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調味料の「さしすせそ」とは
みなさんは調味料の「さしすせそ」を全部正確に言えますか?「さしすせそ」とは、日本料理の基本である5つの調味料とそれを加える順番を表した言葉です。
それではまず、「さしすせそ」が具体的に何の調味料を指すのか見ていきましょう。
- 「さ」は砂糖の「さ」
- 「し」は塩の「し」
- 「す」は酢をそのまま「す」
- 「せ」醤油せうゆ(しょうゆ)の「せ」
- 「そ」は味噌の「そ」
覚えやすいように、味噌の「そ」以外は、それぞれ調味料の頭文字を取っていますが、「し」は「醤油」ではなく「塩」の「し」なので、間違わないようにしてくださいね。
調味料を加える順番がなぜ重要なのか・・・例えば、和食の代表のひとつである「煮物」を作るとき、この順番を守って調味料を入れると食材に味がしっかりしみ込んで美味しく仕上がるとされています。そして、「さ」「し」「す」「せ」「そ」どおりの順番を守るだけではなく、煮るときの火加減と温度を管理しながら、焦げや煮崩れをおこさないように弱火から中火でコトコト煮込むことも大切なことです。
このように、調味料の「さしすせそ」の大切さをしっかり理解すれば、味を効率よくしみこませたり、食材を柔らかくしたり、素材のおいしさをよりいっそう引き出せる使い方ができるのです。
「さ」は砂糖
料理の味付けで最初に使用する調味料は、料理に甘みをつけるために加える「砂糖」です。
甘味は、なかなか食材に浸透しにくいので、塩や醤油のような塩分のある調味料を先に入れてしまうと、その後に入れる甘味は食材に染み込みにくくなるというのがその理由です。また、砂糖の後に加えられるその他の調味料を染み込みやすくする作用もあります。
砂糖は水に溶けやすい性質があり、常温で水の質量の20%が、100℃のお湯では5倍の砂糖が溶け出します。料理がおいしく感じるには食材の「浸透圧」がとても重要で、これが料理でいうところの「浸み込む」という表現に当てはまります。
最初に入れる砂糖は甘みを与えるだけではなく、食材を柔らかくする作用もありますので、肉料理を作るときの手順のひとつに、砂糖で揉む作業をする人もいるようです。
「し」は塩
調味料として2番目に使用するのが、「塩」です。
塩を2番目に使用する理由は、塩は浸透圧が高く食材から水分を引き出す力があるため、食材の水分を排出する他、食材を引き締める作用もあり、味付けの初めの段階で入れる方が好ましいとされています。
食材の水分を外に出してしまうと、せっかく砂糖で食材を柔らかくしたのに、硬くなってしまうのではないか思ってしまいそうですが、砂糖と塩は分子量が違うので、砂糖の後に塩を入れても硬くなることはありません。
食材に味が浸み込むということは、スポンジが水を吸い込む様子をイメージしていただけると分かりやすいのですが、食材の隙間に分子が入り込んでいくのはそれと同じことです。
ですので、砂糖より先に塩を入れてしまうと小さな塩の分子が食材の隙間にびっしりと入り込んでしまい、後で砂糖を入れたとしても砂糖の大きな分子は食材に入ることができなくなってしまうのです。
このため、塩を先に入れてしまうと食材が硬くなり、塩味を強く感じる料理が出来てしまいますが、塩を砂糖の後の2番目に入れることで、ほどよくやわらかな食材となるのです。
「す」は酢
調味料の3番目に使用するのが、「酢」です。
塩の後に入れる手順になっている酢は、他の味が食材に染みるのを防いでしまう働きがあるので、なるべく味付けは後半に行うようにします。また、酢は発酵調味料なので、早い段階で入れて加熱しすぎてしまうと、熱でせっかくの酸味が飛んでしまい、独特な風味が弱まり、まろやかな味になってしまいます。
酢を3番目に投入することで、食材を柔らかくしたり、食材の臭みを取ったりと色々な役目を果たしてくれるので、この後の味付け「せ」の醤油と「そ」の味噌の風味を促進させる効果を発揮させることができます。
「せ」は醤油
調味料の4番目に使用するのが醤油です。「しょうゆ」ではなく「せいゆ」の「せ」と覚えておきましょう。
作る料理によっては、最後に味を付ける時に用いる場合もあります。醤油を料理の後半に使用する理由は、「酢」と同じように醤油自体が発酵調味料なので熱を加えると風味が弱くなってしまうからです。味付けする際、2番目に塩を使用した場合は、塩辛さを感じない程度に調整することを心がけておきましょう。
「そ」は味噌
調味料の5番目に使用するのは「味噌」です。料理の最後に使用する理由は、熱によって焦げやすくなるからです。
