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もち麦が危険と言われる理由
健康ブームの影響でしょうか。低カロリーで栄養豊富、モチモチした食感の「もち麦」への関心が高まっています。
その一方で、もち麦を食べると体調不良を起こすなど、「もち麦は危険」だと思っている人もいるようです。では、なぜそう思われているのか解説していきましょう。
外国産が多いから危険
もち麦が危険と言われるひとつが、国産ではなくほとんどが外国産だということです。確かに食べ物は国産が安心で、外国産だと遺伝子組み換えや残留農薬の問題など、健康面が気になってしまいますよね。
もち麦の原産国を調べてみると、主にアメリカ、カナダ、オーストラリアで栽培したものが輸入されています。もち麦は危険だと主張する人の気持も分からなくありませんが、「外国産だから危険」というのは、考え過ぎではないでしょうか。
便秘や下痢など消化不良を起こす人もいる
便秘解消に効果がある反面、なかには食べ始めた途端、便秘に悩まされるようになったという人もいます。もち麦には「水溶性」と「不溶性」の両方の食物繊維が含まれています。
- 「水溶性食物繊維」は、水に溶けてネバネバになり、便を柔らかくする効果がある。
- 「不溶性食物繊維」は、胃や腸の中で水分をたくさん吸収して便のカサを増やすことで便秘を改善するが、たくさん摂りすぎると腸内の水分不足で便が固くなり便秘になる。
という具合に、水溶性と不溶性は真逆の作用があるんですね。
しかも、もち麦には不溶性食物繊維の約2倍の水溶性食物繊維が含まれているので、どちらかと言えば便を固くする効果より柔らかくする働きの方が強いということになります。
要は便秘が悪化したり下痢など消化不良を起こすから危険というのは、適量をよく噛んで食べている分には誤解と思っていいのではないでしょうか。
また、下痢を引き起こす原因として、もち麦に含まれる糖類のフルクタンは、下剤と同じ働きをするため、食べすぎることで下痢を引き起こしてしまう可能性があります。食べた後に下痢の症状が出た場合は、症状が改善するまで食べるのを控え、体調をみながら少量ずつ試すのがおすすめです。
おならが増える
おならがたくさん出るのは危険なことではありませんが、我慢するのは体にとって良くありません。もち麦を食べるとおならが増えるのは、食物繊維が腸内細菌の作用で発酵したからと考えられます。
食物繊維が豊富なもち麦は腸内環境を改善しますが、その結果としておならが増えやすくなるという因果関係があるのです。
胃痛を起こす人がいる
まれに、もち麦を食べると胃痛を起こす人がいます。この胃痛は下痢と似ていて、消化不良が原因のようです。もち麦は普通のお米よりも硬いため、白米と同じ感覚で噛んで飲み込むと、消化不良を起こした胃がSOSを発信します。
また、もち麦は胃や腸で水分を吸って膨張するため腹持ちはいいのですが、その分お腹が張って胃に痛みを感じてしまうのかもしれません。
小麦アレルギーの人は注意が必要
もち麦を食べると食物アレルギーを引き起こす人もいます。この件については、小麦アレルギーの人にとっては危険だと言えるでしょう。
もち麦の原料は大麦です。グルテンによく似たたんぱく質を含んでいますので、小麦アレルギーを持っている人は注意してください。
《 ポイント 》
- 外国産だと遺伝子組み換えや農薬などの健康面が気になる。
- 食物繊維が腸内細菌の作用で発酵しおならが増える。
- 白米と同じ感覚で噛んで飲み込むと消化不良による胃痛を起こす。
- 小麦アレルギーの人にとっては危険。
国産もち麦は危険でない?
