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地震で本当に怖いのは“揺れ”よりも“とっさの行動”
地震が起きた瞬間、人は誰でも動揺します。
しかし実際に多くの被害を生んでいるのは、揺れそのものではなく、その後に取ってしまう“とっさの行動”です。慌てて外へ飛び出したり、火を使ったり、家族へ電話をかけようとしたり──それらの一瞬の判断が、思わぬ二次災害につながってしまうことがあります。
「どう動くかを知っている」ことは、恐怖を小さくし、命を守る力になります。過去の震災から学び、焦りではなく知識に基づいた判断を身につけておくことが大切です。
過去の震災が教える“焦り”の危険
1995年の阪神淡路大震災では、停電した暗闇の中でろうそくやライターを使い、火災が多発しました。2011年の東日本大震災では、「津波を確認しよう」と海辺へ向かった人々が多数犠牲になっています。これらはいずれも特別な行動ではなく、恐怖と焦りが生んだ自然な反応でした。
けれど、その“自然な反応”が命を奪う結果になることもあります。だからこそ、地震のときにやってはいけない行動を事前に理解しておくことが、最大の備えになるのです。
冷静に動くために必要なのは「知識」と「準備」
突然の揺れに直面すると、人は思考より先に体が動きます。そんなときに冷静な判断を支えるのは、事前に得た知識と習慣です。
日常の中で「もし今地震が起きたら」と考えたり、家族と避難経路を話し合ったりするだけでも、実際の行動が大きく変わります。
知っている人ほど、落ち着いて動ける。その一歩目として、次の章では地震発生時に絶対にやってはいけない行動を具体的に見ていきましょう。
地震発生時にやってはいけない10の行動
地震が起きた瞬間から揺れが収まった直後にかけて、思わず取ってしまう行動があなた自身を危険にさらす可能性があります。具体的にどのような行動が危険なのか、その理由とともに正しい対処法を順番に確認していきましょう。
①急いで外に飛び出す
地震が発生すると、恐怖心から慌てて外に飛び出そうとする人がいますが、これは大変危険な行動です。外に飛び出した瞬間に屋根瓦、看板、ガラス、電柱、ブロック塀などが落下してくる恐れがあります。大地震では落下物によるケガが多数発生しています。
正しい行動は「揺れが収まるまで室内で身を低くし、頭を守る」ことです。 丈夫な机の下に入り、クッションやカバンで頭を保護しましょう。
②窓やガラスの近くに近づく
揺れが激しいと、窓ガラスや食器棚のガラス扉などが割れて破片が飛散します。実際の災害時には、飛び散った破片で大ケガを負った事例が多く報告されています。特にオフィスビルや自宅マンションなどの高層階は、割れたガラス片の飛散距離が長くなります。
ガラスから離れ、壁際や丈夫な家具の下に避難しましょう。 揺れが収まるまで窓には絶対に近づかないようにしてください。
③揺れている最中に火を消しに行く
地震が起きると「すぐに火を消さなければ」と思う人がいます。しかし、揺れの中で慌ててコンロや暖房器具に近づくと、熱湯をかぶったり、転倒してケガをしたりするリスクが高まります。
最近のガス機器は強い揺れを感じると自動的にガスが止まる仕組みになっており、揺れている最中に無理に消火しに行く必要はありません。
まずは自身の安全を最優先にして揺れが収まってから火元を確認してください。
④エレベーターを使って避難する
地震発生時にエレベーターを使用すると、停電や機械トラブルで閉じ込められる可能性が非常に高くなります。東日本大震災では首都圏で約2万4,000人がエレベーターに閉じ込められました。
地震の際は階段で避難するのが鉄則です。 エレベーターに乗っている最中に揺れを感じたら、すべての階のボタンを押して停止した階ですぐに降りましょう。
⑤裸足や靴下のままで歩き回る
揺れが収まった直後、部屋の中は割れた食器やガラス片、落下した家具や鋭利な物でいっぱいになることがあります。実際の震災でも、足を怪我して避難ができなくなった人が多くいました。
揺れが収まったらまず靴やスリッパを履きましょう。 就寝中の地震に備えて枕元に履物を用意しておくことも大切です。
⑥停電中にロウソクやライターで明かりをとる
停電になると慌ててロウソクやライターで明かりを取ろうとしがちですが、地震後はガス漏れが発生している可能性があります。実際に阪神淡路大震災では、ロウソクによる二次火災が多数起きました。
懐中電灯やスマートフォンのライト機能を使い、安全に明かりを確保しましょう。
