海外で水道水が飲めない国はなぜ多い?そのまま飲める国はどのくらいある?

海外では水道水をそのまま飲めない国が大半です。2024年11月時点の公的整理では、そのまま飲める国は日本を含む9カ国とされています。ただし、参照時点によって数字はぶれます。氷や歯磨きの注意点、日本との違い、失敗しにくい飲み水の選び方まで整理して解説します。

海外では「水道水=そのまま飲む水」ではない

日本では当たり前のように蛇口の水を飲みますが、一歩国外へ出ればその常識は通用しません。多くの国や地域にとって、水道水はあくまで「生活を支えるための水」という位置づけです。

飲み水は買うのが当たり前の国も多い

国や地域によっては、水道水を生活用水として使い、飲み水は市販のボトル水などで別に確保するのが普通です。

WHO(世界保健機関)の2022年時点のデータでは、世界人口の27%にあたる22億人が「安全に管理された飲み水」を利用できていないという実態が示されています。

日本のように、家庭の蛇口から安定して飲み水が得られる環境は、世界では決して当たり前ではなく、飲み水は「対価を払って手に入れるもの」という認識がグローバルスタンダードといえます。

先進国でも地域差がある

先進国であっても、国全体で一律に同じ水事情とは限りません。

国土が広い国では地域によって水源が異なり、都市部と地方、あるいは建物の設備の老朽化具合によっても水の質は変わります。

「先進国だから大丈夫」と国名だけで判断せず、滞在するエリアや建物ごとに情報を確認する姿勢が大切です。

特に歴史ある街並みでは、浄水場が最新でも家庭までの配管が古いために、そのままの飲用を控えるよう推奨されているケースも少なくありません。

現地の人が飲んでいても旅行者は油断しない

現地の人が問題なく水道水を飲んでいても、旅行者は安易に真似をしないほうが賢明です。旅行者は普段と異なる水質や衛生環境にさらされると、体が対応できず体調を崩すことがあります。

特に水の成分バランスや殺菌の状態が日本の軟水とは大きく異なるため、現地の習慣をそのまま取り入れることは、デリケートな日本人の胃腸に過度な負担をかけるリスクにつながります。

「郷に入れば郷に従う」のが正解とは限らないのが、海外の水事情の難しさです。

水道水をそのまま飲める国はどのくらいある?

直近の公的整理では、日本を含む9カ国とされています。ただし、2022年時点の公的整理では11カ国とされており、参照時点や整理方法によって数字はぶれる点は知っておく必要があります。

直近の公的整理では9カ国

2024年11月時点の国土交通省の資料によれば、水道水をそのまま飲める国は日本を含む9カ国のみと整理されています。

世界には190カ国以上の国がありますが、国全体でそのまま飲める状態にあるのは、ごく少数に限られているのが現状です。

この数字はインフラの維持管理や水質基準の厳しさを物語る、一つの目安といえるでしょう。日本はこの数少ない「水道水先進国」の一つとして、世界でも稀有な環境を維持しています。

数字がぶれるのは調査時点や基準が違うため

公的資料であっても、発表時期によって数字には差が出ます。

実際に国土交通省の資料でも、2024年11月時点の整理では9カ国、2022年6月時点の整理では11カ国となっていました。これは参照時点や情報の整理基準が異なるために起こる現象です。

そのため、数字そのものに固執するより「いつの情報か」をセットで確認し、常に最新の状況に気を配る必要があります。

水質は政治情勢や自然災害の影響を受けやすく、固定された数字ではないことを理解しておきましょう。

国全体で飲める国と一部地域で飲める国は分けて考える

「この国は飲める」という情報があっても、それが国全体を指すのか、都市や施設単位なのかを見極める必要があります。

  • 2024年11月の直近整理では9カ国
  • 2022年6月の整理では11カ国
  • 地域限定か国全体かの捉え方の違いで数字は変動する

このように、一部の都市や観光地で安全性が確保されていても、国全体で一律に安全と言い切れるケースは極めて稀です。

国境を越える際や国内を移動する際も、その都度「その場所の水」の信頼性を疑うことが自己防衛の第一歩となります。

海外で水道水に注意が必要な理由

CDC(米国疾病予防管理センター)が警告するように、水道水には病原体や化学物質が混じりうるリスクが常に存在します。

病原体や汚染物質が混じることがある

浄水処理施設が未発達な地域では、水の中に細菌、ウイルス、寄生虫といった病原体が処理しきれず残っていることがあります。

特に大雨の後は地表の汚染物質が水源に流れ込みやすく、深刻な体調不良を引き起こす原因になります。また、日本では考えにくいような、農業排水や工場の有害物質が取り除かれずに混入している可能性も否定できません。

