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首都直下地震が30年以内に起こる確率は約70%と予想
首都直下型地震は、東京を中心に発生すると予想される大規模地震を指します。地震調査研究推進本部(地震本部)の2024年の調査によると、この地震が30年以内に発生する確率は約70%とされています。この数字は過去数年間大きく変化しておらず、高いリスクが継続していることを示しています。
「70%という確率は、サイコロを振って1から5の目が出る確率とほぼ同じです」とある防災専門家は警鐘を鳴らします。「つまり、いつ起きてもおかしくないということです」
東京都では、このリスクに備えて5年ごとに「地震に関する地域危険度測定調査」を実施しています。この調査では、以下の3つの要素を基に各地域の危険度を評価しています。
- 建物倒壊危険度:地震の揺れによる建物倒壊のリスク
- 火災危険度:地震後の火災発生と延焼のリスク
- 災害時活動困難度:救助・救援活動の困難さ
これらの要素を総合的に評価し、「総合危険度」として5段階でランク付けされています。例えば、古い木造建築が密集し、道路が狭い地域は、建物の倒壊リスクと火災リスクが高く、さらに救助活動も困難になるため、総合危険度が高くなります。
【東京23区】大地震が起きたら特に危険な地域5選
最新の調査結果に基づき、東京23区内で特に危険度が高いとされる上位5地域を紹介します。これらの地域に住んでいる方、または近隣に住んでいる方は、特に注意が必要です。
1. 荒川区 荒川6丁目
- 総合危険度: 最高ランク(5)
- 特徴: 地盤が非常に軟弱で、建物の倒壊リスクが極めて高い
- 対策: 建物の耐震化と不燃化が急務、避難経路の確保が重要
荒川6丁目は、かつての湿地帯を埋め立てて造成された地域です。そのため、地盤が軟弱で地震の揺れが増幅されやすい特徴があります。「この地域では、震度6強の地震でも震度7相当の揺れを経験する可能性があります」と地盤工学の専門家は指摘します。
2. 荒川区 町屋4丁目
- 総合危険度: 最高ランク(5)
- 特徴: 木造建築物が密集し、火災延焼のリスクが高い
- 対策: 防火・耐火建築物への建て替え促進、消火設備の充実
町屋4丁目は、戦後急速に発展した住宅地で、古い木造家屋が密集しています。「一度火災が発生すると、狭い路地を通じて急速に延焼する恐れがあります」と地元の消防団員は警告します。
3. 足立区 柳原2丁目
- 総合危険度: 最高ランク(5)
- 特徴: 液状化のリスクが高く、建物倒壊の危険性大
- 対策: 地盤改良工事の推進、建物基礎の強化
柳原2丁目は、かつての河川敷に位置し、地下水位が高いため液状化のリスクが極めて高い地域です。「大地震時には、地面から泥水が噴き出し、建物が沈下や傾斜を起こす可能性があります」と地盤工学の専門家は説明します。
4. 足立区 千住柳町
- 総合危険度: 最高ランク(5)
- 特徴: 火災危険度が特に高く、延焼速度が速いと予測
- 対策: 地域の消火能力の向上、防火水槽の設置
千住柳町は、江戸時代からの古い町並みが残る地域です。狭い路地と木造建築が多いため、火災が発生した際の延焼速度が非常に速いと予測されています。「この地域では、隣近所で協力して初期消火に当たることが極めて重要です」と地元の消防団員は強調します。
5. 墨田区 京島2丁目
- 総合危険度: 最高ランク(5)
- 特徴: 建物倒壊リスクと火災リスクの両方が高い
- 対策: 総合的な市街地再開発、防災まちづくりの推進
京島2丁目は、建物の倒壊リスクと火災リスクの両方が高い地域です。「この地域では、建物の耐震化と同時に、街全体の防災性能を高める取り組みが必要です」と都市計画の専門家は指摘します。
危険度の高い上位10地域
先ほど詳しく見た5地域以外にも、東京23区内には地震に対して特に警戒が必要な地域があります。以下は、総合危険度が特に高いとされる上位10地域のリストです。
- 1. 荒川区 荒川6丁目
- 2. 荒川区 町屋4丁目
- 3. 足立区 柳原2丁目
- 4. 足立区 千住柳町
- 5. 墨田区 京島2丁目
- 6. 足立区 関原3丁目
- 7. 墨田区 押上2丁目
- 8. 足立区 関原1丁目
- 9. 墨田区 京島3丁目
- 10. 足立区 梅田1丁目
このリストを見ると、荒川区、足立区、墨田区の特定の地域が繰り返し登場していることがわかります。これらの地域に共通する特徴として、以下の点が挙げられます。
- 軟弱な地盤:多くの地域が河川の近くや昔の低湿地にあり、地震の揺れが増幅されやすい
- 木造住宅の密集:戦後急速に発展した地域が多く、耐震性の低い古い木造家屋が密集している
