目次
重曹はアルカリ性なのか
重曹(炭酸水素ナトリウム/NaHCO3)は常温では粉末状で、酸性・アルカリ性いずれも示しません。一方、重曹は水に溶かすとアルカリ性を示すようになります。水に溶かすとアルカリ性になる理由と、重曹の強さについて見てみましょう。
そもそも酸性・アルカリ性とは?
そもそも酸性・アルカリ性とは、水溶液の性質を指します。通常水は水素と酸素が一定の割合で含まれていますが、物質を溶かすことで水素イオンと水酸化物イオンに分かれることがあります。この時、水素イオンと水酸化イオンの割合によって水溶液の性質も変化。酸性とアルカリ性に分かれます。
酸性は水素イオンが多く、酸っぱいです。アルカリ性は水酸化物イオンが多く、苦くなります。常温で粉末状の物質の場合、水に溶かすことではじめて酸性・アルカリ性を示すようになるのです。
重曹のpHはどの位?
酸性・アルカリ性の強さはpH値で示します。pH値とは水溶液中にどの程度水素イオンが含まれているか示したもので、pH値が小さいほど酸性が強く、pH値が大きいほどアルカリ性が強くなります。pH7は中性です。重曹のpH値は8ですので、弱いアルカリ性といえます。
重曹の特徴
重曹は掃除・料理など日頃の生活で幅広く用いられます。重曹の安全性と特徴について見てきましょう。
重曹は安全?
アルカリ性が高い物質の場合、身体に悪影響を及ぼす可能性があります。ただ、重曹はアルカリ性ですが、その力は非常に弱いです。人体に与える影響も少なく、比較的安全な物質といえます。
発泡・膨張作用
重曹は酸と反応させたり熱を加えたりすることで、二酸化炭素を発生させます。また、比較的アルカリ性が弱く人体への影響も少ないため、古くから食品を膨らませたり、胃薬として利用されたりしてきました。
研磨作用
重曹は一粒一粒の粒子が小さく、水に溶けにくいです。そのため、細かい粒子が汚れに入り込み、削り取る効果が期待されます。
消臭・吸湿作用
酸性の臭いはアルカリ性と結びつくことで消えます。重曹はアルカリ性ですので、酸性の臭いを消すことができるのです。さらに、粒子の間に空気中の水分が入り込むため、吸湿作用もあります。
軟水作用
重曹は水に含まれる金属イオンの働きを抑えます。水に含まれる金属イオンが抑えられると、その分水は軟らかくなります。
重曹は保存しやすい
重曹は常温では粉末状となっています。水に比較的溶けにくく、空気に触れても反応しないため、長期保存も可能です。なお、空気中の水分を粒子内に取り込む性質もありますので、保存する際は密閉容器に入れるようにしましょう。
重曹が得意な汚れ・苦手な汚れ
重曹はどんな汚れにも効くわけではありません。重曹には得意な汚れと苦手な汚れがあります。
重曹が得意な汚れ
汚れや臭いは中和することで消えますが、重曹は弱アルカリ性ですので、弱酸性の汚れや臭いを消すことが可能です。具体的には皮脂や軽い脂汚れが挙げられるでしょう。例えば、粉末状の重曹には研磨作用があるため、水アカ等こびりついた汚れを落とすことができます。
シンク・お風呂・蛇口等は重曹の研磨作用を利用するときれいにすることができるでしょう。また、重曹は水やお湯に溶かすと二酸化炭素を発生させます。重曹が二酸化炭素を発生させることで、鍋のコゲ等こびりついた汚れを浮かすことが可能です。
油汚れは要注意
油は酸性ですが、酸性の汚れは、アルカリ性と反応させることで中和し、落としやすくなります。
重曹はアルカリ性ですので、酸性の汚れを落とすことが可能です。しかし、油汚れの程度によっては、重曹では対応できない場合もあります。
なぜなら、重曹は弱アルカリ性だからです。汚れの程度がひどいと、pH値も強くなります。強い酸性と弱いアルカリ性を反応させた場合、酸性の程度を弱めることはできますが中和することはできません。油汚れが強いと中和しきれず、汚れも残ってしまうのです。
アルカリ性の汚れ・臭いには対応できない
重曹は同じアルカリ性の汚れ・臭いには対応できません。アルカリ性由来の汚れ・臭いとしては例えば白くカチカチになった水アカ汚れ、アンモニア臭等が挙げられます。したがって、水回りやトイレ掃除にはあまり向いていないといえます。
アルカリ性の重曹は飲んでも問題ないのか
アルカリ性の物質の中には危険性の高いものもありますが、重曹は力が弱く、比較的安全性が高いとされています。この安全性の高さから、古くから膨らし粉、胃薬等に用いられてきました。
なお、重曹は粒の大きさや管理方法によって薬用・食用・工業用の3種類に分かれます。工業用の場合薬用・食用に比べると管理の基準が甘く、不純物が混じっている可能性もあります。もし重曹を体内に入れる場合は、食用・薬用を選ぶようにしましょう。
重曹とクエン酸の違い
掃除道具としてよく用いられるものとして、重曹とクエン酸が挙げられます。重曹もクエン酸も常温では白い粉末ですが、水に溶かすと性質が大きく変わります。クエン酸の特徴と重曹との違いも見てみましょう。
クエン酸って?
クエン酸とは柑橘類や梅干しなどに含まれる酸っぱい成分のことで、酸性・アルカリ性の強さを示すpH値は2です。pH値2というのは、胃液と同程度の酸性を示します。
クエン酸は体内で糖をエネルギー源に変換する際、なくてはならない成分です。酸性が強く、人体への影響も少ないことからあく抜きや掃除など日常生活で幅広く用いられています。
クエン酸が得意な汚れ
酸性のクエン酸はアルカリ性の汚れや臭いを中和する力があります。例えば、白くカチカチした水アカはアルカリ性です。したがって、電気ポットや食器洗い機、水回りの掃除に向いています。
また、トイレ独特の臭いの原因であるアンモニア臭も、アルカリ性です。そのため、クエン酸をつかって掃除をすると、アンモニアを中和し、臭い消しにつながります。
重曹とクエン酸をそろえておこう
重曹とクエン酸の違いとしてまず挙げられるのが、水に溶かしたときの性質の違いです。重曹は水に溶かすとpH8、弱アルカリ性を示します。一方、クエン酸は水に溶かすとpH2、強酸性です。
アルカリ性と酸性は反応させると中和し、互いの効果を打ち消し合います。なお、酸性の汚れには重曹、アルカリ性の汚れにはクエン酸を使うと良いでしょう。
重曹は使い方が大切
重曹は比較的弱いアルカリ性ですので、人体に与える影響が少ないです。酸性の汚れを落としたり、研磨剤として利用したり、食品を膨らませたりとその働きは様々です。ただし、重曹には苦手な部分もあります。重曹の苦手な部分は、クエン酸等他のもので補うようにしていくことが大切です。重曹の特徴を把握し、重曹の得意な部分を生活に取り入れるようにしましょう。