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お寿司屋さんで恥をかかないために
「お寿司は好きだけど、格式のあるお店に行くと少し緊張する…」そんな経験はありませんか? 回転寿司なら気軽に楽しめても、カウンターで職人が目の前で握るお寿司屋さんに行くとなると、「マナーを知らなくて失礼にならないだろうか?」と不安になる人も多いはずです。
実は、お寿司屋さんには独自のマナーが存在します。それは単なるルールではなく、お寿司をより美味しく食べるための知恵や、職人への敬意を表す所作でもあります。知らずにやってしまうNG行動を避ければ、お寿司をもっとスマートに、そして自信を持って楽しむことができるでしょう。
では、お寿司屋さんで恥をかかないために、気をつけるべきポイントを確認していきましょう。
お寿司屋さんでやりがちな10のNGマナー
お寿司屋さんには、ついやってしまいがちなNGマナーがいくつかあります。普段は何気なくやっていることでも、実は職人や周囲の人にとって好ましくない行動かもしれません。
ここでは、お寿司をもっと美味しく、気持ちよく楽しむために知っておきたいNGマナーを紹介します。
1. シャリに醤油をつける
お寿司を食べるとき、醤油の小皿にシャリをつけてしまったことはありませんか? これは、やってしまいがちなNG行動のひとつです。
シャリは醤油を吸いやすく、一度染み込むとボロボロと崩れやすくなります。さらに、小皿にシャリが崩れ落ちると見た目も悪くなり、せっかくの美しいお寿司が台無しになってしまいます。
では、正しい醤油のつけ方はどうすればいいのでしょうか? ポイントは「ネタの先端に少量つける」こと。お寿司を横に倒して、ネタの端を醤油につけるようにすれば、バランスよく味わえます。また、軍艦巻きのように醤油をつけにくいものは、ガリを使って醤油を軽く塗るとスマートです。
「シャリに醤油をつける」のは、ちょっとしたことのように見えますが、味や食べ方に大きく影響します。ぜひ意識してみてください。
2. ガリも手で食べる
お寿司は手で食べてもいいとされていますが、だからといって「ガリ」も手で食べていいわけではありません。実はこれも、お寿司屋さんでは避けるべき行動のひとつです。
ガリは、お寿司を食べる合間に口の中をさっぱりさせるためのもの。お寿司の味を邪魔しないよう、適量をお箸で取って食べるのが正式なマナーです。
また、ガリにはもうひとつ役割があります。醤油をつける際、軍艦巻きなど直接醤油をつけにくいものには、ガリに醤油をつけ、それを軽くネタの上に乗せる方法があります。これは職人も推奨する食べ方のひとつです。
「お寿司は手でOKだけど、ガリはお箸で」というのを意識すると、よりスマートに食事を楽しめるでしょう。
3. 醤油にわさびを溶く
お刺身を食べるとき、つい「醤油にわさびを溶いて食べる」という人は多いのではないでしょうか? しかし、お寿司屋さんではこの行為はNGとされています。
お寿司のわさびは、職人がネタごとに適切な量を調整して握っています。醤油にわさびを溶いてしまうと、せっかくのバランスが崩れ、風味も均一になってしまいます。本来、わさびは「ツンと鼻に抜ける香り」が魅力ですが、醤油に溶くと辛味が強くなりすぎてしまうのです。
また、ちらし寿司でも「わさび醤油をかける」のはマナー違反とされています。ちらし寿司を食べるときは、具材をひとつずつ箸で取って、少し醤油をつけながら食べるのが正しい作法です。
「醤油にわさびを溶く」行為は、回転寿司などではよく見かけますが、正式なお寿司屋さんでは避けたほうがよいでしょう。
4. ネタだけを食べてシャリを残す
お寿司を食べるとき、「ちょっとお腹がいっぱいだから」とシャリを残してしまったことはありませんか? または、糖質を気にしてシャリを食べない人もいるかもしれません。しかし、ネタだけ食べてシャリを残すのは、お寿司屋さんではNGとされています。
そもそも、お寿司はネタとシャリのバランスを考えて作られています。職人は「このネタにはこの量のシャリがちょうどいい」という計算をして握っているのです。そのシャリを残してしまうと、味のバランスが崩れるだけでなく、職人の気持ちも台無しになってしまいます。
また、シャリを残すことはフードロスの観点からも問題視されています。食べきれないほど注文してしまった場合は、「最初からシャリを小さめにしてもらう」などの方法をとるとよいでしょう。職人に「シャリ小さめでお願いします」と伝えれば、快く対応してくれるお店が多いです。
