目次
精進料理は卵や乳製品も使えない?
結論から先に言いますと、精進料理では卵や乳製品は動物性の食材ですので基本的には禁止です。
そもそも精進料理とは、どんなものなのでしょうか?
精進料理って何?
精進料理とは、野菜や豆腐、海藻などの植物性の食材のみで作った料理のことを言います。精進料理は仏教の戒律に基づいており、生き物を殺すことを避け、煩悩(人を苦しめ、煩わせる欲望や欲求)を鎮めるために生まれた、修行の一環としてのものになります。
精進料理の食材は、精進物と呼ばれる肉や魚介類をのぞいた、植物性のものになります。野菜類、穀類、豆類、木の実、果物、海藻類などが精進物になります。
【精進料理での卵や乳製品の扱い】
精進料理では、使っては行けない食材が大きく分けて2つあります。
- 動物性の食材は使用禁止
動物の肉や魚介類だけではなく、基本の精進料理としては、卵や、牛乳、バター、チーズなどの乳製品も、動物から摂取しているものなので、使わないことが基本とされています。 - においの強い野菜は食することが禁止
野菜の中でも、五葷(ごくん)と呼ばれる、においの強いものは精進料理では食することが禁止されています。ねぎ、らっきょう、にんにく、ニラ、野(ノビル)が、五葷に該当します。これらのにおいの強いものは、例え野菜であっても、欲情を刺激し、怒りの心をおこすものであるという理由により食を禁じられています。
精進料理の由来
精進料理は、元々中国から仏教が伝来した際、日本に伝わってきたものと言われています。
平安時代に、精進料理の原型と思われる献立が誕生したようですが、その献立の内容は、近年の精進料理に比べると、それほど厳格なものではなかったようです。魚や鳥の肉などに「禁の例に在らず」という但し書きをつけて食していたようです。
鎌倉時代に禅宗が広まると、魚介類を含む、全ての肉食を禁じる、菜食のみの精進料理が定着し、一般化していったそうです。
食べることも調理も修行の一環
仏教では、精進料理の準備や調理、食事中の作法や後片付けまで、すべての流れを修行の一環とみなしています。
【精進料理の調理のルール】
精進料理の調理方法については「生・煮る・焼く・揚げる・蒸す」方法を用いて、味付けは「苦い・酸っぱい・甘い・辛い・塩辛い五味(ごみ)」とされています。さらに、素材の風味を生かすため薄味にする「淡味(たんみ)」を加えた「六味」が基本とされています。
また、料理の色彩にも指定が設けられており、五行思想を基とした「赤・白・緑・黄・黒」の五色を使った献立にすることがルール化されているそうです。
【精進料理を食べる際の作法】
精進料理を食べる際には、細かい作法が設定されています。時代や宗派などによって多少の違いがあるようですが、代表的な作法をご紹介いたします。
- 食べ物を口に入れたらいったん箸を置き、音を立てない。
- 姿勢を正して座り、器は両手で丁寧に扱う。
- 食べ終わったら、器にお湯やお茶を注いで飲み干す。ご飯粒まで無駄にしない。
食事中のおしゃべりなどは、厳禁となっているようです。
精進料理に卵や肉を使っていい場合
条件によっては食が許されるケースあり
精進料理では、卵や乳製品は基本的には使用しないとご紹介しましたが、現代においては宗派や地域によっては、条件付きで卵の使用を許している精進料理もあります。
精進料理は古くから伝わるものになりますので、当時はヒヨコには育たない「無精卵」と、ヒヨコが孵化する「有精卵」という分別はありませんでしたので、卵全部が禁止されていました。
科学が発達した現代においては、「無精卵」と「有精卵」の区別や産み分けが可能になっていますので、そういった時代背景から無精卵については食べることを許しているケースがあるようです。
三種の浄肉は食べることを許すケースあり
そもそもお釈迦様が生きられていた時代は、一部を除き比較的自由に何でも召し上がっていたということから「食肉を許す」という解釈をする宗派もあり、三種の浄肉(じょうにく)に指定されたものであれば、食を許されることはあるようです。
それでは「三種の浄肉」とは、どのようなものなのでしょうか。
【三種の浄肉とは】
三種の浄肉とは、四分律という、お釈迦様が生きていられた当時の規則にあった「食べても良い肉の条件」のことを指します。当時の仏教においては、無駄な殺生は戒めていましたが、食肉を禁止する戒律はなかったと言われています。
ただし「人、犬、蛇、獅子、トラ、ヒョウ、ハイエナ、熊、象、馬」これら10種類の生き物の食肉については、禁じられていました。
三種の浄肉は、これらの生き物の肉を含まない以下の3つの条件を満たす肉を指すそうです。
- 動物を解体するところを見ていないこと(不故見)
- 自分のために食肉にされたとは聞いていないこと(不故聞)
- 自分のために食肉にされたという疑いがないこと(不故疑)
上記のように、見たり、聞いたり、疑いがあったりしない肉を、食べても良い肉、三種の浄肉とされます。
精進料理の代表的な献立
精進料理の代表的なメニューをご紹介します。
ごま豆腐
ごま豆腐は代表的な精進料理の一つです。豆腐と言っても、実際は大豆を使った豆腐ではなく、
ごまをすりつぶして水で溶いた葛粉と混ぜ合わせて固めたものです。
野菜の煮物
野菜の煮物は精進料理の代表的なメニューの一つです。基本的に季節の旬の野菜を使います。かつおダシは動物性ですのでNG、昆布やシイタケからダシを取って作ります。
野菜の天ぷら
野菜の天ぷらは「精進揚げ」とも呼ばれています。精進料理の野菜てんぷらは、ニンジン、レンコン、ナス、さつまいもなどの芋類、しいたけなどのきのこ類など。
がんもどき
がんもどきは豆腐を潰してニンジンやごぼうなどを刻んで混ぜたものを揚げます。
けんちん汁
精進料理の汁ものと言えばけんちん汁です。けんちん汁は多くの野菜を昆布やシイタケを使ったダシで煮込みます。
精進料理とベジタリアン、ヴィーガンの違い
ベジタリアンは「菜食主義者義」のことですが、ベジタリアンにも様々なタイプがあります。タイプによって卵を食べてもOKなベジタリアンもいます。
【ラクト・ベジタリアン】
肉、魚、卵はNG。乳製品、植物性食品はOK。
【ラクト・オボ・ベジタリアン】
肉、魚はNG。卵、乳製品、植物性食品はOK。
【ペスコ・ベジタリアン】
肉はNG。魚、卵、乳製品、植物性食品はOK・
ヴィーガンはピュアベジタリアンとも呼ばれており、ベジタリアンの一種です。ヴィーガンは肉、魚、卵、乳製品、蜂蜜も含む動物性食品は一切NGで「完全菜食主義者」です。
精進料理はヴィーガンと同じく、肉、魚、卵、乳製品、蜂蜜も含む動物性食品は一切NGで、野菜、果実、穀物、豆、海藻、きのこ等の植物性の食物だけを食べます。「完全菜食主義者」ですね。
最後に
基本的に精進料理に卵はNGです。ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウ・ノビルなどもNGというのは知りませんでしたのでちょっと意外でした。
宗派や地域によっては、条件付きで卵の使用を許している精進料理もあるそうですが、修行だと思って食べるなら完全菜食主義の精進料理を食べてみたいですね。
「精進」とは仏教用語で「美食や肉食を避けて粗食や菜食によって精神修養をする」という、そのままの意味のようです。