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共働き夫婦の家事分担、実際はどれくらい?
共働き世帯が増加し、家事分担の悩みは以前よりも多く聞かれるようになりました。「うちは平等に分担できているのかな?」と疑問に思う夫婦も少なくないでしょう。
厚生労働省が2025年に発表した調査によると、共働き夫婦の家事分担の割合は、妻が主に担当している家庭が53%、夫が主に担当している家庭は15%、平等に分担している家庭が25%となっています。この数字からもわかるように、まだまだ妻の負担が大きいことが浮き彫りになっています。
共働き夫婦が実際に分担している割合
家事分担の現実をもう少し細かく見ていきましょう。2025年に内閣府が公表した調査では、夫婦の家事分担の認識にズレがあることも明らかになっています。
夫が「家事を分担している」と考えている割合が約40%であるのに対し、妻が「夫が十分家事を分担している」と感じている割合は約20%と、認識に大きな差があります。
また、世代ごとにも傾向が異なります。20代から30代の比較的若い世代では、夫婦で平等に家事を分担している家庭が約40%を超え、夫が家事を主に担当している割合も20%ほどと高めです。
しかし、40代以上になると妻が主に担当する家庭が70%近くまで上昇します。さらに、世帯年収が600万円以上の家庭では半数以上が平等に分担しているのに対し、年収が低くなるほど妻の負担が増えるという結果も出ています。
「割合」だけでは見えない実際の家事時間の差
家事分担は割合だけでは実態を把握しにくいものです。実際に夫婦それぞれが家事に費やしている時間に注目してみましょう。
2025年の政府調査によれば、共働き家庭で1週間あたりの家事にかける時間は、妻が平均391分(約6時間半)なのに対し、夫は平均114分(約2時間弱)です。妻が夫の3倍以上の時間を家事に費やしているという現実がここにはっきりと現れています。
家事の時間の差が大きいと、夫婦のストレスや不満が溜まりやすくなります。共働きである以上、仕事以外の負担を少しでも平等にすることが大切です。家事の時間差を認識し、改善の必要性に気づくことが最初の一歩になるでしょう。
意外と気づかない「名もなき家事」とその負担感
「家事」と聞くと、料理、洗濯、掃除といった目に見える作業を思い浮かべますが、実は家の中にはそれ以外にも無数の細かな家事があります。これを「名もなき家事」と呼び、日常生活で気づかないうちに負担になっています。
夫婦間の家事分担がうまくいかない理由の一つが、この「名もなき家事」の存在です。
「名もなき家事」ってどんなこと?
「名もなき家事」とは、誰もがやっているけれど普段は意識されない細かな作業のことです。例えば以下のようなことが挙げられます。
- トイレットペーパーやティッシュがなくなったときの補充
- 食品や日用品の在庫チェックと買い出しリスト作成
- ペットボトルのラベルを剥がして潰す作業
- 玄関の靴の整理整頓
- 家族が脱ぎっぱなしにした衣服の片付け
- リモコンや時計の電池交換
- 観葉植物への水やり
- ポストから郵便物を回収して整理する
- 調味料やシャンプーの詰め替え
- 子どもの持ち物や予定の管理
一つひとつは小さな作業ですが、積み重なると大きな負担になります。また、こういった作業は他の家族が気づきにくいため、特定の人ばかりが担当し、不公平感やストレスを生む原因にもなります。
夫婦で感じ方が違う?家事の負担感と認識ギャップ
「名もなき家事」は、夫婦間で負担感にズレが生じやすいことが特徴です。
夫は「それほど負担になるとは思っていなかった」と言うことが多く、一方で妻は「いつも私ばかりがやっている」と感じているケースが多いです。
認識がズレる理由は、普段行っている人が家事として主張しにくい細かな作業であるためです。また、家族が気づきにくいため、感謝の言葉も受けにくく、不満が溜まりやすくなります。
この認識のギャップを解消するためには、「名もなき家事」を夫婦でリストアップし、その負担をはっきりと「見える化」することが重要です。どのような作業が日常に隠れているかを夫婦で共有し、明確に役割分担を決めることで、お互いの負担感を軽くすることができます。
家事分担がうまくいく方法とルール
共働き夫婦が抱える家事分担の悩みは、「どちらがどの家事をどれくらい担当するか」という役割分担がはっきり決まっていないことから生まれます。
