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さつまいもの堀りたてが甘くない理由
私たちは堀りたてのさつまいもや、採れたての野菜は新鮮!と思い込んでいますが、実は堀りたてのさつまいもは時間を置くと甘さが増して美味しくなるとは驚きですよね。
では、堀りたてのさつまいもが、時間をおくと甘みが出てくるのはどうしてなのでしょうか?
堀りたてのさつまいもは、でんぷんが多くホクホクとした食感を味わえるものの、水分を多く含んでいるため甘みが少ないというのが理由です。
さつまいもには「β-アミラーゼ」という酵素が多く含まれていますが、この「βーアミラーゼ」がでんぷんに働きかけて麦芽糖を作るというのが、さつまいもの甘さの秘密なのです。
さつまいもの甘みのもとである麦芽糖は、堀りたてのさつまいには少量しか含まれていませんが、常温で保存している間に少しずつ麦芽糖が増えて、時間の経過とともにじっくりと甘みが増してきます。この特徴を利用したものが、さつまいもで作る保存食、「干し芋」というわけです。
《 ポイント 》
- β-アミラーゼという酵素がでんぷんに働きかけて麦芽糖を作る。
- 保存している間に少しずつ麦芽糖が増えて時間の経過とともに甘みが増していく。
さつまいもの堀りたてを甘くする保存方法
さつまいもは「湿気」と「乾燥」、この2点に注意すれば、堀りたてのさつまいもを傷ませずに美味しく保存することができます。
ついている土をきれいに洗わない
土がついたまま持ち帰ったさつまいもは、お店で売っているようにきれいに洗って赤茶色の皮にする必要はありません。
水で洗うと、水分を吸収してカビが生えて傷みやすくなってしまいますので、洗わずに土を少し残した状態で保管しましょう。
美味しく保存する方法と注意点
- 持ち帰ってきた袋の中に入れっぱなしにせずに、必ず袋から出します。
- 土がついているさつまいもを、直射日光の当たらない風通しの良い場所で3~4日干します。土を完全に落としてしまうのではなく、土が少し残っている方がより自然に近い状態を保つことができます。
- 表面をしっかり乾燥させたら、一個ずつ新聞紙でくるみ、湿気の少ない風通しの良い冷暗所で保管しましょう。時々中身を確認して、新聞紙があまりにも湿っぽく感じたら新しいもので包みなおしてください。「冷暗所」と言っても、さつまいもは暖かい地域で採れる食べ物なので、保存するには13℃〜15℃の常温保存が適温です。よって、冷蔵庫の中にいれると低温になりすぎて黒っぽい色に変色してしまう恐れがありますので、注意してくださいね。
- さつまいもは新聞紙の中で呼吸をしていますので、ビニール袋ではなく段ボールに入れるようにしましょう。このような方法で保管すると、カビの繁殖が抑えられ、時間の経過とともに美味しいさつまいもに変身します。
《 ポイント 》
- 掘りたてのさつまいもをきれいに洗うと水分を吸収してカビが生えて傷みやすくなる。
- 風通しの良い場所で3~4日干してから新聞紙に包む。
- 冷蔵庫ではなく、13℃〜15℃の常温で保存する。
さつまいもの食べごろと保存期間
さつまいもの美味しい食べごろ
さつまいもは堀りたてから常温で1~2週間経過したあたりから徐々に甘みが増して美味しくなります。
さつまいもは掘りたてだと甘みの元である麦芽糖はほとんどありませんが、常温で保存している間に少しずつ麦芽糖が増えて甘みが強くなっていきます。
ちょうど良い食べごろになるまでに2週間~1か月程度かかりますが、あせらずにじっくりと待ちましょう!前の章で紹介した正しい保存方法で行えば、さつまいもは常温で1~3ヶ月、保存することが可能です。
ただし、あまりも長く寝かせすぎたり、気温が18℃以上だと発芽して味が落ちてしまうので注意してくださいね。
《 ポイント 》
- 甘みが増して食べごろになるには2週間~1か月程度かかる。
- 正しい保存方法だと常温で1~3ヶ月保存できる。
さつまいもが食べきれない時
堀りたてのさつまいもは、生のままなら新聞紙などに包んで、風通しのよい冷暗所で保存すると、1か月以上は大丈夫ですが、量が多すぎて食べきれない時にはどうしたらよいのでしょうか?
