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関東と関西のだしが違う理由
日本料理に欠かせない「だし」ですが、関東と関西ではまったく違う特徴があります。関東は濃厚な鰹節だし、関西は昆布のまろやかなだし。この違いは歴史的な背景や地域の水質が深く関係しています。
関東のだしが濃い理由は「鰹節」と歴史にあった
関東で使われるだしの中心は鰹節です。その理由は江戸時代にさかのぼります。当時の関東ではカツオの漁業が盛んで、手に入りやすかった鰹節が主流になりました。
さらに江戸の町は職人や商人が多く、体力をつけるため濃い味付けでご飯をたくさん食べる文化が根付いていました。このため、濃い味の鰹だしと濃口醤油の組み合わせが広まったのです。
関西が昆布だしになった理由は「北前船」と「水」
関西で昆布だしが好まれる理由は、江戸時代に北海道から大阪へ昆布を運ぶ「北前船」が盛んだったからです。この「昆布ロード」のおかげで、大阪や京都では昆布が安く手に入りました。
また、関西の水は軟水で昆布のうま味成分(グルタミン酸)が溶け出しやすく、昆布だしに適していました。さらに京都では、色を濁さず素材を活かす上品な料理文化が栄え、薄口醤油と昆布だしが好まれました。
昆布と鰹節のだし、どちらが美味しい?
だしの味には正解はありませんが、使う料理や好みによって適しただしがあります。関東の鰹だしは香りが強く濃厚、関西の昆布だしはあっさりしていて素材を引き立てます。ここでは、それぞれのだしがどの料理に合うかをご紹介します。
関東の鰹だしが合う料理
関東の鰹だしは濃口醤油と合わせ、煮物やそばつゆ、味噌汁に使われます。濃厚な鰹節の香りとしっかりした味わいは、ご飯がすすむおかずや醤油ベースの麺料理に最適です。
例えば、
- 天ぷらそば(濃口醤油で濃いめのつゆ)
- 煮魚や肉じゃがなど醤油味の煮物
関西の昆布だしが合う料理
関西の昆布だしは素材を活かすのに最適です。薄口醤油を少量加えることで、見た目も美しく素材の味を楽しめる料理になります。
例えば、
- かけうどん(透明感ある薄味のつゆ)
- おでん(具材の色が濁らず上品な味わい)
- 湯豆腐(昆布だしのうま味をストレートに味わう)
関東と関西のだしを上手にとる方法
だしを自宅で取ることは難しいと思われがちですが、実は意外と簡単です。ここでは、家庭でも手軽に美味しい関東風と関西風のだしを取る方法をそれぞれ詳しく紹介します。
濃厚な味と香りを楽しめる「関東風だし」のとり方
関東風だしの特徴は、鰹節の濃厚な味と強い香りです。厚く削った鰹節(厚削り)を使うのがポイントです。
用意する材料(1リットル分)
- 水:1リットル
- 厚削り鰹節:30グラム(薄削りの場合は倍量)
- 昆布:5~10グラム(10cm角程度)
手順
- 昆布を水に入れて冷蔵庫で30分~1時間ほど置く
- 火にかけて沸騰直前で昆布を取り出す
- 鰹節を入れ、弱火で3~5分煮出す
- キッチンペーパーや布巾を敷いたざるで濾す(鰹節を強く絞らない)
厚削り鰹節を使うと、しっかりとした味と香りの濃いだしになります。薄削りの場合は短めに煮出してもよいですが、香りはやや軽くなります。
まろやかな味わいの「関西風だし」のとり方
関西風だしは昆布のうま味を引き出すのがポイント。薄削りの鰹節を使い、短時間で仕上げます。また、関西風だしには、みりんや酒を少量加えて味をまろやかに仕上げると上品な味わいになります。
用意する材料(1リットル分)
- 水:1リットル
- 昆布:10グラム(10~15cm角程度)
- 薄削り鰹節:20グラム
- 薄口醤油:大さじ2
- みりん:大さじ1
- 酒:大さじ1
手順
- 昆布を軽く拭いて水に入れ、冷蔵庫で30分〜1時間置く
- 弱火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す
- 薄削り鰹節を入れて1~2分で火を止める
- キッチンペーパーや布巾を敷いたざるで濾す(鰹節を絞らない)
- 薄口醤油、みりん、酒を加えて味を整える
短時間で仕上げると雑味がなく、昆布のうま味と鰹節の香りが楽しめる美味しい関西風だしになります。水出し昆布を冷蔵庫で8時間ほど置いて作る方法もおすすめです。
知っていると楽しい!関東と関西のだし豆知識
関東と関西のだしの違いを知ると、普段何気なく食べている料理も面白く感じられます。ここでは、友だちや家族にも話したくなるような豆知識を紹介します。
関東は「おつゆ」、関西は「おだし」
関東では鰹節と濃口醤油を合わせた濃い液体を「おつゆ」と呼びますが、関西では昆布をベースにした薄く澄んだ液体を「おだし」と呼びます。これは、料理文化の違いから生まれた表現の差で、呼び方一つでもそれぞれの地域の食文化を感じ取ることができます。
醤油の色と塩分の意外な事実
関東では濃口醤油を使いますが、実は薄口醤油よりも塩分がやや低い(濃口16%、薄口17%)という驚きの事実があります。関西の薄口醤油は塩分は高いですが、色が薄く仕上がるため素材の色を生かすことができます。一方、関東の濃口醤油は塩分控えめですが色が濃く、料理が深い褐色になります。
昆布と鰹節を組み合わせるとうま味が7倍に?
昆布のうま味成分であるグルタミン酸と、鰹節のイノシン酸を合わせると、なんと単体よりも約7倍も強くうま味を感じることができます。これが「合わせだし」の魅力であり、関西では昆布と鰹節を組み合わせただしがよく使われる理由でもあります。家庭でも簡単に試せるので、ぜひ試してみてください。
だしの色で出身地がわかる?
日本人に馴染み深い料理「おでん」は、だしの色で地域差がはっきり分かります。関東では鰹節と濃口醤油で作るため具材が茶色く染まり、味が濃くなります。
一方、関西のおでんは昆布だしと薄口醤油で仕上げるため、具材の色が白く美しく保たれ、見た目も味わいも上品に仕上がります。おでんを食べれば、その人が関東出身か関西出身かを推測できるかもしれません。
まとめ
関東と関西のだしの違いは、日本料理の多様性を象徴するものです。料理の背景にある文化や歴史を理解すると、味わい方も変わります。最近では、全国各地のだし文化がブレンドされ、新しい料理が生まれることもあります。
また、スーパーで購入できる便利なだしパックや顆粒タイプのだしも進化を続けており、減塩や植物性のものも登場しています。これらを上手に取り入れ、毎日の食卓で気軽にだしの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。