- 狭隘な道路:緊急車両の進入や避難が困難な狭い道路が多い
「これらの地域は、歴史的な背景や都市開発の過程で生じた課題が重なっています」と都市計画の専門家は指摘します。「しかし、危険度が高いからこそ、行政と住民が一体となった防災対策が進んでいる地域も多いのです」
実際、これらの地域では、建物の耐震化や不燃化、路地の拡幅などのハード面の対策に加え、地域コミュニティによる防災訓練や声かけ運動など、ソフト面での取り組みも活発に行われています。
もし自分の住む地域や勤務先がこのリストに含まれている場合、特に警戒が必要です。しかし、それ以外の地域でも油断は禁物です。「東京23区全体が地震のリスクを抱えていると考え、どの地域でも十分な備えをすることが重要です」と防災の専門家は強調します。
次は、これらの危険度の高い地域での具体的な対策について、さらに詳しく見ていきましょう。
危険度が高い地域の特徴と対策
これらの地域が危険とされる背景には、歴史的な要因も関係しています。都市計画の専門家によると、「関東大震災や東京大空襲で被災した人々が新たに住み着いた地域が多く、計画的な都市開発がなされていないことが要因の一つ」とされています。
こうした地域では、以下のような対策が特に重要です。
- 建物の耐震化:古い木造建築物の耐震診断と必要に応じた補強工事
- 不燃化・難燃化:建物の不燃材料での建て替えや外壁の防火処理
- 避難経路の確保:狭い道路の拡幅や行き止まり道路の解消
- コミュニティの防災力強化:地域ぐるみの防災訓練や消火活動の体制づくり
「地域の防災力を高めるには、ハード面の整備だけでなく、住民同士のつながりを強化することが重要です」と防災の専門家は強調します。「日頃からの挨拶や声かけが、いざという時の助け合いにつながるのです」
大地震に備えてできる具体的な防災対策
大地震に備えて、私たち一人ひとりができる対策は多岐にわたります。以下の項目を参考に、自分の家庭での防災対策を見直してみましょう。
家の中の安全対策
- □ 家具の固定:タンスや本棚を壁に固定し、転倒を防ぐ
- □ 照明器具の固定:天井からつり下げた照明は、落下防止ワイヤーを付ける
- □ ガラスの飛散防止:窓や食器棚のガラスに飛散防止フィルムを貼る
- □ 寝室の安全確保:ベッドの周りに家具を置かない
非常用品の準備
- □ 非常用持ち出し袋の用意:水、食料(3日分)、懐中電灯、携帯ラジオ、救急セット、常備薬を用意
- □ 備蓄品の確保:家族全員分の水と食料を1週間分程度備蓄
- □ 防災グッズの定期チェック:年に2回程度、中身の消費期限や電池の状態を確認
情報収集と共有
- □ 避難場所の確認:家族で最寄りの避難場所を確認し、実際に経路を歩いてみる
- □ 家族との連絡方法の確認:災害用伝言ダイヤル(171)の使い方を家族で確認
- □ 地域の防災マップの確認:自治体が発行する防災マップで、自宅周辺の危険箇所を把握
家の耐震対策
- □ 耐震診断の実施:自宅の耐震性能を確認し、必要に応じて補強を行う
- □ ブロック塀の点検:危険なブロック塀は補強または撤去を検討
地域とのつながり
- □ 防災訓練への参加:地域の防災訓練に積極的に参加する
- □ 近所づきあいの強化:日頃から挨拶を交わし、顔の見える関係を作る
- □ 要支援者の把握:高齢者や障がい者など、災害時に支援が必要な方を把握する
「これらの対策は、一度にすべてを完璧に行う必要はありません。できることから少しずつ始めていくことが大切です」とある防災専門家はアドバイスします。
また、定期的な防災訓練も重要です。家族で以下のような訓練を行ってみましょう。
- 地震発生時の初動訓練:「落ちてこない、倒れてこない、移動してこない」場所に身を寄せる
- 消火器の使用訓練:水消火器を使って、実際に使用方法を体験する
- 避難経路の確認:夜間や悪天候時など、様々な条件下での避難経路を確認する
「日頃の備えが、いざという時の冷静な行動につながります。家族や地域で話し合い、定期的に防災対策を見直すことが重要です」と専門家は強調します。
これらの対策を通じて、私たち一人ひとりが「自助」の力を高めることが、地域全体の防災力向上につながるのです。
まとめ:備えあれば憂いなし!
首都直下型地震は、いつ起きてもおかしくない状況です。しかし、適切な準備をすることで、被害を最小限に抑えることができます。特に危険度の高い地域にお住まいの方は、行政の取り組みに頼るだけでなく、自身でできる対策を積極的に行うことが重要です。
「災害に強いまちづくりは、一朝一夕にはできません。しかし、一人ひとりの小さな取り組みが、やがて大きな力となります」と防災の専門家は締めくくります。
私たちにできることから、今日から始めてみましょう。それが、自分と大切な人の命を守ることにつながるのです。