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何度も事故が起きるときは「運が悪い」だけではない

同じような場面で事故が重なるとき、たまたまが続いているように見えても、直前には小さなズレが起きやすくなっています。
焦って判断が早まる、確認が短くなる、注意がそれる。こうしたズレが重なるほど、危ない場面に出会う回数が増えていきます。
大切なのは、事故が多いからといって「運転が下手」と決めつけないことです。むしろ運転に慣れている人ほど、いつもの流れで動いてしまい、危険の芽を見逃しやすくなります。
まずは「事故が起きやすい状態」に入りやすくなっていないかを確認することが近道です。
よく事故を起こす人の6つの特徴

ここで紹介するのは性格の話ではなく、事故につながりやすい「状態」や「考え方のクセ」です。いくつも当てはまるほど危険というより、自分が入りやすい状態を一つ見つけることが目的です。
- 出発がギリギリで運転中も気が急く
- スマホやナビの画面に目がいきやすい
- 慣れた道ほど確認が短くなる
- 前の車との距離が近いと感じることがある
1. 焦った状態で運転している
焦りがあると、運転の基準が「安全」から「間に合うか」に寄りやすくなります。
信号、合流、右左折などで、待つより先に進む判断が増えると、ほんの少しの見落としがそのまま事故につながります。
また、焦りは注意の使い方も乱しがちです。今さばきたい一点に意識が集まり、歩行者や自転車、対向車の変化に気づくのが遅れます。
結果としてブレーキやハンドルが後手に回り、「普段なら避けられたかもしれない」が増えていきます。
2. 運転中に気が散りやすい
注意がそれる原因はスマホだけではありません。考え事をしていた、ぼーっとしていた、ナビを見ていた。こうした状態では、危険の発見が遅れやすくなります。
特にやっかいなのは「見ているつもり」が起きやすい点です。前方を向いていても、頭の中は別の処理をしていて、前の車の減速や信号の変化のような「動きの変化」を拾い損ねることがあります。
気づきが遅れるほど、判断も操作も間に合いにくくなります。
3. 相手任せの判断が多い
「相手は止まるはず」「人はいないはず」といっただろう運転が増えると、減速や確認が後回しになりやすくなります。
危険がない前提で動くため、想定外が起きた瞬間に立て直しが効きにくくなります。
交差点では特に影響が出ます。こちらが優先でも、相手の見落としや判断ミスは起こり得ます。それでも「止まるだろう」で進むと、相手のミスを吸収する余白が消え、衝突に直結しやすくなります。
事故が続く人ほど、「自分は大丈夫」の感覚が強くなり、危険の見積もりが甘くなることがあります。
4. 確認を省略しがち
事故が続く人を見ていくと、確認そのものが短くなっていることがあります。
本人は「見た」「分かっている」つもりでも、実際には目線を動かしただけで、状況を整理する前に次の操作へ移ってしまうケースです。
一時停止で完全に止まらず進み出たり、ミラーだけで済ませて目視を省いたりする場面が分かりやすい例です。
この特徴は、通り慣れた道ほど出やすくなります。慣れによる安心感が、「いつも同じだから大丈夫」という思い込みにつながり、確認が作業化します。
結果として、相手の予想外の動きに気づく余地が小さくなり、「見たはずなのに気づかなかった」という感覚が残りやすくなります。
5. 車間距離が安定していない
追突や急ブレーキによる接触が多い人は、前の車との距離が詰まりやすい傾向があります。
前車のスピードに引きずられて距離が近づいたり、流れに合わせようとして無意識に詰めたりすると、反応できる時間が減っていきます。
車間距離は「何メートル空けるか」より、「何秒分の余裕があるか」で考えると安定しやすくなります。前の車が通過した目印を自分の車が通過するまでに、少なくとも2秒以上ある状態が一つの目安です。
余裕があるほど判断や操作の選択肢が増え、小さなミスがそのまま事故になるのを防ぎやすくなります。
6. 体調や疲れを後回しにしている
事故の原因は運転中の行動だけでなく、運転席に座る前の状態にもあります。
睡眠不足や疲労が残ったまま運転すると、注意力や判断力が落ちやすく、危険の発見が遅れがちになります。「少し眠いだけ」「短い距離だから」という判断が積み重なるほど、反応の遅れが事故につながりやすくなります。
長時間の運転では、集中しているつもりでも判断が荒くなりがちです。疲れがある状態では、焦りや確認不足が他の特徴と重なりやすく、リスクが一気に高まります。
事故が多い人ほど、自分のコンディションを過小評価してしまう傾向があります。
事故を減らすために見直したいポイント

事故を防ぐために必要なのは、特別な技術や強い意志ではありません。ここまで見てきた特徴は、日常の中で少しずつ修正できます。
すべてを一度に変える必要はなく、自分に当てはまりやすい点を一つだけ意識することが大切です。
- 出発前に数分の余裕をつくり、焦りを持ち込まない
- 運転中は画面操作や考え事を減らし、前方と周囲に意識を向ける
- 相手のミスも起こり得る前提で、減速や待つ判断を選ぶ
- 車間距離は秒で意識し、詰まりすぎない状態を保つ
- 眠気や疲れを感じたら、無理をせず休憩を入れる
これらは派手な対策ではありませんが、続けることで事故につながりやすい流れを断ち切りやすくなります。
自分の運転を振り返り、「ここだけは直せそう」という一点を見つけることが、事故を繰り返さないための現実的な一歩になります。
事故を減らす近道は「運転」より「状態」を整えること

よく事故を起こす人に共通しているのは、特別に危険な運転をしていることではなく、焦りや思い込み、確認の省略といった「事故が起きやすい状態」に入りやすい点です。
これらは誰にでも起こり得るもので、運転に慣れている人ほど無意識のうちに重なりやすくなります。だからこそ大切なのは、自分を責めることではなく、どの状態に入りやすいかを冷静に把握することです。
すべてを一度に変える必要はありません。時間に少し余裕を持つ、車間距離を意識する、疲れを感じたら休む。こうした小さな調整を重ねることで、事故につながる流れそのものを遠ざけることができます。安全運転は気合ではなく、日常の選び方の積み重ねでつくられていくものです。









