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さつまいもが苦い理由
さつまいもが腐っているわけではないのに食べると苦いと感じる場合、その原因として考えられることは何でしょうか?
それは、灰汁(アク)に含まれる天然由来成分の「ヤラピン」と「クロロゲン酸」によるものです。それらの成分はどのようなものなのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
苦みの原因の1つ「ヤラピン」という成分
さつまいもの苦みの原因のひとつは、「ヤラピン」という成分です。初めて聞いた方も多いと思いますが、ヤラピンとはさつまいもにしか含まれていない栄養成分なのです。
さつまいもをカットすると、切り口の断面から白い液体が出てきて包丁が白くなりますよね。この白い液体が、さつまいも特有の灰汁(アク)の素となるヤラピンです。
切ったさつまいもをしばらく放置していると、ヤラピンが黒ずんできます。実際に、さつまいもの両端にある黒いシミや黒い塊に気付いたことはありませんか?
この黒ずみは、ヤラピンが空気に触れて酸化した症状で食べたときに苦いと感じますが、問題のない成分なので安心して食べられます。
ヤラピンは皮から5㎜以内のところに多く含まれていて、表面の皮が黒くなったり、切った断面に黒い斑点が現れたりしますが、身体に悪い影響がないどころか、胃の粘膜を保護したり腸の働きを活性化させるとして昔から便秘解消の効果が期待されています。
苦みの原因の1つ「クロロゲン酸」という成分
さつまいもの苦みの原因のふたつ目は、クロロゲン酸という成分です。
クロロゲン酸はコーヒーにも含まれるポリフェノールの一種で、さつまいもが黒色や緑色っぽくなってしてしまうのは、この灰汁(アク)が原因なのです。
クロロゲン酸が強く出ているさつまいもは、苦みやえぐみがあり独特の味がします。苦みを楽しむコーヒーと同じ成分が入っているので、さつまいもに苦みがあるのも納得できますよね。
さつまいもの皮の周辺部分に多く存在する栄養成分で毒性はなく、ヤラピンと同じように身体に害を及ぼすことはありません。
さつまいものクロロゲン酸は、抗酸化作用があるので老化防止に効果が期待できるとされ、健康な身体を保つために必要な成分です。切ってから10分くらい水にさらしてから調理すると、黒色や緑色っぽくなるのを抑えることができるので、ぜひ試してみてください。
冷害が原因で苦みが出ることもある
さつまいもを美味しく食べるためには、保存方法も重要なポイントになります。常温保存が適しているため、冷蔵庫のような寒い環境で保存していると苦みが出てしまうことがまれにあるようです。
外気温が高い夏場は、さつまいもが発芽しないように冷蔵庫に入れることもありますが、入れっぱなしにしていると、さつまいもが冷害を起こしてしまいます。
ヤラピンやクロロゲン酸の成分が原因でさつまいもが黒ずんでいるわけではないのに、苦くて美味しくないとしたら、冷害を疑ってみても良いかもしれませんね。
冷害による苦みを起こさないようにするためには、さつまいもを1本ずつ新聞紙にくるんで、風通しの良い環境で常温保存するようにしましょう。
《 ポイント 》
- さつまいもにしか含まれてないヤラピンという栄養成分。
- ポリフェノールの一種クロロゲン酸は苦みを楽しむ珈琲と同じ成分。
- 冷蔵庫のような寒い環境で保存すると苦みが出る。
さつまいもが苦い時の対処法
苦いさつまいもを食べてしまったけど大丈夫なのか?と心配になった方もいたことでしょう。
これまで見てきたように、さつまいもの苦味成分は灰汁(アク)に含まれる天然由来成分なので、人体に害は無く、安心して食べられます。
逆にヤラピンにはデトックス作用があると言われており、皮から5㎜に多く含まれているので皮ごと食べることで効果が得られます。
それを踏まえたうえで、さつまいもを美味しく食べるコツを紹介しましょう。さつまいもが苦いときの対処法は以下の通りです。
美味しく調理する
そのままふかし芋にするとダイレクトに苦みを感じてしまうので、さつまいもの調理法を工夫してみましょう。苦みを解消するおすすめのレシピは、さつまいものポタージュスープ。
