目次
あしたばの旬
あしたばは年間を通して流通していますが、あしたばの食べ頃の旬は春です。
そんなあしたばが新芽を出す時期は2月中旬頃で、5月あたりまでがあしたばの旬の時期、中でも比較的多く出回っているのは3月頃です。その頃になると首都圏では東京都産のあしたばが出回るようになります。
《 ポイント 》
- あしたばの旬は春
- あしたばが比較的多く出回っているのは3月頃
あしたばの特徴と産地
あしたばの特徴
旬の時期も生育が早いあしたば(明日葉)の和名の由来は、「今日葉っぱを収穫しても明日になると早々に新しい葉を出している」という繁殖力の強さからきています。
他にも、八丈草(ハチジョウソウ)、明日草(あしたぐさ)、明日穂(あしたぼ)などの別名があります。
英名のAngelica(アンジェリカ)とは、ラテン語のangelus(天使)が語源となっており、生命力の強さから、死者を蘇らせることができるかもしれないという思いから付けられと伝えられています。
深い切れ込みの入った羽状の葉をたくさん茂らせながら、50~120cmほどの草丈に生長し、かわいい小さな花を放射状に広げて咲かせます。
あしたばは晩夏から秋にかけて長い茎を伸ばし、その茎を切ると淡い黄色の乳液が出てくるのが特徴的です。
古くから太平洋沿岸部に自生していた数少ない日本原産の緑黄色野菜で、伊豆諸島でも島によって、茎の色や形状が若干異なり、伊豆大島産のものを「赤茎」、八丈島産のものを「青茎」と呼び分けて食用とされてきました。
現在では若い葉柄を摘んだものを健康食品である青汁の原料として、全国で販売されているのはご存知ですよね?
出荷されているものは青汁やサプリメントなど加工向けがほとんどで、シーズンになると店頭で売られている生のあしたばは、そう多くはありません。
あしたばの産地
全国の取り扱い量は約42.8t。その中で最も多いのは東京都産の約40.8tで全体の約95%を占めています。次は宮城県産の約1.7トンで全体の約4%、そして茨城県産の約209キ㎏で1%未満と続きます。
日本に自生しているあいたばは、房総半島や伊豆諸島、三浦半島、伊豆半島、および紀伊半島の太平洋沿岸部の温暖な気候を好みます。そのため、あしたばの生産量が一番多いのは、東京都の伊豆諸島で、全国での生産量のおよそ90%を占めています。
2月といえば、本土ではまだ気温が上がらず寒い日が続いていますが、伊豆諸島ではすでに春を感じられる季節となっており、この時期の八丈島での平年の最高気温は14℃前後と暖かいので新芽が出始めます。
このような理由から伊豆諸島では、旬のあしたばが名産品になっていて、椿油で揚げた天ぷらが名物料理になっているほか、旬のあしたばを粉末にしたものを混ぜ込んだケーキやそば、こんにゃく、焼酎、お茶、アイスクリーム、ドリンクなどの商品を次々と開発し販売しています。
《 ポイント 》
- あしたば(明日葉)は繁殖力の強さからついた名前
- あしたばの茎を切ると淡い黄色の乳液が出てくる
- あしたばは健康食品である青汁の原料として販売されている
- あしたばの生産量が一番多いのは、東京都の伊豆諸島
- あしたばは伊豆諸島では名産品を開発し販売している
あしたばの選び方
あしたばは、古くなるにつれて色があせ、黄色みを帯びてきますので、緑色が鮮やかで色が濃いものを選ぶようにします。葉がしなびていたり、切り口が変色しているものは鮮度が落ちていますので、張りのあるみずみずしさを感じるものがよいでしょう。
また、旬のあしたばでも茎が太いものや育ちすぎのものは、苦味を強く感じたり繊維が多くてスジっぽくて硬いことがありますので、細めのほうが柔らかで食べやすいでしょう。あしたばは、茎の色が緑色の青茎と、茶褐色の赤茎がありますが、赤茎のほうがやや苦味を感じるようです。
《 ポイント 》
- あしたばは旬に限らず緑色が鮮やかで色が濃いみずみずしいものを選ぶ
- あしたばのしなびている葉や、切り口が変色しているものは鮮度が落ちている
- あしたばは細めの茎のほうが柔らかで食べやすい
- あしたばは青茎より赤茎のほうが苦味を感じる
あしたばの保存方法
冷蔵保存
旬のあしたばの一番よい保存方法は、湿らせた新聞紙などでくるんでから、ビニール袋に入れて冷蔵庫に入れておくことです。
