらを代わりに供えるのも良いでしょう。
強烈な匂いがする食べ物
五辛以外でも、ドリアン、ブルーチーズ、納豆など、強烈な匂いを持つ食べ物は避けるべきです。強い香りの食べ物は、仏壇に供えるお線香の香りや、他の供物の香りを妨げてしまうためです。特にお盆や法要など、多くの人が仏壇の前に集まる場面では、強い匂いの食品は参列者を不快にさせてしまいます。
強烈な匂いがある食べ物は、遺族への手土産として渡し、仏壇に供えるものとしては、香りの穏やかな和菓子やフルーツなどを選ぶと良いでしょう。
仏壇に供えてはいけない花の種類
お花は仏壇に供えるものとして定番ですが、中には仏壇に供えるのがふさわしくない花もあります。ここでは、供えるのを避けるべき花を具体的な理由とともに見ていきます。
トゲのある花
バラやアザミなど、トゲがある花は、仏壇にお供えするのに適していません。仏教ではトゲは「傷つける」「痛みをもたらす」というイメージにつながり、仏壇の供養にはふさわしくないと考えられているからです。
ただし、故人が特にバラを好んでいた場合など、供えたい理由があるときは、トゲを完全に取り除いてからお供えするのが一般的です。必ず遺族に事前確認をし、許可を得たうえで供えることをおすすめします。
毒をもつ花
彼岸花やスズラン、水仙やシャクナゲなど、毒を持つ植物も仏壇に供えるのは避けるべきです。仏壇にお供えする花は、故人やご先祖様への敬意や感謝の気持ちを込めるものですが、「毒をもつ花」は、仏様に対して毒を捧げてしまうという意味合いになり、縁起が悪いとされています。
また、遺族やお供え物を片付ける人が触れる際に危険が伴うこともありますので、安全性の観点からも控えましょう。
香りが強すぎる花
カサブランカ、ジャスミン、キンモクセイなど、香りが強すぎる花も避けた方がよいでしょう。仏壇はお線香の香りが漂う場所であり、強烈な花の香りは線香の香りを妨げ、故人への供養の気持ちを邪魔してしまいます。
故人が香りの強い花を特別好んでいた場合でも、供える際は花の量を減らすか、花粉を取り除くなどの工夫をして、事前に遺族に相談してから供えることが望ましいです。
散りやすい花や縁起が悪いとされる花
椿やサザンカのように花が丸ごと落ちる種類の花や、むくげのように一日で枯れてしまう花も避けるべきでしょう。椿などは特に、花が首から落ちるように散るため、死や縁起の悪さを連想させると言われています。
また、花粉や花びらが落ちやすいひまわりなども、仏壇周りを汚してしまうため避けるのが一般的です。故人を供養するための場所は常に清潔に保つことが大切なので、掃除の手間がかかる花は選ばないように心がけましょう。
仏壇に置いてはいけないその他のもの
仏壇には食品や花だけでなく、他にも注意が必要なものがあります。ここでは見落とされがちな注意点について解説します。
タバコなどの嗜好品
故人が生前タバコを愛用していたとしても、仏壇へのお供え物としてタバコを置くことは控えるべきでしょう。タバコは匂いやヤニ汚れが強く、仏壇を汚す原因となります。お線香の香りとも相性が悪いため、仏壇という神聖な場所には適していません。
故人の好みを尊重したい場合は、仏壇に直接置かず、遺族に渡すか、故人が好んだ銘柄のパッケージを模したキャンドルを使用するといった方法で代用しましょう。
写真や遺影などの装飾品
遺影や写真を仏壇の内部(本尊や位牌と同列)に飾ることは避けましょう。仏壇内部はあくまで仏様やご先祖様の位牌を祀る場所であり、写真や個人的な装飾品を置く場所ではありません。
遺影や写真は仏壇の横や手前、仏壇の外側に専用のスペースを設けて飾るのが正式なマナーです。飾る際には、仏壇との調和を意識し、シンプルで落ち着いた状態に整えましょう。
仏壇に安心してお供えできるものと選び方
ここまで仏壇にお供えしてはいけないものを中心にお伝えしましたが、最後に安心してお供えできる品を具体例を交えながらご紹介します。
基本の五供とおすすめ品
仏壇へのお供えで基本となるのが「五供」です。以下にその具体例を挙げます。
- 香(お線香):煙が少ない白檀の短寸線香
- 花:白菊やカーネーションなど香りが強すぎない花
- 灯明(ろうそく):倒れにくいカップ型ろうそく
- 浄水(きれいな水):毎朝入れ替えた冷たい水を小さな湯飲みに
- 飲食:個包装のクッキーやフィナンシェ、りんごなどの日持ちのする果物
これらは仏壇に安心して供えられ、故人を敬う気持ちをしっかりと伝えることができます。
季節感を取り入れたお供え物
仏壇へのお供え物には季節感を添えることもおすすめです。例えば春は桜風味の落雁、夏は桃やマスカット、秋は和栗の羊羹、冬は蜜柑や干し柿など、季節を感じる品を選ぶと、ご先祖様への感謝の気持ちも伝わりやすくなります。
日持ちして片付けが楽な品
お供え物を選ぶ際に重要なのは、常温で1週間以上日持ちすること、個包装で扱いやすいこと、そして仏壇や仏具を傷めないことです。お供え物の下には半紙や供物台を敷くとのし紙を掛けると、丁寧さが増します。
故人の好物を工夫して供える
故人が特に好んでいたものを供えたい場合には、タブーを避けつつ代替品を活用しましょう。例えば、肉料理が好きだった方にはステーキの形をしたキャンドル、お酒好きな方にはノンアルコールの甘酒を供えるなど、工夫次第で故人への思いやりを表現できます。
仏壇をお参りするときの正しい手順
お供え物が整ったら、仏壇の前で落ち着いて手を合わせましょう。一般的な手順は次の通りです。
- 仏壇の前で正座し、軽く一礼する(椅子の場合は背筋を伸ばして会釈)
- ろうそくに火をつけ、その火で線香を灯す(口で吹き消さず手で仰いで消す)
- 線香を香炉に立てる
- リンを一度鳴らして合掌(家庭や宗派によって念仏やお経を唱える)
- 再び軽く一礼し、ろうそくの火を手で仰いで消す
※宗派・地域別の注意ポイント
* 浄土真宗では線香を折って寝かせる。お水やお茶は不要
* 曹洞宗では線香は一本のみ立て、リンは三回鳴らす
* お盆の時期は地域により異なり、東京などでは新盆(7月)、全国的には旧盆(8月)が一般的
まとめ
仏壇へのお供えやお参りは、ご先祖様や故人への感謝と敬意を込める大切な行為です。タブーを避けることも重要ですが、何より大切なのは心から故人を偲ぶ気持ちです。お供え物の意味や供える理由を理解することで、供養はより心のこもったものになります。マナーを守りつつ、自分や家族らしさも大切にしながら、心穏やかにお盆を迎えましょう。