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パエリアで米を洗わない理由
日本人にとって米を洗わないなんて信じられないかもしれません。米を研ぐことで米に残った糠(ぬか)を落とす必要があるためです。パエリアのように米を炊かない調理法も思いつかないかもしれません。
パエリアを作る機会も多くはありませんし、ピラフやリゾットだって研いで炊いた米を使います。しかし、海外で「米を洗う」と聞くと驚かれることがあります。そもそも「日本と海外では食文化が違う」と考えると、パエリアの米を洗わない理由も納得していただけるのではないでしょうか。
米は研いで(洗って)炊くものだという考えにとらわれることなく、調理や料理を楽しめるともっと食を豊かにすることができます。
水分を含ませる必要性がない
米乾物です。炊く前に研いで糠を落とし、水分を含ませることでふっくらと美味しく炊き上がるというのが日本の食文化です。しかし、パエリアは調理前に水分を含ませる必要性が一切ありません。水分ではなくスープをたっぷりと含ませるのが基本だからです。
洗うとスープの味がしみ込みにくくなってしまう
パエリアの米を洗わないのは、米に初めからスープをしみ込ませたいからです。洗った米にはすでに水がたっぷりとしみており、スープを吸う力が弱くなっています。そうすると、スープがしみ込みにくく味の薄いパエリアになってしまいます。
他の食材が糠(ぬか)の臭いを消してくれる
米を洗わずに調理した時に気になるのが糠の臭いです。プンと糠の臭いがする料理は食べにくいだろうと想像できてしまいます。
しかし、パエリアに使われるニンニクには糠の臭いを消してくれる働きがあります。実際に米を洗わずに作ったパエリアを食べてみても糠の臭いが感じられたことは一度もありません。
水分を吸った米ではパラパラに仕上がらない
米を洗うと水分が吸収されて調理する時に粘りが出てしまいます。ねっとりとしたパエリアになってしまうと、本来の美味しさを味わえなくなってしまいます。
パエリアは米の粘りを出してはならない料理です。生米を油で炒めることで米をコーティングしますが、粘りを防ぐ事とパラパラにするためです。
「米を洗ってから油で炒めればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、水分を吸ってしまった米をいくら大量の油でいためてもコーティングされることはありません。結果、ねっとりと粘りのあるパエリアになってしまいます。
パエリアに合う米の種類
ボンバ(バレンシア)
ボンバはパエリア専用の米として販売されています。スペインのバレンシア地方が発祥の米であるためバレンシアと呼ばれることもあります。
このお米の特徴は大粒であること・粘りが少ないこと・スープをたっぷりと吸収すること・アルデンテに仕上げやすいこと・歯ごたえがあることです。
また、芯が残りやすいという特徴があるためスープがしみ込むまでじっくりと時間をかけて調理する必要があります。
カルナローリ
カルナローリはイタリアが起源の米です。主にリゾット・ドルチェ・サラダに使われているのですが、パエリアにも適しています。
このお米の特徴は大粒であること・粘りが少ないこと・スープをたっぷりと吸収すること・アルデンテに仕上げやすいこと・煮込んでも崩れにくいことです。
アルデンテのパエリアに仕上げたい時は新米を使うよりも収獲されてから少し時間の経った米を使うのがおすすめです。
無洗米
出典:Amazon
米を洗わないことに抵抗がある場合には無洗米を使ってパエリアを作ると良いです。糠の残りや臭いが気になることがありません。
しかし、先にご紹介した米のようにパエリアやリゾットを目的とした米とは全く違います。日本の米は小粒で粘りがあるのが特徴だからです。
アルデンテに仕上げるのは少々難しいかもしれません。ですが、洗わずに調理することでスープをたっぷりとしみ込ませることができます。
ササニシキ
ササニシキは粘りの少ない上品な品種として人気の日本のうるち米です。粘りを必要としないパエリアに適していると言えます。米そのものの味を主張しすぎないため、パエリアのスープの旨味をしっかりと感じることができます。
こしいぶき
日本のうるち米です。一般的なコシヒカリと比べると粘りが少なめです。粘りを必要としないパエリアに適していると言えます。甘味とツヤが魅力の米で、食感はしっかりめです。
いのちの壱
日本のうるち米で幻の米と呼ばれるほど希少な品種です。粒の大きさは一般的なコシヒカリの1.5倍と大きいのが特徴です。大粒であることがパエリアに適していると言えます。ただ、粘りはしっかりとあるタイプです。
パエリアで米を美味しく調理するコツ
パエリアはスペインの家庭料理ですが、冷蔵庫にある残り物を使って作る母の味です。
パエリア発祥の地であるバレンシア地方ではシンプルに作るのが基本ですが、冷蔵庫の中に何が残っているか、作る人によって具材や味は様々です。
美味しく調理するコツはとにかく作ること。米と水の割合を気にされる人が多いようなのですが、水の量は米の種類や火加減によってかなり変わります。
とにかく作って成功も失敗も経験し、パエリア作りに慣れることが最も美味しく調理できるようになるコツなのです。そしてポイントを3つご紹介しましょう。
最後の最後まで蓋をしないこと!
パエリアは水分を蒸発させながら加熱することでスープの濃度を高め、その旨味を米にギュッとしみ込ませることで美味しくなります。蓋をする必要は一切ないと考えても良いです。
蒸気の水分がパエリアに混ざってしまっては味が薄くなってしまうなどしてもったいないです。
ひと手間が美味しくする!
魚介の旨味が濃縮されたスープがパエリアを美味しくするポイントです。
例えば、エビは頭を潰すことでミソが出ます。そのミソをスープに溶くのもひと手間かける美味しさの秘訣です。そして、野菜は炒めることでより味を引き出すことができます。
とりあえずレシピ通りに作ってみる!
パエリアはスペインの家庭料理でありながら日本人にはなかなか調理が難しい料理です。
そもそも米を洗わない・研がないというところから困惑してしまいますよね。水の分量や火加減を調整するのが難しい料理です。とりあえずレシピ通りに作ってみるというのが美味しく調理するコツです。
先にもお話しましたが、米と水の割合は米の種類によって変わります。米もレシピに書かれているものを使用すると良いです。まずは日本の家庭で食べる一般的な米を使ったレシピを参考にするのがおすすめです。
最後に
パエリアの米を洗わないのは、「パラパラに仕上げるため」「スープをたっぷりしみ込ませるため」この2つが主な理由です。
洗った米でもパエリアを作ることはできますが、粘りが出てしまうことでお粥のような食感になってしまいます。
一般的な日本の米も精米技術はどんどん進化していますから、糠の残りや汚れやゴミなどそれほど気にならないと思います。米を洗わないことにどうしても抵抗があるのであれば、パエリア専用の米を使用すると良いです。手に入りにくい時は無洗米(日本の米)を使用すると良いです。
まずはレシピ通りに作ってみることに挑戦してみてください。きっと美味しいパエリアになると思います。パエリアはみんなオリジナルなのであまり気にせず作って大丈夫です。