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香典返しとは?知っておくべき基本のマナー
香典返しとは、お葬式で故人に贈られた香典のお礼として贈る品物のことです。単にお返しというだけでなく、故人を偲び、香典をくださった方への感謝を示す重要な儀式でもあります。
香典返しのマナーでは、後に残らない「消えもの」を選ぶことが一般的です。「悲しみを長引かせないように」との思いが込められていますが、「消えもの」であっても何でも良いわけではありません。避けるべき品物も多くあります。
香典返しでは、贈る金額も重要です。一般的にいただいた香典の半分から3分の1程度の金額の品物を贈る「半返し」「3分の1返し」が基本です。ただし、地域の習慣や葬儀の規模によって異なるため、迷う場合は葬儀社や家族と相談することをおすすめします。
香典返しで絶対に避けるべき8つの品物
香典返しには、避けるべきタブー品がいくつかあります。これらを知らずに贈ってしまうと相手に不快感を与えることもあるため、必ず確認しましょう。なぜ避けるべきなのか、理由とともに紹介します。
①鰹節や昆布などお祝いごとの品物
鰹節や昆布は、結婚や出産祝いなどおめでたい席でよく使われます。こうした品物を悲しみの席で贈るのは失礼にあたります。受け取った側は不快に感じることもあるため、避けるのが無難です。
- 鰹節(結婚式の引き出物として定番)
- 昆布(「よろこぶ」にかけた縁起物)
- 紅白の包装がされた品物(祝意が強いため)
②肉・魚など生鮮食品
肉や魚などの生鮮食品は、「殺生」を連想させるため、仏教の教えに反するとされています。また、生鮮食品は傷みやすく、贈られた相手が困る可能性もあります。地域や宗教によっても忌避されるため、注意が必要です。
- 牛肉・豚肉・鶏肉
- 刺身・鮮魚の加工品など
③お酒(アルコール類)
お酒はお祝いごとの場で振る舞われることが多いため、弔事の香典返しにはふさわしくありません。また、相手が飲まない場合や健康上の理由で控えている場合もあり、贈る側の配慮が必要です。故人がお酒を好んだ場合であっても、香典返しでは控えるべきです。
- ビールや日本酒などのアルコール飲料全般
- 洋酒やワインなど、高級で華美なイメージのある酒類
④生菓子や日持ちしないお菓子
お菓子自体は香典返しに人気がありますが、生菓子や日持ちしない菓子類は避けるべきです。生菓子は鮮度が重要であり、受け取った相手が早めに食べなければならないため負担になります。また、日持ちが短いものを贈るのは、相手への気遣いに欠ける行為とみなされます。
和菓子や洋菓子問わず、以下のようなものは控えましょう。
- 生クリームやカスタードクリームを使用したケーキやシュークリーム
- 賞味期限が短い和菓子(生どら焼き、生大福など)
- 保存に冷蔵や冷凍を要する菓子全般
また、お菓子の数にも注意が必要です。特に4(死)や9(苦)など、不吉な数字は相手に失礼な印象を与える可能性があります。数が問題になる場合は、無難な奇数を選びましょう。
⑤時計やアクセサリーなど手元に残るもの
香典返しの基本的な考え方は「悲しみを後に残さない」です。そのため、いつまでも手元に残ってしまう時計やアクセサリー類は避けるべきです。こうした品物を贈ると、見るたびに葬儀のことを思い出させることになり、相手に心理的な負担を与える恐れがあります。
以下の品物が該当します。
- 腕時計、置き時計
- ネックレス、指輪などのアクセサリー類
- 写真立てや置物(記念品として長期間飾られるもの)
⑥商品券・ギフトカードなど金額がわかるもの
香典返しとして商品券やギフトカードは一見便利そうですが、相手に露骨に金額が伝わってしまうため、マナー違反とされます。金額がはっきりする品物を渡すのは、「金銭をそのまま返した」ような印象を与えるため、感謝や敬意の気持ちが薄く見えてしまいます。
