目次
里芋の旬
年間を通して市場で流通している里芋ですが、里芋の旬は10月から12月頃とされています。
里芋の品種により旬の時期が多少違っていて、「石川早生」や「土垂」、「セレベス」などは8月下旬から10月頃に旬を迎えます。
「えび芋」はそれより遅く9月下旬頃から、そして正月料理の縁起物として使われる「八頭」や「頭芋・殿芋」は12月から1月が旬となります。
このように、里芋の収穫自体は8月下旬頃から開始され、3月頃まで継続して行われていますが、その中で最も食べ頃の時期なのが、10月から12月頃とされています。
《 ポイント 》
- 里芋の総合的な旬の時期は10月から12月頃。
- 里芋は品種によって旬の時期が多少違う。
里芋の特徴と産地
里芋の特徴
里芋の原産地であるインド東部からインドシナ半島では、「タロイモ」という名前で呼ばれています。
紀元前2500年頃には海を越えて各地に広がり、日本でも縄文時代から栽培されていたようで、ジャガイモやサツマイモがそれほど定着していなかった江戸時代までは、「芋」といえば里芋のことでした。
土の中で成長する里芋は、根のように見えますが、実は茎が肥大したもので、地下茎と呼ばれる部分を食用として使用しています。株の中心に親芋ができ、その周囲に小さな子芋が増えていきます。
その種類によっては親芋を食べるものや、土垂などのように小芋だけを食べる種類などがあり、中にはえび芋のように親芋と小芋、そのどちらも食べられる品種もあるようです。
また、ずいきや八つ頭のようにそこから伸びる葉茎を食べる種類もあります。スーパーなどで売られている里芋は、おもに子芋と孫芋ですが、「親→子→孫」と続いていくことから、子孫繁栄の縁起物としてお正月料理には欠かせない食材のひとつとなっています。
里芋の種類
土垂(どだれ)
主に関東地方で栽培されている土垂は、里芋を代表する品種で、子芋と孫芋の両方を食用とします。楕円形で肉質はやわらかくねっとりとした食感、煮崩れしにくく煮物に最適であり、保存性が高いため旬に限らず一年中出回っています。
石川早生
里芋を収穫する旬の時期が8月頃からと早くから始まり、土垂よりも小さめでコロッと丸い形をしています。やわらかく粘りがあり、皮付きのまま蒸して、後から皮をむいて食べる「きぬかつぎ」にも利用されています。発祥地である大阪府の石川村(現河南町)から名前がつけられました。
京いも
名前のイメージとは異なり、宮崎県が主産地です。20〜40cmほどの長さのある円筒形をしていて、竹の子に似ていることから「たけのこいも」とも呼ばれています。ぬめりが少ないので皮がむきやすく、ホクホクとした食感が煮物向きです。
海老芋(えびいも)
えびのように曲がった形状で、何度も土寄せして栽培するためにこのような形になるようです。粘りのある粉質で、赤褐色の茎は「ずいき」として食べられています。京都の伝統野菜として知られていますが、静岡県が生産量第一位です。
八つ頭(やつがしら)
親芋と子芋が結合してひとつになった里芋で、親芋の周囲にくっついている子芋が、八つの頭に見えることからこの名前がつけられました。粉質でホクホクとした食感があり、縁起物としておせち料理にも使われています。
セレベス
別名「赤芽大吉」といい、インドネシアのセレベス島(現在のスラウェシ島)から入ってきました。親芋、子芋の両方が食べられる品種で、皮がほんのりと赤く、ホクホクとして煮物やコロッケなどに最適です。
はすいも
芋自体は食用としませんが、葉と茎を繋いでいる葉柄の部分のみを炒めたり、酢の物や煮物にして食べます。中はスポンジ状になっていて、軽くてシャキシャキとした独特の食感があります。主産地は高知県で「青ずいき」とも呼ばれているようです。
芋茎(ずいき)
葉柄の部分を食用としたもので、赤色の「赤ずいき」と、軟白栽培の「白ずいき」、そして先ほど紹介した緑色の「青ずいき(はすいも)」があります。そのままではアクが強いので、アク抜きしてから煮物や和え物などにして食べるのが一般的です。「いもがら」とは、このずいきを乾燥させたもので、こちらはお湯で戻してから調理します。
里芋の主な産地