黒く変色している部分を取り除いたさつまいもを、茹でてペースト状にします。牛乳で伸ばしたら、お好みに合わせてコンソメ、塩こしょうで味付けしてください。たったこれだけで、苦いさつまいもでも美味しく食べられるように仕上げられるでしょう。
他にも、スイートポテトや芋きんとんなどのスィーツに変身させると、苦みのあるさつまいもでもおいしくいただけます。
《 ポイント 》
- ふかし芋にするとダイレクトに苦いと感じる。
- ポタージュスープやスィーツなど、調理法を工夫する。
さつまいもの苦みを予防する方法
それでは、さつまいもの苦みを予防する方法をいくつか考えてみましょう。
調理前に苦い部分を取り除く
さつまいもが苦い場合、その部分を取り除いてしまうのが最も手っ取り早い方法でしょう。
さつまいもの中で苦みが強いとされている部分は、さつまいもの両端、そして黒い点がある表面、変色がみられるところにあるのが特徴です。
苦いと思われる部分は、調理する前の下ごしらえの段階で、こうした部分を取り除いておきましょう。
アク抜きをする
さつまいもが苦い原因のひとつである灰汁(アク)を、あらかじめ処理することもさつまいもを美味しく食べるための対処法です。
苦みが出やすいさつまいもの両端を切り落として取り除いたら、お好みの大きさにカットしてそれを水にさらすだけで苦みを抑えることができます。
このようにあく抜きはとても簡単で、時間も10分ほどで完了です。ただし、アク抜きをすることによってさつまいもの栄養分まで水に溶けだしてしまいますので、栄養を摂りたい方は、苦くてもそのまま調理した方がよいかもしれませんね。
甘みが強いさつまいもを選ぶ
苦みのあるさつまいもを避けるためには、以下のようなものを選ぶと良いでしょう。
- 安納芋などの甘みの強い品種を選ぶ。
- 表皮に傷がなく、色が鮮やかで艶がある。
- 全体的にふっくらとしている。
- 切り口から黒色の蜜が染み出ている。
《 ポイント 》
- さつまいもの両端、表面の黒い点や変色がある部分を調理前に取り除いておく。
- カットしたさつまいもを水に10分ほどさらしてあく抜きする。
- 安納芋などの甘みの強い品種を選ぶ。
さつまいもが腐っている時の見分け方
さつまいもは苦い味がしても食べられるとお伝えしましたが、もちろん食べない方が良いケースもあります。それはさつまいもが腐っていた場合です。
では腐っているさつまいもの見分け方を一緒に見ていきましょう。
酸っぱいニオイがする
さつまいもから酸っぱい匂いがしたら腐っている可能性が高いので、食べるのを控えましょう。
皮にハリが無い
表面がシワシワになっていてハリが無く、べたつきや粘りがあるものは腐っています。
カビが生えている
白くてふわふわしているカビが生えていたら、切り落とすか処分して食べないようにしましょう。
広い範囲にカビが生えているものは、迷わず一本全てを破棄しなくてはいけませんが、カビが部分的に生えていた場合は、その部分だけ取り除いて食べることができます。
また、黒色や緑色に変色しているのはポリフェノールの一種であるクロロゲン酸が酸化したもので、カビではありません。こちらは腐っているわけではないので食べても大丈夫です。
《 ポイント 》
- 酸っぱい匂いがする。
- 表面がシワシワでハリが無くべたつきや粘りがある。
- 白くてふわふわしているのはカビなので、切り落とすか処分する。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回は、さつまいもの苦みの理由と予防する方法について解説しました。
さつまいもが苦い原因は、ヤラピンとクロロゲン酸という成分だったのですね。さつまいもによっては苦みやえぐみを感じるものにあたることがありますが、心配いりません。
これらの成分は身体に害はなく、便秘解消作用や抗酸化作用など、むしろ身体にとってはうれしい効果が期待できるのです。
最近のさつまいもは、栄養はそのまま残しつつ、苦みは減らすように品種改良されているものが出回り始め、苦みがあるものに当たることは減りつつあるようです。
それでもさつまいもによっては苦みやえぐみを感じるものもありますので、それが気になる人は、取り除いたりアク抜きをしたり、調理法を工夫してみてくださいね。
「成分のせい」なのか、それとも「腐っているせい」なのかをしっかり見極めてから、さつまいもを美味しくいただきましょう!