目次
じゃがいもは冷凍すると危険?
先に結論を述べると、じゃがいもは冷凍保存可能です。冷凍保存によって危険な状態になるわけではありません。
家庭料理に欠かせないじゃがいもは、ビタミン豊富で栄養面でも優秀な野菜のひとつです。そんな身近なじゃがいもですが、冷凍すると危険と言われる理由について解説します。
毒性のあるアクリルアミドが発生する可能性がある
じゃがいもを冷凍すると危険といわれる理由のひとつがアクリルアミドです。
アクリルアミドとは、神経組織の障害を引き起こし、健康に悪影響を及ぼす可能性があると指摘されている成分です。十分な証拠は得られていませんが、国際がん研究機関では発がん性を持つ物質として分類されています。
じゃがいもを長期間冷蔵するとアクリルアミドの量が増える
アクリルアミドは、揚げる、焼くなどして120℃以上になると発生する有害物質です。
じゃがいもを冷蔵保存すると還元糖が増加しますが、還元糖が増えたじゃがいもを炒め物や揚げ物に使うと、特定のアミノ酸と糖類が化学反応を起こし、アクリルアミドを大量に発生させてしまいます。
食べ物以外ではタバコの煙にもアクリルアミドが含まれているそうで、イギリスの食品基準庁ではアクリルアミドの危険性に基づいて、じゃがいもを冷蔵庫で保存することを禁止しているくらいです。
ただし、注目したいのはアクリルアミドの増加が懸念されると報告があるのは「冷凍」ではなく「冷蔵」です。冷凍によるアクリルアミドの増加は報告がありません。ややこしい違いから「じゃがいもの冷凍保存は危険」と噂されるようになったと考えられます。
長期間冷蔵保存してしまったじゃがいもでも一週間程度常温で保存すれば還元糖が減少しアクリルアミドの発生率も元に近い状態になります。
じゃがいも本来の味や食感を失ってしまう
じゃがいもは冷凍保存可能ですが、本来の味や食感を損なってしまいがちです。
乱切りやくし形などにカットしたじゃがいもを冷凍すると水分が抜けてボソボソとした食感になり、危険というわけではありませんがじゃがいも本来の美味しさを失ってしまいます。
そのため、じゃがいもは冷凍保存には向かない野菜と認識されていて、余ったカレーやシチューなどを冷凍する際、じゃがいもを取り除いてから冷凍するのが良いとされています。
《 ポイント 》
- 発がん性を持つとされているアクリルアミドが生成される(冷蔵)
- アクリルアミドが増えるのが「冷蔵」と「冷凍」で混同しがち
- 危険というわけではないが、冷凍保存すると本来の美味しさを失ってしまう
じゃがいもは冷凍に向かない理由
じゃがいもは生のままで冷凍保存するには不向きな野菜です。生のじゃがいもをそのまま冷凍すると、含まれている水分が凍って中の細胞壁が壊れてしまいます。
それを解凍すると、その壊れた組織が水分として流れ出てしまって水分の少ないパサパサ、ボサボサした状態に・・・。
そうならないように、じゃがいもを冷凍保存する前に一度加熱してから冷凍保存するとある程度は美味しく食べられますが、どうしても食感は変わってしまいます。
できれば一度加熱してからマッシュポテトにして冷凍保存することをおすすめします。
《 ポイント 》
- 水分が凍って中の細胞壁が壊れてしまう
- 解凍すると組織が水分として流れ出ていパサパサ、ボサボサした食感になる
じゃがいもの冷凍保存方法
じゃがいもは冷凍保存可能ですが、本来の味わいや食感を損なってしまう可能性があります。そんなデメリットがあるじゃがいもの冷凍保存ですが、ひと工夫加えることで美味しさをある程度維持したまま保存できます。
冷凍食品のフライドポテトが美味しい理由
じゃがいもは冷凍に不向きだというわりには、冷凍保存されていたフライドポテトはとても美味しいですよね。
じゃがいもを冷凍保存する時はマッシュポテトにするのが良いとご紹介しましたが、スティック状やくし切りにカットしたじゃがいもを冷凍保存したものでも美味しく食べられるのです。
冷凍したじゃがいもなのになぜ美味しいのでしょうか?