お寿司はネタとシャリがあってこそ完成するもの。せっかくの美味しいお寿司を、ベストなバランスで味わいましょう。
5. 職人にシャリ抜きやネタの変更など無理な注文をする
お寿司屋さんに行くと、メニューにない食べ方をお願いしたくなることがあるかもしれません。しかし、「シャリ抜きで!」「このネタとあのネタを組み合わせて!」といった極端な注文は、職人にとって負担になりがちです。
もちろん、アレルギーや苦手な食材がある場合は、遠慮せずに伝えても問題ありません。しかし、特に理由がないのに独自のアレンジを求めるのは控えたほうがよいでしょう。寿司は、職人が素材や調理法を吟味し、最も美味しく食べられる形で提供するもの。自分好みに変えてしまうと、本来の味わいが損なわれてしまいます。
例えば、「シャリ抜き」を頼むと、ネタだけ食べることになり、寿司の本質が変わってしまいます。また、「ウニとマグロを一緒に握ってほしい」といった独自の組み合わせを要求すると、味のバランスが崩れてしまうこともあります。
どうしても特別な注文をしたい場合は、「こういう食べ方はできますか?」と相談する姿勢を持つとよいでしょう。職人とコミュニケーションをとりながら、最適な形で楽しむのがスマートです。
6. おまかせで注文したのに細かくネタの変更を要求する
「おまかせでお願いします」と注文したのに、「次はマグロにしてほしい」「イカは苦手だから別のものにして」などと細かく指示を出していませんか? 実はこれも、寿司屋でやりがちなNG行為のひとつです。
「おまかせ」とは、職人がその日の仕入れ状況や旬の食材を考慮し、最も美味しい組み合わせを提供するスタイルです。細かい注文をしてしまうと、おまかせの意味がなくなってしまいます。
もちろん、苦手な食材やアレルギーがある場合は、最初に伝えておけば問題ありません。しかし、注文を受けた職人は「この人のために一番美味しいものを出そう」と考えて握っています。その流れを途中で止めてしまうのは、少し失礼にあたることも。
おまかせの醍醐味は、普段自分では選ばないネタにも出会えること。「今日はどんな寿司が楽しめるかな?」という気持ちで、職人の選択を信じてみましょう。
7. 寿司に直接醤油をかける
お寿司を食べるとき、醤油をつけるのが面倒だからと、ネタの上から直接醤油をかけてしまうことはありませんか? これは、お寿司屋さんでは避けるべき行為のひとつです。
職人は、ネタごとに最適な味付けを考えて握っています。最初から醤油が塗られているものもあれば、塩や柑橘系の風味を活かしたものもあります。そこにさらに醤油をかけると、せっかくの繊細な味が台無しになってしまうのです。
また、醤油を直接かけると、シャリに染み込みすぎてしまい、食感が損なわれることもあります。正しい醤油のつけ方は、お寿司を横に倒し、ネタの端を軽く醤油につけること。軍艦巻きやいくら寿司などは、ガリを使って醤油を少し塗ると、上手に味を調整できます。
せっかくの美味しいお寿司を、職人の意図通りに味わうためにも、醤油の扱いには気をつけましょう。
8. 頼む前にいきなり時価の値段を聞く
お寿司屋さんのメニューには、「時価」と書かれたものがあることがあります。時価とは、その日の仕入れ状況によって値段が変動するネタのこと。新鮮なものを提供するため、一定の価格が設定できない場合に使われます。
この時価ネタを注文する際、「これいくらですか?」といきなり聞くのは、少し気をつけたほうがよいでしょう。もちろん、価格を確認するのは悪いことではありません。しかし、寿司屋のカウンターで職人に直接値段を尋ねるのは、店の雰囲気を損ねることもあります。
もし価格が気になる場合は、メニューを見たり、板前さんに「今日のおすすめは?」とさりげなく尋ねるのがスマートな方法です。また、心配な場合は「今日は〇〇円くらいで楽しみたいのですが、おすすめはありますか?」と相談すると、職人も親切に対応してくれるでしょう。
お寿司屋さんでは、料理だけでなく、店の雰囲気や会話も楽しむもの。時価ネタを注文する際も、スマートな対応を心がけると、より気持ちよく食事を楽しめます。
9. 注文もせずに長居する
お寿司屋さんは、基本的に「食べ終わったら席を空ける」のがマナーとされています。しかし、つい会話が弾みすぎて、食後も長く居座ってしまった経験はありませんか?
