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救急車を呼ぶ費用は無料?それとも有料?
救急車の年間の出動回数は平成30年度で約660万件を超えています。
私たちの安心な生活にとって欠かすことのできない救急車ですが、そもそもこの救急車を呼ぶときの値段は無料なのでしょうか。もし費用が発生するとしたら、その値段は高額な値段を請求されてしまうのでしょうか。
安心な生活を送るうえで知っておきたい救急車の値段について見ていきます。
救急車を呼ぶこと自体は「無料」
実は救急車を呼ぶこと自体については、基本的に値段はかからず無料です。私たちが救急車を呼ぶとすれば、文字通り「救急」の事態だからです。
このときにお金の心配をしていたら、公共サービスとしては使いにくいですよね。なお海外からの旅行客や外国人の方であっても、救急車を呼んだとしても同様に値段はかかりません。
救急車を呼んで料金を請求されるケース
救急車を呼ぶこと自体は基本的に値段がかかりません。しかし実際には救急車による搬送によって費用を請求されるケースがあります。
そのケースとは救急車の車内で診療などの医療行為を受けると、救急搬送診療料という診療報酬が必要になるからです。
ここではその詳しい内容と、実際に費用を請求された場合の値段について見ていきます。ケースによって値段が高額になる場合がありますので注意が必要となります。
ドクターカーが出動した場合
まず救急車を呼んで値段がかかるケースとして考えられるのが、ドクターカーが出動するケースです。
ドクターカーの外見は通常の救急車と似ていますが、車内には人工心臓マッサージ器や人工呼吸器、検査装置等の医療機器が搭載されています。
医師、看護師などが同乗し、 医療機関搬送前の現場に直接出動する救急車の一種です。この車両で搬送された場合には車内で専門的な応急処置など医療行為が施されますので、後日料金を請求されます。
軽症だった・緊急性がなかった場合
次に患者の症状が軽症、あるいは緊急性がなかったと判断された場合、救急車を呼ぶと値段がかかるのでしょうか。
結論を先にいうと、搬送先の病院によっては純粋な治療費に加えて費用を請求されるケースがあります。
「特定療養費」と呼ばれるものですが、請求するかどうかは病院次第です。「救急性もないのに救急車を呼んだ」ことを理由に請求されるケースがあるとすれば、「救急車を呼んだら料金を請求された」という例になるでしょう。
請求される値段はどれくらい?
では実際に救急車を呼んで費用が請求されるケースでその値段を見ていきます。
車内で診療を受けると、救急搬送診療料という診療報酬が必要になり、診療報酬点数は1,300点(1点=10円)と決められています。
つまり救急車を呼んで車内で診療を受けると、最低でも13,000円が請求されます。
これは通常の診療費用よりも高額な請求となりますので、やはり救急車を利用することは特別な対応なのです。
そもそも救急車はなぜ無料で呼べるか?
基本的には救急車を呼んでも値段はかかりません。
これをみると救急車を呼ぶことが今まで以上に手軽に感じてしまう場合もあります。しかし、実際にはその費用は私たちが日々払っている税金によって賄われています。
それでは実際に救急車を手配する際の値段はどの程度ものでしょうか。ここではこうした救急車を呼んだ際に発生する実際の値段を見ていくとともに、なぜ救急車が無料で利用できるかの理由を考えていきましょう。
税金から補填されている
日本においては基本的に、救急車の派遣費用などは私たちの税金で賄われています。
これは救急車や消防車など公共性が高い設備などは、貧富の差がなく国民が平等に利用できることを前提としているためです。
一方で海外では走行距離や国籍によって、救急車が有料化されている国もあります。
1回の出動で45,000円
それでは救急車が出動する際の実際にかかる値段を見ていきます。
救急車が1回出動するのに必要な費用は、約45,000円といわれています。無料で提供されているサービスですが、私たちの税金が使われていると考えると、実に高額なサービスであることが分かります。
出動費用の主な内訳
- 救急隊員の人件費
- 救急車の燃料(ガソリン)代
- 救急車のメンテナンス代
- 医療器具代
救急車はいずれ有料化されるかも?
現在、救急車の利用者にとっては病院への搬送は値段がかかりませんが、2015年に財務省から救急車の一部有償化が提案されました。消防関連の予算が年間で2兆円にのぼり、こうした費用の削減が提案の理由です。
このような提案がされた背景をもう少し詳しく見てみましょう。
出動件数が増え続けている
総務省によると平成30年度における救急車による救急出動件数は約660万件で、対前年比では約26万件増加(約4.1%増)しています。
搬送人員は約596 万人で対前年比では約22万人増加(3.9%増)しています。救急出動件数、搬送人員とともに過去最多でした。
つまり救急車の出動傾向は年々増加傾向にあるのが現状なのです。
利用者の半数は軽症者
さらにこの平成30年中の救急車による搬送人員の内訳を傷病程度別にみると、このようになっています。
- 軽症(外来診療)が約290万人(48.8%)
- 中等症(入院診療)が約248万人(41.7%)
- 重症(長期入院)が約48万人(8.1%)
つまり救急車の利用者半数は本来、入院などが必要ない軽症者であることが分かります。
安易に呼ぶ人や何度も呼ぶ人が増えた
これらのデータを総合的に見ていくと、救急車を呼んでいる人の半数は入院が必要なく、通院すれば済む程度の病状です。こういった軽症で自力通院も可能なのに、安易に救急車を利用してしまう利用者が増えていることが読み取れます。
さらには場合によっては、利用者が軽症であったとしても、過去に救急車を利用して搬送してもらった経験から、その都度救急車を呼んでしまう人が増加したことも原因として挙げられます。
本当に必要な人が利用できない
こうした安易な救急車の利用増加は、本当に救急車を必要とする人が必要な時に利用できなくなるというトラブルの原因となります。
各自治体などでもこうした救急車の安易な利用はしないよう自粛を求めています。
救急車は重症患者など、一刻も早く医師の診断や処置が必要となる人たちにこそ、最優先に利用されるべき公共のサービスであることを忘れてはいけません。
費用の高額化
さらに救急車の利用増加はそれだけ費用の高額化を招いています。
救急車の一回の出動費用はおよそ45,000円でした。当然その出動回数が増えればその分その値段も増大してしまいます。
こうした状況があり、そもそも救急車の依頼自体を有料化が検討されました。
救急車は本当に必要なときにだけ呼ぼう
救急車の値段は高額です。もちろん本当に緊急の際は迷いなくその出動を要請すべきです。
しかしその判断に迷ったときは、「救急車利用マニュアル」や、東京消防庁が用意している「緊急受診ガイド」が参考にして、救急車を依頼するか冷静に判断しましょう。
救急車や救急医療は限りある私たち納税者にとって限りある資源です。いざというとき、まずは救急車を呼ぶ前に、救急車を呼ぶ緊急性があるかどうか考えてみることが重要なのです。