もち麦は、便秘解消やダイエットに良いとテレビや雑誌で特集が組まれるまでになり、興味を持った人も多いことでしょう。結論を言えば、もち麦が危険といううわさのほとんどは誤解です。
人それぞれ体質が異なるので、「体に合う」「合わない」は当然ありますが、それは誤った食べ方や勝手な思い込みによる誤解なんです。
国内産のもち麦は茶色っぽく海外産のもち麦は白っぽい
もち麦の原産国を調べてみると、確かにアメリカ、カナダ、オーストラリアなど外国で栽培したものが輸入されています。
国産のもち麦が茶色なのに対して外国産のもち麦は白っぽくて区別しやすいのですが、外国産のもち麦は皮が硬く、念入りに精製する必要があるため白くなるのだとか。
例え、原産地が外国だとしても、国内で厳しい審査を受けているため安全性は高いと言えるでしょう。よって、外国産だからもち麦は危険というのは考え過ぎではないでしょうか。
国内産のものは人気が高い
現在販売されているメーカー製造のもち麦は外国産がほとんどです。小麦がそうであるように、国内産のもち麦だけでは全然足りませんので、外国産が多いのも仕方がないことです。
外国産のもち麦を輸入する段階で安全確認されているとはいえ、いまだに外国産を敬遠する方は多いですよね。
一方で、国内では近頃のもち麦ブームもおかげもあり産地が増えています。国産のもち麦は「はだか麦」という品種で表皮が柔らかくはがれやすいので、精麦の度合いを低くすることができます。
もち麦の表皮には「β-グルカン」や「ポリフェノール」などの栄養素が豊富に含まれている分、完璧に精麦しない国産の方が栄養価が高いと言えるでしょう。
そのため、国内産は生産量の割に人気が高く、市場にそれ程出回っていないので価格も外国産に比べ高めに設定されているのが実状です。
《 ポイント 》
- 体質に「合う」「合わない」はあっても危険といわれる殆どは誤解。
- 外国産は皮が硬く、念入りに精製する必要がある。
- 国内産は生産量の割に人気が高いが市場にそれ程出回っていない。
もち麦の栄養
白米の約20倍の「食物繊維」
もち麦は、水溶性食物繊維の一種「大麦β-グルカン」が豊富です。その量は可食部100g当たり9.6gと、白米の約20倍も含まれています。食物繊維量が多いごぼうが5.7gなので、含有量がとても多いと言えるでしょう。
この「大麦β-グルカン」は消化吸収をゆるやかにし、食後の血糖値上昇を抑えて血中コレステロール値を正常にする効果が期待できます。血中コレステロールを低下させることで、がん予防や動脈硬化予防に効果が期待されます。
また、もち麦は水溶性食物繊維だけでなく、不溶性食物繊維も含まれています。
不溶性食物繊維は体内で水分を吸収して膨らみ、便のかさを増すため腸の動きを活発にする働きがあり、水溶性食物繊維を腸の奥へ運ぶ役割もしてくれます。水溶性と不溶性の食物繊維のバランスが、腸内環境の改善にとても効果的です。
腸内には、人間の免疫細胞の約7割が集まっていると言われているため、腸内環境を整えることは、全身の健康につながるのです。
白米の約2倍の「たんぱく質」
筋肉や血液、臓器など体をつくる要素として欠かせないたんぱく質は、もち麦100gあたり10. 6gと白米のおよそ2倍。もち麦で摂れるたんぱく質の量は意外と多いのです。
「ミネラル」「ビタミン」が豊富
体の組織や生理機能の維持に必要な「ミネラル」は、体内では作ることが出来ないため食材から補うしかありません。
精白米にはほとんど含まれていない「マグネシウム」「カリウム」「亜鉛」「鉄」などの豊富なミネラル成分は女性が不足しがちな栄養素なので、もち麦で気軽に摂れるのはありがたいことです。
さらに美容に役立つ「ビタミンE」は、100gあたり0.35mgと白米のおよそ3倍と、もち麦の栄養価がいかに高いかがおわかりいただけますね。
ビタミンEは若返りのビタミンとも呼ばれ、血管や細胞などの老化防止、血行促進など生活習慣病予防に効果が期待されています。
《 ポイント 》
- 食物繊維は白米のおよそ20倍。
- たんぱく質は白米のおよそ2倍。
- ビタミンEは白米のおよそ3倍。
もち麦の効果的な食べ方
もち麦を夜に食べるのは危険?
