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彼岸花の写真は撮ってはいけないと言われる理由
お彼岸のころ、墓地に行くと真っ赤な彼岸花をみかけます。実はこの彼岸花には「写真を撮ってはいけない」と考えられることがあります。
彼岸花はどうして写真を撮ってはいけないと思われるのか?なぜ不吉なイメージがついているのか?詳しく紹介します。
彼岸花の写真を撮ってはいけないという根拠はない
お墓に鮮血のような真っ赤な花が一斉に咲いている彼岸花の姿は迫力があると同時に不気味さも感じます。どこか怖い印象もあるため写真を撮ってはいけないと言われるのも分かる気がします。
彼岸花の写真を撮ってはいけないと思われやすい理由は、彼岸花に墓地に生えていることが多いため死や不吉なイメージがあるからかもしれません。
しかし、実際のところ彼岸花の写真を撮ってはいけないという伝承や根拠はありません。もしかすると地域の風習や言い伝えなどでは語られることはあるかもしれませんが、あくまでも少数派でしょう。
現在では彼岸花を撮影した写真もネットやSNSでたくさん発信されています。気にする方も少ないようなので、そこまで深刻に考えなくても良さそうです。
彼岸花の写真を撮ってはいけないと思う理由
彼岸花を撮影してはいけないという言い伝えは聞かないのに、どうして写真を撮ってはいけないと思われやすいのか?その理由のひとつとして、彼岸花が墓地に多く群生していることが挙げられます。
彼岸花は毒を持った植物で、墓荒らしをする動物よけの意味もあって墓場周辺に植えられていました。お墓で写真を撮ることは不謹慎であると考えられることから連想して、彼岸花を撮影してはいけないと解釈されていった可能性はあります。
また彼岸花には死を連想させる不吉な迷信や別名も数多く存在しています。そうした伝承から無意識に恐怖の対象として捉えているのかもしれません。
彼岸花は不吉な迷信がある
彼岸花には不吉な迷信も多く、「彼岸花を家に持って帰ると火事になる」「彼岸花を摘むと手が腐る」「彼岸花を摘むと死人がでる」「彼岸花を食べるとあの世(彼岸)に行く」など恐ろしい迷信があります。
実は、この迷信には意味があります。「火事になる」というのは、彼岸花の真っ赤な花の形が燃え盛る炎のように見えるためです。「摘むと死人が出る」「食べるとあの世に行く」というのは、彼岸花に毒があることから言われた迷信です。
火事に関しては迷信であることに変わりありませんが、食べるとあの世に行く、死人が出るという話はあながち間違っていませんね。
彼岸花には毒がある
上記でも少し触れましたが彼岸花は毒性の植物です。花・葉・茎・球根などすべての部位に毒の成分が含まれており、別名「毒花(どくばな)」とも呼ばれています。
彼岸花の毒は、特に球根の毒が強く、食べると30分以内に、悪心、嘔吐、下痢、頭痛などの症状が出るようです。医療が未発達で貧困・痩せている人が多かった昔では、たしかに食べることは命に関わりますね。
その一方、彼岸花に毒があることから「死」をイメージする不吉な迷信ができたと言われていますが、子供が彼岸花に触らないように、あえて恐い迷信を作ったという説もあります。触ると死ぬと言われたら、子供は恐くて彼岸花を摘もうとは思わないため合理的ですね。
余談ですが、毒を持っている彼岸花の球根は貧困・飢饉で苦しんでいた農民たちの非常食でもありました。毒を持っているため年貢として徴収されず球根部分にはでんぷん質も豊富。肝心の毒もしっかり水洗いすることで洗い流せたそうです。とはいえ、現在で行うにはリスクが高いため食用として試すのは避けましょう。
彼岸花は墓地に咲いている
彼岸花はお墓の周りに咲いているので、「お墓=死=彼岸花」のイメージが強くなってしまいました。では、なぜ彼岸花がお墓の近くに咲いているのでしょうか?
