目次
コーンスターチとは
コーンスターチはとうもろこしが原料のでんぷん粉
そもそもコーンスターチとは、とうもろこしを原料としたでんぷん粉のことを指します。
でんぷん粉というと片栗粉をイメージする人が多いと思いますが、世界的に見るとコーンスターチの方がポピュラーな「でんぷん粉」です。世界で消費されているでんぷんのうち、約8割がコーンスターチなのです。
原料となるトウモロコシは「スイートコーン」が有名ですが、コーンスターチは「デントコーン」「ワキシーコーン」といった品種から作られることがほとんどです。
これらのとうもろこしをふやかし、粉砕してでんぷんだけを取り出したものがコーンスターチとなります。ちなみに「副産物」として分離されたものは、コーン油や家畜の飼料になります。
でんぷんについて
コーンスターチと片栗粉の違いについて掘り下げる前に、双方の原料となっているでんぷんについて詳しく解説します。
植物は光合成によって水と二酸化炭素から主たるエネルギー源であるグルコース(ブドウ糖)と酸素を作り出します。作られたグルコース分子は結合して高分子化され、根や幹、種子、果実に蓄えられます。これが「でんぷん」です。
米や小麦といった穀類や馬鈴薯(ジャガイモ)など私達が普段食べている食品にも「でんぷん」が含まれています。そのなかでもトウモロコシを原料としたでんぷんのことを「コーンスターチ」といいます( starch=でんぷん)。片栗粉は馬鈴薯(ジャガイモ)のでんぷんのことです。
でんぷんの特徴
でんぷんに共通する特徴としては、水を加えて加熱することで粘性が増大し糊化、つまり「糊(のり)」状になることが挙げられます。
水溶き片栗粉で料理にとろみをつけたり、コーンスターチを使ってカスタードクリームのもっちりとした食感をつくったりすることも、でんぷんの糊化を利用。加熱したものを冷却すると、徐々に粘性を失いゲル化(流動性を失い、固体状になったもの)するのが特徴的。
しかし、原料となった植物の種類により糊上になる温度や状態など、でんぷんの性質はかなり異なります。料理等に使う場合には、それぞれの特性を活かした使われ方がされています。
《 ポイント 》
- コーンスターチはトウモロコシを原料としたでんぷん粉である
- 世界のでんぷん消費量の約8割がコーンスターチである
- でんぷんは植物の光合成で作られたグルコースが高分子化したもの
- でんぷんは加熱すると粘性が増し糊化する特徴がある
- 異なる植物由来のでんぷんにはそれぞれ異なる性質がある
コーンスターチの様々な用途
またコーンスターチと一口に言っても、トウモロコシの品種によってでんぷんの性質は異なり、用途も工業用から食品用まで様々です。
工業用でんぷんとして
トウモロコシのなかでもアミロース(でんぷんを構成する分子の種類のひとつ)の含有量が高い品種からつくられたでんぷんは、他のでんぷんに比べて加熱しても糊化しにくい性質があります。
しかし糊化したあとの粘度安定性に優れ、接着力も高いため段ボールや製紙など工業用として利用されることもしばしば。
工業用に使用されるコーンスターチは、バイオ燃料の原料としても知られており、2007年から2008年にかけての世界的な食料価格危機では、食料価格が爆発的に上昇した原因のひとつとなりました。
食品用でんぷんとして
逆にアミロース含有量が低いトウモロコシから作られたでんぷんは、片栗粉に比べて糊化温度が高く粘度が低いものの、冷めても安定しています。そのため、フランス料理のソースやカスタードクリームなど食品用としてよく使われています。
これらには小麦粉が使われることも多いですが、小麦粉に比べてコーンスターチはダマになりにくく、トロリとした滑らかな食感になるため、料理や作る人の好みにあわせて使い分けされています。
また、食品用コーンスターチはビールの副原料としてもよく使われているのをご存知でしょうか?ビールはまず、細かく砕いた麦芽に温水を加えて加温し、麦芽に含まれる酵素の働きででんぷんを糖化して糖化液を作ることから始まります。
けれども、このときにコーンスターチを加えると、糊化する温度や酵素の活性温度の違いで作られる糖の種類が異なってくるため、麦芽のみのビールよりもスッキリとした風味のビールをつくることができます。
《 ポイント 》
- トウモロコシの品種によってでんぷんの性質が異なり、用途も様々
- 食品用としてソースやクリーム、ビールの副原料などに利用される