それは、凍ったままの状態で調理しているからなんです。とは言っても、じゃがいもは冷凍保存に不向きであることは変わりません。美味しく食べるポイントは、冷凍保存する前に、ひと手間かけて一度加熱しておきます。
こうしておくことで、冷凍に不向きなじゃがいもでも凍ったまま調理に使うようにすると、自宅でも美味しく食べることができるでしょう。
じゃがいもの冷凍手順
じゃがいもの冷凍保存方法は、切ったじゃがいもを冷凍する方法とマッシュポテトにしてから冷凍する2通りがあります。
切ったじゃがいもの冷凍保存
- じゃがいもの皮をむき(皮付きでも可)お好みの形にカットして約10分水にさらします。
- 食べられる状態までお湯で茹でるか電子レンジで加熱して火を通し、ザルに上げて冷まします。
- 冷めたらキッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取ります。
(水気が残っているとじゃがいも同士がふっついてしまいます) - フリーザーパックに重ならないように並べて入れ、空気をできるだけ抜いて密封します。
- 温度の変化が少ない冷凍庫の奥にアルミホイルを敷き、急速冷凍にします。
切ったじゃがいもの解凍手順
解凍すると食感が悪くなったり、空気に触れて黒く変色してしまいますので解凍は不要です。基本的に切ったり皮をむいたじゃがいもは、凍ったまま調理するようにしましょう。
食べられる状態まで火を通してあるので、崩れないように調理の最後に加えるようにします。
マッシュポテトにしてから冷凍保存
- じゃがいもの皮をむき、6~8等分ぐらいに切り、約10分水にさらします。
- 竹串がすっと入るぐらいまでお湯で茹でるか電子レンジで加熱します。
- 熱いうちにボウルに移し、フォークもしくはマッシャーですり潰します。
- マッシュ状にしたじゃがいもが冷めたら、使う分量ごとに小分けにしてラップ包みます。
- 包んだじゃがいもを平たくしてフリーザーパックに入れ、なるだけ空気を抜いて冷凍保存します。
じゃがいもの解凍手順
冷凍保存の工夫も重要ですが、解凍にも押さえておきたいポイントがあります。基本的には冷蔵庫や電子レンジで解凍してから調理するのが好ましいです。一方で既にカットされている場合は解凍せず調理してもOKです。
コロッケやポテトサラダ
解凍する際は、前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫に移して自然解凍にしましょう。温める調理の際は電子レンジ加熱してから使いますが、ポタージュなどの場合は冷凍のまま加えてもOKです。
じゃがいもは冷蔵よりも常温保存
長期間に渡り保存しやすいじゃがいもですが、実際どれぐらい保存することができるのでしょうか?