これらは目に見えず、匂いでも判断できないことが多いため、知識としての警戒が不可欠です。

配管や貯水タンクで二次汚染が起こることがある

浄水場ではきれいな水が作られていても、蛇口に届くまでの「通り道」で汚染されることがあります。

地中の古い配管のひび割れから周囲の汚水が入ったり、管理が不十分な貯水設備で雑菌が繁殖したりする二次汚染のケースです。

WHOも建物内の飲料水システムが汚染源になりうると指摘しており、たとえ都市部であっても建物や設備の古さによってリスクは生じます。

蛇口に届くまでの「最後の数メートル」にリスクが潜んでいるのです。

硬水や水質の違いで体調を崩すこともある

水が衛生的に「きれい」であっても、成分が合わないことがあります。

特に欧州などに多い、カルシウムやマグネシウムを多く含む「硬水」に慣れていない日本人は、お腹がゆるくなることがあります。これは病原体による感染症とは異なりますが、旅行中の体調管理を妨げる大きな要因となります。

また、殺菌のために使われている塩素の濃度が日本より極端に高い地域もあり、その刺激が原因で胃腸の調子を崩すこともあるため注意が必要です。

煮沸では防げない成分もある

煮沸は多くの病原体対策には有効ですが、化学物質や重金属まで取り除けるわけではない点に注意が必要です。

CDCも、化学物質で汚染された水は煮沸や消毒では安全にならないと注意を促しています。むしろ沸騰して水分が蒸発することで、水中に残った有害物質の濃度が濃くなってしまうことさえあります。

水のリスクは、熱に弱い菌類だけでなく、化学的な成分の問題もあると理解しておくことが、現地での正しい判断につながります。

海外で見落としやすい水のリスク

「水道水を直接飲まない」だけでは不十分な場合があります。CDCが旅行者向けに注意を促している、生活動作の中の盲点を確認しましょう。

氷入りの飲み物

一番の見落としやすリスクは「氷」です。

レストランで提供される飲み物自体が安全なボトル入りであっても、氷が未処理の水道水から作られていれば、溶け出した瞬間に汚染物質を摂取することになります。

氷の中で菌が死滅することはないため、衛生不安がある地域では「氷抜き(No Ice)」で注文するのが、トラブルを避けるための鉄則です。

特に屋台やカジュアルな飲食店では、氷の原料まで管理されていないことが多いので注意しましょう。

歯磨き・うがい

飲み込むつもりがなくても、歯磨きやうがいの際には少量の水が口に入ることがあります。

CDCはこれらの動作にも安全な水を使うよう推奨しており、水質が不安な地域では、すすぎや歯ブラシを洗う際にもボトル水を使うのが安心です。

特にデリケートな方や子供、高齢者の場合は、わずかな量でも体調を崩すきっかけになり得ます。洗面所の蛇口から出る水は、あくまで「手を洗うためのもの」と割り切る意識が大切です。

生野菜やカットフルーツ

サラダの生野菜やカットフルーツは、現地の水道水で洗浄されている可能性が高いため注意が必要です。

表面に残った水滴から菌を摂取するリスクがあるほか、洗浄水そのものの影響を食材が受けていることもあります。

CDCの指針に沿うなら、皮を自分でむくフルーツや、完全に火を通した料理を選ぶことが、食事を楽しむ上での最も安全な選択肢となります。

現地の生鮮品を味わいたいときは、衛生管理の行き届いた信頼できる店を選ぶようにしましょう。

調理やシャワーの水

調理に使う水も安全とは限らず、加熱してもすべてのリスクがなくなるわけではありません。また、盲点になりやすいのがシャワーや入浴です。

洗顔時に水が口に入ったり、シャワー中に無意識に口や鼻の粘膜から水しぶきを吸い込んだりすることで体調を崩す要因になり得ます。CDCは入浴時に水を飲み込まないよう注意を促しています。