そんなときには、熟成されて甘みが増したさつまいもを冷凍保存してみましょう。
生のまま冷凍する
皮付きのままよく洗い、冷凍前にキッチンペーパーなどで水分をよく拭き取ることがポイントです。あとは、輪切りにしてファスナーつき保存袋に入れて冷凍保存するだけです。調理する時には冷凍のまま使いましょう。
さつまいもを潰してマッシュ状にして冷凍する
生のまま切って冷凍すると食感が悪くなったような気がして嫌な方は、潰してマッシュ状にしてみましょう。過熱してから潰したさつまいもをジップロックに入れ、平らにして冷凍します。マフィンやスープなど、多くのメニューにそのまま使えるので便利ですよ。
ふかし芋にしてから冷凍する
ふかし芋にしておけば、新聞紙にくるんでそのまま冷凍できます。食べる時は自然解凍でもOKですが、電子レンジで加熱するとより美味しいふかし芋になります。
さつまいもを干して保存
時間はかかりますが、放ったらかしでよいので簡単に作れます。加熱したさつまいもが熱いうちに皮をむき縦に薄く切ったものを、天気のいい日に、3~5日ほど天日干しにします。
透明感が出て、ねっとりした感じになれば完成です。湿度が高かったり、干している間に雨が降ったりすると、白カビが生えてしまうことがあります。
ただし、干し芋についている白い粉がすべて白カビというわけではありません。さつまいもの糖分が結晶化すると、白い粉となって表面に付着するのです。「糖分」なのか、それとも「カビ」なのか、判断するには歯ブラシでこすってみてください。
表面にだけついている白い粉が簡単に取れるようでしたら、それは「糖分」なので食べても問題ありません。ですが、中にまで白いものが入り込んでいる場合は、「白カビ」なので、誤って食べてしまわないよう、注意してくださいね。
《 ポイント 》
- さつまいもの冷凍保存は、生のまま蒸かしたもの、過熱してマッシュ状にしたものを冷凍する。
- 加熱したさつまいもを3~5日天日干しして干しいもにしてから保存する。
- 干し芋の表面の白い粉が糖分かカビかを判断するには歯ブラシでこすってみる。
さつまいもは栄養満点&低GI食品
さつまいもは、美容と健康、若さを保ちたい方にうってつけの食材だとご存知でしたか?
ビタミンC
ビタミンCの含有量は、いも類の中でトップクラス。肌のシミ対策に効果的と言われる栄養素で、
さつまいもに含まれるビタミンCはりんごの約5倍。ビタミンEを一緒に摂ることでより美肌効果を発揮、また、活性酸素の発生を抑制する効果もあり、がんのリスクを下げるとも言われています。
食物繊維
さつまいもには2つの食物繊維が入っており、水に溶ける水溶性食物繊維は余計なと水に溶けない不溶性食物繊維が含まれています。水溶性食物繊維は余った糖質や脂質をキャッチし、不溶性食物繊維はそれを排出することで腸内環境を整えてくれます。
カリウム
さつまいもに含まれるカリウムは、余分なナトリウムを体外に排出してくれるので、むくみ対策に有効的と言われています。
ビタミンE
ビタミンEには、糖質の酸化を防ぐ効果によって細胞膜の酸化による老化を防ぎ、血液中のLDLコレステロールの動脈硬化などの生活習慣病の予防効果があると言われています。
βカロテン
βカロテンは体内でビタミンAに変換して、皮膚や粘膜を丈夫にしたり、視力の維持や、がんの予防、免疫力の強化、アンチエイジングなど、健康を保つために重要な働きをする栄養素で、さつまいもにも含まれています。
レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)
さつまいもは「低GI食品」と言われる血糖値の上昇が緩やかになる食品。
インスリンの上昇を抑えるのに、レジスタントスターチと言われる、難消化性でんぷんと呼ばれるでんぷんが含まれています。
ビタミンCは通常熱に弱い栄養素ですが、さつまいもに含まれるでんぷんがビタミンCをガードしているため、加熱しても壊れにくいという特長があります。
《 ポイント 》
- ビタミンC:美肌効果、抗酸化作用でがんのリスクを下げる。
- 食物繊維:腸内環境を整える。
- カリウム:むくみ対策に効果的。
- ビタミンE:生活習慣病の予防効果。
- βカロテン:免疫力の強化、アンチエイジング。
- レジスタントスターチ:血糖値の上昇を緩やかにする。
- さつまいもに含まれるでんぷんにより、加熱してもビタミンCが壊れにくい。
ここからはおすすめの調理方法をご紹介します。
掘りたてのさつまいもの美味しい食べ方
甘みが増して食べ頃になったさつまいもが一番美味しいとはいえ、芋ほり直後の甘くない堀りたてのさつまいもでもメニュー次第ではおいしく食べることができます。それは「さつまいもチップス」と「大学いも」!
