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日常生活でよく使う数の単位
普段の生活でよく耳にする数字の単位は、万・億・兆といったものです。日本語の数の単位は4桁ごとに区切られていて、以下のように大きくなります。
- 万:10,000(10の4乗)
- 億:100,000,000(10の8乗)
- 兆:1,000,000,000,000(10の12乗)
ニュースや社会の話題では、「兆」までがよく登場しますが、最近では企業の時価総額や国家予算などで「京(けい)」という単位を使うこともあります。
一方、英語圏では千(thousand)、百万(million)、十億(billion)など、3桁ずつ区切る方法が一般的です。世界的にビジネスが行われるときには、以下のように日本語の単位に換算されます。
- thousand(サウザンド):1,000(千)
- million(ミリオン):1,000,000(100万)
- billion(ビリオン):1,000,000,000(10億)
- trillion(トリリオン):1,000,000,000,000(1兆)
日常的に目にするスマホやパソコンの容量表示にも数字の単位が使われていて、KB(キロバイト)、MB(メガバイト)、GB(ギガバイト)などが身近です。
無量大数ってどのくらい大きいの?
日本語の数の単位で最も大きなものとして広く知られているのが「無量大数(むりょうたいすう)」です。これは具体的に、10の68乗、つまり1の後ろに0が68個並んだ巨大な数字です。
無量大数までの主な単位を簡単に整理すると以下のようになります。
- 京(けい):10の16乗
- 垓(がい):10の20乗
- 穣(じょう):10の28乗
- 溝(こう):10の32乗
- 澗(かん):10の36乗
- 正(せい):10の40乗
- 載(さい):10の44乗
- 極(ごく):10の48乗
- 恒河沙(ごうがしゃ):10の52乗
- 阿僧祇(あそうぎ):10の56乗
- 那由他(なゆた):10の60乗
- 不可思議(ふかしぎ):10の64乗
- 無量大数(むりょうたいすう):10の68乗
無量大数は、学校の自由研究や雑学で紹介されることがありますが、実際には日常生活や科学の世界でも使われることはほぼありません。それほど途方もなく大きな数字なのです。
実は無量大数よりもっと大きな単位がある?
無量大数は日本語で表す最大の単位だと言われていますが、実は仏教の経典には、これを遥かに超える巨大な数の単位が記されています。それらは「上数(じょうすう)」と呼ばれています。
無量大数を超える驚きの単位たち
無量大数よりもさらに大きな単位の代表的なものを紹介します。これらは数が大きくなるたびに、そのゼロの数が倍々に増えていく特徴があります。
- 矜羯羅(こんがら):10の112乗(無量大数の次の位)
- 阿伽羅(あから):10の224乗
- 最勝(さいしょう):10の448乗
- 摩婆羅(まばら):10の896乗
- 阿婆羅(あばら):10の1792乗
これらの数字は途方もない大きさで、具体的に使われることはありませんが、仏教では世界や功徳の大きさを象徴するために用いられているのです。
最大の単位「不可説不可説転」とは?
仏教経典『華厳経(けごんきょう)』に登場する命数法の中で、最も大きな単位として知られるのが「不可説不可説転(ふかせつふかせつてん)」です。
この単位は「10の3.7×10の37乗(10の37218383881977644441306597687849648128乗)」という信じられない大きさの数値で、ゼロの数は37,218,383,881,977,644,441,306,597,687,849,648,128個も並びます。
これは、「無量大数(10の68乗)」がほとんどゼロに感じられるほどの巨大な単位で、仏教的な考え方の中でも特別な存在です。あまりにも大きすぎるために、数学や科学の世界でも実用的に使われることはなく、むしろ数字の限界や想像力を刺激するための存在といえます。
なぜこんな大きな単位が生まれたのか?
これらの巨大な数の単位が生まれた背景には、仏教の独特の世界観があります。仏教では、この宇宙には無数の世界があり、その広さや数はとても数え切れないものだと考えました。
そのため、世界の広さや仏の功徳(よい行いの積み重ねによる恵み)の大きさを象徴するために、実際には使われないほど巨大な単位が生まれたのです。
特に『華厳経』は、このような巨大な数字を使って、宇宙のスケールの大きさや人間の想像力を超えるものを表現しようとしたのだと考えられています。
世界には他にも驚くほど大きな数字がある
日本や仏教経典以外の世界にも、非常に大きな数を表現する言葉や単位があります。特に数学の世界では、「グーゴル(googol)」や「グーゴルプレックス(googolplex)」といった巨大な数が知られています。
- グーゴル(googol):10の100乗。1の後ろにゼロが100個並ぶ数
- グーゴルプレックス(googolplex):10のグーゴル乗という、さらに桁違いに大きな数
また、数学の証明で使われる最大級の巨大数として、「グラハム数(Graham’s number)」があります。この数はあまりに巨大すぎて、普通の数字や指数で表すことができず、専用の表記方法が必要なほどです。
このように、巨大な数の単位や表現は文化や数学的な研究の中で生まれ、人間が宇宙や世界の広さを想像するときの限界を示しているともいえます。
ちなみに、世界的に有名な検索エンジン『Google』の名前は、もともとこの巨大数のひとつである「グーゴル(googol)」が由来です。「世界中の膨大な情報を整理する」という目的から、途方もない大きさを持つこの数字が選ばれましたが、ドメインを登録する際に誤って「google」と綴ってしまい、そのまま採用されたというエピソードがあります。
まとめ
数の単位は単なる数え方以上に、各文化が世界の大きさをどう捉えているかを映し出しています。仏教では、途方もない単位を使って「無限」や「宇宙の広大さ」を表現し、西洋では数学的探究によって新たな巨大数が生まれました。普段の生活では決して触れない数も、私たちの想像力を刺激し、未知の世界への好奇心を育ててくれる存在なのです。