家事分担がうまくいっている夫婦には、共通のルールや工夫があります。ここでは、具体的な家事分担の方法と、その際に意識したいポイントを詳しく説明します。
家事分担表の作り方と使い方
家事分担を明確にするために有効なのが、「家事分担表」を作る方法です。家事分担表とは、家事の種類を細かく書き出し、それぞれの担当を決めて視覚的に管理するツールです。ホワイトボードやスマホアプリを使って作成するのも効果的です。
まず、料理、洗濯、掃除などの主要な家事のほか、「名もなき家事」も含めてすべての家事を細かく書き出します。そのうえで、それぞれの家事にかかる時間や労力を夫婦で話し合い、バランスよく分担していきます。
家事分担表を使った効果的なポイントは、定期的に見直しを行うことです。月に一度など期間を決めて見直しの日を作り、その都度お互いの不満や改善点を話し合って修正しましょう。これにより、お互いの家事に対する認識がずれることなく、家事分担が円滑に進みます。
上手な頼み方と伝え方「Iメッセージ」を活用する
家事分担をスムーズに進めるには、伝え方や頼み方にも工夫が必要です。相手に不満を感じさせずに要望を伝える効果的な方法が「Iメッセージ」です。
Iメッセージとは、「私」を主語にして、自分の気持ちや状況を伝える方法です。例えば、「あなたはいつもゴミ出しを忘れる」と相手を主語にして伝えると、責められているように感じますが、「私はゴミ出しをしてくれるととても助かる」と自分を主語にすると、相手も気持ちよく協力しやすくなります。
また、「ありがとう」という感謝の言葉を添えるだけで、さらに効果が上がります。「疲れているところごめんね、料理を少し手伝ってくれると助かる、いつもありがとう」といった伝え方を心掛けましょう。これだけでも夫婦間のストレスが減り、円滑に家事分担が進みやすくなります。
家事分担を定期的に見直す方法
家事分担は一度決めたらそれで終わりというわけではありません。家庭環境や仕事の状況、子どもの成長により、必要な家事やそれにかかる負担も変化していきます。定期的な見直しが必要です。
見直しは、最低でも半年に一度を目安に行うことをおすすめします。例えば、付箋を使って夫婦で気軽に話し合いながら、「どの家事が大変か」「どの家事を変えてほしいか」などを確認していきます。互いの要望やストレスを把握し、それをもとに家事の担当を再調整します。
こうした見直しを行うと、家事分担が適切に更新され、不公平感や不満が溜まりにくくなります。家事分担を長続きさせるには、このような仕組み化が重要です。
時短家電やサービスの使い方
家事分担を無理なく進めるためには、時短家電や家事代行サービスの利用も視野に入れることを検討しましょう。
時短家電とは、ロボット掃除機、食器洗い乾燥機、乾燥機付き洗濯機などのことを指します。こうした家電を上手に取り入れることで、家事にかかる時間や労力を大幅に減らすことが可能です。
また、どうしても夫婦どちらも忙しい場合には、家事代行サービスを利用することも効果的です。週に一度だけ掃除を依頼するなど、家庭の事情に合わせて適切にサービスを活用することで、家事分担のストレスを軽減できます。
ただし、こうしたサービスを利用する際は、費用対効果をよく検討し、本当に負担が軽減されるものを選ぶことが重要です。無理なく家庭に合った方法を選択することが、家事分担をうまく進める秘訣です。
家事分担が夫婦にも子どもにも良い理由
共働き夫婦にとって、家事分担を行う最大の目的は、ただ負担を軽くすることだけではありません。実は、家事分担をきちんと行うことで、夫婦関係や子どもの成長、家庭生活全体にも良い影響を与えます。
ここでは、家事分担が夫婦や子ども、家庭全体にもたらす具体的なメリットについて詳しく説明します。
夫婦間で会話が増えて仲良くなる
家事分担が夫婦関係を良くする理由のひとつは、家事をきっかけに夫婦の会話が増えることです。
共働きの夫婦はお互いに忙しく、十分なコミュニケーションを取る時間が持てない場合もあります。しかし、一緒に家事をしたり、家事分担について話し合ったりすることで、自然に会話が生まれます。
例えば、夫婦で一緒に料理をしたり、片付けを協力したりすることで、「今日は職場でこんなことがあったよ」「子どもが学校でこんなことを話していたよ」といった日常会話が自然と増えます。家事が共通の話題になり、相手の状況や気持ちを理解しやすくなります。
また、家事を協力し合うことで、お互いの頑張りや価値観を認め合うきっかけができます。「いつも洗濯をしてくれてありがとう」「今日は料理を作ってくれて助かった」といった感謝の言葉を交わすことで、夫婦の絆が深まり、家庭内の雰囲気も良くなります。
