目次
合皮がベタベタになる原因
空気中の湿気による加水分解
合皮のベタベタは、「加水分解」という化学反応が原因で起きるそうです。加水分解とは、ウレタンやエチレン等の合成の化合物が湿気と反応し、分解されることで起こる現象のことです。
製品の加工で使われているコーティング剤や接着剤、カソ剤と呼ばれる成分などが加水分解され、ベタベタの原因になります。
製品に含まれる合成樹脂の劣化
合皮は布地に合成樹脂を塗布することで、見た目を本革に似せる一種の加工素材です。これを使って作られるバッグや靴、財布などが合成皮革製品となります。
合成樹脂は大量生産に向いており、本革よりも軽く安価なため、デザイン重視なバッグなど、何度も繰り返し使われている方は多いでしょう。ただし、経年により樹脂の劣化が進むことでベタベタが出てしまうデメリットがあります。
芯地(しんじ)に使われている接着剤が染み出した
芯地とは、製品で使われているいくつかの素材同士を縫い合わせる際に、素材同士がヨレないよう生地と生地の間に挟みこまれる特殊な生地のことです。表面上は芯地を確認できません。
合皮を接着剤で芯地に貼り付けてから縫っている製品の場合、接着剤が経年劣化で製品の表側に成分が染み出て来てベタベタの原因になることがあります。
手垢や皮脂汚れ
バッグの持ち手部分は、毎日使用することで手垢や皮脂が徐々に製品に残り汚れが蓄積されていきます。そのベタベタが取っ手などの部分的なものに限られている場合の原因として考えられます。手垢や皮脂汚れはそのままにしておくと変色やくすみの原因にもなります。
合皮のベタベタの取り方
重曹を使って取り除く
ベタベタが表面についている場合は、重曹を使って取ることが出来ます。ポリウレタンの劣化で起こるベタベタの原因は酸性なので、アルカリ性の重曹を使うことで中和して取り除きます。
ただし、エナメル素材は表面のコーティングがはがれやすいのでおすすめしません。表面のコーティングに影響がないと判断した場合の処置になります。
<用意するもの>
- 重曹
- 40~45℃のぬるま湯
- 歯ブラシ
<手順>
- ぬるま湯1リットルに対して、重曹大さじ4杯程度を入れて重曹水を作る
- 重曹水を歯ブラシに付けて、ベタベタしているる箇所に力を入れ過ぎないよう注意しながら、優しく丁寧に磨く
- 磨いた箇所は水を絞った布で、力を入れ過ぎないように優しく拭く
- 乾いたタオルで水気をしっかり拭き取り、風通しの良い日陰で乾燥させる
無水エタノールで拭く
エタノール含有濃度が99.5%以上の無水エタノールを清潔な布にしみ込ませて拭くと、製品表面のベタベタを落とすことができます。ただし、製品表面のコーティングが剥がれてしまうこともあるので、エナメル製品やコーティング部分にはおすすめできません。
ベビーパウダーを使う
バッグなどの内側、裏生地がベタベタして気になる場合、ベビーパウダーがベタベタを吸収してくれます。あくまでも応急処置としてのおすすめになります。ベビーパウダーはバッグをさかさまにして後でしっかり振り落としましょう。
バックの持ち手部分や財布にはクリーナーを使う
バッグの持ち手部分や財布のふちなど、汚れや傷から守るためのコーティングがされている場合が多いですが、コーティング剤が加水分解を起こすことが原因でベタベタがが出てしまう事があります。
細かい製品部分については、合皮やエナメル素材にも使用できる「革製品用のクリーナー」を利用すると良いでしょう。素材へのダメージが少なくおすすめです。
合皮のベタベタを予防する保管方法
空気中の湿気や製品の経年劣化、汚れなどで発生する合皮製品のベタベタですが、丁寧な保管を心がけることで長い期間使うことが可能になります。
<正しい保管方法>
- 風通しがよく直射日光が当たらない場所に保管する
- 保管スペースには除湿剤を利用し加水分解の進行を防ぐ
- 狭い内側スペース、マチがないポケットには紙を挟んで除湿剤代わりに保管する
- 購入時に入っていた箱やビニール袋にいれたまま保管しない
ベタベタがひどい場合は修理サービスがおすすめ
高価なブランド品の場合、ブランドの正規修理サービスを利用する方法と、ブランド品を専門で修理しているショップへ修理を依頼する方法があります。
ブランド品でなくとも、皮・合皮製品の修理専門店をチェックしてみるのもおすすめです。
ブランドの正規修理サービスを利用する
正規修理サービス利用のメリットは、正規品のパーツを使用して修理してもらえることです。
ただし、見積りから修理までにかなりの時間を必要とするケースが多く、3ヵ月~数年もの期間が修理にかかるケースもあるようです。
また正規修理サービスの場合、製品をベストのコンディションにメンテナンスしようとします。こちらの希望は、ベタベタを取ってもらえる程度で良いと思っていても、希望以外のバーツ交換やクリーニングが発生し、高額な費用になるケースもあるようです。
また正規修理以外を受けた経緯があると、修理を断られるケースがあるので注意が必要です。
ブランド品を修理しているショップへ修理を依頼する
時間をあまりかけたくない、費用を抑えたい、正規の修理サービスへ修理依頼したけれど断られてしまった場合、革・合皮製品やブランド品の修理を行っている修理店へ依頼するのがおすすめです。
ベタベタの出ている部分のみの修理、交換を行うなどのピンポイントで依頼が可能です。ただし、ブランドの正規修理店での修理とは違い、正規のリペアパーツの用意は不可能なため、ロゴや柄の再現が出来ない場合があります。
模様やブランドオリジナルの特色が使われていない、無地部、一般的に広く用いられているデザインであれば、素材と同じ材質や、色味の素材で修理してもらうことは可能です。
このような修理店で修理を行った後にブランドの正規修理店へ修理に出した際、断られることがありますのでご注意ください。
最後に
デザイン性の高い合皮バッグや財布など、高額なブランドからリーズナブルな製品まで、合皮はたくさんでまわっています。
お気に入りの合皮を長期間使い続けるために、正しい保存方法や、クリーナーや身近ですぐに手に入るものを利用しましょう。
本当にお気に入りのものは早めに修理するなど、製品の状態を見極めてずっと大切に使っていきましょう。