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プールの水って本当に汚いの?原因を知ろう
プールの水を見て「汚い」と感じる人は多いでしょう。実際、プールにはさまざまな原因で汚れが入ります。ここではプールの水を汚す主な原因を3つに分けて見ていきます。
利用者から出る汚れ(汗・尿・体の汚れ)
プールには、多くの人が同時に入ります。そのため、人の体から出る汗や垢(あか)、唾液(だえき)や鼻水、さらには尿なども混ざってしまいます。
こうした体液は水中の有機物となり、プールの消毒剤である塩素と反応して、あのプール特有のにおいを発生させます。このにおいの主な原因は「クロラミン」という刺激物質で、目や喉を痛める原因にもなります。
プール設備から出る汚れ(鉄さびや金属)
プール設備からも汚れが出ることがあります。水を送る配管の内部にサビがつくと、鉄やマンガンなどの金属成分が水に溶け出します。
このため、プールの水が茶色や緑色に濁って見えることがあります。金属成分自体は少量なら健康には影響しませんが、見た目が悪くなったり、水質が不安定になったりする原因になります。
屋外プールに入る汚れ(藻や土砂)
屋外のプールの場合、雨水や土砂、風で運ばれてくるほこりが水に混ざります。また、太陽の光によって藻が発生すると、水が緑色になったり、プールの底が滑りやすくなったりします。これらの汚れは見た目が悪いだけでなく、転倒事故の原因にもなるため注意が必要です。
プールの水の安全を守る「塩素」とその限界
プールの水が汚れないように、必ず消毒剤として塩素が使われています。塩素は細菌やウイルスを殺す働きがありますが、すべての病気を予防できるわけではありません。塩素の役割と、その限界を見ていきましょう。
塩素が守るプールの安全
日本では、プールの水に含まれる塩素の濃度が厳しく決められています。基準値としては、遊離残留塩素(消毒に使える状態の塩素)が、0.4~1.0mg/Lと決まっています。この濃度は日本の水道水とほぼ同じで、少量飲んでも体に害はありません。また、大腸菌や多くのウイルスは、この濃度の塩素によって数分以内にほぼ死滅します。
塩素で殺せない病原体もある
しかし、塩素にも弱点があります。中には、塩素に耐える病原体が存在するのです。特に「クリプトスポリジウム」という寄生虫は、一般的な塩素濃度では死なず、生き残る可能性があります。この寄生虫が原因の感染症は下痢や腹痛などの症状を引き起こすため、絶対に水を飲まないように注意することが大切です。
塩素が作り出す刺激物「クロラミン」とその影響
塩素は水をきれいにしますが、人の汗や尿などに含まれるアンモニアと反応して、「クロラミン」という物質を生み出します。このクロラミンが、目や喉を刺激したり、プール独特の臭いを出したりします。また、肌の弱い人やアレルギー体質の人は、クロラミンの影響で肌荒れを起こすこともあります。
プールの水を飲んでしまったらどうすればいい?
プールで泳いでいると、誤って水を飲んでしまうことがあります。少量であれば大きな問題はありませんが、多めに飲んでしまった場合は注意が必要です。万が一の時に備えて、すぐにできる正しい対処法を知っておきましょう。
口をすすぐ
プールの水を飲んでしまったら、まず真水で口をよくすすぎましょう。プールの水に含まれる塩素や汚れを、できるだけ早く口の中から洗い流すことが大切です。
水や牛乳を飲む
次に、コップ1杯(約200mL)の水または牛乳を飲みましょう。特に牛乳は胃や喉の粘膜を保護して、塩素や刺激物の影響を和らげる効果があります。ただし、一気にたくさん飲まず、ゆっくり飲むようにしましょう。
24時間は体調をよく確認しよう(咳や発熱に注意)
プールの水を飲んだあと、特に小さい子どもは24時間程度は体調をよく観察しましょう。次の症状が出た場合は、病院で診てもらうことをおすすめします。
- 咳が止まらない
- 呼吸が苦しそう
- 熱が出る(37.5℃以上)
- 吐き気や下痢が続く
また、飲んだ量がコップ1杯以上(約200mL)になった場合は、特に注意して体調の変化を見る必要があります。
「二次溺水」にも気をつけよう
まれですが、プールの水を飲んだり、気管に水が入ったりしたあとに、しばらく経ってから呼吸が苦しくなる「二次溺水(にじできすい)」という症状が起こることがあります。これは肺に残ったわずかな水が原因で起こります。水を飲んだ後、数時間以内に息苦しさや咳が出たら、迷わず病院を受診しましょう。
プール熱(咽頭結膜熱)に気をつけよう
夏になると、プールを通じて「プール熱(咽頭結膜熱)」という病気に感染することがあります。これは「アデノウイルス」というウイルスによって引き起こされる病気で、子どもがかかりやすい感染症のひとつです。
プール熱の症状は?
プール熱にかかると、次のような症状が現れます。
- のどが痛い
- 目が赤く充血する
- 熱が出る(38℃以上の高熱が出ることもある)
- 頭痛やだるさがある
症状は3日~5日程度続くことが一般的で、治ってもすぐに学校や幼稚園には行けず、症状が消えてからも2日間は休まなければなりません。
プール熱を防ぐ方法
プール熱を予防するためには、プールの前後で次の行動をしっかり行うことが大切です。
- プールに入る前にしっかりシャワーを浴びて、汗や汚れを落とす
- プールから上がったら目を洗い、うがいや手洗いをする
- タオルやゴーグルなどを友達と共用しない
このような簡単な行動が、感染のリスクを大きく下げます。
安全にプールを楽しむためのチェックリスト
プールで楽しく遊ぶためには、次のポイントを守りましょう。事故や病気のリスクを防ぎ、安全に水遊びができます。
- プールに入る前にシャワーを浴びる(1分以上が目安)
- 1時間ごとにトイレ休憩をとる(おむつをしている子どもは特に注意)
- プールの水は飲まないように注意する(子どもには事前に教える)
- ゴーグルと水泳キャップを着用する(髪や目を守る)
こうした行動を日頃から習慣にすれば、プールの水による健康被害を大幅に防ぐことができます。
まとめ
プールの水には目に見えない汚れや病原体が存在するため、衛生管理や個人の予防行動がとても重要です。一方で、プールには心身をリフレッシュさせる効果があり、泳ぐことでストレスが軽減され、運動不足も解消できます。
プールの水のリスクばかりに目を向けるのではなく、水泳がもたらす健康への良い影響にも意識を向け、バランスの取れた楽しみ方を心がけましょう。正しい知識を持ち、安心して水遊びを楽しむことが一番の安全対策です。