特にカウンター席がメインのお寿司屋さんでは、お客さんの回転率が重要です。寿司職人は、次のお客様がスムーズに座れるよう、ある程度の時間を意識しながら提供を行っています。そのため、食べ終わった後も注文せずに長く滞在するのは、次のお客様にも職人にも迷惑をかける可能性があります。
もちろん、食事をゆっくり楽しむこと自体は悪いことではありません。しかし、長時間おしゃべりに夢中になりすぎると、お店の雰囲気を乱すことにもつながります。もし、もう少しゆっくりしたい場合は、お茶を追加注文するなど、軽くオーダーをするのがよいでしょう。また、長居する予定があるなら、最初からテーブル席があるお店を選ぶのもひとつの方法です。
お寿司屋さんでは、食事を楽しんだらスマートに退店するのが粋な振る舞い。限られた席を皆で気持ちよく利用できるよう、周囲にも配慮しましょう。
10. 強い香りをまとって来店する
お寿司は、素材本来の香りを楽しむ食事です。そのため、香水や整髪料などの強い香りをまとって来店するのは避けたほうがよいでしょう。
お寿司屋さんのカウンター席は、職人との距離が近く、他のお客様との間隔も比較的狭いことが多いです。そのため、強い香りが漂うと、せっかくの寿司の風味を損ねてしまうだけでなく、周囲の人の食欲を削いでしまうこともあります。
気をつけるべきは、香水だけではありません。以下のような香りも、お寿司屋さんでは控えたほうがよいでしょう。
- 整髪料やスタイリング剤の強い香り
- 衣服に残った柔軟剤や洗剤の香り
- 食後のガムやミントの強い匂い
もし、外出前に香水をつける習慣がある場合は、控えめな量にするか、香りの少ないものを選ぶとよいでしょう。お寿司屋さんでは、「香りを抑えること」も、料理を美味しく味わうためのマナーのひとつです。
お寿司屋さんでスマートに振る舞うコツ
ここまで、お寿司屋さんでやりがちなNGマナーを紹介してきました。では、マナーを意識しつつ、お寿司をもっと楽しむためにはどうすればよいのでしょうか? ここでは、スマートな振る舞い方のポイントを紹介します。
1. 席に着く前に気をつけたいポイント
お寿司屋さんに入店したら、いきなりカウンターに座るのではなく、「空いていますか?」と一言確認するのがスマートです。特に、カウンター席の場合、職人が一人ひとりのタイミングを見ながら握るため、席の流れを考慮して案内していることがあります。
また、コートや大きな荷物をカウンターの後ろに置くのは避け、必要があれば店員さんに預けるか、できるだけコンパクトにまとめましょう。
2. 注文時に知っておくと便利な言葉
お寿司屋さんでは、注文の仕方にもコツがあります。「おまかせ」か「お好み」かを伝えるのはもちろん、職人とのコミュニケーションが円滑になる言葉を知っておくとよいでしょう。
- 「おまかせでお願いします」 → その日一番美味しいものを出してもらう方法
- 「おすすめはありますか?」 → 旬のネタを聞くときに便利
- 「シャリ小さめでお願いします」 → 食べやすくするための調整
注文の際に、少し気をつけるだけで、職人との距離も縮まり、より良い時間を過ごせるでしょう。
3. 職人さんとのコミュニケーションのコツ
カウンター席では、職人との距離が近いため、ちょっとした会話を楽しむことができます。しかし、大声で話したり、他のお客さんの邪魔になるような会話は避けたほうがよいでしょう。
また、食べた感想を伝えるのも、お寿司屋さんならではの楽しみ方のひとつです。「このネタ、美味しかったです!」と一言伝えるだけで、職人も喜び、さらに良いネタを出してくれるかもしれません。
ただし、過度に話しかけすぎるのもNGです。職人は、ひとつひとつの寿司に集中して握っているため、話しかけるタイミングには気をつけましょう。注文を終えたタイミングや、提供がひと段落した瞬間を狙うのがスマートです。
お寿司をもっと美味しく楽しむために
お寿司屋さんには、独自のマナーが存在します。しかし、それは「難しいルール」ではなく、「美味しく食べるための知恵」と考えると、自然と身につけやすくなるでしょう。
今回紹介したNGマナーを意識するだけで、お寿司をもっと美味しく、そして気持ちよく楽しむことができます。せっかくの食事の時間をより良いものにするために、ぜひ今回のポイントを参考にしてみてください。