- 小麦粉と比べてダマになりにくく、トロリとした食感を生み出す
コーンスターチと片栗粉の性質の違い
それでは片栗粉とコーンスターチにはどのような性質の違いがあるのでしょうか。まず、この二つは粒径(粒の大きさ)、糊化温度、粘度、粘度の安定性、膨潤度(液体を吸収したときの膨らみ方)などの物理的特性が大きく異なり、料理にもはっきりと違いが現れます。
食感の違い
食感の違いは、から揚げや竜田揚げにするとよくわかります。
片栗粉を使った唐揚げは、衣がサクサクふわふわで、冷めると少し脂っぽくなります。一方、コーンスターチを使ったから揚げの衣は、サクサクと硬く、冷めてもあまり油っぽくならなりません。
これは、でんぷんの粒径と膨潤の度合いが関係しています。片栗粉の粒径(㎛)は15~120、コーンスターチは6~30、つまりコーンスターチの方が粒が細かく、衣が薄くなり、揚げた時にサクサクと油切れが良くなるのです。
また、膨潤度は片栗粉が5.9、コーンスターチが3.5で、この膨潤度の違いにより片栗粉を使った衣は柔らかく、コーンスターチを使った衣は硬くなります。
とろみの違い
片栗粉はあんかけなどの料理のとろみ付けによく使われますが、このとろみ付けも片栗粉の粘度と糊化温度で決まります。片栗粉の最大粘度(RVU)はコーンスターチの2倍以上、糊化温度は片栗粉が55~66℃、コーンスターチが65~76℃となっています。
このことから、料理にとろみをつけたいときは片栗粉の方が少ない分量できる上、低い温度でも糊化することがわかります。また、片栗粉で作ったあんは無色透明ですが、コーンスターチはやや白濁します。
粘度安定性の違い
コーンスターチは片栗粉よりも粒子が細かく均一なので、糊付け後の安定性が高く、冷めても粘度があまり変わりません。一方、片栗粉は冷えると粘度が低下するため、片栗粉でとろみをつけた料理はやや水っぽくなります。そのため、カスタードクリームやプリン、ブランマンジェなどの冷たいお菓子には、コーンスターチの特性を生かして使われることが多いようです。
《 ポイント 》
- コーンスターチの衣はサクサクとしている
- 片栗粉の方が粘度が高く、少量でとろみをつけられる
- コーンスターチの方が糊化後の粘度安定性が高い
- 片栗粉のとろみは冷めると水っぽくなる
- コーンスターチは冷たいデザートに向いている
コーンスターチの代用
片栗粉や小麦粉は料理によく使いますが、コーンスターチは使う機会があまりないため、常備しているご家庭は少ないのではないでしょうか。そのような場合は、片栗粉や小麦粉、米粉がコーンスターチの代用になります。
パンを作るとき
パンを作る場合は片栗粉または米粉がコーンスターチの代用になります。特に米粉はもちもちとした食感も加わり、美味しく仕上がるのを覚えておくと良いでしょう。
一般的にパンは強力粉という、グルテンの含有量が高い小麦粉で作ります。グルテンとは粘りと弾力が強いたんぱく質のこと。パンを作る際、この強力粉の一部をコーンスターチにすることで粘りが減り、ふわふわとした食感のパンになります。
米粉を代用にする場合は、コーンスターチを使うときよりも分量少なめにしましょう。多すぎるともちもちし過ぎてしまい、お米の味になってしまいます。
カスタードクリームを作るとき
カスタードクリームを作るときにはコーンスターチを使うことが多いですが、小麦粉を使っても美味しくできます。小麦粉はコーンスターチに比べてでんぷんの粘度が若干低めですが、でんぷんの他にグルテンも作用するためもっちりとした食感を実現。
また、小麦粉を使用したカスタードクリームはクリームパンやシュークリームを作る際によく使われます。ただしコーンスターチで作ったクリームよりもどっしりとした味になるので、それが嫌であれば小麦粉の分量を抑えるのがベターです。
ちなみにコーンスターチなしでカスタードクリームを作るとき、片栗粉で代用するのはおすすめしません。前述のように片栗粉には冷やすと粘度が落ちて水っぽくなるという特徴があるので、冷たい状態で食べるカスタードクリームには向かないのです。
チーズケーキを作るとき
スフレタイプのチーズケーキを作る際にも、つなぎとしてコーンスターチを使うことがあります。自宅にコーンスターチがない場合、代用としては小麦粉または米粉がいいでしょう。味も膨らみ方も、コーンスターチを用いたものと遜色はありません。