芋ごはんや芋天にすると、甘みがなくボソボソした感じになるのですが、この二つなら美味しくいただけます!こちらで紹介していますので参考にしてくださいね♪
さつまいもチップス
材料
- さつまいも:1本
- サラダ油 :適量
- 塩 :適量
- お好みで調味料を加えてもよい
作り方
- スライサーを使ってさつまいもを縦長に薄くスライスする。
- 10分程度水にさらしてさつまいものアクを抜く。
- さつまいもの水気をきり、キッチンペーパーで水分を拭き取る。※さつまいもを揚げた時に油が跳ねないよう水分はしっかり取りましょう。
- フライパンにサラダ油を入れ、さつまいもがきつね色になってカリッと固くなるまで加熱する。
- フライパンからさつまいもを取り出して油をきる。
- 仕上げに塩やお好みの調味料を振りかけたら完成!
大学いも
材料
- さつまいも:中2本(約300g)
- はちみつ :大さじ2
- しょうゆ :小さじ1
- 黒いりごま:小さじ1
- サラダ油 :大さじ3
作り方
- よく洗ったさつまいものヘタを切り、皮付きのまま小さめの乱切りにする。
- 10分ほど水にさらしてアクを抜く。
- さつまいもの水気をきり、キッチンペーパーで水分を拭き取る。※さつまいもを揚げた時に油が跳ねないよう水分はしっかり取りましょう。
- サラダ油をしいたフライパンにさつまいもを入れて中火で加熱する。
- サラダ油が泡立ってきたら弱火にする。
- ふたをして7〜10分間蒸し焼きにする。※低温でゆっくり時間をかけて火を通すと糖度が増してより甘く仕上がります。
- ふたを開け、さつまいもに竹串を刺して火の通り具合を確認する。※竹串がスッと通ったら、中までしっかり火が通ったサインです。
- ヘルシーに仕上げたい場合には、フライパンの中の余分な油をキッチンペーパーで拭き取る。
- 中火にして、はちみつとしょうゆを加えてよく絡める。
- 黒いりごまを加えて、ざっと混ぜたら完成!
《 ポイント 》
- 芋ほり直後のさつまいもでも「さつまいもチップス」と「大学いも」にすると美味しく食べられる。
最後に
新鮮さが命の野菜とは違って、堀りたてのさつまいもは美味しくないというのには驚いてしまいますね。そこで、収穫後にどうしたらホクホクと甘いさつまいもになるのか、おわかりいただけたかと思います。
正しい保存方法で保存して数週間待つ・・・その甲斐あってか甘みのある美味しいお芋になるので楽しみですよね。
一方で、芋ほり直後のまだ甘みがない堀りたてのさつまいもでも、メニュー次第でをおいしく食べることもできます。
薄切りにしたさつまいもを揚げて、塩をぱらりとかけた「さつまいもチップス」そして、揚げ焼きにしたさつまいもを、はちみつとほんの少しのしょう油で絡めた「大学いも」これは子どもでも大人でも、大満足する美味しさです。この記事を参考に、さつまいもが旬を迎える秋に、ぜひ試してみてくださいね。