風味付けの目的でもある味噌は、酢や醤油と同じ発酵調味料なので、長時間火にかけるとその風味が損なわれてしまわないように、料理の仕上げの場面で入れるのがよいとされています。
注意しなくてはいけないことは、市場に出回っている様々な種類の味噌は、商品ごとに味付けが異なっています。中には、塩分や甘みが強調されたものや、だし入りのお手軽味噌もあり、使用する食材や料理によって使用量の調整を考慮しつ、使い分けが必要となります。
さしすせそ「さ=砂糖」の効果
味付けの効果と特徴
- 素材に入り込んだ砂糖が水分を含み、素材をより柔らかにする。
- 自然由来の甘みで料理を美味しくする。
- バターや油 脂を使う料理の調味料として使うと、脂質の酸化を防ぐ。
- 砂糖が水分を奪うため、水分を必要とするカビや微生物の活 動を抑え、ジャムなどのように腐敗を防ぐ作用がある。
砂糖の種類
上白糖
日本で最もポピュラーな砂糖は、白くてしっとりとした上白糖です。甘みにクセがなく、調味料で使うと料理にコクと深みを加えます。
グラニュー糖
同じく白い砂糖には、グラニュー糖という白くサラサラした砂糖があります。こちらは上白糖に比べると甘みが控えめで、料理よりもお菓子作りや、温かいお飲物に向いています。
三温糖
三温糖は茶色く色づいた砂糖で、上白糖やグラニュー糖に比べてさらに風味とコクが強く、煮込み料理の調味料として適しています。
和三盆
和三盆は数少ない国産砂糖であり、細かな粒子と口どけの良さが主な特徴です。高級な和菓子を作る際に用いられることが多い上質な砂糖です。
砂糖の原料は、サトウキビとサトウダイコンから、「ショ糖」という成分を取り出したものです。世界で生産される砂糖の75%はサトウキビですが、日本国内では沖縄や鹿児島、薩摩諸島などで栽培されています。
さしすせそ「し=塩」の効果
味付けの効果と特徴
- スイカやトマトに塩を振って食べると甘く感じられるように、塩を少量加えることで、素材の甘みを強く感じさせる効果がある。
- 食物の酸化を防ぎ、保存性を高める。
- 塩には水分を排する働きがあるので、その結果、旨みをぎゅっと凝縮させる。
- 味噌や醤油、漬け物などに塩を使うことで微生物の繁殖を調節し、発酵させる。
このように、海水や岩塩などから作られる料理に欠かせない塩は、素材の味を引き締めてくれるだけでなく、味つけを調える重要な役割も担っています。塩加減一つでその料理の美味しさが決まることもあり、昔から「塩の扱い方が上手い人は料理上手」と言われるのは、そのような理由からなのでしょう。
塩の種類
日本国内で売られている塩は、「食卓塩」「食塩」と、岩塩、天日塩などの「天然塩(自然塩)」に大きく分けられます。
食卓塩
精製した塩のことです。塩化ナトリウム99%以上で炭酸マグネシウムを添加したもので、一番低価格です。海外から輸入された原塩を溶解し、砂やごみ等の粗雑物を除去した後、かたまりにくく加工したものですが、その加工過程では、マグネシウムやカルシウムを含む「にがり」も除去されてしまいます。また、吸湿防止のために、炭酸マグネシウムが添加されます。
食塩
海水からイオン交換膜法によって得たかん水を凝縮し、「食卓塩」と同じように精製したものです。
天然塩(自然塩)
本来塩に含まれる「にがり」成分をほどよく残して製塩されているものを指し、太陽熱と風力を利用して作られる「天日塩」や、「岩塩」などのことを言います。塩化ナトリウム以外にカルシウム,マグネシウム,鉄,カリウム等ミネラル分を含む物質が豊富に含まれているので、「甘み」「うまみ」「苦み」等のミネラルのバランスに優れ、塩分だけでなく味覚的にも美味しさを感じやすいでしょう。
海外からの輸入品も含め、塩はたくさんの種類が出回っていますが、やはりおすすめは国内産の海水から作られる純度の高い塩です。60種類とも言われるミネラルがバランスよく含まれた、自然の恵みをたっぷりの天然塩は、繊細な甘みと苦味、深い旨みを引きだしてくれますので、料理の味の要といっても過言ではないでしょう。
さしすせそ「す=酢」の効果
味付けの効果と特徴
- 料理に酸味を加える。
- 酢に含まれる酢酸やクエン酸は血圧や血糖値の上昇を抑制する。
- 疲労回復の効果がある。
- 食材の腐敗を抑える防腐効果があるため、保存技術の少なかった時代から重宝されている。
酢の種類
酢には「米酢」「果実酢」「黒酢」など、原料の違いによりさまざまな種類があり、それぞれ異なった風味を持っています。
米酢
日本で最もポピュラーで、お米を原料に作られています。酸味は強めですが、米の甘みとまろやかさを伴っており、お寿司の酢飯を作る時には米酢を使うことが多いようです。
果実酢