全体の年間生産量は、165.423t、作付面積は13.192ha
過去のデータに基づき、2006年から2018年度産までを平均した収穫量の多い産地は、
- 1位:千葉県(全体に占める割合約13.1%)
- 2位:宮崎県(全体に占める割合約11.3%)
- 3位:埼玉県(全体に占める割合約10.2%)
- 4位:鹿児島県(全体に占める割合約5.9%)
- 5位:栃木県(全体に占める割合約5.3%)
となっています。
海外における里芋の主な産地
タロイモ(サトイモ)生産の上位5か国は、
- 1位:ナイジェリア
- 2位:中国
- 3位:カメルーン
- 4位:ガーナ
- 5位:パプアニューギニア
《 ポイント 》
- 江戸時代まで、芋といえば里芋のこと
- 根のように見えて実は茎が肥大したもの
- 里芋の主な産地は千葉、宮崎、埼玉、鹿児島、栃木の順
里芋の選び方
旬に限らず良い里芋はふっくらと丸みがあって表面に変色や傷がなく、土がついているものを選ぶようにします。
また、里芋を持った時にずっしりと重みを感じるものは良品で、皮にひび割れがなく、乾いているものよりも湿り気がある皮のほうが新鮮です。
古い里芋はカビ臭さを感じることがありますので、見た目で判断できない時にチェックしてみましょう。
《 ポイント 》
- 良品は丸みがあり変色や傷がないもの、土がついているもの、を感じるもの。
- 湿り気がある里芋の皮は新鮮。
- 古い里芋はカビ臭さを感じる。
里芋の保存方法
常温で保存
里芋を購入後に長期間保存をするのなら、新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所で保存します。
里芋に土がついた状態で売られていたものは、乾燥により品質を低下させないためにも、土がついたまま新聞紙に包んでから、発泡スチロールの箱や段ボール箱などに入れておくといいですね。
里芋の土を落としているものは、あまり日持ちがしないので、早めに使うようにします。
冷蔵庫で保存
また、里芋の保存に適した温度は10度前後なので、冷蔵庫には入れないようにしましょう。暖かいところで収穫されるものなので、冷蔵庫に入れると低温障害を起こし、里芋が痛みやすくなってしまいます。
ただし、夏場は里芋の土を洗って水気を拭き取り、新聞紙で包んでから冷蔵庫の野菜室に入れるようにしてください。そしてできるだけ早く使い切るようにしましょう。
冷凍庫で保存
里芋をすぐに食べることができない場合には、冷凍保存も可能です。まとめて下処理して冷凍しておけば、使いたい時にすぐに使えて便利です。
生のまま冷凍する
里芋を生のまま冷凍するのであれば、丁寧に洗った里芋を、皮を剥きやすくするために、半日ほど天日干しします。皮を剥いた状態の里芋に塩を使ってぬめりを落とし、水洗いをした後に水気を拭き取ってからフリーザーバッグなどに入れて冷凍します。
茹でてから冷凍する
里芋をかために茹でてからザルにあげ、さっと流水にさらしてから皮を剥きます。熱を通すことにより、皮が手でツルっと簡単にと剥けるようになります。
里芋に水分がついた状態で冷凍すると、里芋同士がくっついてしまいますので、里芋の水気をしっかり拭き取ってからラップで包み、フリーザーバッグに入れて冷凍保存します。これは最も手間がかからない方法でもあり、保存期間は1か月程度になります。
《 ポイント 》
- 新聞紙に包んで風通しの良い冷暗所で保存する。
- 里芋は土がついたままの方が長持ちする。
- 夏場だけは里芋を冷蔵庫の野菜室で保存する。
- 冷凍での保存期間は1か月程度。
里芋の栄養
里芋に含まれている「ガラクタン」や「マンナン」という成分が、里芋のぬめりを出します。
- ガラクタンは免疫力を高めたり、血中のコレステロールを下げる
- マンナンは便秘予防や糖尿病予防
- カリウムは体内の余分なナトリウム(塩分)を排出して、血圧の上昇を抑える
- 葉酸は造血作用がある
- ビタミンB6は肌荒れによく美容効果が期待できる
《 ポイント 》
- 里芋のぬめりはガラクタンやマンナンの成分。
- 里芋にはカリウム、葉酸、ビタミンB6が豊富に含まれている。
里芋でかゆみがでる?
