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最新データから見る転職の実態
近年、日本では転職が一般化しており、2024年の正社員の転職率は7.2%に達しています。これは新型コロナウイルス流行前の2019年の水準を超え、特に40~50代で転職をする人が増加している状況です。
また、厚生労働省の調査によれば、日本の平均勤続年数は約12.7年とされ、以前より「3年以内の転職」が特別なケースではなくなりつつあります。こうした統計からも、現在では転職に対する抵抗感が薄れ、「キャリアアップ」や「職場改善」を目的に仕事を変える人が増えていることがわかります。
実際に転職を決断する人たちは、どのような理由から新しい職場を求めるのでしょうか。近年の転職理由を具体的に見ていきましょう。
2024年、転職理由で最多なのは「給与」
厚生労働省の最新調査によると、転職者が前職を辞めた理由として最も多いのは「給与が低い」(25.5%)であり、新たな職場を選ぶ際の最大の決定理由も「給与が良い」(25.9%)となっています。また、男女別に見ると女性は勤務地や職場環境など、生活との調和を重視する傾向が強いことがわかります。これは、単に給料が高いだけでなく、働きやすさやライフスタイルの実現を重視する人が増えていることを示しています。
こうした背景から、転職を頻繁に繰り返す人には共通する心理や特徴が存在すると考えられます。その具体的な特徴を詳しく見ていきましょう。
転職を繰り返す人に見られる5つの特徴
転職を何度も繰り返す人には、一定の傾向があります。その代表的な特徴を5つご紹介します。
1. 新しいことを好み、常に刺激を求めてしまう
仕事は、一定の分野や業務を継続的に行うことで専門的なスキルを高めることが一般的です。しかし、転職を繰り返す人は、同じ仕事を続けることに苦痛を感じ、新しい刺激を常に求める傾向があります。仕事に変化や新鮮味がなくなると興味を失い、次々に転職してしまうのです。
2. 細かな点を気にしすぎてストレスを抱えやすい
仕事をする上で細かな変化に気付くことは重要ですが、あまりにも些細なことを気にしすぎると周囲から敬遠されることがあります。その結果、周囲の理解を得られずストレスが溜まりやすくなり、結局職場を離れることにつながります。些細なことを気にし過ぎる性格が職場での居心地を悪化させることがあるのです。
3. 我慢が苦手で、すぐに職場から離れてしまう
少しでも職場で嫌なことがあると「この職場は自分に合わない」と感じて、すぐに辞めてしまう人もいます。嫌なことがあった翌日から出社しない、というケースも珍しくありません。こうしたタイプの人は、ストレス耐性が低く、困難に直面するとすぐに逃げ出してしまう傾向があります。
4. 自分の能力や得意分野への理解が不足している
自分の実力や得意分野を正しく理解できていない人は、自身の能力と合わない職場を選ぶ傾向があります。自分のスキルを過大評価し、実際に業務に携わるとミスが頻発し、自分も周囲も困惑する結果になってしまいます。こうなると「こんなはずではなかった」と感じて転職を繰り返してしまいます。自己理解が不足していることが、仕事選びの失敗を招く原因となっています。
5. 円滑なコミュニケーションが取れず、人間関係が築けない
職場で円滑なコミュニケーションが取れない人は、周囲との信頼関係を構築するのが難しくなります。報告・連絡・相談がうまくできないため、ミスを報告できずに信頼を失い、職場に居づらくなるケースが多くなります。コミュニケーション力不足が職場を転々とする原因となることも少なくありません。
このように転職を繰り返す人の特徴には、心理面や性格面などさまざまな要素が関わっています。その一方で、職場を転々とすることには一定のメリットやリスクも存在します。
企業側が転職回数を気にするのは何回目から?