水質に不安がある場所では、意識して顔まわりに水をかけすぎないようにするだけでも、感染リスクを大幅に下げられます。

海外で失敗しにくい飲み水の選び方

現地でお腹を守るために、具体的にどのような水を選び、どう行動すべきか。シンプルで実践的なルールを紹介します。

未開封のボトルを選ぶ

飲み水は、未開封で工場密封されたボトル水を選ぶのが基本です。CDCも「工場で封をされた飲み物」の安全性を高く評価しています。

購入時には、キャップのシールが剥がれていないか、開封時に「カチッ」という手応えがあるかを必ず確認してください。

また、ボトル自体の飲み口部分が汚れていることもあるため、衛生状態に気を配り、必要であればコップに移して飲むといった工夫も、現地での自衛手段として非常に有効です。

炭酸入りや加熱された飲み物を選ぶ

工場で密封された炭酸飲料や、直前に十分な温度で加熱された飲み物は、比較的安全な選択肢です。

炭酸水は開封時の音で「未開封であること」を判断しやすいため、偽造品のリスクを下げられます。また、紅茶やコーヒーなど、一度しっかり沸騰させている飲み物も病原体リスクを抑える上では有効です。

現地の食堂などで提供される「ただの水」に不安を感じる場合は、こうした加工済み、あるいは加熱済みの飲み物を優先的に選ぶのが賢明です。

ラベルを見て水の種類を確認する

ラベルをチェックし、信頼できる販売場所で購入することが大切です。

表示ルールは国により異なりますが、天然水か、ろ過などで処理された浄化水(Purified Water)かを見分けるだけでも、自分に合った水を選ぶ判断材料になります。

硬度が気になる場合は、成分表示を見て数値を確認するか、世界中で品質が安定しているグローバルブランドを選ぶのも一つの手です。

自分の体質に合った種類の水を把握しておけば、現地での買い物がスムーズになります。

迷ったら公的情報を確認する

「この地域の水はどうだろう?」と迷ったら、外務省の海外安全情報やCDCが発信している公的な旅行衛生情報を確認しましょう。これらの機関は最新の感染症流行や水質汚染のニュースに基づいたアドバイスを発信しています。

ガイドブックの古い情報に頼らず、信頼できる公的な最新情報を参照することが、予期せぬトラブルを回避する一番の近道です。

現地のホテルスタッフに、そのエリアの水道水が飲用可能か直接尋ねるのも、実情を知るための有効な手段となります。

日本の水道水が安全と言われる理由

日本の水道水が高い水準に保たれているのは、法に基づく厳格な管理体制があるからです。

環境省が定める現行の水質基準項目は、PFOS・PFOAの基準化を含め52項目の厳しい水質基準に及び、これに適合することが法律で義務付けられています。

また、蛇口(給水栓)の段階で遊離残留塩素0.1mg/L以上を保持する考え方が徹底されており、浄水場から家庭に届くまで、塩素の消毒効果を保つよう設計されている点が大きな特徴です。

この「蛇口まで届く衛生管理」という思想があるからこそ、私たちは全国どこでも安心して水道水を飲めるのです。

海外では「水は選んで飲む」が基本

「海外の水道水は飲めるか」という問いへの答えは、時期や場所によって変わるため一言で断定することはできません。

直近の公的データで9カ国とされていても、大切なのは数字そのものではなく、飲む・歯磨き・氷・調理といった場面ごとに「どの水をどこまで信用できるか」を見極めることです。

WHOやCDCが示す通り、安全な水は決して当たり前に存在するものではありません。

日本の前提を一旦忘れ、水は自分の手で選ぶものという意識を持つ。その慎重さこそが、海外での時間を健康的で実りあるものにするための、最も重要なルールといえるでしょう。

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