目次
大筆の洗い方
まずは、大筆の洗い方を見ていきましょう。
1.ぬるま湯で筆先を洗う
30~40℃のぬるま湯を使う
初めに、30~40℃前後のぬるま湯で大筆の根元を洗いましょう。流水で洗っても構いませんが、毛に余計な水圧がかかってしまうので、毛の乱れの原因になります。できれば、ボウルに溜めたぬるま湯に筆を浸けながら洗った方がベストです。
毛の奥の部分まで洗う
筆の毛は、毛が差込み部分の奥まで入っています。墨汁をつけると奥の毛まで浸透しているので、そこも洗い流す必要があります。
しかし、奥の毛は直接洗うことができませんよね。方法はあるのですが、これがなかなか根気のいる作業です。根元部分を何度も揉みほぐすことで、奥に浸透した墨汁を落とす事ができます。洗っても洗っても墨汁が流れてきます。それだけ、筆の内部に墨汁が染み込んでいる証拠!
奥の墨汁も流さないと筆が劣化する
ちなみに、大筆の奥まで浸透した墨汁をいつまでも洗わずに放置すると、毛が傷み始め、腐り、そして最終的には筆が割れてしまいます。奥の墨汁もしっかりと洗い流すようにしましょう。
2.毛の水気を切り、穂先を整える
優しく毛を絞る
墨汁が出なくなるまで洗い終わったら、筆の毛に付いた水気を切りましょう。水気を切る時は、なるべく優しく毛をキュッと絞ってください。あまり強く絞ると、毛の形が変形してしまいます。
毛先を円錐状に戻す
水気を切ったら、根元から毛先に向けて、スーッと指の腹で穂先を整えてください。大筆本来の形である円錐状をイメージして整えましょう。ポイントは優しく筆を掴むことですよ!
3.大筆を吊るして自然乾燥させる
毛を下にして乾燥させる
洗い終わった大筆は、筆吊りに吊るして、毛を地面に向けてください。換気の良い場所に立てて、自然に乾くのを待ちましょう。
次に使う時は毛が乾いてから!
次に使う時は、必ず毛が乾いているのを確認してから使用してくださいね。乾き切っていない状態で使うと、内部の毛が水分を含んでいる時間が長くなり、毛が傷む、または腐る原因になります。腐ると毛がごっそり抜けてしまい、大筆を使用することができなくなるのです。
小筆の洗い方
次に、小筆の洗い方です!洗い方、というよりも、お手入れの方法というべきでしょうか。実は、小筆というのは、水で洗う必要のない筆です。ではどうやってお手入れをするのか?その方法を、ご覧ください。
1.墨汁を拭き取る
ティッシュなどで墨汁を拭き取る
小筆をお手入れする時は、まず、ティッシュやキッチンペーパーなどで毛に付いた墨汁を拭き取ります。水分の吸収に適した半紙を使うのも良いでしょう。
濡らした紙で穂先を整えながら墨汁を拭き取る
次に、新しい拭き取り用の紙に水を数滴、ちょこっとだけ付けます。紙がびっしょりとならないように気を付けてください。
濡らした紙の上に小筆を寝かします。そのまま濡れた紙で小筆の毛を包み込んで、穂先を揃えるように、残った墨汁を拭き取ります。もちろん、優しく拭き取ってください!
小筆は安定して細い字をかけるように、毛を糊につけて固めています。この「糊」まで拭き取って、毛をふにゃふにゃにしてはいけません!墨汁が集中した毛先だけを拭き取るようにしましょう。
取れる墨が薄くなったらOK
そして、墨が薄くなったら終了です。完全に墨がでなくなるまで、念入りに拭き取らなくても良いですよ。毛先以外の他の部分は軽く拭くだけでOKなんです。
2.小筆の形を整える
元の形に整える
拭き取る時に、小筆の形を意識しながら毛を整えてください。大筆と同じく円錐状のイメージです。小筆は糊によって形が固定されているので、むしろ形を崩さない様に注意が必要です!
糊が取れると毛先がバサバサに!
もしも糊が取れてしまったら?小筆の毛が大きく広がって、まるでパーマのような状態になります。そうなると小筆の特徴である「細くて繊細な字」が書けなくなってしまいます。
3.小筆を吊るして自然乾燥させる
仕上げに小筆も自然乾燥です!小筆を乾燥させるときは、大筆と同じで、筆吊りに引っ掛けて換気の良い場所に置いておきましょう。
筆を洗うときの注意点
筆は非常に繊細な文具です。筆を洗う時には細心の注意を払いましょう。では具体的に、何を気を付ければいいのか?下の3点を注意してお手入れします。
- お手入れ中は、優しく扱う!
- 洗う時に人用の洗剤は使わない!
- 筆巻やキャップは乾燥させてからはめる!