- 常温保存:夏場で約1週間、冬場は2~3ヶ月
- 冷蔵保存: 2か月
- 冷凍保存:1か月
日持ちする野菜として知られているじゃがいもの常温保存は、夏場の暑い時期以外は冷蔵よりも常温保存が最も適しています。日光を避けて風通しの良い場所で保管した場合、夏場でおよそ1週間、冬場は2~3ヶ月程度保存が可能です。
それに対して冷蔵保存期間は2か月、冷凍保存であれば1か月程度と、冷凍保存が1番日持ちしません。長い期間冷凍保存していると水分量が少なくなるなど味や食感に悪影響を及ぼすことがあります。
よって、じゃがいもが余って腐らせてしまいそうな時だけ冷凍保存するようにした方が良さそうですね。
《 ポイント 》
- 冷凍保存する前に一度加熱し、凍ったまま調理する
- 切ってから冷凍する方法とマッシュポテトにしてから冷凍する2通りがある
- 切ったじゃがいもは解凍せずに、調理の最後に凍ったまま加える
- 夏場の暑い時期以外は冷蔵よりも常温保存が適している
食べると危険なジャガイモの見分け方
腐っているかどうかの判断で迷ってしまうじゃがいもですが、食べたら危険なじゃがいもの見分け方についてご紹介します。
じゃがいもから芽が出ている
まずは、見た目ですぐにわかる見分け方ですが、じゃがいもから芽が生えているものは危険です。
芽やそのまわりに天然毒素のソラニンやチャコニンが多く含まれている可能性が高いので、芽が生えている部分を、根元から厚めに切り取りしっかりと取り除いてから調理しなければいけません。
芽が大量に生えている場合は諦めて廃棄した方がよいでしょう。
じゃがいもの皮が緑色に変色している
皮自体が緑色に変化しているじゃがいもも天然毒素が多く含まれています。芽と同じように皮を厚めに剥いて緑色の部分をしっかりと取り除いてからでないと食べられません。
例え加熱したとしてもこれらの毒素は無くなりませんので、しっかりと取り除く必要があります。
じゃがいも全体が緑色に変色している場合は、危険なので廃棄するようにしてくださいね。
じゃがいもにカビが生えている
じゃがいもの表面にフワフワとした綿のような白いものがついているときは、カビが発生しています。
ほんの少量であればカビを水でを洗って落としてから使うこともできますが、カビているところを切った断面を見て、広範囲にカビが広がっている場合には思い切って処分してしまいましょう。
断面を確認して問題なさそうであれば、厚めに皮を剥いてから調理することができます。
もちろん、触るとブヨブヨに柔らかくなっているものや、異臭がする場合は廃棄してください。
じゃがいも切ったときに中身が黒く空洞になっている
切った中心部に空洞があってその部分が黒くなっているのは「中心空洞症」と言って、じゃがいもが急激に成長することで、でんぷんが中心へ行き届かずに起きる現象です。
全体的に黒くなっているものは腐敗している可能性が非常に高いですが、中心空洞症の場合はその部分を取り除けば食べても問題ありません。
じゃがいもの中身がピンクや黒に変色している
じゃがいもの皮を剥くとピンクや赤茶色に変色していることがあります。考えられる原因としては主に「低温障害」と「褐変反応」ですが、どちらも腐っているわけではないので食べても問題ありません。
<低温障害とは>
通常2〜4℃で保存するじゃがいもをそれ以下の温度で保管されたときに起きる反応。
<褐変反応とは>
じゃがいもに含まれているチロシンという物質が空気に触れると酸化反応を起こし、メラニンという物質に変化します。
このメラニンが蓄積することで、じゃがいもの中身がピンクや黒に徐々に変色していきます。どちらも腐っているわけではなく、生理的なものですので食べても問題ありません。
じゃがいもを煮ると黒くなった
先ほどの黒く変色した「褐変反応」とは別に、水煮や調理した後に黒くなる「水煮黒変」という現象が起こる場合もあります。
これはじゃがいもに含まれる「ジフェノール」と「鉄分」の含有量が多いときに起きる現象で、こちらも普通に食べられます。
《 ポイント 》
- 芽やそのまわりに天然毒素のソラニンやチャコニンが多く含まれている
- 緑色に変化している皮にも天然毒素が多く含まれている
- 表面にフワフワとした白いカビがついている
- 「中心空洞症」はその部分を取り除けば食べられる
- 中身がピンクや黒に変色しているのは「低温障害」か「褐変反応」で、食べても問題ない
- 水煮や調理した後に黒くなる「水煮黒変」は食べても大丈夫
最後に
じゃがいもは冷凍すると危険と言われる理由と、食べないほうがいいじゃがいもの特徴についてご紹介しました。いかがでしたでしょうか?
冷凍保存する前にひと工夫するだけで、冷凍に向かないと言われているじゃがいもでも美味しさを保ちながら保存することができます。
切り方や保存方法を工夫することでより美味しく味わえますので、この記事を参考に冷凍じゃがいもを上手に調理してみてくださいね!