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暖房エアコンは何度にするのがちょうどいいか

仕事から帰ってきて、冷えきったリビングに入った瞬間、なんとなくリモコンの「24℃」あたりを押してしまう人は多いと思います。
けれど、本当にその温度が「ちょうどいい」とは限りません。一般的な目安としては、暖房エアコンは『室温で20〜22℃程度』が、快適さと電気代のバランスが取りやすいラインだとされています。
ここでポイントになるのは、「設定温度」ではなく「室温」を基準に考えることです。
エアコンの機種や部屋の条件によっては、設定22〜24℃で運転して、ようやく室温が20℃前後になるケースもあります。
数字だけを正解と見なすのではなく、「自分の家では設定何度で室温20℃前後になるか」を把握しておくことが、まず大事な一歩です。
20℃が一つの目安とされる理由

室温20℃という数字には、いくつかの根拠があります。
環境省は冬の室温の目安として20℃を挙げており、厚着も薄着もしない一般的な冬の服装で快適に過ごせることを想定しています。
また、WHO(世界保健機関)は冬の室温が18℃を下回ると健康リスクが高まる可能性があるとしており、高齢者や体調に不安がある人にとっては特に重要です。
このことから、室温20℃前後は「寒さによる負担を避けつつ、電気代を極端に押し上げない」実用的な妥協点だと言えます。
20℃を厳密な正解ととらえる必要はありませんが、判断の基準となる“スタートライン”として覚えておくと便利です。
多くの家庭では22〜24℃に設定している理由
一方で、実際の家庭のエアコン設定温度を見ると、22〜24℃にしている人がもっとも多いとされています。
これは、「20℃前後が目安とわかっていても、実際には寒く感じる」ケースが多いからです。
例えば、次のような条件があると、同じ設定温度でも体感は変わります。
- 築年数が古く、壁や窓から熱が逃げやすい
- 大きな窓があり、ガラス面が冷えやすい
- 北向きの部屋で日が入りにくい
- 床がフローリングで足元が冷えやすい
このような環境では、設定20℃と表示されていても、ソファに座ったときの体感は「なんだかまだ冷える」と感じやすくなります。その結果、「とりあえず22〜24℃くらいにしておく」という運用になりがちなのが実情です。
つまり、22〜24℃という設定自体が間違いというわけではなく、「なぜその温度が必要になっているのか」を理解しておくことが大切です。
20℃だと寒いときに温度を上げる前にできること

「環境省が20℃と言うならそうしてみよう」と設定してみたものの、ソファに座ってテレビを見ていると、足元がスースーしてついブランケットを引っ張り出してくる――
そんな経験があれば、単純に設定温度を上げる前に、部屋の環境を整えることで体感温度を底上げする工夫を考えてみる価値があります。
暖房の効き方は、温度だけでなく「湿度」「窓まわり」「空気の流れ」「服装」といった要素にも影響されます。ここを少し手当てするだけで、同じ設定温度でも受ける印象が変わることがあります。
湿度を40〜60%に保つ
冬の室内は、暖房を使うほど空気が乾燥しがちです。湿度が40%を大きく下回ると、同じ20℃でも実際の温度より冷たく感じやすくなります。
逆に、湿度が40〜60%に保たれていると、空気が体の熱を奪いにくくなり、20℃前後でもそこまで寒く感じません。
加湿器があれば理想的ですが、ない場合でも次のような方法があります。
- 室内に洗濯物を干す
- ぬれタオルをハンガーにかけておく
見た目は少し生活感が出ますが、体感としてはしっかり違いが出やすいポイントです。
窓からの冷気を減らす

部屋が暖まりにくいと感じるとき、原因になりやすいのが窓です。
ガラス面は外気の影響を受けやすく、せっかく暖めた空気がそこから逃げてしまいます。特に夜は窓際がひんやりして、同じ室温でも体が縮こまりやすくなります。
手軽にできる対策としては、次のようなものがあります。
- 厚手のカーテンに替える、もしくはきちんと閉める
- 窓ガラスに断熱シートを貼る
大掛かりなリフォームをしなくても、こうした対策だけで「窓からくる冷気」をやわらげることができます。
暖かい空気を部屋全体に回す
暖かい空気は上にたまりやすく、床付近だけいつまでも冷たい、という状態になりがちです。
天井付近ばかり暖まっていると、設定温度を上げても実際にいる高さではそれほど暖かく感じません。
サーキュレーターや扇風機を弱風で上向きに回すと、天井近くの暖かい空気が部屋全体に広がりやすくなります。エアコンの真下だけが暑くて、部屋の端は寒いという偏りも減らせます。
服装で“あと少し”を補う
「20℃前後が目安」とは言っても、体質やその日の体調によって感じ方は変わります。そんなとき、設定温度をすぐに1〜2℃上げるのではなく、服装で調整するのも一つの手です。
例えば、こんなアイテムは手軽で効果が出やすいです。
- 厚手のソックスやルームスリッパ
- ひざ掛けやブランケット
- カーディガンやフリースの羽織り
部屋全体の温度を上げるより、自分の体のまわりを温めた方が効率が良い場合もあります。
何度まで上げてもいいか迷うときの考え方

