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タイ旅行の前に知っておきたいことは意外と多い

タイの人は基本的に温厚で、旅行者にも親切です。ただ、どんな国でも「大切にしているもの」はあります。タイの場合、それが王室や仏教、そして日常の所作に色濃く表れます。
日本では何気ない行動でも、タイでは「敬意がない」「無作法だ」と受け取られることがあります。反対に、少し気をつけるだけで、相手の表情が柔らかくなる場面も少なくありません。
完璧に守ることより、余計な摩擦を生まない動き方を知っておくほうが現実的です。
タイでやってはいけない12のタブー

ここからは「やってはいけないこと」を12項目に分けてまとめます。細かい作法を覚えるというより、タイで避けたい行動の背景をつかむことが目的です。理由が分かると、同じ種類の場面でも判断がブレにくくなります。
1. 寺院で肩や膝が出る服装をする
寺院は観光の名所である前に、信仰の場です。露出の多い服装は、場の空気にそぐわないだけでなく「神聖さを軽く見ている」と受け取られやすくなります。
特に、有名な寺院や王宮に近い施設では服装の扱いが厳格で、周囲の参拝者にとっては日常の祈りの場所でもあります。旅のテンションのまま入ってしまうと、本人は軽いつもりでも、相手からは“礼を欠いた訪問”に見えやすい点が落とし穴です。
2. 他人の頭に触れる
タイでは頭は特別な部位として扱われやすく、むやみに触れる行為は失礼になりがちです。日本では子どもを可愛がる気持ちで頭をなでることがありますが、同じ感覚で触れると「見下された」「乱暴だ」と感じさせることがあります。本人の意図よりも、相手がどう受け取るかが強く働く場面なので、距離を保つほうが無難です。
3. 足の裏を人や仏像に向ける
体の下にある足は、汚れに近いものとして意識されやすく、足裏を向ける行為は“相手を下に置く”印象を与えます。
椅子に座って足を投げ出したとき、たまたま足裏が人や仏像の方向を向くと、それだけで不快に感じる人もいます。足で物を動かす、足で指し示すといった動きも、同じ理由で避けたほうがよい行動です。
4. 人前で怒鳴る、強い口調で詰める
タイでは人前で相手を追い込む言い方が嫌われやすく、声を荒げるほど状況がこじれやすくなります。こちらは正当な主張のつもりでも、相手は「恥をかかされた」と感じて防御的になり、話が進まなくなることがあります。
特に店員や運転手など、日常のやり取りで感情が出ると、周囲の視線も含めて空気が悪くなりやすいのが特徴です。
5. 指差しで人を呼ぶ
指差しは、タイでは非難や攻撃のニュアンスに寄りやすい動きです。日本では場所を示すだけのつもりでも、相手からすると「責められている」「命令されている」と感じることがあります。
特に、店員や年上の人に向けると印象が悪くなりやすく、こちらの意図が丁寧でも動作のほうが強く伝わってしまいます。言葉で穏やかに話していても、手の動きが強いと台無しになるのが怖いところです。
6. 手のひらを上にして手招きする
日本でよくある「手のひらを上にして指を動かす」呼び方は、タイでは相手を見下す動作に見えることがあります。動物を呼ぶような印象につながる、と言われるのもこのためです。
呼びたいときほど大きな動きになりがちですが、タイではその強さが失礼に直結しやすいので注意が必要です。手招きや合図は、控えめな動きほど安全です。
7. 本堂で靴や帽子を脱がない
寺院の敷地に入ること以上に、礼拝の場に入る所作が重く見られます。建物内で靴を脱ぐのは、空間を清浄に保つという考え方に沿った行動で、参拝者にとっては自然なルールです。
帽子も、外の日差し対策としては問題がなくても、礼拝の場で被ったままだと「場に向き合っていない」と受け取られやすくなります。小さな所作ですが、ここが雑だと、服装が整っていても印象が崩れます。
8. 女性が僧侶に触れる、直接手渡しする
タイの僧侶に対しては、特に距離感が求められます。女性が僧侶の体や衣に触れること、物を直接手渡しすることは、僧侶側の戒律を乱す行為になり得ます。
ここは「好き嫌い」ではなく、僧侶の修行や規律に関わる線引きとして理解されやすい部分です。だからこそ、旅行者が軽い気持ちで近づくと、相手を困らせる結果になってしまいます。
誤解しやすい点ですが、相手を避けるのではなく、相手の立場を守るために距離を取る、という感覚に近いです。
9. 仏像に触れる、登る、ふざけた写真を撮る
タイでは仏像は飾りではなく、信仰の対象として扱われます。観光客の目には撮影スポットに見えても、参拝者にとっては日常の祈りの相手です。
仏像に手を置く、よじ登る、肩を組むように写る、おどけたポーズを取るといった行為は、宗教への敬意が欠けていると受け取られやすくなります。
写真は残っても、場の空気は戻りません。だからこそ、寺院では近づきすぎない意識が大切です。
10. 王室をネタにする(批判、冗談、SNS投稿)
タイでは王室は特別な存在で、敬意を欠く言動は「マナー違反」で終わらない可能性があります。
王室を批判したり、冗談にしたり、揶揄するような内容をSNSに投稿や共有する行為は、法律上の問題になり得ます。旅行者であっても例外ではなく、軽い気持ちの発言が後から大きな火種になることもあります。
その場で反応が薄くても、周囲の全員が同じ温度で受け止めているとは限りません。王室の話題は、触れないのが安全側です。
11. 紙幣や硬貨を雑に扱う(足で止める等)
タイの通貨には国王の肖像があり、お金の扱い方がそのまま敬意の有無として見られやすい面があります。落ちた硬貨を足で踏んで止めると、結果的に肖像を踏む形になり、強い無礼と受け取られることがあります。
破る、投げる、踏むといった動作は、本人が意識していなくても不快感につながりやすい行為です。お金はただの道具ではなく、国の象徴と結びついているという感覚が背景にあります。
12. 電子タバコを持ち込む、使う
電子タバコは、文化の違いというより法律面のリスクが大きい項目です。観光での短期滞在でも例外ではなく、所持や使用が問題になる可能性があります。
持っているだけでトラブルにつながることがあるため、タイでは最初から持ち込まない判断が安全です。
タイで守るべきマナー

