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打ち水は逆効果になってしまうこともある
打ち水が逆効果になることがあるのをご存じですか?
「打ち水」は、道や庭先に水をまいて涼を得る対策として昔から親しまれてきた夏の風物詩です。近年、40度近くにもなる異常な暑さが続く日本の夏は、熱中症で倒れる人も珍しくありません。特に東京や大阪など高層ビルが立ち並ぶ大都市圏は、土地の大半がコンクリートやアスファルトで覆われています。
そのため、その地域全体に熱がこもってしまう他、エアコンをフル稼働させる悪循環によってヒートアイランド現象が発生しています。この状態を少しでも緩和するために、空気を冷やすべく行われているのが「打ち水」です。
ところが、太陽が照りつけ熱くなったひなたのコンクリートやアスファルトに、打ち水程度の対策が果たして効果を発揮できるのでしょうか?
気温が上昇しない時間帯に打ち水をすると、風の流れによってはなんとなく涼しさを感じることができるのですが、気温の高い日中に打ち水をすると、むしろ逆効果になってしまいます。
昼間の気温が高い分、まいた水がすぐに蒸発してしまうので、気化熱によって地表の熱を奪う効果はそれほど期待できないのです。しかもそれだけではなく、まいた打ち水が蒸発すると湿度がより高まりますので、逆効果でよけい蒸し暑くなり、かえって暑さを感じるようになってしまいます。
このようなことから、昼間の気温が高い時間帯に行うアスファルトやコンクリートへの打ち水は、ほとんど効果がないどころが、逆効果になってしまうと言われています。
どちらかというと、大都市圏での打ち水は気温を下げるためではなく、おもてなしのために水をまいて砂ぼこりがたたないようにしたり、お清めの意味合いの方が大きいのではないでしょうか。
《 ポイント 》
- 打ち水が蒸発すれば湿度が上がってよけい蒸し暑さを感じるので逆効果。
- 昼間の気温が高い時間帯の打ち水は、ほとんど効果がないか逆効果。
打ち水で涼しくなる仕組み
打ち水の原理とは気化熱によるもの
打ち水で逆効果になるのをさければ、涼しくなると言われているので仕組みを理解しておくと、効果的な打ち水のやり方がわかります。打ち水は地面にまいた水が蒸発して、液体から気体に変わるときの地面の熱を利用して温度を下げます。
これを「気化熱」と言いますが、地面の温度が下がることで、地面から上がってくる空気の温度も下がり、結果、体感温度が下がるという仕組みです。打ち水としてまかれた水が、温まった地表周りの空気によって蒸発する際、気化熱を発生させて地表の熱を奪うという原理です。
私たちは運動や入浴などによって体温が上がると、汗をかくことで体温を下げますが、その汗が蒸発する時に肌表面の熱を奪っていく・・・これが気化熱なのです。気温がそれほど上がらない時間帯に打ち水を行うと、水による冷たさが一時的に周囲の空気を冷やす感じがしますよね。
水をまいた場所の気圧が上がり、空気が流れることで風が生まれる効果も期待できるかもしれませんね。
打ち水の本当の意味が誤解されている
そもそも打ち水とは何でしょうか。涼を得る夏の風物詩の一つである打ち水の歴史は古く、神様が通る道を清めるという慣わしから始まったと言われています。それが、茶の湯の作法のひとつとして行われるようになりました。
浮世絵などにも描かれているように、本格的に広まったのは江戸時代に入ってからで、涼をとる手段としてだけでなく、玄関先や道に水を撒いて土ぼこりを鎮め、お清め(場を浄化する)をしたりと、訪問客を招く時のおもてなしの意味もあったようです。
ところで、湿気が多いと同じ温度でも暑く感じますよね。打ち水をまくと空気中の湿度は上がりますが、体感温度を下げる効果がないわけではありません。打ち水の湿度による体感温度の上昇はとても小さいものなので、気になるほどの不快感にはつながりません。
それよりも、地面の温度が下がることで周りの温度も下がるということの方が体感温度に効果があるので、打ち水をした方が多少暑さは和らぐでしょう。だからと言って、「気温を下げる」という効果を盲目的に信じ、猛暑に打ち水をまき続けることは効率的でありません。
《 ポイント 》
- 気化熱によって地面から上がってくる空気の温度が下がる。
- 打ち水をした場所の気圧が上がって風が生まれる効果が期待できる。
効果的に打ち水をするには時間帯が重要!
