目次
干し柿が黒くなる原因
干し柿が黒くなるのはタンニンが原因
干し柿が黒くなるのは柿に含まれるタンニンという成分が原因です。タンニンは植物に多く含まれるポリフェノールの一種ですので、食べても問題はありません。身近なものでは、緑茶やワインに含まれていることが有名です。
干し柿は渋柿を干したものですが、タンニンは柿の渋み成分なのです。この渋み成分は渋柿だけでなく甘柿にもあります。
甘柿を切って中を見るとポツポツ黒い斑点状のものがありますよね?それがタンニンなのですが、タンニンは渋み成分なのになぜ渋くないのか不思議ですよね。
実は、タンニンには渋みを感じるものと感じないものがあるのです。
- 渋いと感じるタンニンは「水に溶けるタンニン(渋柿)」
- 渋いと感じないタンニンは「水に溶けないタンニン(甘柿)」
渋柿のタンニンは「水に溶けるタンニン」なので、かじると唾液に溶けて渋い味がするんです。つまり、「水に溶けるタンニン」を、「水に溶けないタンニン」に変えれば、甘くなるということですね。
それをする方法が渋柿を干すことです。干し柿にすると水分が抜けて固まり「水に溶けないタンニン」の黒いポツポツが表面に浮き上がるために黒くなるのです。
「タンニン鉄」が原因になっている場合もある
干し柿が黒くなる原因として、「タンニン鉄」である可能性もあります。柿の中には、少量ですが鉄分が含まれています。この鉄分がタンニンと反応して、黒い斑点が出てきてしまうというわけです。
タンニン鉄で黒くなっている場合も基本的には食べられますが、鉄分の吸収を妨げるともいわれているので、貧血気味の方は食べ過ぎないようにしましょう。そもそも干し柿のエネルギー量は柿1個とほぼ同じなので、1日1~2個に留めておくのがおすすめです。
ところで、市販の干し柿は黒くないですよね。
市販の干し柿がきれいなのはなぜ?
市販の干し柿は、きれいなオレンジ色で見栄えがするように、酸化防止剤で処理し、短時間で乾燥させています。
もう少し詳しく説明すると、市販の干し柿は「硫黄燻蒸(いおうくんじょう)」と呼ばれる作業を行っています。硫黄燻蒸とは、柿を硫黄の成分で燻すことです。
硫黄燻蒸は大正時代から続く伝統的な技法で、市販の干し柿はほとんどがこの方法で作られています。硫黄の量や燻蒸時間の基準もしっかりと決められており、これによってタンニンの酸化を防ぎ黒くなるのを防いでいるのです。また、雑菌やカビの繁殖を防ぎ、乾燥を促進してくれてもいます。
ただし、市場には自家製と同じに無添加の干し柿もあり、少々黒くなっているものもありますが味は美味しいままです。
《 ポイント 》
- 干し柿が黒くなるのは柿に含まれるポリフェノールの一種「タンニン」が原因。
- 干し柿にすると、渋いと感じるタンニン「水に溶けるタンニン」が渋いと感じないタンニン「水に溶けないタンニン」に変化する。
- 市販の干し柿がきれいなのは硫黄燻蒸しているから。
干し柿は黒くなったり変色しても食べることができる?
タンニンが原因で干し柿が黒くなるのであれば食べることができます。しかし、次のような状態のものは食べてはいけません。
食べてはいけない干し柿の見分け方
- 酸っぱい臭いや異臭がする。
- 汁が出てどろどろしている。
- 糸を引いている。
- 酸っぱい味がする。
- カビが生えている。
黒くなった干し柿でも食べられることがほとんどですが、これらの状態になっている場合は腐っている可能性が高いです。黒い斑点がカビなのかタンニンなのかよく分からない場合は、臭いや硬さに異常がないかで判断するといいでしょう。
青・緑・白の変色はカビの可能性が高い
- 青色や緑色のぶつぶつができている。
- 白いふわふわしたものがついている。
干し柿には、黒や白、青などさまざまな色の変色が考えられます。食べられるものとそうでないものがありますが、青や緑、白に変色している場合は注意が必要です。
青色や緑色のカビならすぐに見分けられますが、白いカビは判断が難しいですよね。見分け方としては、綿のようにふわふわしている場合はカビであると考えていいでしょう。
またカビの場合は、臭いでも判断できます。一般的に、絵具やほこりの臭いが、カビの臭いといわれていますが、瞬時に腐っていると分かるような異臭がすることもあります。
一度カビが生えたものは、表面のカビを取ったとしても、干し柿の中の奥深くまでカビの根(菌糸)がはっていますので食べずに処分しましょう。
干し柿の白い粉はカビ?
