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お坊さんがお経を唱えるときに叩く『木魚』
木魚といえば、お坊さんがお経を唱えるときに片手でぽくぽくとリズムよく叩くもの、というイメージを持つ人も多いでしょう。
大きすぎず小さすぎない心地よく優しい音を奏でる木魚に、「一度触れてみたい」と思ったことがある人もいるかもしれません。
木魚とは、魚板と呼ばれる魚の形をした板のことで、梵音具の一種とされています。しかし、木魚を使用しない宗派もあるので、お経を読むときに必ず用意しなければいけないというわけではありません。
どのような意味が?お坊さんが木魚を叩く『4つの理由』
意外と知らない人が多いお坊さんが木魚を叩く理由。木魚を叩く行動には、どのような意味があるのでしょうか。
1.眠気覚まし
木魚を叩きながら音を聞くことにより、お坊さん自身が以下の効果を得られると考えられています。
- お経を読んでいる間、修行中のお坊さんが居眠りをしないようにするため
- お経を読んでいるお坊さんの眠気覚まし
熟練のお坊さんは、お経をすべて暗記しています。それゆえにお経を読んでいると、どうしても眠くなることがあるそうです。
木魚を叩くことによって、お坊さん自身の眠気はもちろん、周囲の人の眠気覚ましにもなるため、木魚を叩いています。
2.お経のリズムを取るため
お経は、一見すると単調なリズムに聞こえますが、お坊さんによって異なることがあります。
- リズムを取るものがないと、お経を読む速さが安定しづらい
- 複数人でお経をあげるときなど、リズムを取るものがあるとスムーズに読みやすい
長いお経はリズムが乱れないよう注意を払うことが重要です。
お坊さんの修行に使われることが多い木魚ですが、故人をしのぶためにお坊さんと一緒にお経をあげるご遺族や知人もいます。そのような時は、木魚のリズムに合わせてお経を読むことで、上手にお経が読みやすくなるでしょう。
3.煩悩をなくすため
木魚の口にあしらわれている珠は、煩悩の珠と呼ばれています。したがって、木魚は叩くことによって「煩悩を吐き出させる」という意味を持っているのです。
煩悩は、どのような人でも少なからず持っているものと考えられています。お経を上げながら木魚を叩くことによって、煩悩を吐き出し、身も心も清める意味があるという話も伝わっています。
4.しっかり修行しているという意思表示
魚は瞬きしないため、「魚のように寝ずに修行に取り組んでいる」という意思表示をしているという説もあります。
「しっかりと修行をしていますよ」と先輩や仏様への報告を行いつつ、修行に取り組む様子を木魚が表しているのです。
魚の形をしている『木魚』…魚が選ばれている理由
木魚が魚の形をしているのには、以下の理由が考えられます。
- 魚は瞬きせず目を見開いているため、お経を読んでいる最中は魚のように目を見開いておくようにという戒め
- 魚は目を開きっぱなしなので、昔は「魚は寝ない生き物」と思われていたため
お坊さんになるためには、厳しい修行を乗り越えなければなりません。お経を唱えることもその一環であり、その修行の様子を仏様や先輩のお坊さんがしっかり見守っています。
眠気や怠けなどに負けないためにも、「木魚のように目を見開いて懸命に取り組むべき」という意味を込めて、先人が開発を行ったと考えられています。
さまざまな理由が込められている『木魚』
いかがでしたか。今回の記事で紹介したように、お坊さんが木魚を叩く理由は、一見シンプルながらも多様で深い意味が込められています。木魚の優しい音は、ただの背景音楽ではなく、修行、集中、煩悩の払い清め、さらには眠気防止といった多くの目的を持っています。
宗派によっては木魚を使わないこともありますが、それもまた仏教の多様性を象徴しています。次にお経を耳にする機会があったら、木魚の音に耳を傾け、そのリズムや意味に思いを馳せてみるのも良いでしょう。それによって、お経の奥深い世界へとさらに近づくことができるかもしれません。