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セミの寿命は本当に1週間?実はもっと長生き
セミは成虫になってからの寿命が短く、子どもの頃に「セミは1週間しか生きられない」と聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、この話は本当でしょうか?
実際には、セミの寿命は1週間よりも長いことがほとんどです。多くの研究によると、日本でよく見られるアブラゼミやミンミンゼミなどは、平均して2〜3週間生き、条件が良ければ1か月近く生きることもあります。
幼虫時代が数年と非常に長いため、成虫になってからの短い寿命が強調されて、「セミの寿命は1週間」と言われるようになったと考えられます。
セミの寿命は種類で違う?平均寿命と長生きの記録
セミの寿命は種類や環境によっても異なります。代表的な日本のセミの寿命を確認してみましょう。
よく見るセミの平均寿命
日本でよく見かけるセミの平均寿命(成虫としての期間)は、およそ以下のとおりです。
- アブラゼミ: 2〜3週間(最長約1か月)
- ミンミンゼミ: 2〜3週間
- クマゼミ: 2〜3週間(環境次第で1か月近く生きる場合あり)
- ツクツクボウシ: 1〜2週間
よく知られているように、寿命は1週間程度より長いことが一般的であることがわかります。
記録に残る最長寿命はどれくらい?
実際に観察された記録では、アブラゼミが32日間、ツクツクボウシが26日間、クマゼミが15日間という結果もあります。ただし、こうした記録は外敵がいない安全な環境で確認された特別なケースです。自然環境では、多くが2〜3週間程度で寿命を終えます。
セミは幼虫時代に3〜5年ほど土の中で過ごしますが、種類によっては1〜2年の短いものもいます。この長い幼虫期に比べると、成虫としての期間が短く感じられるのは自然なことといえるでしょう。
セミが短命に見える3つの理由
セミは実際には1週間以上生きるにも関わらず、なぜ短命に見えるのでしょうか?理由は主に3つあります。
① 外敵に狙われやすい
セミは多くの外敵に狙われる昆虫です。代表的なセミの天敵には次のようなものがあります。
- 鳥類(スズメ、カラスなど)
- 哺乳類(ネコ、タヌキ、モグラなど)
- 昆虫(スズメバチ、カマキリ、クモなど)
- 人間(虫取りなど)
これだけ外敵が多いと、自然界で生き延びることは容易ではありません。多くのセミは1週間以内に命を落としてしまうため、「寿命は1週間」と誤解されやすくなっています。
② 子孫を残すための活動に集中している
セミの成虫としての活動は、繁殖という目的に特化しています。特にオスはメスを呼ぶために大きな声で鳴き続けます。メスは交尾後すぐに卵を産みますが、その後はエネルギーをほとんど使い果たしてしまいます。子孫を残す活動に集中するため、エネルギーを短期間で使い切り、寿命が短くなっているのです。
③ 栄養を十分に取れない体のつくり
セミの成虫は、幼虫時代に蓄えた栄養を使って活動しています。成虫になってからも樹液を少し吸いますが、あくまで水分補給や微量な栄養摂取程度にとどまります。そのため、長期間生きるための栄養を摂ることができず、体が消耗してしまいます。
セミの幼虫時代は意外と長い?種類による違いも解説
セミは成虫になるまでの幼虫期間がとても長いことでも知られています。土の中でじっと栄養を蓄え、地上に出る日を数年間待ち続けます。この幼虫期間は種類によって大きく異なるため、代表的なセミの幼虫期間を見てみましょう。
- アブラゼミ: 3〜4年
- クマゼミ: 4〜5年
- ツクツクボウシ: 1〜2年
日本でよく知られるセミはこの程度の期間を土の中で過ごします。一方、海外には北米の「周期ゼミ」のように、幼虫として13年や17年も地中で過ごすセミもいます。このように種類や環境により幼虫期間が大きく異なりますが、いずれの場合でも幼虫時代の方が圧倒的に長いのは共通しています。
セミが地上に出て成虫になると、寿命が数週間しかないため、非常に短命である印象が強く残ります。しかし、幼虫期を含めればセミの寿命は実際には数年間に及ぶため、生き物として特別短命とは言えないでしょう。
セミはオスだけが鳴く?鳴き声の本当の意味
夏になると耳にするセミの大きな鳴き声ですが、実は鳴くのはオスのセミだけです。メスは鳴きません。オスはお腹にある発音器を使って大きな音を出し、メスを呼び寄せます。この鳴き声はセミにとって非常に重要で、繁殖の成功を左右するのです。
オスは一生懸命鳴くことで自分の存在をメスに知らせ、交尾相手を見つけます。一方、メスはオスの鳴き声を頼りにパートナーを探して交尾をし、その後は木の枝や幹に卵を産みつけます。この一連の繁殖活動が終わる頃には、セミはエネルギーを使い果たし寿命を迎えます。
セミの大きな鳴き声は人間には騒がしく感じられることもありますが、セミたちにとっては命がけの求愛活動なのです。
セミを飼育するのが難しい理由
セミを捕まえて室内で飼おうとした経験がある人もいるかもしれませんが、実はセミの飼育は非常に難しいものです。
その一番の理由は、セミが食べる樹液を安定して用意することが難しいからです。成虫になったセミは木の幹に針のような口を刺して樹液を吸いますが、室内で人工的に樹液を与えることは簡単ではありません。昆虫ゼリーや砂糖水などでは、セミにとって十分な栄養にならないことが多く、結局は弱ってしまいます。
また、セミは飛び回ったり鳴いたりして大量のエネルギーを消耗するため、室内の限られた空間では十分な活動ができません。そのため、セミを捕まえた場合は、無理に飼育せず、すぐに自然に戻すことをおすすめします。
なぜセミは仰向けで力尽きていることが多い?
夏の終わりごろになると、地面で仰向けになって力尽きているセミを見かけることがあります。これはセミが寿命を迎える直前に足や体の筋肉、神経が弱って木や電柱から落下するためです。
セミは体の構造上、背中が重く平らになっているため、落ちた際には背中側を下にして仰向けになってしまうことが多いのです。この姿勢は昆虫全般に共通するもので、セミに限ったことではありません。
セミが地上で仰向けになっている場合は寿命を迎えようとしているサインですので、見かけてもそっとしておきましょう。
まとめ
セミの寿命は一般的に言われる「1週間」よりも長く、実際は2〜3週間ほど生きます。幼虫としての期間はさらに長く、数年間土の中で過ごして栄養を蓄えています。成虫の期間が短いのは、セミが繁殖のために短期間で集中的に活動するためです。
近年では都会化に伴い土壌が減り、幼虫が成長できる環境も減少しているため、都市部ではセミの数が減少傾向にあります。セミを見かけたら、むやみに捕まえず自然の中での観察を楽しんでください。