目次
香典とは
香典の意味って何?
すでにみなさんもご承知の通り、結婚式の「祝い事」で渡す現金を包んだ袋を「御祝儀」と呼びます。そして「香典」も、袋に現金を包むという点では御祝儀と同じです。
しかし香典は葬儀の時に渡すものなので、「不祝儀」と呼びます。祝い事ではないという意味で「不祝儀」です。葬儀の時に香典を渡すのは、葬儀にかかる金銭的負担を分かち合うという意味合いがあります。
その昔は、現金を包んだ香典の文化はなかったようです。当時は香典なしで、葬儀に参列する人々が食べ物や飲み物を持ち合うのが一般的でした。弔問客が香典袋を遺族に渡すようになったのは、「費用」の観点で葬儀を捉える現代的な様式が定着してからのことだと言われています。
香典を渡すタイミングはいつ?
香典はいつ渡せばいいのでしょうか? お葬式には、「お通夜」「葬儀」「告別式」さらにその後には「初七日」とおおまかに分かれています。どのタイミングで弔問するかは、故人と自分の関係性や都合に合わせるとよいでしょう。香典も、弔問する時に渡せば問題はありません。
また、お通夜だけでなく告別式にも参列する場合は、お通夜のタイミングで香典を渡せば、告別式や初七日では必要ありません。香典は一度だけでいいのです。何度も香典を渡すのは、むしろマナー違反です。
香典はあくまでも「不幸」な出来事の時に渡す不祝儀だからです。一度のお葬式で渡す香典は一度だけ。お通夜と告別式の両方で香典を渡すことはないので、よく覚えておきましょう。
香典の金額を変更するのもマナー違反
香典に関する作法の関連で言えば、香典の金額を後から足すのもNGです。
「もうちょっと金額を多くしよう」と思っても、一度香典袋にお金を入れたからには、決して後から金額を変更しないでください。もちろん、追加で香典を渡すのもNGです。香典の「金額を足す」のは、「不幸を重ねる」という意味合いがあるので、非常に失礼な行為とみなされます。
他の弔問客の香典額を知って「もっと香典をはずめばよかったかな……」と不安に思うこともあるかもしれませんが、そんなときでも正々堂々と香典を渡してください。金額よりも気持ちが大切です。
告別式に出席するときの香典袋を買える場所と選び方
香典袋はどこにでも売っている
香典を渡すには、「香典袋」を用意しなくてはなりません。香典袋はコンビニ、スーパー、文具店、100円均一のどこでも購入できます。
香典袋には種類がある
では、香典袋はどんなものを選べばいいのでしょうか? 香典袋は、「水引」(みずひき。袋に飾りつけられているヒモ)の色や結び方によってグレードが異なります。
水引の色が「黒色と白色」や「青色と白色」の場合
これらは一般的な香典袋です。お通夜・葬儀・告別式で使われる香典袋です。
水引が黄色と白色の場合
水引が黄色と白色のものは、関西圏で普及しているタイプです。住んでいる地域によっては見慣れない色だと思います。この香典袋は、法事などで用いる香典袋です。お葬式の際には「黒色と白色」や「青色と白色」のタイプを使いましょう。間違わないように注意してください。
水引が「銀色」の場合
他の香典袋よりも高級感のあるタイプ。実際その通りで、この香典袋は、金額の多い香典を包む際に用いられます。
葬儀が仏式の場合は「御霊前」と書かれた香典袋を選ぼう
香典袋に「御霊前」と書かれている種類があります。もしも参列するお葬式が仏教なら、こちらの香典袋を選びましょう。49日前までは基本的に「御霊前」と書かれた香典袋でOKです。
ただし、宗派によっては「御霊前」がNGとなることもありますので、できればあらかじめ確認しておきましょう。もしも不安なら、後述する「無地の香典袋」を使っても構いません。
キリスト教のお葬式には「御花料」と書かれた香典袋を使う
お葬式が仏教ではない場合も「香典」はマナーとして必要です。その際は、水引の付いた香典袋や「御霊前」と書かれたタイプではなく、のし袋に「御花料」と書かれた香典袋を使います。
お葬式の宗教がわからなくて困った時は無地の香典袋を使おう
訃報を聞いて、お葬式の宗教形態がわからないまま弔問しなければならなくなることもあるかもしれません。そんな時は、無地の香典袋を用意しましょう。これは宗教に関わらず通用する香典袋として扱われているので、神式、仏教、その他の宗教でも問題ありません。
告別式に出席するときの香典袋の書き方と注意点
香典袋の表書きは「薄い墨」を使おう
香典袋に使う筆記具はとても大事です。基本的に香典袋は、「薄墨」を使うことがマナーとされています。書道で使う一般的な“濃い”墨ではなく、薄い墨を使わなけれなりません。香典袋の文化に不慣れな人はしばしば見落としがちのマナーなので、よく覚えておきましょう。
薄い墨には、「弔意」を示す意味が込められています。「涙で墨が薄くなってしまった」ということに由来しているのだそうです。
水引の下に書くべきもの
まずは、香典袋の真ん中(水引の下)に書くべきことがあります。それが「会葬者の姓名」です。「会葬者」とは、弔問に訪れる“遺族以外”の人のことを言います。つまりお葬式に赴くわたしたち自身の名前のことです。
一個人として参列するなら、名前を水引の下側にフルネームでそのまま書いてください。会社の人間として弔問するなら、ハガキと同じように中心部よりやや右側に会社名を書き、中心に自分の名前と役職名を記しましょう。
代行者をたてて香典を渡す時はどう書けばいい?
