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スーパーのししゃもは“偽物”なの?

スーパーの魚売り場に並ぶししゃも。その多くは「カラフトシシャモ(英名:カペリン)」という別の魚です。
見た目はそっくりですが、実は本来の「ししゃも(標準和名:シシャモ)」とは全くの別種。
とはいえ、これを「偽物」と呼ぶのは正しくありません。カペリンは日本で長年“ししゃも”として食卓に定着してきた代用魚です。
この代用文化が広まったのは1970年代。本物のししゃもの漁獲量が減り、安定した供給が難しくなったためです。現在では、スーパーや居酒屋で提供されるししゃもの約9割以上がカペリンとなっています。
ししゃもはなんの魚?正式名称と正体

本物のししゃもは「シシャモ」という名前で、キュウリウオ科シシャモ属の日本固有種です。
主に北海道太平洋沿岸の一部、鵡川(むかわ)や十勝などの河川に生息し、秋になると産卵のために川を遡上します。漁期はわずか1か月ほど。漁獲量は非常に少なく、高級魚として扱われています。
一方、カペリン(カラフトシシャモ)は同じキュウリウオ科でもカラフトシシャモ属に分類される別の魚です。北太平洋や北大西洋、ノルウェー・アイスランドなど寒冷な海に広く分布し、産卵も海岸付近で行われます。そのため、漁獲量が安定しており、1年を通して流通するのが特徴です。
ししゃもとカペリンの見分け方

見た目が似ているため、店頭ではどちらが本物か判断しにくいものです。最も確実な方法は、ラベル表示の確認です。食品表示法により、魚の正式名称と原産地を明記することが義務づけられています。
ラベルの違い
- 「カラフトシシャモ」「カペリン」「アイスランド産」「ノルウェー産」などと表示 → カペリン
- 「本ししゃも」「北海道産」「鵡川産」などと表示 → 本物のししゃもである可能性が高い
また、価格と見た目からもおおよその判断ができます。
見分けのポイント
- 価格の差:本ししゃもは10尾で2000〜3000円前後、カペリンは10尾で300円前後
- 形の違い:本ししゃもはふっくら丸みがあり、鱗が大きく目立つ
- 色味の違い:本ししゃもは背中が黄みがかり、腹は銀白色〜赤みを帯びる
- 体型の違い:カペリンは青みが強く、細長くスマートな印象
このように、価格・産地表示・外見の3点を押さえれば、見分けはそれほど難しくありません。
ししゃもとカペリンの味の違い

味と食感にも違いがあります。本ししゃもは脂がしっかり乗り、身がやわらかく香ばしいのが特徴です。焼くと香りに厚みがあり、魚本来の旨味を感じられます。
一方のカペリンは淡白でさっぱりとした味わいで、卵を楽しむ食感重視の魚です。卵の皮がやや厚く、「プチプチ」ではなく「ブリブリ」とした歯ごたえがあります。
本ししゃもは“身の旨味を楽しむ魚”、カペリンは“卵の食感を味わう魚”と言えるでしょう。
なぜスーパーではカペリンが主流なのか

本物のししゃもは、北海道太平洋沿岸の限られた地域でしか獲れません。漁期も10〜11月の短い期間だけで、年間の漁獲量は200トン前後とごくわずかです。
一方、カペリンは北極海や北大西洋などの寒冷な海域で大量に漁獲でき、1年を通して安定供給が可能です。このため、1970年代から日本に輸入され、ししゃもの代わりとして広まりました。
安定した価格と入手のしやすさから、家庭や飲食店で定番の魚として定着したのです。現在、スーパーで販売される“ししゃも”のほとんどは、このカペリンです。
子持ちししゃもは“偽物”なの?

スーパーで見かける「子持ちししゃも」も、実はカペリンであることがほとんどです。メスのカペリンは卵を多く抱えるため、子持ち商品として人気があります。
本物のししゃもの卵は粒が細かく、舌ざわりがなめらかで上品な味わい。一方、カペリンの卵は皮が厚く、弾けるような強い食感が特徴です。
両者は味の方向性が異なるだけで、どちらも安全でおいしく食べられます。 「偽物」ではなく、日本の食文化として根付いた“代用魚”と考えるのが正しい理解です。
本物のししゃもを食べたいときの探し方

本物のししゃもは限られた時期・地域でしか流通しませんが、いくつかの方法で購入することができます。
- 北海道の高級スーパーや百貨店で秋に取り扱われる
- 北海道の漁協・専門通販サイトで予約購入できる
- ふるさと納税の返礼品としても取り扱いがある
購入する際は「本ししゃも」「北海道産」「鵡川産」などの表示を確認するのが確実です。価格は高めですが、身の旨味と香ばしさ、そして季節の味わいを存分に楽しめます。
まとめ

スーパーのししゃもは、ほとんどが「カラフトシシャモ(カペリン)」という別の魚です。見た目はそっくりですが、本物のししゃもは北海道のごく一部でしか獲れない希少な魚。
カペリンは安定した供給ができるため、私たちの食卓に定着しました。本物を味わいたいなら、ラベルに書かれた原産地や名称を確認してみましょう。
ししゃもの“偽物”騒動の裏には、代用魚という日本独自の食文化が息づいています。