それは昔は火葬では無く土葬だったためです。亡くなって土葬された方のお墓はモグラなどの動物に食い荒らされていました。そうした事態を嘆いていた当時の人達は対策として毒の花である彼岸花を墓周辺に植えました。
全身に毒がある彼岸花をお墓の周りに植えて動物が近寄ることを防いだのです。彼岸花の球根には特に強い毒があるため、土の中の生き物も近寄らなくなったそうです。そう考えると彼岸花に対するイメージも少し変わってきますね。
彼岸に一斉に咲くのが不気味
彼岸の時期、墓地に真っ赤な炎のような花が一斉に咲くので非常に迫力があります。それが広いお花畑なら圧巻です。
墓地一面真っ赤な彼岸花はときに毒々しい光景として人々の目に映り、あの世の魂の権化だと思った方もいたそうです。そうした経緯から「死人花(しびとばな)」「地獄花(じごくばな)」「幽霊花(ゆうれいばな)」といった別名で呼ばれることも多くなっていきました。
確かに、鮮血のような真っ赤な花が一面に咲いているのは怖いと感じるかもしれません。ただし、彼岸花の群生地に対して恐怖を感じるか、美しいと感じるかは見る人の感性によって異なります。
咲いているのが墓場ではなく広原などであれば、一面に咲き誇る彼岸花の光景は神秘的で絶景ですよ。
彼岸花の別名も不吉
彼岸花は別名「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」とも呼ばれています。曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とは、仏教における四華とよばれる天界の花のひとつ。曼殊沙華(まんじゅしゃげ)を見た者は、悪業から離れるとも言われているほど神聖な花です。
その一方で彼岸花には、曼殊沙華以外にも数百以上の別名があり、神聖なものだけでなく不吉な意味合いを含んだものも多いです。
- 不吉な別名(一部)
- 死人花(しびとばな)
- 地獄花(じごくばな)
- 幽霊花(ゆうれいばな)
- 剃刀花(かみそりばな)
- 狐花(きつねばな)
- 捨子花(すてごばな)
- 毒花(どくばな)
どれも不気味な名前ですね。こうした不吉なイメージを感じさせる名前から写真を撮ってはいけないという認識が広まった可能性もあります。
彼岸花は生態も特殊
彼岸花は、まず花が咲き、後から葉っぱが伸びるという特殊な生態を持っています。
葉と花を一緒に見ることができないので昔の人は「葉見ず花見ず」と呼び、葉が無いのに花が咲く姿を不気味がって、「幽霊花(ゆうれいばな)」「死人花(しびとばな)」などと呼ぶこともあったようです。
このように、彼岸花は写真に撮ってはいけないというのは、不吉なイメージが定着しているからです。しかし、全て迷信ですので彼岸花を写真に撮っても問題はないでしょう。
《 ポイント 》
- 彼岸花の写真はとってはいけないと言われる理由は彼岸花に「死」や「不吉」なイメージがあるから。
- 彼岸花の真っ赤な花の形が燃え盛る炎のように見えるため、「彼岸花を家に持って帰ると火事になる」という迷信がある、
- 彼岸花には毒があるので「彼岸花を摘むと死人がでる」「彼岸花を食べるとあの世(彼岸)に行く」などの迷信がある。
- 彼岸花はお墓の周りに咲いているので、「お墓=死=彼岸花」のイメージが強くなった。
- 彼岸の時期、墓地に真っ赤な炎のような花が一斉に咲くので不気味。
彼岸花の特徴
彼岸花を写真に撮ってはいけないと思われていた理由は、「彼岸花は不吉」というレッテルを貼られたからです。実際は不吉な花どころか、とても幻想的で美しい花です。ここでは、彼岸花について特徴をお話したいと思います。
彼岸花の特徴
彼岸花はヒガンバナ科・ヒガンバナ属の球根植物です。彼岸花の名前は秋の彼岸の期間だけに花を咲かせることに由来しています。自生の彼岸花は彼岸の時期だけですが、品種改良も増え、夏~秋に咲く彼岸花もできました。
彼岸花はまず花が咲いてその後葉が伸びる、という珍しい生態の花です。花の色は赤以外に、白、ピンク、黄色などがあります。
彼岸花(ヒガンバナ)
学名 | Lycoris Radiata |
科・属名 | ヒガンバナ科・ヒガンバナ属 |
英名 | Spider lily |
原産地 | 日本、中国 |
開花期 | 7~10月 |
花の色 | 赤、白、ピンク、黄、オレンジ |
別名 | 曼珠沙華(まんじゅしゃげ/かんじゅしゃか) |
別名(一部紹介)