⑦ブレーカーを入れたまま避難する
地震の揺れで停電した後、電気が復旧すると通電火災が発生する可能性があります。東日本大震災でも数十件の通電火災が報告されました。
避難前には必ず家のブレーカーを落としておきましょう。 電気製品のコンセントを抜いておくとさらに安全です。
⑧すぐに電話で家族に連絡する
災害直後、多くの人が一斉に電話をかけると回線がパンクし、本当に緊急の連絡が繋がりにくくなります。
災害用伝言ダイヤル「171」や携帯電話会社の災害伝言板を使って安否確認しましょう。 また、SNSなどのメッセージアプリを活用することも有効です。
⑨車で避難しようとする
大地震後に車で避難すると、渋滞が起きて緊急車両の通行を妨げる可能性があります。また道路が寸断され動けなくなる恐れもあります。
徒歩での避難を原則とし、車は緊急時の邪魔にならない場所に停めて鍵をつけたままにしておきましょう。
⑩海や川の様子を確認しに行く
揺れが収まると「津波が来るかも」と海や川の様子を見に行く人がいますが、津波は予想よりも遥かに速く到達します。東日本大震災では、様子を見に行ったために犠牲になった人が多数いました。
揺れが収まったら即座に高台や避難ビルなどへ避難することが重要です。
地震発生時に取るべき正しい行動
地震が発生した際、慌てて危険な行動を取ることを避けるためには、状況に応じた「正しい行動」を知っておく必要があります。自宅や外出先など、さまざまな状況ごとに最適な行動を解説します。
自宅や室内にいる場合
地震発生時に室内にいたら、落ち着いて身の安全を確保することを最優先にします。揺れが収まるまでは無理に動き回らず、丈夫な家具の下や部屋の中央付近に移動しましょう。
揺れが収まった後は、落ち着いて火元やガスの安全を確認し、電気のブレーカーを落として避難経路を確保します。余震に備え、落下物や転倒した家具には十分注意して行動してください。
《室内で取るべき行動》
- 丈夫な机の下に隠れる
- クッションや枕で頭を守る
- スリッパや靴を履いて移動する
- ガスの元栓を閉める
- ブレーカーを落として通電火災を防ぐ
- 避難経路を確保する
外にいる場合
屋外にいるときは、建物からの落下物や倒壊の危険がない広い場所に避難しましょう。揺れを感じたらすぐに建物の壁や窓、自動販売機や電柱、ブロック塀などの危険な場所から離れ、周囲に何もない広場や公園に移動します。
落下物に備えてカバンなどで頭を保護しながら避難するのが理想的です。
《屋外で取るべき行動》
- 広い空き地や公園に避難する
- 建物やブロック塀から離れる
- バッグやカバンで頭を守る
車を運転中の場合
運転中に地震が発生したら、安全を確認した上で路肩に車を寄せ、停車します。緊急車両が通行できるように鍵をつけたまま車を離れ、安全な場所まで徒歩で避難しましょう。
車内でラジオを聞くことで、正確な情報を得られる場合があります。
《運転中に取るべき行動》
- 左側の路肩に停車する
- エンジンを切り、鍵をつけたまま避難する
- ラジオや防災アプリで情報を得る
公共交通機関(電車・バスなど)に乗っている場合
電車やバス内で地震が発生したら、まず姿勢を低くして、つり革や手すりにつかまって転倒を防ぎます。非常事態でもすぐに飛び出さず、車掌や乗務員の指示に従って冷静に行動しましょう。
非常口や避難経路を確認し、指示が出たら迅速に避難します。
《公共交通機関で取るべき行動》
- つり革や手すりにつかまる
- 車掌や乗務員の指示を待つ
- 勝手な行動をせず冷静に待機する
商業施設(スーパーやデパート)にいる場合
商業施設では、揺れを感じたら商品の落下や転倒物から身を守るため、陳列棚から離れて通路の中央に移動しましょう。頭を買い物カゴやカバンで保護し、揺れが収まったら係員の指示に従って階段から避難してください。
《商業施設で取るべき行動》
- 陳列棚やガラス製品から離れる
- 頭を買い物カゴやカバンで守る
- 係員の指示に従い階段で避難する
まとめ
地震発生時に命を守るためには、普段から「正しい行動」と「避けるべき行動」をしっかり理解しておくことが何より重要です。
大きな災害では、たった一つの判断ミスが命取りになることがあります。家族や職場、学校などで日頃から防災訓練や話し合いを行い、地震発生時の行動指針を共有しておきましょう。
自宅の家具固定や非常食・飲料水の備蓄、防災リュックの準備といった日常の小さな行動が、いざというときにあなたや大切な人の命を救います。防災は知識だけでなく、日々の準備と行動が大切です。