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遺品整理を始める前に知っておくべきこと
身内が亡くなると、悲しむ間もなく多くの手続きや準備、後片付けに取り掛からなくてはいけません。その中でも遺品整理は、故人との思い出に向き合いながら行う作業であり、心理的にも負担の大きいものです。
生前に故人がエンディングノートなどに残してほしいものや手続きに関する情報を記載していることもありますが、そこまで事前準備している人は少数派です。多くの場合、遺族が手探りで遺品整理を行い、必要に応じて業者を呼んで不要なものを処分するという流れになります。
しかし、遺品の中には後々の手続きに必要なものも紛れ込んでいます。うっかり捨ててしまうと、相続手続きや各種の届け出に支障をきたす可能性があります。そのため、捨ててはいけない遺品を誤って処分しないよう、細心の注意を払う必要があるのです。
遺品整理で捨ててはいけないもの12選
ここでは、遺品整理の際に多くの人が捨てがちな、しかし捨ててはいけないものを12項目にわたってご紹介します。これらのものを誤って処分してしまうと、後々の手続きで必要となったり、最悪の場合、賠償請求されたりする恐れもあるので、十分に注意しましょう。
1. 遺言書
遺言書は、故人の最後の意思を示す重要な文書です。相続に関する事柄や故人の希望が記されており、法的な効力があります。主に以下の3種類があります。
- 公正証書遺言:公証人の面前で作成され、公証役場で保管されます。
- 秘密証書遺言:作成者以外には内容を秘密にしたまま公証人に保管してもらう遺言書です。
- 自筆証書遺言:故人が全文を自筆で書いた遺言書で、自宅や知人に預けていることもあります。
特に自筆証書遺言は見落としやすいので、故人の書類をチェックする際は注意深く探しましょう。遺言書を誤って捨ててしまうと、相続に関するトラブルの原因となる可能性があります。
2. 現金
遺品整理中に見つかった現金は、1円単位から相続税の課税対象となります。そのため、見つけたからといって勝手に持ち出すことは絶対にNGです。現金は以下のような場所に隠されていることがあるので、細心の注意を払って探しましょう。
- 金庫
- タンスの引き出し
- 本の間
- 衣類のポケット
- 布団の中
見つかった現金はすべて封筒などに入れてまとめて保管し、相続手続きの際に申告するようにしましょう。
3. 通帳や印鑑
故人の銀行口座は、死亡が確認されると凍結されます。この凍結を解除し、預金を引き出すためには、通帳や印鑑が必要になります。特に以下のものは重要なので、必ず保管してください。
- 銀行通帳
- キャッシュカード
- 実印
- 印鑑登録証
これらを紛失すると、相続手続きが著しく困難になる可能性があります。
4. 身分を証明するもの
故人の身分証明書や契約書類は、各種サービスの解約や手続きに必要不可欠です。以下のようなものが該当します。
- 運転免許証
- パスポート
- マイナンバーカード
- 健康保険証
- 年金手帳
- 各種契約書(賃貸、保険、不動産関連など)
これらの書類は一箇所にまとめてファイリングし、安全に保管しましょう。
5. 本人の情報が記載されたカード類
クレジットカードや会員カードなど、本人の情報が記載されたカード類も重要です。これらは個人情報保護の観点から、むやみに捨てるのではなく、適切に処分する必要があります。特に注意が必要なのは以下のようなものです。
- クレジットカード
- ポイントカード
- 会員カード
これらのカードは、故人の名義で不正利用されるリスクがあるため、発行元に連絡を取り、適切に解約や停止の手続きを行いましょう。
6. レンタル品
故人が借りていたレンタル品を誤って処分してしまうと、賠償請求される可能性があります。以下のようなものがレンタル品である可能性が高いので、注意が必要です。
- ウォーターサーバー
- WiFiルーター
- 介護用品
- 医療機器