子どもが男女平等を自然に理解する
夫婦が家事分担をすることで、子どもの成長にも良い影響を与えます。家事を両親が一緒に行う姿を見ることで、子どもは自然に「家事は女性だけがするものではない」「男女は平等に協力するものだ」という考え方を身につけます。
最近の研究でも、父親が積極的に家事や育児に参加している家庭で育った子どもは、男女平等に対する意識が高いことが報告されています。また、子どもが自ら家事に参加することで、家族の一員としての自覚や協調性、自立心も育まれます。
子どもが小さい頃から家事を手伝う機会を作ると、自立する力が身につき、責任感も芽生えます。例えば、簡単な掃除や料理の手伝いを任せることで、子どもは家庭内で自分の役割を感じ、自己肯定感も高まります。
自由時間が増え、生活が豊かになる
家事分担をうまく行うことで得られる大きなメリットは、自由な時間が増えることです。
家事を協力して効率的に進めることで、一人ひとりが趣味やリラックスする時間、家族全員で楽しく過ごす時間を作ることができます。
例えば、夫婦で分担することで週末の家事にかかる時間が短縮され、その分を子どもと遊ぶ時間や家族で出かける時間に充てることが可能になります。自由時間が増えることで、心に余裕が生まれ、ストレスも軽減されます。
また、自由時間が増えることで、家族全員の満足度が向上します。家事の負担が大きいままだと、夫婦ともに疲労感やストレスが溜まりやすくなりますが、分担を適切に行うことで、心身の健康や生活の質そのものが改善します。
家事分担を続けるための心がけとポイント
家事分担を決めても、時間が経つにつれてうまくいかなくなることがあります。続けるためには、気持ちの持ち方やちょっとした工夫が必要です。
ここでは、家事分担を無理なく続けるために心がけたい具体的なポイントを紹介します。
完璧を目指さない
家事分担を続けるうえで最も大切なのは、「完璧を目指さない」ということです。どちらかが完璧主義になってしまうと、相手に求めるレベルが高くなり、ストレスや不満が溜まりやすくなります。
家事に対する完璧主義をやめ、「70%できればOK」という考え方を持つと、お互い気持ちが楽になります。例えば、掃除なら「少しホコリが残っていても気にしない」、料理なら「たまには簡単なもので済ませる」といった意識を持ちましょう。
こうした柔軟な考え方は、心理的な負担を減らし、家事分担を長く続けやすくします。あまり細かいことにこだわらず、お互いが心地よく暮らせるレベルを見つけることがポイントです。
相手のやり方に口を出しすぎない
家事を分担すると、相手の家事のやり方が気になることがあります。「もっとこうしてほしい」「それは違う」と口を出しすぎると、相手がやる気を失ったり、夫婦間でトラブルになったりすることもあります。
相手の家事のやり方はなるべく尊重し、「自分とは違うけど、やってくれているだけでありがたい」と考えることが重要です。どうしても改善してほしいことがある場合は、相手を否定するのではなく、「こうするともっと簡単かも」と提案する形で伝えるのが効果的です。
家事分担を長く続けるためには、お互いのやり方を尊重し、細かい部分にこだわりすぎないことが大切です。
お互いの家事に感謝するコツ
家事分担が成功する夫婦の共通点として、「お互いへの感謝」が挙げられます。相手が家事をやってくれたときに感謝の気持ちを伝えるだけで、お互いにやる気が高まります。
「ありがとう」の一言を日常的に伝えることがポイントです。「今日も洗濯ありがとう」「料理おいしかったよ」と、小さなことでも言葉にする習慣をつけましょう。感謝の気持ちを伝えると、家事へのストレスや負担感も軽減され、夫婦の絆も深まります。
また、子どもにも家事を手伝ってもらったときは同じように感謝の言葉をかけましょう。子どもにとっても家庭内での役割を実感でき、家族全体が協力的な関係を築けます。
まとめ
共働き夫婦にとって家事分担を行う本当の目的は、「どちらが多く家事をするか」ではなく、「夫婦や家族が心地よく暮らせること」にあります。
家事の割合だけにとらわれず、お互いのライフスタイルや子どもの成長、生活環境の変化に合わせて柔軟に対応することが重要です。家事の分担を無理なく長く続けるためには、完璧を求めすぎず、相手を認め、感謝する気持ちを忘れないようにしましょう。
また、家庭によって事情は異なるため、一般的な割合にこだわらず、自分たち夫婦に最適なバランスを見つけることが大切です。