目次
牡蠣の茹で時間
牡蠣の茹で時間は重要
牡蠣の茹で時間はウイルスの感染に関係してくるので、とても重要です。逆を言えば牡蠣によるウイルスの中でも代表的なノロウイルスは加熱さえきちんとすれば対策できるので、しっかりと茹でることがポイントになります。
とはいえ茹ですぎると身が縮んで美味しくなくなってしまうので、どれくらい茹でるかは悩みどころですよね。牡蠣の茹で時間は、ウイルスが力を失い、且つ美味しさを損なわないことが重要だと覚えておきましょう。
牡蠣の食あたりはほとんどがノロウイルス
牡蠣はノロウイルスに感染されやすい貝です。「牡蠣にあたった」という話を聞いたことがあると思いますが、牡蠣にあたる原因のほとんどがノロウイルスです。牡蠣の中心部は茶色や黒の内臓になっていますが、この部分にノロウイルスが潜んでいるのです。
ノロウイルスは、嘔吐や下痢など急性胃腸炎が症状としてあらわれます。経口感染するので、家族で牡蠣を食べたら全員感染したということもあるわけです。
10月から4月に感染者が多くなりますが、牡蠣が美味しい季節とも合致しているので、なおさら気を付けなければなりません。
ノロウイルスと聞くと心配になるかもしれませんが、だからといって牡蠣を避ける必要はありません。牡蠣の茹で時間を厚生労働省が推奨している加熱基準通り茹でれば、ノロウイルスは消滅しますので大丈夫です!
細菌性食中毒や貝毒にも注意
牡蠣にはノロウイルスの他にも、細菌由来の食中毒や貝毒の心配があります。
細菌由来の食中毒の多くは、鮮度のよくない牡蠣を食べたことが原因です。鮮度の落ちた牡蠣は豊富な海の栄養が菌のエサになるので、雑菌がどんどん繁殖してしまうのです。
こうなると茹でても食中毒症状が出る場合があるので、新鮮な牡蠣を選ぶことが大切です。貝柱が大きく半透明なもの、身がぷりっと膨らんでいるものを選びましょう。
一方貝毒は、過去に日本で死亡例も起きている恐ろしい症状です。牡蠣やホタテなどの二枚貝が持つ自然毒のことで、茹でるだけで毒性が弱くなることはありません。
市場に出回っている牡蠣は検査を通しているため貝毒の心配はありませんが、自分で取ってきた牡蠣は注意が必要です。
夏場の牡蠣は腸炎ビブリオに注意
夏場は海水温度が上がりますが、このときに発生しやすいのが腸炎ビブリオです。牡蠣を始めとした魚介類に付着していることが多く、ノロウイルスと同じく嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。近年では徹底した低温管理により発生が減少していますが、牡蠣を茹でるときには意識しておくといいでしょう。
腸炎ビブリオは、中心部が60℃になってから10分以上熱を通すことで失活化するといわれています。夏場に多い細菌ということで、牡蠣の中でも「イワガキ」に多いとされます。
牡蠣の安全な加熱基準
ノロウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱が望まれます。
出典:厚生労働省:ノロウイルスに関するQ&A
これは、85℃~90℃の熱湯で90秒以上茹でればいいということではありません。牡蠣の内部が85℃~90℃になってから、最低でも90秒以上加熱するということです。
ただし、加熱によってウイルスや菌が死滅するわけではありません。「失活化」といって、感染させる力を失わせるという考え方になります。特にノロウイルスは熱に強いウイルスなので、しっかりと火を通すというだけでなく、新鮮なものを選ぶことも大切です。
牡蠣の茹で時間の目安は3分
冷たい牡蠣を熱湯に入れてから、牡蠣の内部が85℃~90℃になるまでには少々時間がかかります。沸騰したお湯に牡蠣を入れて、牡蠣の内部が85℃以上になるまで1分~1分半ほどかかります。そこからさらに90秒以上茹でますので、茹で時間はトータル3分必要になります。つまり、牡蠣の茹で時間の目安は3分です。
《 ポイント 》
- 牡蠣の安全な茹で時間の目安は3分。
- 牡蠣の安全な加熱時間の基準は、牡蠣の内部が85℃~90℃になってから、最低でも90秒以上加熱すること。
牡蠣を茹でる時の注意点
冷凍牡蠣は茹で時間を調整する
一般的に、冷蔵庫に入れていた牡蠣の茹で時間の目安は3分ですが、冷凍した牡蠣の中心部が85℃以上になるには時間がかかります。冷凍牡蠣を茹でる場合は、茹で時間を30秒~1分程度長くしましょう。