あしたばの乾燥を防ぐために、必ず袋に入れて冷蔵庫に入れておくことで、保存期間は2~3日となります。また、あしたばの上に伸びようという植物特有の性質により、寝かせておくと茎が曲がり傷みも早まりますので、可能な限り立てた状態で保存するようにしてください。
冷凍保存
旬のあしたばを固めに茹でたものを使いやすいサイズにカットしてから、冷凍保存用袋に入れて冷凍庫で保存します。保存期間はおよそ1ヶ月です。
《 ポイント 》
- 旬のあしたばは必ず袋に入れてから冷蔵庫へ。
- あしたばの冷凍保存は固茹でしたものを使いやすいサイズにカットしてから。
あしたばの栄養
あしたばは、江戸時代から滋養強壮によい薬草として知られ、枯れる前に掘り起こされた根は、薬用として朝鮮人参の代用品に用いられる程、健康増進に役立つ成分を豊富に含んでいます。また、中国では明の時代から薬用に用いられており、薬草辞典にその名が記載されています。
あしたばの茎を切ると、ネバネバした淡い黄色の汁がにじみ出てきますが、この黄色い色素の中に含まれているのがポリフェノールの一種である「カルコン」と「クマリン」で、抗菌・抗酸化作用をはじめさまざまな薬効があります。それ以外にもたくさんの栄養が含まれています。
カルコン
- アレルギーを抑える
- 強い抗菌作用
- 胃酸の分泌を抑え、潰瘍を鎮める
- 発ガン性のある物質を抑える
- 血液の粘着や凝固を抑え、動脈硬化や狭心症や心筋梗塞を予防
- 肝機能の回復
- コレステロール値、血糖値の低下
- むくみの改善
クマリン
- 血栓を防ぎ動脈硬化や心筋梗塞を予防
- 血流をよくし、リンパ液の循環や血流を改善する
- 体内での細菌の増殖や生育を防ぎ死滅させる
- 活性酸素を除去し、体を老化や疾病から守る
- むくみの改善
ルテオリン
- 利尿作用によるむくみの改善
- ガン予防
β-カロテン
- 抗発ガン作用や動脈硬化の予防
- 毛髪、視力、粘膜、皮膚の健康維持
- 喉や肺など呼吸器系統を守る
- 美肌や免疫力アップ
食物繊維、ビタミン、ミネラル(カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄分、亜鉛、銅、リン)
- 便秘の予防
- 利尿作用
- 高血圧予防
- 強壮作用
- 骨粗しょう症予防や骨の強化
- 貧血予防
《 ポイント 》
- あしたばは旬に限らず健康増進に役立つ成分を豊富に含んでいる
- あしたばの黄色い色素の中に含まれているカルコンとクマリンにさまざまな薬効含まれていてる
あしたばを家庭で栽培する
あしたばは、健康食品として流通していることが多いことは先にお伝えしたとおりですが、野菜としてはあまりなじみがないものの、家庭菜園で栽培することもできます。
発芽の適温は、15℃~20℃なので、暖かい地方では、10~11月に、寒い地方では、4~5月に苗を植えるようにします温暖な気候を好むくらいなので、当然寒さには弱いのですが、暑さにも意外にも弱く注意が必要です。
そのため、冬の寒さ対策としては、株元を腐葉土で覆っておくようにしましょう。また、水のやり過ぎもよくないので、土が乾いているのを確認してから、底から流れるくらいたっぷりと与えます。
旬に収穫しても翌日には葉が出てくるあしたばではありますが、1年目はしっかりと生育させ、収穫は植えつけてから2年目以降にしましょう。
難しくはないので、自宅で栽培してみてはいかがでしょうか。
《 ポイント 》
- あしたばは家庭菜園でも栽培できる
- あしたばは暖かい地方では10~11月に、寒い地方では4~5月に苗を植える
旬のあしたばの美味しい食べ方
油と相性が良い
旬に限らず少し味にクセのあるあしたばですが、油との相性が良く、天ぷらや炒め物にすると、食べた時にそのクセが爽やかな風味となって美味しくいただけます。
あしたばの苦み成分を油がコーティングしてくれますので、苦みやクセのある味が抑えられ食べやすくなるのです。
茹でる時の注意点
あしたばの香りが気になる方は、調理前に茹でてから使いましょう。
塩を少量加えた熱湯で茹でますが、太い茎の部分と葉の部分は火の通りが違うので、先に茎を沸騰した湯に1分ほど浸してから、次に葉の部分を加えるようにします