打ち水の逆効果をさける正しい時間帯は特に決まっているわけではありませんが、涼しさを感じる効果が期待できるという面では、ふさわしい時間帯があります。
打ち水をするのに効果的な時間帯と思われるのは、以下のように気温が上がりきっていない「朝」と、気温が下がり始めた「夕方」といわれます。
- 朝7〜9時ごろの気温が上がる前の朝の早い時間帯
- 夕方16~18時ごろの気温が落ち始めた夕方の時間帯
とはいうものの、打ち水の効果はクーラーなどに比べるととても小さなものです。昼間は地面がかなり熱くなっているため、まいた水がすぐに蒸発してしまい、大量に何度も水をまく必要があり効率的とはいえません。
じゃぶじゃぶに水をまくのでしたら全く効果がないわけではありませんが、猛暑の時間帯にわざわざ外に出て、打ち水をしてまで気温を下げるよりは、クーラーのある室内で涼んでいた方が却ってい得策なのではないでしょうか。
《 ポイント 》
- 気温が上がりきっていない「朝」と、気温が下がりはじめた「夕方」。
- 猛暑の時間帯に外に出るより室内にいて涼んでいる方が得策。
打ち水の正しいやり方
打ち水はやり方を間違えてしまうと、かえって逆効果になってしまいます。正しいやり方と注意点を学んでおきましょう。
水をまく場所
多かれ少なかれ、どんな場所でも打ち水の効果はあります。気温がまだ上がっていない朝と、気温が下がる夕方の時間帯であれば、アスファルトやコンクリートの地面であっても多少の効果は期待できます。
また、水をまくことでアスファルトやコンクリートの表面の色が濡れた色に変わるので、涼しげな印象を与えるでしょう。一方で、保湿力が高い「芝生」や「土」の地面は、一度吸い込んだ水を少しずつ蒸発させるので、打ち水の効果が長く続きます。
庭の芝生や植物への水まきと同じ作業になりますが、植物は地表から出ている部分で蒸散活動を行っているので、その効果がより高まります。
ちなみに、一度に大量の水をまくよりも、回数を何回かに分けて行った方が効果を発揮するので、できれば一日に複数回打ち水を行うのが理想的でしょう。
打ち水の正しいやり方
打ち水を行う時間帯については先ほどお伝えしたとおりですが、気温がそれほど高くない朝、もしくは夕方の時間帯に行うようにします。空気が温まってないうちにまいておくと、冷たい水が長い時間留まるので、涼しさを感じやすくなります。
ところで、夏の暑い日、扇風機の風があるだけで、気温は変わらなくても涼しく感じますよね。ということは、風があるとより一層効果を発揮するといえるでしょう。
また、ご家庭の場合、お風呂やシャワーの残り水、台所のすすぎの残り水、子ども用プールの水などの二次利用水をたっぷりとまくのも節約にも繋がりますのでおすすめです。
打ち水で使う道具
桶に水を入れて、ひしゃくでまいていた昔の懐かしい光景が目に浮かびますが、土や庭に水をまけばよいだけなので、道具は特に問いません。
ガーデニングをしている方なら、普段使用しているジョウロを使ってもいいですし、空のペットボトルに水を入れてまくなど、道具にこだわる必要はないので手軽に始められるでしょう。
また、庭先や玄関に蛇口があるご家庭でしたら、ホースが一番手っ取り早いですし、バケツを利用する方法もあります。折りたたみができるタイプのバケツだと収納場所で悩む必要がなく便利です。
《 ポイント 》
- 保湿力が高い「芝生」や「土」の地面は打ち水の効果が長く続く。
- 一度に大量の水をまくよりも、一日に複数回打ち水を行うのがよい。
- 道具にこだわらずにバケツ、ジョウロ、ペットボトルなどで手軽に始められる。
最後に
今回は、打ち水の逆効果や、正しいやり方、その効果や原理、必要な道具についてお伝えしました。打ち水は、比較的涼しい朝や夕方などの時間帯に、植物へ水やりするように土や庭にまくと効果が得られます。
その一方で、日中の気温が高い時間帯に、アスファルトやコンクリートに水をまく打ち水は逆効果なんですね。湿度が上がってかえって蒸し暑さを感じる悪循環が生じてしまうので、できるだけ涼しくなるよう効果的な時間帯や場所に行うようにしましょう。
また、打ち水を行う時は、専用の道具を揃える必要はありません。ジョウロやバケツ、ホースなどが自宅になくても、空になったペットボトルを使って水をまけばよいので、今日からすぐに始めることができます。打ち水をすることで涼しくなる理由には、「気化熱」によるものと、「水を撒くという行為」によるものが考えられます。
例えば、「風鈴の音」や「浴衣姿」と同様に、水の音を聞いたり水をまいたりすることで、より一層涼しげな気分になれるものです。涼しくなる効果的なやり方をお分かりいただけたからには、この夏は正しいやり方で打ち水をして涼しく過ごしてみましょう。