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肉を切った後のまな板、水や洗剤だけでは不十分?
肉や鶏肉を切った後のまな板や包丁には、目には見えない細菌が付着しています。その代表的な細菌が「カンピロバクター」や「サルモネラ菌」です。これらの細菌が残ったまま、他の食材に触れてしまうと、食中毒になる可能性があります。
まな板や包丁を水で洗い流すだけでは、細菌は十分に落とせません。中性洗剤を使えば肉や脂肪の汚れは落ちますが、菌を殺す効果はほとんどありません。
つまり、肉を切った後は洗剤だけで終わらせず、消毒(殺菌)という次のステップがとても重要です。
肉を切った後のまな板を清潔に保つための正しい手順
肉や鶏肉を切った後のまな板を安全に使うためには、次の3つの手順を正しく行う必要があります。それが「洗浄」→「消毒」→「乾燥」です。この手順を守れば、家庭での食中毒を防ぐことができます。
1. 洗浄する(汚れをきちんと落とす)
最初に、まな板に残った肉の汚れを落とします。この段階で汚れが残ると、その後の消毒がうまくいきません。
ポイントは次の通りです。
- 洗剤をつけたスポンジでまな板の両面をよく洗う
- 熱いお湯で洗うと、タンパク質が固まってしまうので、必ず水かぬるま湯(40℃以下)を使う
- 包丁の傷に入り込んだ汚れもブラシなどで丁寧にこすり落とす
まずはこの方法で汚れをしっかりと落としましょう。肉を切った包丁も、同じ方法できれいにします。
2. 消毒する(菌を殺すための方法)
洗剤で洗っただけでは、まだ細菌が残っている場合があります。消毒は、残った菌をしっかりと殺して食中毒を防ぐための大切な手順です。
消毒の方法には主に3つありますが、まな板の素材によっておすすめできる方法が違います。
方法① 塩素系漂白剤を使う方法(プラスチック製におすすめ)
塩素系漂白剤は菌を確実に殺すことができる消毒方法で、プラスチック製のまな板に特に効果的です。
手順は次の通りです。
- プラスチック製のまな板を洗剤で洗った後、塩素系漂白剤(キッチン用ハイターなど)を200ppm(0.02%)に薄めて全体にかける
- 約5分間そのまま置いておく
- 水で十分にすすぎ、漂白剤を完全に洗い流す
木製のまな板に塩素系漂白剤を使うと、黒ずみや変色の原因になるので避けてください。
方法② 熱湯を使う方法(木製・プラスチック製ともに可能)
熱湯消毒は手軽にでき、薬剤を使いたくない人にもおすすめの方法です。ただし、温度と時間を守らないと効果が薄くなります。
手順は次の通りです。
- まな板を洗剤で洗った後、全体にまんべんなく85℃以上の熱湯を1分間かける
- プラスチック製のまな板は、長く熱湯にさらすと変形の可能性があるので、1分を守ること
- 木製のまな板も熱湯をかけた後はすぐに水分を拭き取る
熱湯をかける前に必ず汚れをしっかり洗い流してください。汚れが残ったまま熱湯をかけると、肉のタンパク質が固まって、菌が取りにくくなることがあります。
方法③ アルコールスプレーを使う方法(補助的な方法)
アルコールスプレーは素早く手軽に消毒できるため便利ですが、すべての菌に強いわけではありません。特にノロウイルスなどには効果が弱いため、あくまで補助として使いましょう。
手順は次の通りです。
- 洗剤で洗った後、水気をしっかり拭き取ったまな板にアルコールスプレーを吹きかける
- 自然乾燥させる(完全に乾くまで触らないこと)
アルコールは、水気が残っていると効果が落ちるので注意しましょう。
方法④ アルカリ電解水を使う方法(洗浄の補助)
アルカリ電解水は、タンパク質や油汚れを分解する力があり、まな板の洗浄効果を高めるために役立ちます。ただし、塩素系漂白剤や熱湯ほど確実に菌を殺せるわけではないため、あくまでも洗浄を補助するための方法です。
手順は次の通りです。
- 洗剤で洗ったまな板にアルカリ電解水を吹きかける
- 30秒程度放置した後、水で洗い流す
- その後、熱湯やアルコールなど別の消毒方法も併用すると安心
アルカリ電解水は人体に優しく環境にも良いですが、すべての菌を殺菌できるものではないので、必ず他の消毒方法と組み合わせてください。
3. 乾燥する(菌を増やさない仕上げの方法)
まな板や包丁を洗浄・消毒したら、最後に完全に乾燥させることが大切です。なぜなら、水分が残った状態だと、せっかく消毒したのに細菌が再び増えてしまうことがあるからです。
乾燥のコツは次の通りです。
- 清潔なふきんやキッチンペーパーで水分を丁寧に拭き取る
- まな板を風通しの良い場所で、立てて自然乾燥させる
- 完全に乾くまで重ねたり収納したりしない(湿気がこもると菌が増えやすくなる)
湿気の多い季節や場所では、特に意識して十分に乾燥させましょう。
まな板や包丁の素材別の注意点とおすすめの方法
まな板や包丁は、素材ごとに消毒やメンテナンスの方法が違います。それぞれの素材に適した方法を知り、正しいお手入れを行いましょう。
プラスチック製のまな板・包丁
プラスチック製のまな板は塩素系漂白剤や熱湯消毒が最も適しています。傷が深くなったら買い替えが必要です。
- 消毒は塩素系漂白剤(200ppmで5分)または熱湯(85℃以上で1分)
- 食洗機を使えるタイプなら、60℃以上の設定で洗えば効果的に除菌が可能
- 深い傷が多くなり、汚れが取れなくなったら交換する(目安は1~2年)
木製のまな板・包丁
木製のまな板は、長時間の漂白剤や熱湯消毒を繰り返すと劣化や黒ずみが起こります。短時間の熱湯消毒としっかりした乾燥が最適です。
- 消毒は短時間の熱湯(85℃以上で1分以内)かアルコールスプレーを使用
- 塩素系漂白剤は黒ずみや変色を起こすので避ける
- 表面の黒ずみが目立つ場合は、表面を削って使うか、交換を検討する
ステンレス製の包丁
ステンレス製の包丁は消毒しやすく、メンテナンスが簡単です。
- 消毒は熱湯(85℃以上で1分)またはアルコールスプレーを使用
- 熱湯消毒後、すぐに水気を拭き取り乾燥させる(錆び防止)
- 包丁の柄が木製の場合、木製の注意点を守って消毒する
まとめ
実は、肉を切った後のまな板や包丁を安全に保つには、「肉や魚専用の道具を用意すること」がとても効果的です。料理のプロも、肉・魚用と野菜用にまな板を使い分けることで、細菌の感染を防いでいます。日頃の衛生管理をより楽に確実にするためにも、「まな板と包丁の使い分け」をぜひ取り入れてみてください。