レンタル品には通常、バーコードシールやロゴマークが記載されています。見つけた場合は、レンタル元に連絡を取り、返却の手続きを行いましょう。
7. 有価証券・保険証券
有価証券や保険証券は、現金と同様に重要な資産です。以下のようなものが該当します。
- 株券
- 国債
- 社債
- 生命保険証券
- 損害保険証券
これらは相続の対象となり、相続税の計算にも影響を与えます。見つけた場合は、専門家に相談しながら適切に処理しましょう。
8. ローンの明細や請求書・支払通知書
故人のローン残債や未払いの請求書は、相続人が支払い責任を負う可能性があります。以下のような書類は重要なので、捨てずに保管しましょう。
- 住宅ローンの明細
- クレジットカードの利用明細
- 公共料金の請求書
- 税金の納付書
これらの書類を確認することで、相続する債務の全体像を把握することができます。
9. 仕事関連の資料
故人の仕事に関する資料は、会社への引継ぎや法的手続きに必要となる場合があります。特に以下のような資料は重要です。
- 会社の契約書
- 業務関連の機密文書
- 取引先との連絡記録
これらの資料は一旦保管し、故人が勤めていた会社と相談の上、適切に処理しましょう。
10. 土地の権利書
故人名義の不動産がある場合、その権利書(登記識別情報)は相続手続きで重要な役割を果たします。以下のような書類が該当します。
- 土地・建物の権利書
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産税の納税通知書
これらの書類があれば、相続人間での話し合いがスムーズに進み、不動産に関するトラブルを避けられる可能性が高くなります。
11. 美術品・骨董品、貴金属
一見価値がないように見えるものでも、実は高値で取引される可能性のある美術品や骨董品、貴金属類は慎重に扱う必要があります。以下のようなものが該当します。
- 絵画
- 陶磁器
- 古い着物
- 金銀製品
- 宝石類
これらは専門家に鑑定を依頼し、その価値を確認してから処分を検討しましょう。
12. 鍵
鍵は小さくて見落としやすいですが、重要な書類が入った引き出しや金庫を開けるのに必要不可欠です。以下のような鍵に注意しましょう。
- 自宅の鍵
- 金庫の鍵
- 書類キャビネットの鍵
- 貸金庫の鍵
鍵を紛失すると、開錠に余分な手間と費用がかかってしまう可能性があります。
見落としがちなデジタル遺品
近年、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器に保存された情報も重要な遺品となっています。これらのデジタル遺品には以下のようなものが含まれる可能性があります。
- ネットバンキングの情報
- 電子メールアカウント
- SNSアカウント
- クラウドストレージのデータ
- 暗号資産(仮想通貨)の情報
これらのデータを適切に処理せずに機器を処分してしまうと、個人情報の流出や財産の損失につながる恐れがあります。特にネットバンキングについては、金融機関に連絡を取り、適切な相続手続きを行う必要があります。
また、会社関連のデータが含まれている場合は、故人が勤めていた会社に連絡し、データの取り扱いについて確認することが重要です。
遺品整理では捨てるものと残しておくものを見極めて
遺品整理は、故人との思い出に向き合いながら行う心理的にも負担の大きい作業です。多くの遺品の中から、何を残し何を処分するべきか判断するのは容易ではありません。
本記事で紹介した捨ててはいけないものは、後の手続きなどのために大切に保管しておく必要があります。しかし、これら以外にも、故人にとって思い入れの深かったものや、遺族にとって大切な思い出の品もあるでしょう。それらについては、家族で話し合いながら慎重に判断することが大切です。
遺品整理は難しい作業ですが、丁寧に進めることで、後々のトラブルを防ぎ、スムーズな相続手続きにつながります。迷った際は、専門家や遺品整理業者に相談するのも一つの選択肢です。故人の意思を尊重しつつ、遺族の気持ちにも配慮しながら、適切に遺品を整理していくことが大切です。