【避けるべき具体例】
- 百貨店やショッピングモールの商品券
- Amazonやオンラインストアのギフトカード
- クオカード、図書カードなど金額表記が明確なもの
⑦ハンカチ・刃物など縁起が悪いとされるもの
ハンカチや刃物は日常的に使えるアイテムですが、贈り物としてはタブーです。ハンカチは日本語で「手巾(てぎれ)」と表記され、縁が切れることを連想させます。また、包丁やはさみなどの刃物も「縁を切る」意味合いを持つため、香典返しには適していません。
【代表的な品物】
- ハンカチ類(どんなに高級であっても避ける)
- 包丁、はさみ、ナイフ類全般
⑧割れ物・壊れやすい品物
割れ物や壊れやすい品物は、「縁が割れる」「人間関係が壊れる」と連想されるため、香典返しには適しません。また、配送時に割れてしまうリスクもあり、相手に迷惑や不快感を与える可能性もあります。たとえ高級なものであっても避けるのが無難です。
【避けるべき品物の例】
- 陶器製の食器(茶碗、湯呑み、皿)
- ガラス製品(コップ、花瓶、置物など)
香典返しにおすすめの品物とその理由
香典返しには、失礼にならず、相手に喜ばれる品物があります。基本的には消耗できるもので、日常生活で使いやすいものを選びましょう。特におすすめの品物とその理由を詳しく解説します。
お茶やコーヒーなどの飲み物
日本茶、紅茶、コーヒーなどは日持ちも長く、多くの人に好まれます。特に日本茶は仏事のイメージとも相性が良く、贈る側も安心です。また、個包装のドリップコーヒーなどは手軽で受け取り側にも喜ばれます。
【おすすめポイント】
- 常温保存が可能で長期保存できる
- 年齢や性別を問わず喜ばれる
- 香典返しとして一般的に認知されている
クッキーやせんべいなど日持ちするお菓子
クッキーやせんべいなど、日持ちする焼き菓子は、消耗品の代表例です。個包装タイプを選ぶことで、連名で香典をいただいた場合でも簡単に分けることができます。ただし、前述した通り、不吉な数字(4、9)を避け、奇数を選ぶことをおすすめします。
【おすすめポイント】
- 保存が効き、少量ずつ楽しめる
- 年齢や家族構成を問わず喜ばれる
- 手軽で無難な選択肢として人気がある
タオルや洗剤などの日用品
タオルや洗剤、石鹸など日用品は、誰もが日常的に使用するものであり、確実に消費されます。品質が良いものや、シンプルなデザインのものを選ぶと、相手にも好まれやすくなります。大量に贈ると保管が困難になるため、適量に留めることがポイントです。
【おすすめポイント】
- 使い勝手がよく消耗品として適している
- 幅広い年代に喜ばれる実用品
- 無難で相手を選ばないため安心できる
カタログギフトは香典返しとして失礼ではない?
最近では香典返しにカタログギフトを選ぶ人が増えています。結論から言うと、カタログギフトは決して失礼なものではありません。むしろ、相手が好きなものを自由に選べるため、多くの人に喜ばれます。
ただし、以下のような注意が必要です。
- 表紙やパッケージが落ち着いた弔事用デザインのものを選ぶ
- 肉や魚などタブーの食品が含まれないカタログを選ぶ
- 金額が明示されないように配慮した包装にする
- 必ずお礼の気持ちを添えた挨拶状を同封する
まとめ
香典返しはただのお返しではなく、悲しみを長引かせないために配慮が必要な重要な儀礼です。失礼を避けるためには、品物選びだけでなく、タイミングや包装、相手の宗教や地域の慣習にも気を配る必要があります。
また、オンライン注文などの新しい方法も普及していますが、その場合も送り主名や梱包に細心の注意を払い、相手が受け取ったときの気持ちを想像しながら、心のこもった品物を選ぶことが何より大切です。