『箸渡し』がマナー違反と言われる本当の理由とは?その背景を徹底解説!

箸を持って手を合わせる女性

箸と箸で食材を渡して運ぶ「箸渡し」。これは葬儀で行われる儀式の一部であるため、日常生活では行うべきではないとされています。この記事では、箸渡しを避けるべき理由について解説するとともに、その他の箸の使い方のマナーについても紹介しています

『箸渡し』とはどんな行為?

箸渡し(合わせ箸、拾い箸)とは、箸同士でものを渡す行為です。これは食事中にすべきではない行為として知られており、無意識にやってしまうとマナー違反となります。子どもの頃から、箸の使い方を学ぶ際に「箸渡しはマナー違反」と親などから教わっている人が多いのではないでしょうか?

「合わせ箸」とも呼ばれるこの行為は、日本の食文化において長年タブーとされてきました。では、なぜ箸渡しがマナー違反と言われているのか、その理由を詳しく見ていきましょう。

箸渡しが絶対ダメと言われている理由とは?

箸渡しを行うべきではない理由は、主に以下のものが挙げられます。

葬儀の際に行われる作法だから

箸渡しは、遺骨を骨壺に納める際に行われる作法の一つです。火葬後に遺骨を回収し、箸渡しで骨壺に移すという儀式が日本では行われています。この儀式は、亡くなった人が三途の川を渡れるようにとの願いが込められた、非常に重要なものです。

具体的には、遺族が二人一組になり、それぞれが持った骨箸(こつばし・骨上げ専用の箸)で遺骨を拾い上げ、互いに箸を合わせて骨壺に納めていきます。この神聖な行為が、日常の食事の場面で無意識に再現されることを避けるため、箸渡しはタブーとされているのです。

日本の伝統的な死生観との関係

日本の伝統的な神道思想では、死を穢れ(けがれ)や不浄なるものとして忌み嫌います。この考え方は、現代の日本人の意識にも少なからず影響を与えています。例えば、葬儀から帰ってきたら塩でお清めをしたり、霊柩車が目の前を通ったら親指を隠したりする行動も、この思想の現れと言えるでしょう。

そのため、死や葬儀に関することは日常生活に持ち込まないようにする慣習があります。これは「逆さごと」と呼ばれ、普段とは逆のやり方や異なるやり方を行うことで、日常生活と葬儀を明確に区別する目的があります。箸渡しは、この葬儀の場面を想起させるため、食事の場では不吉であり、縁起が悪いとされているのです。

心理的な影響への配慮

食事は楽しく、くつろいだ時間であるべきです。しかし、箸渡しという行為が葬儀を連想させることで、食事中に死や悲しみを思い出してしまう可能性があります。これは、食事を楽しむ雰囲気を損ない、場合によっては食欲にも悪影響を与えかねません。

特に、最近身近な人を亡くした人にとっては、箸渡しを目にすることで悲しい記憶が呼び起こされる可能性があります。そのため、箸渡しを避けることは、周囲の人への思いやりの表現でもあるのです。

社会的な側面と教育の影響

箸渡しのタブーは、日本社会で長年にわたり受け継がれ、教育されてきました。家庭でのしつけや学校教育の中で、箸の正しい使い方の一環として教えられることが多いです。このような社会的な規範は、世代を超えて継承され、日本の食文化の一部として定着しています。

マナーとしての箸渡し禁止は、単なる迷信ではなく、日本人の価値観や美意識を反映したものと言えるでしょう。相手への配慮や場の雰囲気を大切にする日本文化の特徴が、この習慣にも表れているのです。

現代的な解釈:衛生面と実用面の考慮

伝統的な理由に加えて、現代では衛生面や実用面からも箸渡しを避ける理由が考えられます。

箸は直接口に触れる食器です。箸と箸で食べ物を受け渡すことは、衛生的に好ましくありません。また、箸渡しは食べ物を落としやすく、テーブルを汚す可能性もあります。

さらに、箸渡しは食事のペースを乱す原因にもなります。各自が自分のペースで食事を楽しむためにも、大皿料理を取り分ける際は取り箸を使用するなど、より効率的で衛生的な方法が推奨されています。

そのほかに注意すべきお箸のマナー

箸のイラスト

箸渡し以外にも注意すべきお箸のマナーは多くあります。例えば、以下のような行為がマナー違反とされています。

  • 刺し箸…箸を料理に突き刺して食べること
  • 渡し箸…箸を「橋」のように食器に置く
  • 涙箸…箸先から汁をぽたぽたと落としながら口に運ぶこと
  • 寄せ箸…皿のフチに箸をかけて自分の方へ引き寄せること
  • 迷い箸…どの料理を食べようか迷って箸をあちこち動かす
  • 立て箸…箸をご飯に突き刺して立てること
  • 探り箸…器や鍋の中にある料理を箸でかき回すこと
  • 握り箸…箸を握って持つこと
  • ばってん箸…箸を交差させて持つこと
  • 指し箸…箸で人や物を指すこと
  • 舐め箸…箸先を口に入れて舐めること

これらのように、箸の持ち方や使い方にはさまざまなマナーがあります。特に格式の高い和食店では、基本的な箸のマナーを守ることが大切です。マナー違反を避けることで、食事がより楽しく、美味しくなるでしょう。

まとめ

箸渡しは、日本の伝統的な死生観や文化的背景から、食事の場で避けるべき行為とされています。葬儀との関連性や心理的影響、さらには衛生面や実用面からも、その理由が説明できます。

箸渡しをはじめとする箸のマナーは、日本文化の奥深さを反映しています。これらのマナーを理解し、守ることで、より豊かな食事体験が得られるでしょう。日本の食文化を尊重しながら、楽しい食事の時間を過ごしましょう。

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