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だし昆布をそのまま食べるのは大丈夫?
日本料理に欠かせないだし昆布は、昔から食べるばかりでなく、「喜ぶ」に通じる縁起物とされてきました。日本人の生活に密着しているだし昆布ですが、そのまま食べることができるのか解説していきましょう。
硬くて薄味でも食べることができる
市販されている「おしゃぶり昆布」や「都こんぶ」などは、だし昆布をそのまま食べているイメージですよね。だとしたら、だし昆布そのものを好きなサイズにカットして食べられると思いませんか?
そうなんです!表面を乾いた布で拭いてホコリなどを取り除いてから小さく切ってそのまま食べることができるんです!
そのままだと硬すぎるので、ゆっくりと口の中で柔らかくしながらおやつ代わりに食べてみてください。味付けがされていないので薄味ですが、顎が鍛えられますよ。
だし昆布の塩分は高い
おしゃぶり昆布や都こんぶ、料理に使うとろろ昆布は、塩気を抜いてから味付けをして柔らかく加工してあります。それとは違って味付けされていないだし昆布は、食べ過ぎると塩分の摂り過ぎになる危険があるので注意が必要です。
そもそも昆布などの海藻類は、海で収穫して天日干ししたものなので海水よりも塩分濃度が高めです。よって、だし昆布をそのまま食べた場合、塩分の摂りすぎになってしまいます。
塩分を過剰に摂取すると、高血圧や脳卒中などさまざまな病気を引き起こすのはご存じですよね。
では、だし昆布にはどれくらいの塩分が含まれていると思いますか?男性で7.5g未満、女性で6.5g未満が一日の目安なのに対して、だし昆布100gに含まれる食塩相当量は7.62gと多めです。
《 ポイント 》
- 表面のホコリを拭いてから小さく切ってそのまま食べることができる。
- 硬すぎるのでゆっくりと口の中で柔らかくしながら食べる。
- 食べ過ぎると塩分の摂り過ぎになる。
使っただし昆布を食べることはできる?
「だし殻」にはたくさんの栄養成分が残されている
だしをとった後の「だし殻」には栄養成分がたっぷり残っていますので、そのまま捨てるのはもったいない!そのうまみをほどよく含んただし殻昆布に一手間加えるだけで美味しくたべることができます。細かく切ってつくだ煮にしたり、ふりかけや五目ご飯の具材に再利用もできますよ。
また、だし殻にそのまま酢をかけると、だし殻のモソモソした口当たりが引き締まって美味しくなります。酢をかけることによって、抱え込んでいた水を排出した細胞が引き締まり食感がよくなるのです。
だし殻をそのまま使った料理
五目ご飯の具材にする
だし殻を細かく刻んで、しいたけ、ゴボウ、人参、油揚げなどと一緒に味付けする。
酢昆布にする
酢と砂糖でお好みの味を作り、千切りにしただし殻と一緒に容器に入れ2~3日漬け込む。
佃煮にする
フライパンにごま油を適量熱して、千切りにした昆布を炒める。しんなりしてきたら醤油と砂糖で味付を付け、ふたをして煮詰める。
から揚げにする
1㎝幅に切っただし殻に小麦粉をつけ、低温で揚げる。パリッと揚がったら塩を振りかける。
だし昆布をそのまま煮続けると料理の味が落ちる
だし昆布でだしを取ったあと、その昆布はどうしていますか?水とだし昆布を鍋に入れて、沸騰直前で取り出して昆布だしを作りますよね。
取り出さずにそのままグツグツと煮続けていると、表面のねばり成分や雑味が出て料理の風味を損ねてしまいます。沸騰直前で取り出すのは、そのためだったのですね。
《 ポイント 》
- だしをとった後の「だし殻」には栄養成分がたっぷり。
- つくだ煮、ふりかけ、五目ご飯の具材に再利用できる。
- だし殻に酢をかけると引き締まって食感がよくなる。
- 沸騰直前で取り出さずに煮続けると料理の風味を損ねる。
だし昆布の食べ過ぎには注意が必要
だし昆布は食事以外におやつとしてそのまま食べることができますが、実は食べ過ぎに注意しなくてはいけません。昔から昆布を食べる習慣がある日本人は、当たり前のように毎日何らかの形で昆布を食べています。
出汁、とろろ昆布、おしゃぶり昆布、健康食品や加工食品の原材料など、優れた栄養素を摂り入れていまが、その一方で、食事以外にたくさん食べすぎると、甲状腺に影響を与える「ヨウ素」の摂りすぎにつながってしまいます。
だし昆布にはヨウ素が極端に多く含まれている
ヨウ素は海藻に多く含まれているのですが、中でもだし昆布は他の海藻に比べてヨウ素を10~30倍も多く含んでいます。
ワカメやひじきなど他の海藻に比べて極端に多く、このヨウ素を取り込みすぎると、甲状腺の機能にダメージを与えてしまいます。
甲状腺ホルモンは、体の発育を促進し新陳代謝を盛んにするのに必要なエネルギーを作るとても必要なホルモンです。
甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても体調が悪くなり、すぐにイライラする、手足がしびれる、無気力でうつ状態になるなどの症状が出てしまいます。
食べ過ぎになるヨウ素の量
ヨウ素をたくさん含んでいるため、おやつ昆布やとろろ昆布を大量に食べることは避けなければいけません。ではどのくらいなら適量といえるのでしょうか?