時間があるときは、流水で半解凍させてから茹でるのが好ましいです。45秒~1分程度を目安に、流水で解凍させます。中まで解凍できなくても、表面の氷が溶ける程度で充分です。解凍しすぎると美味しくなくなってしまうので、半解凍で留めましょう。
牡蠣を入れるタイミング
牡蠣を入れるタイミングは沸騰してからです。沸騰する前に牡蠣を入れると縮んで美味しくなくなります。また、生臭さが残りますので鍋料理の場合は他の食材も生臭くなってしまいます。
鍋料理に牡蠣を入れるときは、すべての食材を入れ終えた最後にしましょう。牡蠣を入れるといったん温度が下がってしまいますので、再び沸騰するまで待ちます。そこから先は、牡蠣単体で茹でる場合と同様です。沸騰してから3分経過すれば、中まで火が通っていると考えていいでしょう。
手をしっかり消毒する
牡蠣に食中毒をおこす菌やノロウイルスがついていた場合、牡蠣をさわった手に付着している可能性があります。一度の手洗いでは落ちませんので、石鹸で2度手洗いし、キッチンペーパーで拭きましょう。キッチンペーパーを使用するのは、タオルの共用がウイルス感染につながる恐れがあるからです。最後に除菌スプレーでしっかり除菌しましょう。
調理器具も除菌する
生の牡蠣を置いたお皿やまな板、下処理に使ったボウルやザルなどに、牡蠣のノロウイルスが付着している可能性があります。牡蠣を茹でたのに当たったという方がいますが、実は牡蠣そのものではなく調理器具から二次感染していることが多いのです。
使用後は85度以上の熱湯で煮沸消毒するか、キッチン用の塩素系漂白剤やキッチン用の除菌剤などを使ってしっかり除菌しましょう。牡蠣を調理したまな板や包丁を他の食材に使用しないのはもちろん、牡蠣を洗う際や鍋に入れる際の飛び散りにも注意が必要です。
せっかく牡蠣を加熱して除菌したのに、手やお皿や調理器具からノロウイルスが移ったら意味がないですよね。
《 ポイント 》
- 冷凍した牡蠣の茹で時間は30秒~1分ほど長くする。
- 牡蠣を入れるタイミングは沸騰してから入れる。
- 牡蠣のノロウイルスや食中毒をおこす菌が付着している可能性のあるものは除菌する。
茹でた牡蠣のおいしい食べ方
茹でた牡蠣を美味しく食べるための下処理と縮まない茹で方を説明します。
できるだけ早く食べる
牡蠣を安全に食べるための茹で時間の目安は3分ですが、茹でた後はできるだけ早く食べましょう。また、長く茹ですぎると固くなり、しわしわになって食感も旨味も落ちてしまいます。
牡蠣の臭みをとるには下処理が必要です。牡蠣の臭みが好きな方も汚れをとるために下処理をすることをおすすめします。
牡蠣の下処理:大根おろし
用意するもの
- 大根おろし:適量
- 水
- ボウルとザル
手順
- 大き目のボウルに牡蠣のむき身を入れます。
- 大根おろしとおろした時の汁をボウルに加えます。
- 牡蠣の身をつぶさないよう優しくもみ洗いをしましょう。
- 大根おろしに汚れが着いて黒っぽくなったら優しく水洗いします。
- 黒い水が無くなったらザルにあげて水切りします。
- キッチンペーパーで水分をしっかり拭き取ります。
大根おろしに含まれる酵素が汚れや臭み取りに効果があります。
牡蠣の下処理:片栗粉
大根が無い場合、片栗粉を代用することができます。
用意するもの
- 片栗粉:小さじ1杯
- 塩:小さじ1杯
- 水:400ml
- ボウルとザル
手順
- 大き目のボウルに牡蠣のむき身を入れます。
- 水・片栗粉・塩を加え、ゆっくりかき混ぜます。
- 水が濁ってきたら捨てて新しい水に入れ替えます。
- ゆっくりかき混ぜながら洗います。
- ザルにあげて水切りします。
- キッチンペーパーで水分をしっかり拭き取ります。
大根をおろす手間をかけずに下処理をしたい人は片栗粉を代用しましょう。
牡蠣が縮まないようにするための茹で方
牡蠣を茹でる際、片栗粉をまぶすことで縮むのを防ぎます。
- 下処理した牡蠣に片栗粉をパラパラまぶします。
- 鍋にお水を入れて火にかけ、沸騰させます。
- 沸騰したら牡蠣を入れます。
- 3分茹でたら取り出しましょう。
片栗粉でコーティングされた牡蠣は縮まないのでぷりぷりです。
《 ポイント 》
- 3分程度茹でたら早めに食べる。
- 食べる前に下処理し、片栗粉をまぶして茹でると縮まない。
生食用と加熱用の牡蠣の違い
スーパーで販売している牡蠣は生食用と加熱用の2種類ありますよね。「生食用の牡蠣は新鮮だけど、加熱用の牡蠣は鮮度が落ちているから加熱しなければ食べられない」と思っていませんか?