あのふわふわの食感は生地にメレンゲを加えて膨らませることでできますが、メレンゲは焼いた後すぐにへこんでいきます。このため、コーンスターチを用いてでんぷんを混ぜてそれを防いでいるのです。小麦粉や米粉もでんぷん質を含むため、代用できるというわけです。
ただし小麦粉をコーンスターチの代用として使った場合、やや重たい仕上がりにはなります。またコーンスターチの代用としてベーキングパウダーも使えそうに思いますが、粘り気がなく「つなぎ」の役割を果たさないため代用できません。
パンケーキを作るとき
パンケーキのレシピでも、コーンスターチが使われているときがあります。代用するのであれば、片栗粉がいいでしょう。パンケーキでコーンスターチを使う場合、チーズケーキと同じ仕組みでメレンゲ作りに使われることが多いです。つまりコーンスターチを使うと、ふわふわのパンケーキができます。
片栗粉で代用する場合は、分量は少なめがおすすめです。またあくまでパンケーキのふわふわ感をアップさせるためにコーンスターチを使うので、「ふわふわ」に拘らないのであれば代用なしでも充分作れます。
プリンを作るとき
プリンを作るときにもコーンスターチを使うときがありますが、ない場合はタピオカ粉で代用できます。タピオカ粉もコーンスターチと同じでんぷん質で、水と合わせることでコーンスターチのような役割を担ってくれるのです。またタピオカ粉には程良い粘性があり、温度が低くなっても粘度が落ちることはありません。
クッキーのような焼き菓子のコーンスターチ代用としてタピオカ粉を使うなら、小麦粉と合わせて使用するのがおすすめです。ただしタピオカ粉はダマになりやすいので、使用するときはしっかり混ぜてくださいね。
クッキーを作るとき
クッキーに使うコーンスターチの代用として重宝するのが、米粉です。米粉は小麦粉やタピオカ粉と比べてさらさらしているので、クッキーのようなさっくりとしたお菓子にはぴったりなのです。米粉には素材をまとめてくれる効果もあるので、クッキーだけでなくベイクドチーズケーキなどにも代用できます。
またコーンスターチがないときのクッキー作りには、小麦粉を使うのもおすすめです。小麦粉を使うともちっとした食感が加わりますが、食べ応えのあるクッキーが好きな人にはコーンスターチよりも美味しいと感じられるかもしれません。
基本的にコーンスターチのサクサク感を再現したいときは、片栗粉よりも小麦粉がいいとされています。片栗粉でも作れないことはないですが、分量を少なめにしないと粉っぽい仕上がりになってしまいます。
揚げ物を作るとき
揚げ物をカラリと仕上げたいときにコーンスターチが使われますが、代用するのであれば片栗粉がおすすめです。コーンスターチと同じようにさくっとした揚げ物になります。
小麦粉で代用する場合は片栗粉ほどさくさくにはならないものの、ジューシーでしっとりとした仕上がりです。冷めても美味しいので、お弁当にはもってこいでしょう。また油を吸いにくい米粉で代用すると、さくっとした食感のヘルシーな揚げ物になります。
《 ポイント 》
- パン作りは片栗粉または米粉が代用として適している
- カスタードクリーム作りは小麦粉が代用になるが片栗粉は向かない
- チーズケーキ作りは小麦粉または米粉が代用になる
- パンケーキ作りはふわふわ感を出すなら片栗粉が代用になる
- プリン作りはタピオカ粉が同じでんぷん質なので代用になる
- クッキー作りは米粉がさらさらしているのでおすすめの代用品
- 揚げ物作りは片栗粉がサクサク感が近いのでおすすめ
- 小麦粉はしっとりとした食感になる代用品として利用できる
でんぷんの特性を知って料理に活かそう
片栗粉、コーンスターチ、小麦粉、米粉など、でんぷんは種類によって特徴が異なります。料理のとろみづけには片栗粉、カスタードクリームにはコーンスターチというように、それぞれの特徴に合わせて使い分けることができれば、料理の幅が広がります。また、料理によってはコーンスターチを代用することも可能です。ぜひ、いろいろな食材を試して、料理の幅を広げてみてください。
管理栄養士取得後、病院で1000人以上の食事サポート、栄養・給食管理を経験。現在は「食の力で、心身ともに”健幸”になり、彩り豊かな人生を自己実現できる社会を作りたい!」思いから独立しセミナーや個別サポートを行っている。その他、事業立ち上げ、商品開発、記事監修、特定保健指導、講師活動などを行っている。