白いふわふわしたものがカビである可能性について解説しましたが、白い粉っぽくなっている干し柿もあります。市販の干し柿にもみられるため、あまり気にしない方も多いかもしれませんね。
干し柿として完成したものについている白い粉は柿霜(しそう)といって、ブドウ糖の結晶です。中には食べられないと思って取ってしまう方もいますが、白い粉が付いている干し柿は上手に仕上がっている証拠なのです。
柿を干していると、柿の水分は乾燥によって徐々に失われます。残った糖分が柿の外ににじみ出て柿の表面を覆ってしまい、粉をふいたような見た目になるというわけです。ですので、柿霜(しそう)がたくさんついているほど美味しい干し柿と判断できるのです。
ただし干し柿をつるして乾燥途中(未完成のもの)から白い粉が出ている場合は、白カビの可能性が高いので注意しましょう。ブドウ糖の結晶か、白カビか、判断できない時は食べないことをおすすめします。
腐った干し柿を食べるとどうなる?
腐った干し柿を食べると食中毒をおこす可能性があります。腹痛、吐き気、下痢、熱、などの症状が出たら病院で診察してもらいましょう。
干し柿のカビ対策と正しい保存方法
熟し出していない渋柿を使う
干し柿にする際は、熟し出していない渋柿を選びましょう。成熟しすぎている柿で作るとカビが生えやすく、腐ってしまうこともあります。オレンジが濃くツヤがあり、硬さのある柿がおすすめです。またヘタの色がきれいな緑で、しっかりと実にくっついているものがベターです。
塩を入れた熱湯にくぐらせる
カビを防止するために、渋柿の皮をむいて紐を付けた後、塩を入れた熱湯に10秒ほどくぐらせます。そうすることで雑菌を消毒できるので、カビが発生しにくくなります。
柿がくっつかないよう干す
柿がくっついていると水分が飛ばない場所ができてしまいます。水分や湿気がこもっているとその部分にカビが生える可能性があります。干し柿全体まんべんなく水分を飛ばすために、柿を一つ一つ離して干しましょう。
雨の日は室内に入れる
雨に濡れると湿気でカビが生えやすくなります。とくに最初の3日間はとても重要で、このタイミングで濡れてしまうとその部分からカビが生える可能性が高いです。
また、ジメジメ湿気が多い日や高温になる日も、一時的に室内に入れて湿気が無い場所につるします。晴れたら再度外につるしましょう。
焼酎付きキッチンペーパーで拭く
カビが心配な場合は、35度以上の焼酎をキッチンペーパーに含ませ、干し柿の表目を軽く拭きましょう。消毒・除菌効果があります。
また白カビは根が張るので一度生えたら捨てるが基本ですが、少量の黒いカビであれば、焼酎を含ませたペーパーで取り除くことができます。
この方法で黒い斑点がカビなのかタンニンなのかを見極めることも可能なので、こまめに拭いてあげるといいでしょう。
干し柿の保存方法と賞味期限
冷蔵保存方法
- 干し柿を一つ一つラップでしっかり包みます。
- ジッパー付きの保存袋に、ラップで包んだ干し柿を入れて平らに並べます。
- 袋の中の空気をしっかり抜いて密封します。
- 冷蔵庫の野菜室で保存します。
干し柿の冷蔵保存の賞味期限は約1ヵ月です。
冷凍保存方法
- 干し柿を一つ一つラップでしっかり包みます。
- ジッパー付きのフリーザーバッグに、包んだ干し柿を入れて平らに並べます。
- 袋の中の空気をしっかり抜いて密封します。
- アルミトレイにのせて冷凍庫で保存しましょう。
干し柿の冷凍保存の賞味期限は約半年~1年です。
冷凍した干し柿を食べる際は、冷蔵庫で自然解凍しましょう。
《 ポイント 》
- 柿がくっつかないよう干す。
- 雨の日は室内に入れる。