寒さが厳しい日や、体調がすぐれない日など、「20〜22℃が目安と言われても、それではやっぱり寒い」と感じる場面はあります。
そんなとき、どこまで設定温度を上げてよいのか、電気代が気になって手が止まってしまう人も多いはずです。
ここでは、設定温度と電気代のざっくりした関係と、24〜25℃といった少し高めの設定をどう考えればいいかを整理してみます。
設定温度と電気代のざっくりした関係
エアコン暖房は、設定温度を1℃上げると消費電力が5〜10%前後増えるとされています。
これはあくまで目安ですが、「温度を上げるほど電気代もじわじわ増えていく」イメージを持つには十分な数字です。
例えば、こんな感覚です。
- 20℃から21℃に上げると、電気代も少し増える
- 20℃から23℃まで上げると、増え方もその分積み重なる
- 20℃と24℃では、1ヶ月単位では無視できない差になる
細かな金額を覚える必要はありませんが、「なんとなく2〜3℃くらいなら大丈夫だろう」と続けていると、シーズンを通してみたときの電気代に効いてきます。
24〜25℃は絶対NGではない
では、24〜25℃という設定はすべて間違いなのでしょうか。
答えは「状況次第」です。
部屋の断熱性が低い住宅や、北側の部屋、日が入りにくい1階のリビングなどでは、設定温度を少し高めにしないと、室温20℃前後までなかなか届かないこともあります。
また、次のような場面では、一時的に24〜25℃に上げること自体は不自然ではありません。
- 風邪気味でどうしても寒気が強いとき
- 高齢の家族がいて、20℃では明らかに冷えすぎるとき
- 子どもが床で遊ぶ時間が長く、足元の冷えを強く感じるとき
大事なのは、「常に24〜25℃に固定する」のではなく、基本は20〜22℃に置きつつ、必要なときにだけ一時的に上げる、といったメリハリをつけることです。
普段から高めの設定に慣れてしまうと、少しの寒さでも我慢できなくなり、結果的に電気代も右肩上がりになりやすくなります。
つけっぱなしとオンオフで迷うときの目安
冬場のエアコンでよく悩まれるのが、「こまめに消した方が得か」「つけっぱなしの方が得か」という問題です。
暖房は、室温を一気に引き上げるときに電気を多く使うため、外出時間によって損得が変わります。
ざっくりとした目安としては、次のように考えると判断しやすくなります。
- 30分〜1時間程度の短い外出なら、つけっぱなしでも大きな無駄にはなりにくい
- 数時間以上家を空けるなら、いったん消して帰宅後に入れ直した方が効率的
エアコンの性能や家の断熱性によっても細かな差はありますが、外出時間を目安に決めておくと、毎回迷わずに済みます。
「常につけっぱなしが正解」「必ずこまめに消すべき」といった一律の正解はないため、自分の生活リズムと照らし合わせてルールを決めておくと安心です。
自分の家なりの“ちょうどいい温度”を決める

暖房エアコンの設定温度は、室温20〜22℃を目安にしつつ、家の造りや家族の体感に合わせて微調整していくのが現実的です。
湿度や窓まわり、空気の流れといった要素を整えれば、同じ設定温度でも感じ方は変わりますし、必要な暖房の強さも少しずつ減らせます。
電気代を意識するあまり無理に我慢し過ぎると、体調を崩したり、家族とのストレスになったりすることもあります。
数字としての「何℃が正解か」を追いかけるよりも、自分の家ではどの条件なら快適に過ごせて、どの程度までなら電気代とも折り合えるのかという“自分なりの基準”を持てるかどうかが大切です。リモコンの数字は、その基準を見つけるための目安に過ぎません。