- 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)
- 死人花(しびとばな)
- 地獄花(じごくばな)
- 幽霊花(ゆうれいばな)
- 剃刀花(かみそりばな)
- 狐花(きつねばな)
- 捨子花(すてごばな)
- 毒花(どくばな)
- 痺れ花(しびればな)
- 天蓋花(てんがいばな)
- 狐の松明(きつねのたいまつ)
- 狐花(きつねばな)
- 葉見ず花見ず(はみずはなみず)
- 雷花(かみなりばな)
- レッドスパイダーリリー
- ハリケーンリリー
- マジックリリー
彼岸花には上記のように様々な別名があります。
ちなみに英語では彼岸花のことをレッドスパイダーリリーと呼びます。これは彼岸花の見た目が蜘蛛に似ていることから名付けられたから。ハリケーンリリーは、台風が多くなる時期に咲くことが多かったため名付けられた別名です。
このように彼岸花の別名にはそれぞれ異なった意味やニュアンスが込められています。不吉な出来事に由来する名前もあれば、見た目に注目した別名もあります。そうした別名に込められた意味を調べるのも面白いですよ。
彼岸花の色別の花言葉
彼岸花にも花言葉があります。一般的な赤い彼岸花には「悲しい思い出・情熱・独立・再開」といった意味がありますが、実はこの花言葉は彼岸花の色によっても変化します。
- 赤:悲しい思い出・情熱・独立・再開
- 白:思うはあなた一人・また会う日を楽しみに
- 黄:追想・深い思いやりの心
- ピンク:快い楽しさ
- オレンジ:妖艶
白色の彼岸花はネガティブな意味が薄れ、前向きな意味合いになります。ピンク色も楽し気な意味を含んだ花言葉となります。色の違いだけでこうも花言葉の意味が異なってくる点も彼岸花の魅力といえます。
青色の彼岸花は存在しない
人気漫画やアニメの影響で話題に上がることが増えた青色の彼岸花。しかし、青色の彼岸花は実在せず、あくまでもフィクションの存在となります。
ただし、フェイク植物・造花の中には青色の彼岸花を模したものもあります。気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
彼岸花の写真を撮るときのコツ
彼岸花を写真に撮ってはいけない理由は迷信が原因でしたので、実際に彼岸花を写真に撮っても問題ありません。彼岸花は不吉なイメージが強いですが、花の色・形はとても妖艶で美しく写真映えします。
Canon(キャノン)によると
ヒガンバナは複数の花を放射状に咲かせる花形なので、画面の中で占める割合を1/4にすると、ゴチャゴチャした印象になりません。広がった雄しべを見せたいなら花と同じ高さでレンズを向けますが、下からレンズを向けると上に伸びる勢いを感じる作品に仕上がります。望遠レンズよりは中望遠系から標準系のあまり焦点距離の長くないレンズのほうが撮りやすいでしょう。
彼岸花の写真を撮るコツは、大手メーカーCanonのサイトで公開されています。とても分かりやすく説明されていますのでぜひ参考にしてください。プロが撮影した彼岸花は本当に美しいです。
《 ポイント 》
- 彼岸花は複数の花を放射状に咲かせる花形なので、画面の中で占める割合を1/4にするとスッキリきれいに撮れる。
最後に
彼岸花を写真に撮ってはいけないというのは、彼岸花が不吉だと言うレッテルを貼られていることが原因でしたね。
しかし、実際のところ彼岸花の写真を撮ってはいけないという伝承や根拠はないため、迷信や思い込みの類に過ぎません。鮮やかな赤色で咲き誇る彼岸花は神秘的でもあるため、ぜひ写真撮影に挑戦してみてください。
ただし、彼岸花には毒があります。そのため彼岸花の取り扱いには注意が必要です。彼岸花に含まれる「リコリン」というアルカロイドの一種である毒を摂取すると、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、呼吸困難を起こす可能性があります。
リコリンの致死量は10gで、彼岸花に含まれるリコリンは15mg程度です。つまり…約667個以上所彼岸花を食べない限り死ぬことはないのでおびえるほどのことはないのですが、小さい子供やペットはできるだけ近づけないよう注意しましょう。また、彼岸花を触ったらしっかり水で洗い流すこともお忘れなく。
正しい知識を持っていれば、彼岸花はとても幻想的な花の一種。一斉に咲き誇る彼岸花は美しくもどこか悲し気な雰囲気が魅力的です。彼岸花の写真を撮るときは、そんな魅力をしっかり写せるようキレイに撮影してみてください。