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カレーはなぜ傷みやすい?
おいしくて手軽に作れるカレーは、一人暮らしや忙しい家庭にとても人気の料理です。しかし、作ったカレーをそのままにしておくと、知らないうちに菌が繁殖し、食中毒を起こすことがあります。
カレーが傷みやすい主な原因は、ウェルシュ菌という細菌です。この菌は自然界に広く存在し、熱にとても強い「芽胞(がほう)」という殻をつくって生き残ります。
カレーを作る際の加熱でも完全に死なず、カレーが冷めていく間に再び菌が増え始めます。特に温度が12〜50℃になると活発に増殖し、数時間放置するだけでも食中毒の原因になるほど菌が増えてしまいます。
この菌は酸素が少ない環境が大好きです。カレーのようにトロッとして空気が入りにくい料理では特に注意が必要です。
カレーを腐らせてしまう4つのNG行為
ここからは、カレーを腐らせる原因になってしまうNG行為を紹介します。これらの行為を避けるだけでも食中毒のリスクを大きく下げることができます。
①カレーを常温で長く放置する
カレーを食べ終わって鍋のまま常温に置いてしまうことはありませんか?実は、これは食中毒の大きな原因です。
常温はウェルシュ菌が繁殖しやすい温度(12〜50℃)をキープしやすいため、わずか2時間ほどでも菌が急速に増えます。特に夏場は室温が高く、数時間放置するだけで食中毒を起こすレベルに菌が繁殖します。
また、「後で温めれば大丈夫」と考える人もいますが、それは間違いです。一度増殖したウェルシュ菌は芽胞を形成して熱に耐えるため、再加熱しても菌を完全には殺せません。そのため、カレーを作った後は常温放置せず、なるべく早く冷まして冷蔵庫へ入れることが大切です。
②鍋ごと冷蔵庫に入れる
カレーが残るとついやってしまうのが、鍋ごと冷蔵庫に入れる行為です。手軽ですが、これも食中毒の原因になります。
鍋ごと冷蔵庫に入れると、カレーの中心部分がなかなか冷えません。冷蔵庫の温度は4℃前後ですが、鍋に入れたままだとカレーが十分に冷えるまで数時間もかかります。その間にもウェルシュ菌はじわじわと増え続けます。
また、熱い鍋を冷蔵庫に入れると庫内の温度が上がり、他の食品が傷む原因にもなります。カレーを保存するときは鍋から別の容器に移して、浅く広げて早く冷えるようにしましょう。
③口をつけたスプーンをカレーに戻す
味見や取り分ける際、一度口に入れたスプーンをそのまま鍋に戻していませんか?何気ないこの行動も、カレーを腐らせる原因になります。
人間の口の中には、さまざまな細菌がいます。これらの菌は一度カレーに入ると、カレーの温度や栄養分の豊富さを利用してどんどん増殖します。特にカレーの温度が常温付近だと、菌の繁殖スピードは格段に早くなります。
さらに、一度菌が増えたカレーを冷蔵庫に入れても安心はできません。口の中の細菌の中には低温でもゆっくり増え続けるものがあり、翌日以降には食中毒を起こすほどの量に達する可能性もあります。
口をつけたスプーンを鍋に戻した場合、当日か、遅くとも翌朝までにカレーを食べきる必要があります。食べる際も、中心部が沸騰するまで十分に加熱しましょう。
④解凍したカレーを再冷凍する
カレーを多めに作った時、冷凍保存することもありますよね。しかし、一度解凍したカレーを食べきれず、再び冷凍する行為は避けましょう。
一度解凍すると、カレーの中に残っていたウェルシュ菌などが再び活動を始めます。その状態で再冷凍すると、菌の数が多いまま保存され、次に解凍する時にはすでに危険な状態になっています。また、何度も冷凍・解凍を繰り返すと風味が落ち、水分が分離して食感も悪くなります。
冷凍したカレーは、解凍したら再冷凍せず、その日のうちに食べきりましょう。どうしても残ってしまった場合は、安全を考えて廃棄したほうがよいでしょう。
カレーを安全に保存する方法
ここからは、カレーを安全に保存し、できるだけおいしさを保つためのポイントを解説します。特に夏場や湿気の多い時期は、食中毒のリスクが高まるため注意が必要です。
保存するときは小分けにする
カレーを安全に保存するためには、鍋ごとではなく、1回分ずつ小分けにするのがベストです。小分けにすることで、早く冷ますことができ、食べる分だけ取り出して再加熱することができます。また、保存容器は清潔な密閉容器を使い、他の食品と触れないように気をつけましょう。
カレーを早く冷ますコツ
カレーを早く冷ますためには、氷水を入れたボウルに鍋の底をつけて冷ます方法が効果的です。この時、カレーをかき混ぜながら冷ますと、中心部分まで早く冷えます。
目安として、カレーの中心温度を20℃以下まで10~15分ほどで冷ますのが理想です。夏場であれば扇風機やうちわなどを併用すると、さらに早く冷ますことができます。
カレーを冷蔵庫で保存する期間は?
カレーを冷蔵庫で保存する場合は、2〜3日以内を目安に食べきりましょう。
冷蔵庫の中は通常4℃前後と低温ですが、完全に菌の増殖が止まるわけではありません。日にちが経つにつれてゆっくり菌が増えてしまうため、早めに食べることを心がけてください。特に、口をつけたスプーンを入れたカレーは翌日までに必ず食べきるようにしましょう。
また、冷蔵庫から取り出して食べるときは、カレーの中心部が最低でも75℃以上になるまで、1分間以上しっかり再加熱してください。菌が増えていても、再加熱である程度減らすことが可能です。
カレーを冷凍するときのポイント
カレーは冷凍保存すると最大1か月程度は日持ちします。ただし、風味やおいしさを考えると2週間以内に食べきるのが理想です。冷凍庫に入れる前に、小分けにした容器や保存袋に日付を書いておくと、いつまでに食べればよいかが分かりやすくなります。
また、冷凍保存する際、ジャガイモやニンジンなどの根菜類は冷凍すると食感がボソボソになりやすいため、取り除くか、小さく切ったりすりつぶしたりして食感の変化を最小限にしましょう。こうすることで、解凍後の食感や風味が大きく改善します。
冷凍カレーを解凍する場合は、できるだけ冷蔵庫内で自然解凍するか、密閉袋のまま流水で解凍しましょう。電子レンジで解凍する場合は、ムラができないよう途中で混ぜ、中心部がしっかり加熱されているか確認することが大切です。
まとめ
カレーはウェルシュ菌の影響で非常に傷みやすく、保存方法に少しでも隙があると食中毒のリスクが高まります。ここで紹介したNG行為を避け、正しい保存方法を守るだけで安全性は大きく向上します。
さらに安全性を高めるために、カレーを作る際は具材をあらかじめ炒めることをおすすめします。炒めることで食材の水分が減り、カレー全体の菌の増殖スピードが遅くなる効果が期待できます。おいしさを安全に長く楽しむために、ぜひ試してみてください。