目次
熱いフライパンに水をかけてはいけない理由
料理で使った熱々のフライパン。すぐに水をかければ汚れが簡単に落ちると考え、ついついやってしまいがちです。しかし、これは大きな間違い。熱したフライパンに冷たい水をかけると、大切なフライパンの寿命が縮んでしまう可能性があります。その理由を詳しく見ていきましょう。
フライパンの表面加工がはがれやすくなる
多くのフライパンには、フッ素樹脂加工(テフロン加工)やセラミック加工といった焦げ付き防止の加工がされています。これらのコーティングは、熱いフライパンが急に冷やされることで剥がれやすくなります。
金属は熱すると目には見えませんが少し膨らみます。そして、冷やすと元の大きさに戻ります。熱々のフライパンに冷たい水をかけると、金属が急に縮んでしまい、表面に塗られた加工がズレたり浮いたりします。このズレや浮きが何度も繰り返されると加工が剥がれてしまい、食材がこびりつくようになり、洗うのも難しくなります。
また、フライパンの加工が傷ついてしまうと、焦げ付き防止効果がなくなり、調理にも不便を感じるようになります。
フライパンが変形して料理がしにくくなる
熱したフライパンをすぐに水で冷やすことは、フライパン本体の変形にもつながります。これは、フライパンの底面に急激な温度差が生じ、金属が均一でなく縮んでしまうためです。
フライパンが変形すると、料理のときに熱が均一に伝わらず、焼きムラができてしまいます。たとえば、餃子やステーキなど焼き目をつける料理がうまく仕上がらなくなり、料理の完成度が落ちてしまいます。
さらに、底面が変形すると、コンロの五徳やIHクッキングヒーターに置いた時に安定しなくなります。安定しないフライパンは調理中に動きやすく、事故ややけどの原因にもなるので注意が必要です。
フライパンを傷めない正しい洗い方
熱したフライパンに水をかけることがNGだと分かったら、次はフライパンを傷めず長持ちさせるための正しい洗い方を身につけましょう。
手で触れる温度まで冷ましてから洗う
調理後のフライパンは、必ず手で触れるくらいまで冷ましてから洗うようにします。目安としては調理後、火を止めてから約2~3分ほど置いておくと安全な温度になります。
どうしてもすぐ洗いたい場合は、水ではなく、ぬるま湯(約40~50度程度)を使うと急激な温度差を防ぐことができます。このようにすれば、フライパンへの負担を軽くしながら汚れも落としやすくなります。
熱いフライパンを冷ますのを待つ間に、キッチンペーパーなどでフライパンに残った油や調味料を軽く拭き取っておくと、後で洗う際の手間が省けます。
柔らかいスポンジで優しく洗う
フライパンを洗う時は、必ず柔らかいスポンジを使い、優しく汚れを落としましょう。焦げ付きがある場合でも、金属たわしや研磨剤入りの洗剤は使用してはいけません。これらを使うとコーティングが削れてしまい、寿命を縮めてしまいます。
汚れが取れにくい時は、無理にこするのではなく、ぬるま湯にしばらく浸けておくと汚れが浮いて落としやすくなります。また、重曹を使った簡単な方法として、水1カップに小さじ1~2の重曹を溶かしてフライパンに入れ、弱火で5分ほど煮立てて冷ましてから洗う方法もおすすめです。重曹は研磨剤入り洗剤より安全で、焦げ落とし効果も抜群です。
知っておきたいフライパンの洗い方【種類別】
フライパンは素材や加工によって扱い方が少しずつ異なります。自宅で使っているフライパンの種類を知り、正しくお手入れすれば、さらに長く使うことができます。それぞれのフライパンごとに、大切なポイントを詳しく解説します。
フッ素樹脂加工(テフロン加工)フライパンの場合
フッ素樹脂加工のフライパンは焦げ付きにくく扱いやすいですが、非常に繊細です。特に熱した直後に冷たい水をかけることは絶対に避けましょう。また、強火での調理を長時間続けたり、空焚きをしたりすると、コーティングが剥がれる原因になります。
調理するときは中火以下を心掛け、金属製のヘラやフライ返しは使わないようにしましょう。木製や樹脂製の調理器具を使えば表面のコーティングを傷つける心配がありません。丁寧に扱えば、2~3年以上快適に使い続けることができます。
セラミック加工フライパンの場合
セラミック加工フライパンは見た目が美しく耐熱性にも優れていますが、急激な温度変化には弱い素材です。熱いままの状態で水をかけたり、急に冷ましたりするとヒビ割れが発生することがあります。フッ素樹脂加工のものと同様に、使用後は手で触れる程度まで冷まし、ぬるま湯で優しく洗いましょう。
また、油を使わずに空焚きすると、セラミックの表面が傷んで焦げ付きやすくなります。調理前には少量の油を薄くひくことをおすすめします。適切な使用で、長期間美しい状態を保つことが可能です。
鉄製フライパンの場合
鉄製のフライパンは耐久性に非常に優れており、きちんと手入れすれば一生ものとして使うことができます。しかし、鉄フライパンも急激な温度差は避ける必要があります。
鉄製のフライパンを洗う時は、少量のぬるま湯を使い、洗剤を使わずに汚れを優しく落とします。焦げ付きがある場合は、ぬるま湯で浸け置き洗いをすると簡単に落ちます。洗った後は、水分をしっかり拭き取り、弱火で軽く熱して完全に乾かします。その後、サビ防止のために薄く油を塗って保管すると、次に使う時の調理もしやすくなります。
ステンレス製フライパンの場合
ステンレス製のフライパンは錆びにくく、非常に長持ちしますが、熱伝導にムラが出やすい素材でもあります。そのため、急に冷たい水をかけると底面がゆがみやすくなります。使った後は熱が冷めてから、ぬるま湯で丁寧に洗いましょう。
調理前には、あらかじめフライパンを弱火でじっくり予熱して油膜を作ると、焦げ付きにくく、汚れも簡単に落ちます。この小さな工夫がフライパンの寿命を大きく伸ばします。
IHクッキングヒーターを使っている場合の注意点
IHクッキングヒーターを使っている場合、フライパンの底が焦げ付いていると温度センサーが正常に働かず、火力が弱まったり停止したりすることがあります。特に底面に油の膜や焦げが蓄積すると、IHがフライパンを正しく検知できなくなります。
IHで料理をする場合は、調理後に必ず底面をキッチンペーパーなどで拭き、汚れを残さないようにしましょう。もし焦げがひどくなった場合は、水1カップに小さじ1〜2杯の重曹を入れて弱火で数分煮立たせ、汚れを浮かせてから柔らかいスポンジで落とすと、IHクッキングヒーターが正常に作動するようになります。
まとめ
フライパンを正しく洗って長持ちさせることは、料理の仕上がりや安全性にもつながります。実は、フライパンを無理に冷やさず自然に冷ますことは、エネルギー消費を抑える環境への小さな貢献にもなっています。
また、正しい手入れで長く使うことができれば、家計にも優しく経済的です。普段あまり意識しない小さな工夫ですが、毎日の生活に大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。フライパンをいたわる習慣を、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。