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感情を表現するのが苦手になる理由
「自分の感情を素直に出せない」「何を感じているのか自分でもよくわからない」――。そんな経験はありませんか? 感情を表現するのが苦手になる理由は、人それぞれです。過去の経験や性格の違い、場合によっては精神的・身体的な原因が関係しています。
感情表現が難しくなる主な原因としては以下のようなことがあります。
- 子どもの頃に感情を否定されたり、無視されたりした経験がある
- 他人の評価や周りの反応を気にしすぎてしまう
- 自己肯定感が低く、自分の感情を表現することに自信がない
- 発達特性(自閉スペクトラム症など)によって感情を言葉にするのが難しい
- 精神的なトラウマやストレスで、感情を抑えるクセがついている
こうした原因を抱えていると、感情を表すのが難しくなり、自分自身でも戸惑いを感じることがあります。
感情表現が苦手な人に共通する6つの特徴
感情を表に出すことが難しい人には、共通するいくつかの特徴があります。ここからは、そんな人たちによく見られる特徴を詳しく見ていきます。自分に当てはまる特徴がないか確認してみましょう。
① 周りの目を気にしすぎてしまう
感情表現が苦手な人の多くは、周りからどう思われるかを気にしすぎてしまいます。「嫌われたくない」「変に思われたくない」という気持ちが強く働き、結果的に自分の感情を抑えてしまうのです。
例えば、職場や学校で自分の意見を言いたくても、「間違っていたら恥ずかしい」「自分だけ浮いてしまう」と心配になり、結局何も言えずに終わってしまうことがあります。この繰り返しによって、自分の感情を表すことにますます不安を感じるようになってしまうのです。
② 表情や声に感情が出にくい
感情表現が苦手な人は、内面では色々な感情を感じていても、それを表情や声で伝えることが苦手です。これは「表情筋を動かすのが苦手」「声のトーンを変えるのが難しい」などの理由が背景にある場合があります。
また、自分では感情を表しているつもりでも、周囲からは「無表情」や「冷静すぎる」と見えてしまい、気持ちが伝わりにくいことがあります。これが原因で、人間関係に誤解が生じたり、相手から距離を置かれたりすることもあるのです。
③ 自分の感情を言葉で説明できない
「なんとなくモヤモヤする」「うまく言えないけど違和感がある」と感じることが多く、自分の気持ちを具体的な言葉で表現することが難しい人もいます。この状態を、心理学では「失感情症(アレキシサイミア)」と呼ぶことがあります。
失感情症の人は、自分がどんな感情を抱いているのかを言葉にすることが苦手で、結果として感情を抑え込んだり、無感情な態度を取ったりすることがあります。この場合、自分でも感情がわからないことがストレスになりやすく、精神的にも辛くなってしまうのです。
④ 他人に合わせすぎて疲れる
感情表現が苦手な人は、場の空気を乱したくないと感じるあまり、自分の本当の気持ちを隠して他人に合わせる傾向があります。周囲の人が盛り上がっている時は楽しそうに振る舞い、悲しい時もそれを隠して無理に笑顔を作ることがあります。
しかし、いつも自分の気持ちを押し殺していると、心が疲れてしまいます。「なぜ自分だけがこんなに苦労しなくてはいけないのか」と疑問に思うこともあるでしょう。このような状態が長引くと、感情を表現すること自体がますます億劫になってしまうこともあります。
⑤ 嬉しいことを嬉しいと言えない
感情を素直に表現できない人は、良い出来事があったとしても、それをストレートに表現することにためらいを感じます。例えば、誕生日プレゼントをもらって心の中では嬉しくても、表情や言葉でその気持ちをうまく伝えられず、「本当に喜んでいるのかな?」と相手に不安を与えてしまうこともあります。
これは、喜びや感謝の表現を過去に否定された経験があるため、「表現しても良いことがない」と感じるようになったことが原因かもしれません。また、「喜びをうまく表現しなくては」とプレッシャーを感じて、余計に気持ちが抑えられてしまうこともあるでしょう。
⑥ 「察してほしい」という気持ちが強い
感情表現が苦手な人は、自分の気持ちをうまく伝えられない分、「察してもらいたい」という気持ちが強くなりがちです。自分から説明しなくても相手に気づいてほしいという思いがあり、それが叶わないと孤独感やストレスを感じることがあります。
特に、日本の文化的背景もこれに影響していると言われます。日本では「言葉にしなくても通じることが美徳」とされることがあるため、その価値観に影響を受けて感情表現が苦手になる人も多く存在します。
感情表現が苦手な人が取り組みやすい克服方法
感情を表現するのが難しいと感じている人でも、少しずつ改善することは可能です。ここからは、日常で気軽に実践できる方法を紹介します。
自分の感情を「言葉にする」練習をする