里芋を扱うとぬめりで手が痒くなる人がたまにいますが、これはシュウ酸という成分が、刺のような尖った形の結晶になっているため、それが皮膚に刺ささってしまうからです。
その際には、茹でてから流水で粗熱をとり、その後に剥くと素手で触っても痒くなりません。また、里芋をお酢に手を浸けてから皮を剥くと、痒みを緩和させることができるので、痒みに頭を悩ませている方はぜひ試してみてください。
《 ポイント 》
- 痒みはシュウ酸という成分が原因。
- 防止策は茹でてから皮を剥く、酢に手を浸すこと。
里芋の上手な下処理方法
旬に限らずほくほくして美味しい里芋ですが、ぬめりの下処理が面倒だと感じている人もいることでしょう。ですが、下処理の方法を一度覚えてしまえば、いつでも美味しい里芋料理を食べる事ができるのです。
手順
- 里芋の上下の部分を切り落としてから、六角形になるように周囲の皮を剥く。
※六角形にするコツは順に皮を剥くよりも、最初に剥いた面の反対側を剥く様にすると滑りにくくなり、上手に皮を取り除くことができます。 - 皮を剥いた里芋を軽く洗ってから、キッチンペーパーなどでぬめりを拭き取る。
- 里芋を軽く塩でもむ。
- 里芋を水を入れた鍋に入れ、強火で泡が出てくるまで茹でる。
- 茹で上がった里芋のぬめりを、再び流水で落とす。
これで下処理は完了です。
里芋を茹でる際には沸騰させたお湯に入れるのではなく、水の状態から茹でるようにするという点も覚えておいてくださいね。
《 ポイント 》
- 里芋を六角形になるように皮を剥く。
- 里芋を塩でもんでから強火で泡が出るまで茹でる。
- 里芋は水の状態から茹でるようにする。
里芋の美味しい食べ方
旬に限らず和食などに使用される機会の多い里芋ですが、五目煮や煮しめ、煮ころがしなどはもちろんのこと、汁物やきぬかつぎなど、皆さんの大好きなメニューは数えきれません。里芋といかの煮物やおでんなどは、居酒屋でも定番のメニューになっています。
そこでおすすめなのは、里芋の天ぷらです。味を浸み込ませた里芋を丸ごと揚げることで、中はホクホクでしっかり味がついた一品が出来上がります。
その他にも、クリームシチューやグラタンなどの洋風料理とも相性がいいので、ぜひ日々のおかず作りに加えてみてください。
また、里芋を煮ころがしなどの煮物にする場合は、ぬめりが強いと味が染みにくく煮汁も濁り、吹きこぼれしやすくなります。それ防ぐためには、茹で汁に塩を1%ほど入れる、皮をむいたら塩もみをする、一度ゆでこぼしてお水からゆでるなどの方法がありますので、試してみる価値あり!です。
《 ポイント 》
- 旬に限らず、おすすめは里芋の天ぷら。
- 里芋は洋風料理とも相性がよい。
- 茹で汁に塩を1%入れると、濁りや吹きこぼれを防ぐことができる。
最後に
里芋の旬や特徴について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
通年、和食などに使用される機会が多い里芋ですが、旬の季節に食べるのが最も美味しいと感じられるものです。今まで何気なく里芋を口にしていたという方も、詳しい知識を知ることで、より一層美味しく食べることができるでしょう。
旬の里芋を上手に取り入れるようになることで、料理も更に楽しくなると思いませんか?