選挙ポスターに落書きしたらどうなる?逮捕や前科につながる行為とは

街中で見かける選挙ポスター。何気ないイタズラのつもりが、実は犯罪になることを知っていますか?選挙ポスターの落書きや破損は、公職選挙法違反や器物損壊罪に問われ、逮捕されることもあります。この記事では、選挙ポスターを傷つけるとどうなるのかをわかりやすく解説します。

選挙ポスターへのいたずらは「公職選挙法違反」になる

選挙のたびに街のいたるところで見かける候補者のポスター。候補者にとって、これは有権者に自分を知ってもらうための大切な手段です。

しかし、ポスターに落書きしたり破ったりする行為は、法律で厳しく禁止された犯罪です。たとえ冗談や軽い気持ちだったとしても、逮捕や罰金などの刑罰を受ける可能性があります。

どんな行為が罪になるのか

選挙ポスターに対する違法行為は、落書きだけではありません。ポスターの効果を妨げるようなあらゆる行動が処罰の対象になります。

  • ペンやスプレーで落書きをする
  • 顔や名前を隠すように別の紙を貼る
  • 故意に破る・剥がす
  • 公営掲示板から無断で持ち帰る
  • 他の候補者のポスターを上から貼る

これらはすべて「選挙の公平さを妨げる行為」として、公職選挙法で明確に禁止されています。

「ちょっとならバレない」と思っても、実際には防犯カメラや通報で特定されるケースがほとんどです。軽い行動のつもりでも、立派な犯罪になることを忘れないでください。

「選挙の自由妨害罪」とは何か

公職選挙法第225条では、選挙の自由を妨げる行為を「選挙の自由妨害罪」として処罰します。

中でも「文書図画の毀棄(きき)」とは、ポスターや看板などの効用を失わせる行為、つまり顔や名前が見えなくなるような汚損・破損を指します。

選挙ポスターは、候補者の考えを有権者に伝えるための重要な情報源です。それを壊す行為は、候補者の権利を奪うだけでなく、有権者が正しい情報を得る機会を妨げることにもなります。

公平な選挙は民主主義の基本。だからこそ、法律で厳しく守られているのです。

罰則はどのくらい重いのか

2025年3月の公職選挙法改正で、選挙ポスターを傷つけた場合の罰則はさらに厳しくなりました。

これまでの「4年以下の懲役または禁錮」から、「5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」へと強化されています。

「拘禁刑」とは、刑務所などで自由を奪われる刑罰のこと。つまり、落書きひとつで自由を失う可能性があるということです。さらに、罰金で済んだとしても前科が残るため、就職や進学、資格試験などに影響することもあります。

「軽いイタズラだった」と後から後悔しても遅いのです。選挙ポスターを傷つける行為は、社会的にも自分の人生にも大きな代償をもたらします。

器物損壊罪に問われることもある

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選挙ポスターへのイタズラは、公職選挙法だけでなく、刑法の「器物損壊罪」にも該当する可能性があります。

政治的な意図がなくても、他人の財産を壊した時点で犯罪になるという点がポイントです。

器物損壊罪とはどんな罪?

器物損壊罪は、刑法第261条に定められており、他人の物を故意に壊したり、その価値を失わせたりする行為を罰します。

選挙ポスターは、候補者や政党が所有している正式な財産と見なされるため、これを破いたり汚したりすることは、「他人の財産を損なう行為」にあたります。

刑法では、器物損壊罪の罰則を「3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金または科料」と定めています。つまり、公職選挙法違反に加えて、さらに刑法上の罪にも問われる可能性があるということです。

「選挙ポスターだから問題ない」「選挙が終わったから関係ない」と思う人もいますが、それは誤りです。ポスターが掲示されている限り、候補者や政党の財産であり、勝手に汚したり持ち帰ったりすれば立派な犯罪になります。

公職選挙法違反と器物損壊罪が両方適用されることもある

選挙ポスターを破る、落書きする、剥がすといった行為は、場合によっては公職選挙法違反と器物損壊罪の両方に問われることがあります。

公職選挙法は「選挙活動の妨害」を罰する法律、器物損壊罪は「他人の財産を壊すこと」を罰する法律です。行為の性質によっては、二つの観点から同時に処罰の対象になるのです。

たとえば、ポスターを意図的に破って投票行動に影響を与えようとした場合は公職選挙法違反。単に面白半分で破った場合でも、器物損壊罪として処罰される可能性があります。

複数の法律に触れる行為は、それだけ量刑も重くなる可能性があり、「知らなかった」では済まされません。

実際に逮捕された事件もある

選挙ポスターへのイタズラは「バレない」と考える人もいますが、現実はまったく逆です。防犯カメラの設置や市民の通報によって、犯人が特定・逮捕されるケースは後を絶ちません。