新鮮な牡蠣を食べたくて鍋料理でも生食用の牡蠣を使っている方もいますが、実は、生食用も加熱用も鮮度は同じです。
生食用と加熱用の違いは鮮度ではなく牡蠣が育てられた海域と水揚げされてからの処理の違いです。
<生食用と加熱用の牡蠣の海域>
- 生食用の海域:沿岸部から離れた沖合
- 加熱用の海域:岸に近い沿岸部
生食用牡蠣の特徴
生食用の牡蠣は沿岸部から離れた沖合で養殖されます。沖合は菌やウィルスが少なく、食中毒をおこす菌やウィルスを取り込む可能性は低いですが、エサのプランクトンが少ないため栄養も少なく水分の多い牡蠣になります。
また、水揚げされたあと、殺菌処理をして生で食べることができるように浄化します。殺菌処理の方法としては紫外線などで殺菌された水に2~3日ほど入れておきます。この間、何もエサを与えませんので旨味が落ちてしまいます。
みずみずしくつるんとした食感ですが、水っぽく旨味も薄いので鍋に入れて加熱するとさらに旨味が逃げてしまいます。ですので、生食用は加熱せずに生で食べることをおすすめします。
加熱用牡蠣の特徴
加熱用の牡蠣は岸に近い沿岸部で養殖されています。沿岸部はエサのプランクトンがとても多く、栄養満タンでぷっくりと美味しく育ちます。
一方で牡蠣が食中毒をおこす菌やウィルスを取り込むリスクがあり、生食用に比べ菌やウィルスが多いのも特徴です。水揚げされたあときれいに水洗いしますが殺菌処理はしませんので、加熱する必要があります。
生食用と鮮度が同じとはいえ、加熱用牡蠣は絶対に生で食べないようにしましょう。火を通してもぷりぷりした食感で味も美味しいです。
旨味がぎゅっと詰まって濃厚ですので、鍋にする時は加熱用の牡蠣を使うことをおすすめします。
加熱しても美味しい牡蠣は、色が黄色っぽいものを選びましょう。一見白い牡蠣の方が新鮮に見えますが、旨味が詰まって美味しい牡蠣はふっくらして色が黄色っぽくなります。
最後に
牡蠣の茹で時間の目安は3分です。茹で時間が短いとノロウイルスが残り、それを食べることで感染する恐れがあります。ノロウイルス以外に細菌性食中毒や貝毒の危険性もあり、熱を通しただけでは不十分な場合もあるので、新鮮な牡蠣を選ぶことも大切です。
牡蠣による食あたりで最も多いノロウイルスに感染して食中毒をおこすと、食べてから1日~2日以内に嘔吐や激しい腹痛、下痢、発熱などの症状が現れます。感染力も高く家庭内で急速に感染するので、料理の際は気をつけなければなりません。
幼児やお年寄りなど体力や抵抗力が弱い方は重症化して死亡したケースもあります。ノロウイルスを完全に消滅して安全に牡蠣を食べるために、必ず3分以上茹でてくださいね。