- 塩を入れた熱湯にくぐらせる。
- 焼酎付きキッチンペーパーで拭く。
- 干し柿の冷蔵保存の賞味期限は約1ヵ月。
- 冷凍保存の賞味期限は約半年~1年。
干し柿が黒くなるのを防ぐ作り方のコツ
干し柿が黒くなるのは乾燥状態の悪さが原因ということがわかりましたが、干し柿が黒くなるのを防ぐ方法があります。
塩を入れた熱湯で殺菌する
カビ対策で紹介した方法で、干し柿が黒くなるのを防ぐこともできます。同じように渋柿の皮をむいて紐を付けた後、塩を入れた熱湯に10秒ほどくぐらせましょう。そのあとは清潔な布で拭き、水分が残らないようにします。
手袋をして皮をむく
干し柿は皮をむいてつるしますが、このとき雑菌が付着すると、仕上がりが黒くなる要因となります。皮むきのときに雑菌がつかないよう、手袋をしてむくようにしましょう。量が多いと時間がかかるので、専用の皮むき機を使うのもおすすめです。
もみ込んで黒くなるのを防ぐ
渋柿を干して、干し柿になる過程で重要なのはもみ込むことです。渋柿をもみ込むことで、渋柿の組織を破壊して干し柿が黒くなるのを防ぐことができるのです。もまないとただ干しただけなので、ミイラになったかのように黒く硬くなってしまいます。
もみ込む方法
干してから10日~2週間程たって表面が乾いたら、干し柿の実をひとつずつ両手の指で優しくもみ込みます。表面が乾く前にもみ込むとタンニンが溶け出て酸化してしまいますので注意しましょう。もみ込み時間の目蓮は一つにつき2分程度。
再度つるし、数日後に、さらにもみ込み、好みの硬さになるまで繰り返し干しましょう。更に2週間程干し、うっすらと白い粉がふいてきたらOKです。
もし、仕上がりが硬い場合は、再度もみ込んで形を整えビニール冷暗所に10日程放置します。柔らかくなって、白い粉がふいたら完成です。
風通しの良い場所につるす
干し柿を干す場所は、風通しが良いことが一番重要です。風通しが良ければ日光があたらなくてもOKです。むしろ直射日光に当てると酸化が進行しやすくなるうえに、霧や雨で水分が戻ってしまいます。屋内に移動させた場合は、扇風機や除湿器を利用するのもおすすめです。
干し柿を作る適温
干し柿を作る適温は15℃以下です。空気が乾燥し、気温が低くなる11月頃が向いています。気温が高いと酸化して黒くなりやすくカビも生えやすくなります。また、温度が高すぎても痛む原因になりますので注意しましょう。
干し過ぎに注意する
長期間干し過ぎて黒くなる場合があるので、ちょうどいい硬さになったら日干しから保存へ切替えましょう。とくに内側がトロッとした干し柿が好みなら、あまり長期間干さない方がいいです。食べごろを判断するのは難しいですが、ヘタがしっかり乾燥していることがひとつの目安になります。
最後に
干し柿が黒くなるのはタンニンが原因でしたね。タンニンは干し柿以外の多くの食品に含まれるものなので、食べても問題ありません。
ただし、拭くと取れてしまう黒い点や、ふわふわした白いもの、青や緑の変色はカビの可能性が高いです。腹痛や下痢の原因になるので、食べないようにしましょう。
干し柿を作る際の重要なポイントは「乾燥状態」です。干し柿の状態が「黒い」「硬い」「白粉が無い」のは乾燥状態が良くなかったからですが、これらは傷んでいるわけではないので、美味しく食べることができます。
また干し柿は意外にも保存期間の短い食品なので、できあがったら早めに食べることをおすすめします。正しい冷蔵保存であれば1か月ほど日持ちしますが、2週間ほどで傷んでしまうことも珍しくありません。食べきれない場合は冷凍庫に入れておけば、半年~1年ほど日持ちさせられるでしょう。