ここでは、実際に起きた事件を紹介します。

スプレーで落書きをして逮捕されたケース

2022年の参議院選挙では、名古屋市で候補者のポスター12枚にスプレーで「ワクチン」と書き込んだ女性が逮捕されました。

女性は「軽い気持ちでやった」と供述しましたが、防犯カメラの映像と目撃証言から特定され、最終的に逮捕に至りました。

この事件では、政治的な意図がなくても「選挙の自由を妨げた」として公職選挙法違反が適用されました。

候補者の顔に泥を塗ったケース

東京都練馬区では、候補者の顔部分に靴底の泥を塗りつけた男性が現行犯逮捕されました。

男性は「いたずらのつもりだった」と話していましたが、掲示板の前での不審な動きを市民が通報し、警察が現行犯で確保しました。

このように、わずかな行為でもすぐに見つかるのが現代社会です。監視カメラや通報体制が整っている今、“見られていない”と思う方が危険なのです。

ポスターを剥がして持ち帰ったケース

神戸市では、公営掲示板のポスターを無断で剥がして持ち帰った男性が、公職選挙法違反容疑で逮捕されています。

「記念に欲しかっただけ」という動機でも、違法行為であることに変わりはありません。

公設掲示板のポスターは、選挙管理委員会の管理物であり、掲示期間が終わったあとも無断で持ち帰ることは法律違反にあたります。撤去や処分は、選挙管理委員会(または委託業者)が適切に行う仕組みになっています。

このように、実際の事件を見ても、「少しくらいなら」と油断した行動が犯罪として扱われる現実がわかります。

今の社会では、防犯カメラ・SNS・通報などを通じて、ほぼ確実に発覚する時代です。選挙ポスターへの行為は、どんな形でも残り、逃れることはできません。

社会的な代償は大きい

選挙ポスターへの落書きや破損が犯罪であることは明らかですが、それで終わりではありません。

有罪になれば刑罰以外にも多くの影響が残り、人生そのものに深刻なダメージを与える可能性があります。

前科がつくとどんな影響があるのか

選挙ポスターを壊したり落書きしたりして有罪となると、前科が記録されます。

前科はたとえ罰金刑であっても消えるわけではなく、採用選考や進学、資格取得などで不利になる可能性があります。

特に公務員試験や国家資格の一部では、一定期間受験や登録が制限される場合もあります。
たった一度の軽率な行為が、自分の未来や信頼を大きく損なうことを忘れてはいけません。

民事での損害賠償請求

刑事処分とは別に、被害を受けた候補者や政党が民事裁判を起こすこともあります。

たとえば、ポスターの再印刷代、貼り替えにかかる人件費、資材費などが損害として請求されることがあります。破損の範囲によっては、数万円から数十万円の賠償金を支払う可能性も。

「罰を受けたから終わり」ではなく、金銭的な責任も同時に負うという点を理解しておく必要があります。

公民権の停止と社会的信用の低下

公職選挙法違反で有罪となると、犯罪の内容や刑罰の種類によっては、一定期間、選挙権や被選挙権が停止される場合があります。

これは、「選挙の自由を妨げた行為」を行った者として扱われるためです。

また、逮捕された事実は報道や周囲の噂によって広まり、職場や学校での信用を大きく損なうことにもつながります。社会的制裁は、法律上の罰よりも長く、深く人を苦しめることさえあります。

見かけたときはどうすればいい?

もし、街中で落書きされた選挙ポスターや破損した掲示物を見つけたら、どう行動すればよいのでしょうか。

その場で自分が何をするかで、選挙の公正さを守れるかどうかが変わります。まず、絶対に自分で触らないことが重要です。触ることで証拠が消えたり、誤って関与を疑われる可能性があります。

次に、地元の選挙管理委員会や警察に連絡しましょう。掲示場所の住所や目印を伝えるだけでも十分です。これによって、早期の修復や被害調査が可能になります。

近年では、SNSに「面白いから」と写真を投稿する人もいますが、それは避けるべき行為です。
投稿が拡散されると、候補者の名誉を傷つけたり、悪意ある印象操作に利用される危険があります。

また、公設掲示板のポスターは選挙管理委員会の管理物であり、撤去も選管(または委託業者)が行います。

選挙後に欲しい場合は、必ず候補者の事務所に正式に確認しましょう。

選挙ポスターは民主主義を支える大切なツール

選挙ポスターは単なる広告ではありません。それは、候補者と有権者をつなぐ「民主主義の窓口」です。

候補者の顔や名前を知るだけでなく、政策や想いを伝える役割を果たしています。特に知名度の低い新人候補にとっては、ポスターが唯一の自己表現手段となることもあります。

2025年の公職選挙法改正では、「候補者名の明記義務」や「営利広告の禁止」などが定められ、ポスターがより「公共的な存在」であることが明確になりました。

つまり、選挙ポスターを守ることは、候補者の権利を守るだけでなく、私たち有権者の「知る自由」を守ることにもつながるのです。

まとめ

選挙ポスター板

選挙ポスターへの落書きや破損は、公職選挙法や刑法に違反する重大な犯罪です。

罰則は最大で5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。しかし、もっと深刻なのは、前科や社会的信用の失墜、将来への影響といった“目に見えない代償”です。

もし破損を見つけたら、触らずに選挙管理委員会や警察に報告を。そして、ポスターを丁寧に扱うことが、私たち一人ひとりの選挙への責任でもあります。

一枚のポスターを大切にする意識が、民主主義を支える最初の一歩です。

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