どうしてもお葬式に参加できず、香典のみを渡したい場合は、代行者をたてて香典を渡してもらう必要があります。その際は、誰の香典かをハッキリとさせるために、水引に自分の名前を書いておきましょう。
代理の人の名前を書く必要はありませんし、その人の香典に自分の金額を入れてはなりません。喪主の人が誰から香典をもらったのか判別できなくなります。
連名で香典を出す時の書き方
連名として香典を渡す場合は、最大3人分の名前を香典袋に書くことができます。これがマナーとして許容される限度です。4人以上の連名で香典を出す場合は、自分たちの所属する何らかの団体名(組織名・会社名など)を書きましょう。代表者がいるなら、団体名に代表者の名前を中心部に書き、「他一同」を左側の下に書けばOKです。
旧姓名を使って香典袋を渡したいケースはどうすればいい?
状況によっては、旧姓名で香典を渡したほうがいい場合もあるでしょう。結婚して変わった苗字を使うと、喪主の人が誰から香典をもらったのかわからなくなってしまいます。
香典袋に記す名前は、基本的に喪主の人たちに合わせて使い分けるようにしてください。もしも故人が、結婚後の自分の苗字を明らかに把握していないような場合は、旧姓名を使用するのがベターです。
夫の代理として妻がお葬式に出席する時はどうする?
旦那さんがどうしても出席できず、夫婦一緒に出席することが叶わない場合もあるでしょう。そういう時は、自分が妻としてお葬式に代理出席するシチュエーションがしばしばあります。その際の香典袋は、夫の名前の左側下に、「内」という字を添え書きしてください。
これで喪主側に妻の代理出席として把握することができます。実際の葬儀に誰が出席したのかという情報は、喪主からすればとても大切ですので、くれぐれも忘れないようにしましょう。
中袋の書き方はどうすればいい?
香典の「中袋」は「中包み」とも呼ばれ、その名の通り、香典袋の中に入っている袋のことです。種類によっては中袋がないケースもありますが、ある場合は必要事項を書く必要があります。
中袋は、「薄墨」ではなく、通常の黒色インクを使います。こちらは、筆でもペンでも大丈夫です。中袋には、香典に包んだ金額と自分の氏名と住所を書きましょう。「住所」は絶対に書いておいてください。喪主の人が「香典返し」する時などに必要な情報です。
ちなみに、中袋に書く金額は、「旧字体(あるいは「大字」)の漢数字」を用いましょう。くれぐれも、算用数字や普通の漢数字を使わないように。参考までに、一例を紹介します。
- 壱(いち)
- 弐(に)
- 参(さん)
- 肆(よん)
- 伍(ご)
- 陸(ろく)
- 質(しち)
- 捌(はち)
- 玖(きゅう)
- 拾(じゅう)
告別式に出席するときの香典袋へのお札の入れ方と注意点
昔からの通例では「新札」はNG
香典では、新札を使うのはマナー違反という考え方があります。「急な不幸な知らせのために、新札を用意する余裕がなかった」ということを示す意味があると言われています。
しかし現在では、新札でもマナー違反扱いされなくなってきているようです。ATMが街のそこら中にあり、新札が手に入りやすい環境になっていることが理由なのでしょう。
ただし、格式や伝統を重んじるタイプの喪主ならば、旧来のマナーを意識したほうがいいかもしれません。旧札か新札かについては、ケースバイケースで対応しましょう。
お札の向きはキチンと揃えて香典袋に入れる
当たり前といえば当たり前ですが、雑にお札を入れると相手に失礼なので、香典袋に入れるお札の向きは揃えておきましょう。あわてて弔問の準備をしていると何かの間違いでお札の向きが不揃いになっているかもしれませんので、香典袋を閉じる前に一度再確認しておくことをオススメします。
