お風呂でお湯がないのに『追い焚き』したらどうなる?空焚きで起こるトラブルとは

浴槽のお湯を再加熱する「追い焚き」機能は便利ですが、浴槽にお湯がないまま使うと給湯器が空焚き状態になります。火災や一酸化炭素中毒、浴槽の破損など重大な危険につながる理由を解説します。

お風呂の「追い焚き機能」とは?

追い焚き機能とは、浴槽に張ったお湯が冷めてしまったときに、給湯器を使って温め直す仕組みです。浴槽のお湯をいったん給湯器内に循環させ、熱交換器と呼ばれる部品で温めて再び浴槽に戻します。

追い焚きには主に2つのタイプがあります。

①オートタイプの追い焚き

オートタイプは、お湯を張る・追い焚き・保温の基本的な機能を備えています。シンプルで使いやすく、多くの家庭で普及しています。

②フルオートタイプの追い焚き

フルオートタイプは、オートタイプの機能に加えて、自動でお湯を足したり、追い焚き配管を自動的に洗浄する機能が追加されています。衛生面や快適さを重視する家庭に向いています。

追い焚きは家族の入浴時間がバラバラでもいつでも温かいお湯に入れるため、とても便利な機能です。しかし、使い方を誤ると大きなリスクを伴います。

お風呂のお湯がない状態で追い焚きするとどうなる?

追い焚き機能は、浴槽内のお湯を循環させることで成り立っています。浴槽にお湯が入っていない状態で追い焚きをすると、「空焚き」と呼ばれる状態になり、重大な問題が生じます。

給湯器が故障して使えなくなる

お湯がない状態で給湯器を作動させると、内部の「熱交換器」という部品が冷却されずに過熱します。熱交換器は水が循環することで温度が管理されているため、水がないまま加熱すると、部品が急激に熱くなって破損してしまいます。給湯器の故障につながり、場合によっては高額な修理費や交換が必要になります。

給湯器の安全装置が働いて停止する

最近の給湯器の多くには、「空焚き防止機能」がついています。これは浴槽のお湯がないことをセンサーで感知して、自動で運転を止める機能です。

ただし、安全装置が働いても、給湯器には一定の負担がかかるため、頻繁に空焚きを起こすと寿命が短くなります。また、古い給湯器では安全装置がついていない場合もあるため注意が必要です。

浴槽が焦げたり変形したりする

給湯器から高温の空気や水蒸気が浴槽に送られることで、浴槽の素材によっては焦げたり変形したりします。特にプラスチック製の浴槽は、高熱により変形しやすいため、浴槽自体の交換が必要になることがあります。

火災が発生する可能性がある

特に古いタイプの給湯器や屋内設置型の「バランス釜」では、安全装置がなく空焚きによって高温になった部品から火が出ることがあります。給湯器本体や周囲の可燃物に火が燃え移り、家全体を巻き込む火災へとつながる恐れがあります。

一酸化炭素中毒が起きる危険がある

空焚き状態では、ガスが不完全燃焼を起こす可能性があります。不完全燃焼すると、無臭の有毒ガスである一酸化炭素が発生し、浴室や室内に広がることで一酸化炭素中毒につながる危険性があります。最悪の場合、死に至ることもあるため非常に危険です。

給湯器から異常な音や臭いがするようになる

一度でも空焚きを起こすと、給湯器の部品が変形したり損傷したりすることがあります。その後も無理に使い続けると、異音や焦げ臭いにおいが発生するようになります。この状態を放置すると、やがて完全に故障してしまいます。

お湯が入っていない状態で追い焚きをしてしまった時の対処方法

もし浴槽にお湯を入れないまま追い焚きをしてしまった場合は、落ち着いて以下の手順をすぐに実行しましょう。

まずは給湯器の電源をすぐに切る

追い焚きのスイッチを切り、給湯器のリモコンの電源を完全にオフにします。さらに安全を確保するため、給湯器本体の電源プラグを抜くか、ブレーカーを落として完全に電気を遮断しましょう。こうすることで給湯器が再び作動するのを防ぎます。

換気のため窓やドアを開ける

空焚き状態では、不完全燃焼によって一酸化炭素が発生している可能性があります。一酸化炭素は無色・無臭で、気がつかないうちに中毒を引き起こします。

換気扇のスイッチを入れると火花で引火する危険があるため、絶対に触れず、窓やドアを大きく開けて新鮮な空気を取り込みます。

給湯器や浴槽を冷やす

給湯器や浴槽は高温になっている場合があるため、自然に温度が下がるまで30分から1時間ほど待ちます。急に冷水を浴槽に入れて冷やすと、急激な温度変化により給湯器や浴槽の部品が破損する可能性があるので避けてください。

給湯器や浴槽の状態を確認する

給湯器や浴槽に変形や焦げ、異常な臭いがないか確認しましょう。また、給湯器リモコンにエラーコードが表示されている場合は、それをメモしておきます。エラーコードは修理の際に役立つ情報です。

専門の業者に連絡して点検・修理を依頼する

目に見える異常がなくても、給湯器の内部部品が損傷している可能性があります。異常がある場合はもちろん、異常がなくても一度専門の業者やメーカーに連絡して点検を依頼することをおすすめします。給湯器の空焚きは多くの場合、保証対象外になるため、修理費用や点検費用について事前に確認しましょう。

追い焚き機能を安全に使うために気をつけること

追い焚きを安全に利用するためには、以下のポイントを日常的に意識することが大切です。

浴槽の水位を常に確認する

追い焚きをする際は、浴槽の循環口が必ずお湯の下に完全に浸かる状態にしてください。水位が低いまま追い焚きすると空焚きになる可能性があります。目安として、浴槽の循環口より約10センチ以上はお湯を張りましょう。

追い焚きできない入浴剤を使わない

にごり湯タイプ、発泡タイプ、硫黄成分、強い酸性やアルカリ性の入浴剤は、配管内に詰まりを起こしたり、金属部品を腐食させることがあります。入浴剤を使う場合は、「追い焚き可」と明記されたものを使用しましょう。

追い焚き配管の定期的な洗浄を行う

追い焚き配管には雑菌が繁殖しやすいため、配管内部の定期的な掃除が必要です。月に1回は市販の配管洗浄剤を使用して清潔な状態を保つと、衛生的で安全に利用できます。

古い給湯器は交換を検討する

10年以上前の古い給湯器や安全装置が搭載されていないバランス釜を使用している場合は、安全性に問題があります。最新の給湯器は空焚き防止機能や不完全燃焼防止装置など、安全性が大幅に向上しています。事故を防ぐためにも、古い給湯器の使用を続ける場合は交換を積極的に検討しましょう。

まとめ

給湯器の空焚きは意外と身近なトラブルですが、一歩間違えば重大な事故につながります。最近は家庭の安全意識の向上に伴い、安全機能が充実した給湯器が普及しています。特に高齢の方や小さなお子さんがいる家庭では、万が一に備えて浴室や脱衣所に「空焚き時の対応マニュアル」を貼っておくと安心です。また、追い焚き以外のトラブルにも備え、ガスや電気機器の緊急連絡先をあらかじめ確認しておきましょう。

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