転職を繰り返すことには、本人にとって明確な理由がある場合でも、採用する企業側にとっては懸念材料になる場合があります。
特に企業が応募者の転職回数を気にし始めるのは、一般的には3回目以降の転職からと言われています。エン・ジャパンが2025年に行った調査によると、採用担当者の約34%が「転職回数が3回を超えると、採用時に不安を感じる」と回答しています。
しかし、この調査では一方で、企業が転職回数よりも専門的なスキルや経験の中身を重視していることも示されています。特にIT業界や技術職などスキル重視の分野では、転職経験が豊富であることがむしろプラスに評価されることもあります。転職回数そのものよりも、キャリアの一貫性や転職の理由を企業に納得させることが重要なのです。
転職を繰り返すことは決して一方的にネガティブなわけではなく、世代や職種によって受け取られ方が大きく異なることがわかります。
世代や職種による転職への意識の違い
最近では特に20代の若手世代(Z世代)の間で、転職をポジティブに捉える傾向が強まっています。Z世代の転職率はここ5年で約2倍に増えており、転職によって自身のスキルを向上させたり、新しい職場での自己実現を図ることを当然の権利として考える人が多くなっています。
また、IT業界を中心とする技術職においては、プロジェクトごとに職場を変えることがむしろ一般的です。企業側もジョブホッピングそのものを問題視せず、プロジェクトの達成度や技術的な成果を評価する傾向が強まっています。ただし、いくら許容度が高い業界であっても、過度に頻繁な転職は不採用のリスクを伴います。職場を選ぶ際は、その理由や目的を明確にすることが大切です。
世代や業界による許容度の差が明確になる一方で、働き方そのものも変化しつつあります。近年では、リモートワークや副業という新たな働き方が転職の判断基準として大きな影響を与えています。
リモートワークや副業の普及と働き方の変化
リモートワークの普及はここ数年で急速に進み、2024年時点で企業の約半数がリモートワークを導入しています。正社員の3人に1人以上が日常的にリモートで働いているというデータもあり、「フルリモート勤務」の求人はまだ全体の2.9%にとどまるものの、「週1日出社型」の求人は36.5%と高い割合を占めています。
また、副業や兼業を容認する企業も増えており、2025年時点で約60.9%の企業が副業を認めています。こうした新しい働き方を求めて転職を決意する人も増えており、職場を転々とする背景には、こうした柔軟な働き方へのニーズが存在する場合もあるのです。
職場選びには、自分のライフスタイルや将来設計を反映させることがますます重要になっています。とはいえ、こうした転職にはメリットばかりではなく、当然リスクも存在します。
転職を繰り返すメリットとリスクを改めて整理
転職を頻繁に繰り返すことにはメリットもあります。その最も大きなメリットは、キャリアの可能性を広げることにあります。転職するたびに新たなスキルを身につけたり、人脈を拡げたり、年収アップを実現できる可能性もあります。また、自分の適性や「やりたいこと」を模索する期間として転職を捉える人も増えています。
しかし、転職には当然リスクも伴います。何度も転職をすると、キャリアの一貫性が損なわれ、採用企業からは「飽きっぽい」「困難に直面すると逃げる人材」というイメージを持たれる可能性があります。また、短期間で職場を変えることで専門性が身に付きにくく、結果として長期的なキャリア形成が難しくなるリスクも存在します。
このように、転職を繰り返す際には、自分が何を得たいのか、どのようなキャリアを築きたいのかを冷静に考え、行動することが求められます。転職はあくまで一つの手段であり、それ自体が目的になってしまわないよう注意する必要があります。
転職を成功させるために意識したいこと
転職を成功させるためには、自分のキャリアの一貫性を明確に示し、企業側が納得できる理由を伝えることが重要です。具体的には以下のポイントを意識しましょう。
- 自分が得意なことや適性を客観的に把握すること。
- 転職理由に説得力を持たせ、具体的な成果や経験をアピールすること。
- 一つの職場に最低でも3年以上在籍し、そこで何らかの成果を出すこと。
- 転職するごとに、自分のスキルや市場価値が向上しているか定期的にチェックすること。
転職を繰り返すこと自体は必ずしもネガティブではありませんが、目的意識を持ち、自分自身のキャリアを戦略的に考えることが何より重要なのです。