ヨウ素の1日の平均推奨量は男女ともに130㎍で、耐容上限量は3,000㎍と定められています。3gの昆布を使って取られた昆布だしは、100g中5400μgものヨウ素を含んでいます。
昆布に含まれるヨウ素の90%がだしに出ているので、1カップの昆布だしを使った味噌汁を一日三食食べていれば簡単に到達してしまうというわけです。
胎児に影響を及ぼす可能性がある
妊婦さんがヨウ素を大量に摂りすぎたために、生まれてきた赤ちゃんが甲状腺機能障害を持っていたことがあります。お母さんが大丈夫だったとしても、摂り過ぎは胎児にも影響することがあるので注意してください。
海藻類の中では糖質が高め
確かに糖質は意外と高めです。だしを取る分にはそれほど影響ありませんが、そのまま食べる食べ方はダイエットに不向きかもしれません。
ところが、だし昆布には糖質の吸収を抑えてくれるアルギン酸やフコイダンが含まれているため、料理に含まれる糖質の吸収を抑えてくれるのです。
消化の悪い昆布を食べ過ぎると吐き気をもよおす
昆布を極端に食べ過ぎると、場合によっては胃もたれを起こしたり嘔吐することがあるようです。食物繊維をたくさん含んでいる昆布は消化が悪いので、体調がイマイチのときはおすすめしません。
食べすぎや飲みすぎで生活のリズムが崩れているとき、精神的ストレスなどで胃腸が弱くなっているときには昆布を食べるのは控えたほうが良いでしょう。
《 ポイント 》
- 甲状腺に影響を与えるヨウ素を摂りすぎる。
- 昆布に含まれるヨウ素の90%がだしに出ている。
- ヨウ素を大量に摂りすぎると胎児に影響を及ぼす可能性がある。
- 糖質は高めでも料理に含まれる糖質の吸収を抑えてくれる。
- 消化が悪いため胃腸が弱くなっているときは控える。
だし昆布の栄養
だし殻に残っている栄養成分
昆布には体によい栄養成分がたっぷり含まれていることは、皆さんがご存じの通りです。
カリウムやマグネシウムなどのミネラル類、そして高血圧予防やコレステロール値を下げる効果が注目されている食物繊維の一種アルギン酸やフコイダンもたっぷり含まれています。
さらには、だしをとった後のだし殻にそのまま多くの栄養成分が残されていることもわかりました。とくにアルギン酸は、そのほとんどがだし殻に残されています。だしをとった後のだし殻に残っている栄養成分は以下のとおりです。
- カリウム 15%以上
- マグネシウム 56%以上
- アルギン酸 95%以上
- ヨード 10%以上
体を弱アルカリ性に保つ働きをする
肉類や加工食品を日常的に食べるようになった現代では、身体が酸性に傾きがちです。だし昆布は健康な体を維持する「弱アルカリ性」に保つ働きをしてくれるので、理想の健康食品と言えるでしょう。
食物繊維の一種「アルギン酸」と「フコイダン」
だし昆布を切ったり煮たりすると、海藻特有のぬめりやねばりが出てきますよね。だし昆布には特に多く含まれていますが、そのぬめりが栄養成分と分からなければ捨ててしまいそうになります。
ですが、だし昆布に豊富に含まれるあのぬめりこそ「アルギン酸」と「フコイダン」という、食物繊維の一種が溶け出したものなのです。
だし昆布の栄養素の3割弱は水溶性食物繊維なのですが、この成分が腸内環境を整え、老廃物や余分な糖質、脂質を排出してくれるのです。
ミネラルが豊富
カルシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、ヨウ素(ヨード)などのミネラルは身体の調子を整え、組織を作ってくれます。特にだし昆布のミネラルは、身体への吸収率が非常に高くおよそ80%が体内に吸収されます。
だし昆布の栄養は髪の毛にも良い
食べ過ぎると健康に悪影響を及ぼすヨウ素は、新陳代謝を活発にして髪を艶やかにしてくれる成分でもあります。昔から日本人の黒髪が美しいと言われるのは、昆布やワカメなどの海藻類を食べているからなのかもしれませんね。
だし昆布のぬめりを成分としたヘアケア商品も発売されているくらいなので、ヌルヌルが髪を元気にして成長させてくれるのではないでしょうか。
《 ポイント 》
- アルギン酸は、そのほとんどがだし殻に残されている。
- 酸性に傾きがちな体を弱アルカリ性に保つ働きをする。
- ぬめりは食物繊維の一種「アルギン酸」と「フコイダン」が溶け出したもの。
- ミネラルのおよそ80%が体内に吸収される。
- ヨウ素は新陳代謝を活発にして髪を艶やかにしてくれる。
最後に
優れた栄養素をたくさん含んでいるだし昆布は、そのまま食べるのはOKなのか、そして栄養や食べ過ぎによる注意点とは何かについて解説しました。いかがでしたでしょうか?
お祝い事や無病息災を願う行事には必ずと言っていいほど登場する縁起物もの昆布は、理想の健康食品です。
そして、ありがたいことに、だしを取ったらそれで終わりなのではなく、取った後の「だし殻」にも多くの栄養分が残っていたのですね。
「だし殻」を捨てるのではなく、酢昆布やつくだ煮、ふりかけ、五目御飯などのレシピに再利用してみてはいかがでしょうか。
ただし、ヨウ素を多く含んでいるだし昆布を必要以上に食べることは、病気につながりますので、特に女性は食べ過ぎに注意してくださいね!