。あしたばを加熱しすぎると歯ごたえがなくなるので、葉の部分はさっと熱湯にくぐらせ、少ししんなりする程度で十分でしょう。
茹で上がったものは、栄養分が流出してしまわないようにすぐに冷水にとり、一気に冷ましてから水気を軽く絞ります。あしたばの苦味が苦手な方は、炒め物にする場合でも、軽く下ゆでしておくとよいでしょう。
一方、あしたばを天ぷらにする場合は、下茹でをせずにそのまま揚げても大丈夫です。
旬のあしたばの美味しい食べ方
含め煮
旬のあしたばをさっと出汁を利かせた煮汁で含め煮にしても美味しいです。ただし煮込み過ぎないように注意しましょう。
あしたばとしらすのおひたし
旬のあしたばの茎は葉よりも長めに茹でて、葉はさっと湯通しする程度で十分です。きちんと冷水にとることで、あくが抜けて食べやすくなります。
しらすをそのまま混ぜても美味しいですが、フライパンでカリカリに炒めたものをしらすを混ぜても一味違った食感が楽しめます。また、ちりめんじゃこと、しょうゆ、昆布茶、みりん、もみのりで和えたらお弁当のおかずにぴったりの一品が出来上がります。
あしたばの梅和え
梅干しの酸味とほろ苦い旬のあしたばとが、意外にもマッチする組み合わせです。味付けはめんつゆと梅干しだけなので、手軽にできてお酒のおつまみにもぴったりです。
あしたばのチーズハムカツ
旬のあしたばとチーズをハムのあいだにはさんで、パン粉をつけて揚げた料理は、野菜が苦手な人にもうってつけ。揚げたてのチーズのとろーり感がたまらない一品です。
佃煮
アシタバを細かく刻み、少量の油で炒めたら、砂糖と醤油でお好みの味付けにして煮含めます。冷めたら密封容器に入れて保存しますが、保存期間は1週間程度でしょう。アシタバ独特の風味が残り、お茶漬けなどにもピッタリです。
あしたばの天ぷら
旬のあしたばの定番料理と言えば、天ぷらもその一つです。水で溶いた天ぷら粉をつけて、170℃の油でカラッと揚げます。独特な香りもあまり気にならず、サクサクとした食感を楽しめますので、塩や天つゆで召し上がってください。
あしたばの納豆和え
茹でたら水気をしっかりしぼってみじん切りにし、再度よく水気をしぼります。納豆、あしたば、かつお節、しょうゆを混ぜたものに卵黄をのせて、ほかほかのごはんと一緒に食べてみてください。
あしたばとツナのゴマ和え
ツナに練りごまを加えた和え物は、和え衣でしっかりとコーティングされ、ご飯によく合うおかずになります。もちろんツナとあしたばだけを醤油で味付けした簡単なレシピもおすすめです。
ツナ缶を油ごと茎の部分と一緒に炒め、あとから葉の部分を加えると、食感よく仕上がります。ツナの代わりに、ゆでて細かくした鶏ササミ肉も相性がよいでしょう。
あしたばとベーコンのバターソテー
バターソテーはほうれん草でおなじみのレシピですが、あしたばを使うとほろ苦さと甘味を感じられます。フライパンで炒めてから少々蒸し煮にし、あしたばが柔らかくなれば完成です。
あしたばと豚肉のキムチ炒め
炒めることで、キムチの辛みと豚肉からのうま味が加わりゴマ油の香りにも食欲がそそられます。旬のあしたばの葉を最後に加えてからさっと炒めると歯ごたえが楽しめます。
《 ポイント 》
- 油との相性が良い
- 茹でる時は、先に茎を沸騰した湯に入れて次に葉の部分を加える
- 苦味が苦手な場合は炒め物でも、軽く下茹でしてから
- 天ぷらにする場合は、下茹でせずにそのまま揚げる
- 美味しい食べ方は、含め煮、しらすのおひたし、梅和え、チーズハムカツ、佃煮、天ぷら、納豆和え、ツナのゴマ和え、バターソテー、豚肉のキムチ炒め。
最後に
春が旬である栄養豊富なあしたばについて、いかがでしたでしょうか?
「旺盛な活動力」という花言葉が付けられるほど、生命力あふれる緑黄色野菜のあしたばは、旬になるとスーパーでも見かけるようになり、ご家庭で調理する機会が増えてきました。乾燥に弱い葉物野菜なので、生のあしたばが手に入ったらすぐに調理しましょう。
美味しく食べていただくためのレシピも紹介しましたので、独特なほろ苦さを味わいたい方や、クセを抑えて食べやすくしたい方など、ご自分の好みの調理方法で楽しんでみてくださいね。