タブーをすべて暗記するのは大変ですが、現地で困りにくい「型」を持っておくと安心です。
ポイントは、相手を立てる動きに寄せること。言葉よりも所作が先に伝わる場面が多いので、控えめに振る舞うほど失敗が減ります。
タイには、胸の前で手を合わせて軽く頭を下げる挨拶「ワイ」があります。握手より一般的な場面もあり、旅の中で目にする機会が多い動きです。
ワイは相手に合わせて小さく返す
ワイは、相手への敬意を示す挨拶です。深くやり過ぎるより、相手の雰囲気に合わせて小さく返すほうが自然に見えます。店員やスタッフに対しては、軽い会釈でも失礼になりにくく、笑顔で返すだけでも印象がよくなります。
呼び方や合図は控えめにする
人を呼ぶときや何かを示すときは、動作を小さくして丁寧に見せるほうがうまくいきます。強いジェスチャーは、本人が思う以上に攻撃的に見えることがあります。
手のひら全体で示す、距離を詰めすぎない、といった控えめさが安全です。
公共の場では周りの動きをよく見る
寺院や駅、映画館など、ルールや慣習がある場所では、周囲の人の動きがいちばん分かりやすい手がかりになります。迷ったときに周りに合わせるだけで、不要な目立ち方を避けられます。
タイでは空気を乱さない振る舞いが好まれやすく、落ち着いた態度が結果的に自分を守ります。
まとめ

タイでやってはいけないことは、細かな作法を競う話ではなく、相手が大切にしている領域に土足で踏み込まないための線引きです。
王室や宗教に関わる話題、寺院でのふるまい、頭と足の扱いは、知らないままだと誤解が生まれやすいポイントになります。迷ったときは強く出るより、動きを小さくして周囲に合わせるほうが安全です。礼儀は知識よりも、落ち着いた所作で伝わります。