お手入れ中は筆を優しく扱う
1つ目は何度も説明してきましたが、お手入れ中や毛を整えるときは、筆を優しく扱ってください。強く握ると毛の形が変わってしまい、思うように字を書けなくなってしまいます。水を溜めた容器で筆を洗う時は、容器に筆を押しつけない様に気を付けましょう。
穂先は筆の命です。一度変形すると、形を直すのが難しく、正確に文字を書くことができません。大筆ならまだしも、繊細な字を書くときに必要な小筆は、穂先が変わるとダメージが大きいです。
人間に使う洗剤を使ってはいけない
2つ目に、筆を洗う時は人用のシャンプーなどを使わないようにしましょう。「いやいや、そもそも筆にシャンプーなんて使わないから!」と思うかもしれませんが、実は筆用のシャンプーというものが開発されています。
洗わずに放置し続けた筆の墨汁は、水洗いでは落とせなくなってしまいます。そんな時に活躍するのが筆用シャンプーです。そういう商品が実際にあることから、代用として人用のシャンプーや中性洗剤も使えるのでは?と勘違いしてはいけません。
人用のシャンプーや中性洗剤は皮脂を落とす力が強すぎるので、それらで筆の毛を洗うと、必要な油分を落としてパサパサにしてしまいます。
キャップ等は毛が乾燥しきってからつける
最後の3つ目は、半乾き状態の筆を筆巻やキャップで包まないことです。筆も衣類と同じで、乾いていないのに密封するとカビが発生します。また、穂先が広がってしまったり、毛がズルッと抜け落ちる可能性もあるので、しっかりと自然乾燥させることを心がけましょう。
傷んだ筆のお手入れ方法
もしも、使い続けた筆が傷んだり、糊がはげてしまったら?すぐに捨ててはいけません。筆を元通りに復活させる方法があります。
筆の先端が割れてしまった時のお手入れ方法
筆の先端が二つにパカッと割れてしまう理由は以下の2点が考えられます。
- 乱暴に扱って割れてしまうパターン
- ずっと洗わずに放置したパターン
乱暴に扱った場合は対処することができません。しかし、洗わずに放置した結果、筆の先端が割れた場合は対処できます。
原因は筆の根元付近、内部に溜まった墨です。墨を取り除けば元通りになります。大筆の洗い方でも説明しましたが、40~50℃のぬるま湯に、筆と根元付近を浸ければ、墨が溶けて、毛を戻すことが可能です。
筆の糊が落ちてしまった時のお手入れ方法
筆には、毛の形を保つための糊がつけられています。この糊が落ちてしまうと、毛にまとまりが無くなって、絵筆のように広がってしまうのです。
洗ったり、使ったりしているうちに、糊は自然と落ちてしまうので仕方がありませんが、毛先が広がっていると美しい文字をかけませんよね?しかし、糊が無くとも、筆巻を根元から巻いて形作れば、またキレイな毛先に戻すことができます!
筆のおろし方
続いて筆のおろし方についてご紹介します!購入したばかりの筆は、一見すると美しい穂先を保っているように見えますが、これは原毛が広がらない様に糊でくっつけているだけの状態です。糊をとって、使いやすい穂先に調整する必要があります。大筆と小筆でそれぞれ違ったおろし方があります。
大筆の筆おろし方法
大筆の場合は、筆の毛全体を使って文字を書くための筆なので、穂先全体の糊を落としてください。指の腹で穂先を優しくつまんで、形をほぐしたら、円錐状を意識した形作りをします。
小筆の筆おろし方法
小筆の場合は、繊細な文字をかくための筆なので、ほぐすのは先端だけです。先端の文字を書く部分だけ指でほぐし、それ以外の箇所は一切触らないでください。
ぬるま湯でほぐすのが鉄則だが、小筆は先端だけ
大筆、小筆、どちらにも共通しますが、指でほぐせないほど糊が硬かったら、水かぬるま湯を使ってほぐすとよいでしょう。ただし、小筆は先端部分だけを濡らすように注意が必要ですよ!濡らして糊を落としたら、しっかり乾かしてから使ってください。
まとめ:筆は正しく洗わないと長く使えなくなる!
以上が、大筆と小筆の洗い方と注意点、そしてお手入れ方法と筆おろしの方法でした。筆の扱いはとにかく優しく丁寧に、そして乾燥が大事だということがわかりましたね。とても繊細な毛質なので、使ってよい洗剤は筆専用のみです。人用シャンプーでは洗浄力が強すぎますので使用しないでください。
また、傷んでしまった筆は、意外と簡単に復活することができます。すぐに捨てる判断をするのではなく、何が原因で筆が傷んでしまったのかをチェックしましょう。筆おろしは、大筆小筆によって、おろし方が変わってきます。おろし方を間違えると、今後書くときに影響がでるので注意してくださいね。
筆を長持ちさせるには、おろし方からお手入れの方法まで、しっかりポイントを押さえておきましょう。