そこまで厳格に決められているというわけではないのですが、不祝儀の場合は、お札を裏にして包むのが一般的なやり方として知られています。つまり、金額が見えないようにすればいいのです。いつの頃からそう言われ始めたのかはわかりませんが、お金の表面に書かれている肖像を裏にすることで、「顔を伏せる」という意味を持たせているようです。
香典の相場
香典の相場はいくらになるのでしょうか? それは自分との関係性や付き合いによっていくらか変わっていきます。以下では、香典の相場についてまとめていきましょう。
自分の親に香典を包むケース
だいたい5万~10万円が香典の相場です。自分が喪主を務める場合は香典なしで大丈夫ですが、自分以外の人が務める際は、香典を包んでおきましょう。
祖父母への香典相場
すでに自分が家庭を持っているなら、祖父母のお葬式には香典を包みましょう。相場は1万円~3万円ほどだと言われています。配偶者の祖父母の場合も同額でOKです。
叔父や叔母に包む香典額
だいたい1万円~2万円が妥当な相場だと言われています。遠戚の場合は、1万円が妥当です。
姉妹や兄妹への香典相場
だいたい3万円~5万円ほどです。配偶者への姉妹兄妹に包む香典も同額にしてください。
配偶者の親が亡くなった時の香典相場
5万~10万円が相場です。自分の肉親と差をつけてはならないので、配偶者の親と自分の親の香典額は必ず同じにしましょう。
職場の上司に包む香典額の相場
5千円~1万円がだいたいの相場ですが、会社で香典額を決めているかもしれませんので、相談したほうがいいですね。一緒に弔問する同僚にたずねてみましょう。また、上司の家族に香典を渡す際は五千円が相場だと言われています。ちなみに元・上司だった方への香典は5千円が妥当です。
部下に香典を包む相場
5千円が妥当です。部下の家族の場合は3千円~5千円がよいでしょう。
会社の同僚に香典を包む時の金額は?
妥当な相場は5千円です。
知り合いに包む香典額は?
5千円~1万円が相場です。仲の良かった友人に対しては、1万円がよいでしょう。
近隣住民に香典を渡す場合の相場は?
5千円が妥当な相場だと言われています。町内会グループが香典額を決めることもあるので、可能なら町内会長の人に香典額を相談することをオススメします。
香典を告別式に持参するときのマナー
結婚式の御祝儀を渡す場合と同様に、香典袋は「袱紗(ふくさ)」と呼ばれる袋に入れて持参しましょう。そのまま香典袋をポケットやカバンに入れるのは行儀が悪いので、くれぐれも注意してください。香典袋を包む袱紗(ふくさ)は、暗めの色を選びましょう。
香典袋を袱紗(ふくさ)に包む時は、袱紗をひし形に広げ、中央に香典袋を置き、右→下→上の順番に丁寧に折りたたんでください。その後、左側部分の端を折ればOKです。
告別式での香典の渡し方
いつ香典を渡せばいいのでしょうか? 香典を渡す適切なタイミングは、受付の時です。渡す時は、お悔やみの言葉を添えて袱紗(ふくさ)から香典袋を取り出し、受付の方に渡しましょう。
香典を辞退された場合
近年では家族葬が増えてきています。家族葬の場合は、親族内でお葬式を済ませるので、香典を辞退するケースがしばしばあります。そんな時は、相手側の意向を直接確かめてから香典を取り下げるようにしましょう。最初から香典を持って行かないのは失礼ですので、一応用意しておき、相手の香典辞退の意を確認するのがマナーです。
告別式に出席できず香典を郵送する場合
どうしても告別式に出席できない場合は、喪主の「香典返し」のことも考えて、葬儀からだいたい一週間~一ヵ月以内の間に香典を郵送しておきましょう。手段は現金書留でOKです。もちろん郵送する際もちゃんと香典袋に包んでください。香典袋と共にお悔やみの言葉を綴った手紙を参加できなかった理由と一緒に添えておくといいですね。
最後に
香典に関するマナーはとても大切です。冠婚葬祭のマナーは、知っておかないと恥をかいてしまうことがありますので、ぜひこの記事を参考に役立ててください。