もち麦は夜に食べると危険といううわさは、ある意味正解です。
食べる時間は夜より朝が良い理由として、食物繊維が多く消化に時間がかかるということが挙げられます。消化しきれず胃に残ってしまうので眠りが浅く、翌日胃もたれすることにもなりかねません。
夕食を早めに済ませて、就寝時間まで余裕がある人ならまだしも、晩ご飯を食べた後にすぐに眠る生活を送っている人は避けた方が良さそうです。
要は、時間を選んで適正に食べる分には心配はないということです。
ダイエットに効果的な食べ方は朝食に食べること
「セカンドミール効果」をご存じですか?もち麦に含まれる水溶性食物繊維「βグルカン」は、糖質の吸収を大幅に抑えることが分かっています。それも一回の食事だけでなく、その後の食事でも同じ効果があるのだそうです。
つまり、最初の食事「ファーストミール」にβグルカンを含むもち麦を摂取すると、次の食事「セカンドミール」に普通の食事を摂取したとしても糖質の吸収が抑えられるというわけです。
これを「セカンドミール効果」と言うのですが、次の食事はもちろん、その次の食事まで効果はやや下がるとはいえ持続するので驚いてしまいます。
ということは、どうせ食べるなら夕食よりも朝食に食べて、一日中糖質吸収を抑える働きを持続させるのが賢い食べ方と言えるでしょう。
サラダやスープと混ぜる
もち麦を茹でてスープやサラダの具材として食べてみてはいかがでしょうか。粘り気があって食べ応えが増すので腹持ちがよくなります。
- サラダにすれば野菜のシャキシャキ感と、もち麦のモチモチした食感の両方を楽しむことができる。
- スープはもち麦を入れておよそ5分加熱させると、スープの味と程よく馴染んで美味しく仕上がる。
- 料理酒やオリーブ油を加えると大麦特有のクセが和らぎ、香り高い味わいになる。
冷めてもちっとした食感がおいしい「もち麦」とは?
「もち麦」とは、粘りが強い「もち性」の麦の総称です。大麦には食物繊維が豊富に含まれていますが、中でも「もち性」は「うるち性」より繊維量が多く、プチプチ感と冷めても美味しいもちっとした食感が人気を集めています。
昔の日本人は、貴重だった白米に大麦を混ぜて量を増やしたりしていましたが、白米の生産が増えるのと反比例して、大麦の消費量は減少しました。ところが近年では、食物繊維が豊富な健康食として見直され、積極的に食べられるようになりました。
β-グルカンを豊富に含むもち麦がテレビ番組などで取り上げられることが増え、健康食としてのもち麦への注目度が高まっています。
最後に
もち麦が危険だと言われるのにはいくつか理由があったのですね。
外国産が多いことや腸のバランスが崩れる、アレルギーを引き起こすなどが原因としてあげられますが、そのほとんどは誤解だとわかりました。
注意しなければいけないのは、「小麦アレルギーを持っている人」、あるいは「もっているかもしれない人」そして「晩ごはんの後に直ぐ寝る人」です。
その一方で、ダイエットに効果的な食べ方があります。朝飯に食べることで1日中、糖質の吸収を抑えられるセカンドミール効果が期待できます。
加えて、糖質の吸収抑制やコレステロールを抑える働きが期待できる「大麦β–グルカン」の他、食物繊維やたんぱく質、ビタミン・ミネラルなど豊富な栄養素がたっぷりと含まれています。
さっそく健康維持から美容、ダイエットにまで効果が期待できるもち麦を、日常の食事に取り入れてみませんか。