果実を原料とした酢で、代表的なものにはリンゴを使ったリンゴ酢やぶどうを使ったワインビネガーがあります。米酢に比べて酸味は控えめで、フルーティーな香りと甘みがあり、デザートの味つけに使われることもあるようです。
黒酢
琥珀色をした酢で、玄米や精米度の低い米、大麦などを原料として作られたものです。樽や瓶で長期間発酵されることにより、香りがとても豊かで、普通の酢よりも角が取れたまろやかな酸味が特徴です。
さしすせそ「せ=醤油」の効果
味付けの効果と特徴
- 出汁の味を引き立てる。
- 食材の色づけに用いられる。
- 生臭さを消してくれる消臭効果がある。
醤油の種類
日本では地域によって使われる醤油の味や風味に違いがあります。
濃口(こいくち)醤油
東京など関東圏では濃口(こいくち)醤油が好んで使われます。臭みやクセのある豚肉や青魚などを味つける場合には、醤油の風味が強い濃口(こいくち)醤油を用いると美味しく仕上がります。
薄口(うすくち)醤油
大阪など関西圏では薄口(うすくち)醤油が好んで使われます。
濃口(こいくち)醤油は醤油の風味が強いので、一見味が濃いように思われがちですが、実は塩分の濃度が濃いのは薄口(うすくち)醤油の方なのです。素材の味と色を活かした料理に仕上げたい時には、醤油の色と風味が控えめな薄口(うすくち)醤油で味つけをするのがおすすめです。
大豆や小麦などを原料に発酵・熟成させた発酵食品であり、和食に欠かすことのできない「日本の味」と言えるのが醤油です。
さしすせそ「そ=味噌」の効果
味付けの効果と特徴
- 旨みの元であるアミノ酸を多量に含んでいる。
- 大豆や麹を原料とした発酵食品であり、タンパク質やカルシウムを多く含むため、栄養源として重要である。
- ペースト状で、油とも混じりあい、とても使いやすいので料理の幅を広げてくれる。
味噌の種類
味噌にもさまざまな種類があり、原料・色・味などによって分類することができます。
米味噌
米・大豆・塩を原料として作られる味噌です。甘口の白味噌も米味噌のひとつで、関西圏ではお雑煮やお味噌汁などを作る時にこの白味噌をよく用います。
麦味噌
麦・大豆・塩を原料として作られる味噌で、主に四国・中国・九州などでよく使われており、甘味は少なくさっぱりとした味わいです。
豆味噌
大豆・塩のみを原料として作られる味噌で、黒っぽい濃い色が特徴です。名古屋の名物料理である味噌煮込みうどんや味噌カツの味は、八丁味噌がなければ作り出すことができません。
合わせ味噌
2~3種類の味噌をブレンドして作る味噌のことです。異なった味わいを持つ味噌を合わせることで、1種類の味噌では出せないコクや風味を引き出すことができます。
味噌も醤油と同じく、大豆を発酵させて作る日本特有の発酵調味料です。近年ではスローフードや日本食ブームにより、味噌の良さが改めて見直されています。
料理酒やみりんを入れる順番は?
日常的に使う料理酒やみりんも欠かせない調味料なのですが、「さしすせそ」に含まれていませんよね。料理酒やみりんはどの順番に入れてどのような効果があるのでしょうか。
料理酒
料理酒を使用するタイミングは、砂糖と同じと考えてください。煮物なら「酒+砂糖」となります。食材の臭み取りや味を浸み込みやすくする作用があること、そして酒に含まれるアルコールを蒸発させるためというのが、料理の最初に入れる理由です。アルコールを蒸発させた酒は、うまみ成分だけが残るので、味に深みが増します。
みりん
みりんは、甘味のある液状の調味料ではなく「甘味を含んだお酒」であり、食欲をそそるテリとツヤを作り出すことができます。料理にみりんを入れる目的が何かによって、タイミングが変わります。
野菜などの煮込み料理で使用する場合は、砂糖と同じタイミングで入れる場合もありますが、料理に甘みをプラスする場合には料理の最後に加えます。料理の本によっては、最初と最後に半量ずつ入れましょうと記載されているものもあります。
みりんの種類によっては、アルコール分が含まれるものがありますので、この場合は、アルコール分を蒸発させるために、入れた後は必ず加熱してください。
最後に
どんなに高級な食材を用意しても調味料の使い方のタイミングによって料理の味が大きく左右されてしまいます。調味料の基本となる「さしすせそ」の他にも「料理酒」と「みりん」を加える順番を正しく行うことで、より一層、おいしい料理を完成させることができます。
料理によっては、塩分で下味を付けた後に煮込むなどもありますから、それぞれの味付けの目的に合わせて、分量や順番を変えてみたり、仕上げに微調整して味を調えたり、ひと手間プラスすることで、おいしさの幅がどんどん広がっていくのではないでしょうか。