感情を言葉にするのが苦手な場合、最初は短くシンプルな言葉から始めましょう。例えば、「私は今嬉しい」「少し悲しい」など、自分の感情を具体的に言葉にしてみます。
また、日記やスマートフォンのメモアプリを使って、自分が感じたことを毎日書き留めておくと効果的です。時間が経つにつれて、自分の感情に対する理解が深まり、次第に自然に表現できるようになります。
「私は~と感じる」と表現する
感情を伝える際に相手を責めることなく、自分の気持ちを伝える方法があります。これを「Iメッセージ」と呼びます。
例えば、友達に約束をキャンセルされて悲しい気持ちになった時は、「あなたはいつも約束を破る」と相手を責めるのではなく、「私は約束がなくなって寂しく感じた」と自分の感情を主語にして伝えます。こうすることで、相手はあなたの気持ちを受け止めやすくなり、衝突や誤解も減ります。
言葉以外で気持ちを表現する
どうしても言葉で伝えるのが難しいと感じる場合は、言葉以外の方法を試してみることも有効です。手紙やメール、SNSのメッセージで気持ちを伝えたり、絵や写真、音楽などの芸術的な表現手段を活用してみましょう。
表情やジェスチャー、服装などを工夫することでも、自分の気持ちを自然と伝えることができるようになります。こうした方法を取り入れることで、自己表現のハードルを下げることができます。
信頼できる人に少しずつ自分の気持ちを話す
自分の感情をいきなり周囲の人すべてに伝えるのはハードルが高いでしょう。そこでまずは、家族や親しい友人など、信頼できる人に少しずつ自分の本音を伝える練習をしてみてください。
相手が受け止めてくれるとわかれば、徐々に自分の感情を伝える自信がつき、他の人とのコミュニケーションにも役立ちます。
自分の感情を客観的に振り返る
自分がどのように感情を表現しているのかを客観的に確認してみるのも効果的です。スマートフォンで自分の話している様子を録画し、それを後で見返してみましょう。
自分がどの程度感情を表現できているかを確認し、表情や声のトーンなどを調整する参考にできます。冷静に振り返ることで、自分では気づかなかった表現の癖にも気づきやすくなります。
小さなことでも成功体験を重ねる
感情を表現するのが苦手な原因の一つに、自己肯定感の低さがあります。そこで、小さな感情表現の成功体験を積み重ねて、自信を高めるようにしましょう。
例えば、いつもなら無表情で受け取るプレゼントを、「ありがとう」と笑顔で伝えるよう心がけます。小さなことでも相手が喜ぶ反応をしてくれれば、「自分にもできる」と感じ、自信がついてきます。これを積み重ねることで、感情表現への苦手意識が徐々に和らいでいくでしょう。
感情表現ができるようになると得られるメリット
感情表現が豊かになると、人生の様々な面でメリットがあります。ただ単に「気持ちを伝える」以上の効果が得られるでしょう。
人間関係がより深まる
素直に感情を伝えることができると、周囲の人に自分の気持ちが伝わりやすくなります。友達や恋人、家族との関係がより深まり、信頼関係も築きやすくなるでしょう。
相手の気持ちにも自然と共感できるようになるため、人間関係のトラブルや誤解も少なくなります。
気持ちがスッキリしてストレスが減る
感情を抑え込まずに適切に表現することができれば、心の負担が軽くなります。自分の気持ちを相手に伝えることで、精神的なストレスが溜まりにくくなります。
逆に感情を溜め込んでしまうと、それが原因でイライラや不安感が強まることもあるため、感情表現は心の健康にも大切な役割を果たします。
仕事や学校での評価が高まる
職場や学校で感情表現ができると、コミュニケーションが円滑になり、周囲からの評価が高まることがあります。
例えば、同僚や上司に「嬉しい」「助かりました」と感謝の気持ちを素直に伝えるだけで、相手からの印象は良くなり、仕事や勉強のモチベーションも上がります。
自分のことを好きになれる
感情を表現する練習を重ねると、自分の気持ちを理解しやすくなります。その結果、自己肯定感が高まり、自分自身を肯定的に受け止められるようになるでしょう。
感情表現ができる自分を認め、自信を持つことで、自分のことをより好きになれるのです。
子どもの成長にも良い影響を与える
親が感情表現を豊かにすると、子どももそれを自然に真似するようになります。自分の感情を適切に表現する親の姿を見て育った子どもは、コミュニケーション能力や自己肯定感が高まりやすくなります。
親子の間で素直な感情表現ができれば、家族関係も円満になります。
まとめ
感情表現が苦手なのは、必ずしも性格や能力の問題ではありません。育った環境や過去の経験、社会の文化など様々な要因が絡んでいるため、自分を責める必要はないのです。
感情表現を豊かにすることは、新しい自分を発見するチャンスにもなります。日々の小さな変化を楽しみながら、周囲とのコミュニケーションを少しずつ深めていきましょう。そうすることで、気がつけば自然に、自分の心と向き合うことが楽しくなるはずです。