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炭は肥料になる?
炭は多数の小さな穴が空いている「多孔性」なので、透水性と保水性に優れているのと同時に、微生物の繁殖が活発になるため、最適な土壌改良材として知られています。
では、肥料としてはどうなのでしょうか?
使用済みの炭にはカリウムが多く含まれていますので、それ以外の栄養素をプラスすることによって、「土壌改良材」と「肥料」の二役の働きが発揮されるでしょう。
《 ポイント 》
- 多孔性の炭は透水性と保水性に優れた良質な土壌改良材。
使用済み炭が栄養になる理由
炭は木を焼いて作る「燃料」で、木が炭化して黒くなったものです。
使用済みの炭は、炭が持つ土壌改良材としての性質はもちろん、植物に必要な3大栄養素のうちの「カリウム」が豊富に含まれているので、他に「窒素」と「リン酸」をプラスすることで植物を元気に育てる効果が期待できる肥料になります。
炭には、微量ミネラル要素以外の肥料要素はほとんどありませんが、土に混ぜることによって通気性や透水性がよくなります。
土と根に養分・水分・酸素をバランスよく供給し続ける良質な土壌改良剤になるので、植物の根のつきがよくなり、植物が丈夫になるというわけです。
近い将来、植物にとって必要な栄養素の一つである「リン酸肥料」が不足すると心配されていますので、有機栽培の重要性が問われています。環境対策として炭を肥料として活用するのが望ましいと言えるでしょう。
《 ポイント 》
- 窒素とリン酸をプラスすると「土壌改良材」と「肥料」の二役の働きをする。
炭がもたらす地面にとって良い効果
近年、食の安全を求める消費者の声はますます大きくなっていて、化学肥料の使用を減らしたいという意向が強くなっています。そんな中で、炭を利用することによって微生物が増殖しやすい環境をつくることができるので注目を集めています。
高温で焼いて作られる炭は、「腐生性微生物」の餌となる有機物を一切含んでいないので、細菌やカビなどが表面についても繁殖できません。つまり、土壌中の有機物が混入しない限り、ほぼ無菌状態というわけです。
その一方で、空気と水が多いので、多種多様な微細孔に微小動物や微生物が共生し「好気性微生物」が増殖しやすい環境になっています。
具体的には次のような効果が見込まれます。
- 砂質の地面には保水力を高めて土に潤いを与えます。
- 固くなった土壌を団粒化して、水分と肥料の効果を高めます。
- 粘土質の地面の透水性と通気性を高め、排水を良くし土中に酸素を与えます。
- 土壌の中にある有毒ガスを吸着し、根への障害をなくして成長を助けます。
《 ポイント 》
- 「好気性微生物」が増殖しやすい環境になる。
炭を土に埋めてはいけない場合もある
コロナ禍で人気が高まっているキャンプ場やバーベキュー場では、勝手に土に埋めてはいけないというルールがあり、一角に炭捨て場が設けられています。
それには以下の3つの理由があげられます。
炭が一か所に集中すると土に悪影響を及ぼす
炭には肥料となるアルカリ性のカリウムが含まれていますので、土壌改善として役立てることができるのですが、たとえ地面に良いものであっても、同じ場所に大量に捨てられれば、何らかの影響を及ぼす可能性も出てきます。
植物専用の栄養剤でも、過剰に与えすぎると植物は枯れてしまいますよね。それと同じで、たとえ良い成分であっても効果が強すぎると悪影響を及ぼします。
適量であれば土壌改善になる炭ですが、施設を利用する人たちが好き勝手に捨て続けていては害になってしまうというわけです。
炭は分解されない
理由の一つとして、「炭は分解されない」ということがあげられます。炭の元素の一つである「炭素」は、それ以上に分解されないからです。例えば「砂」もそうです。
砂はほとんどがケイ素でできていて、それを分解しようとしても別のものに変化することはありません。それと同じで炭素はそれ以上変化しない物質なのです。
そのため、キャンプ場やバーベキュー場では自由に地面に捨てないように、炭捨て場を設けるというわけです。
火災の危険がある
炭をキャンプ場やバーベキュー場などで勝手に土に埋めてはいけない理由には、火災の危険があることも挙げられます。
キャンプ場のオーナーにとっては、これが何より心配なのではないでしょうか。しっかり火を消したつもりでいても、意外に火種が残りやすいのが炭の特徴の一つです。
利用者全員が完全に火を消して捨てているとは限りません。なのに、どこにでも自由に捨てても良いとなると、周囲の枯葉に燃え移り、火災の原因になってしまいます。そのため、火事にならないように決められた安全な場所に炭を集めているのです。
使い終わった炭をどうすれば良いのかはルール化されていますので、キャンプ場の指示に従いましょう。無料のキャンプ場だと管理人が在住していない可能性がありますので、事前に運営者に問い合わせてみるか、水をかけて確実に火を消した炭を持ち帰って、ゴミに捨てるようにしましょう。
自宅の庭に適切な量なら問題はない
影響を及ぼす可能性のあるものを、公共の土地や他人の土地に勝手に埋めることはできませんが、自分の庭に埋める分には特に問題はありません。
実際に、肥料や土壌改善に役立てたいと自宅の庭に炭を埋めて活用している人もいるようです。適量であれば良い効果を発揮しますので、試してみてはいかがでしょうか。
《 ポイント 》
- 炭はそれ以上に分解されない。
- 同じ場所に大量に捨てると何らかの悪影響を及ぼす可能性がある。
- 火種が残りやすい炭は火災の危険性がある。
- 適量であれば自宅の庭に炭を埋めても問題はない。
炭肥料の使い方
炭には微量のミネラル成分がある以外に肥料成分はそれ程多くはないのですが、多種多様な微細孔に微小動物や微生物が住みつき共生することで、土と根に養分・水分・酸素等をバランスよく供給し続ける最適な土壌改良剤となります。
ということは、自宅の花壇や畑の土壌を改良するためにも炭を活用すれば良いことになります。
ガーデニングに使う時の方法は、家庭菜園や花壇・鉢植えなどの土に使用済みの炭を小さく砕いて混ぜるだけです。粉炭でしたら、そのまま土に混ぜるだけでOKです。
くん炭の使い方
くん炭とは、もみ殻を炭化させた土壌改良資材のことです。日本ではお米を精米するときに出る「もみ殻」を有効活用して使われています。捨てられるもみ殻を使っているので、コストがかからず昔から使われている土壌改良材なのです。
おまけに、化学肥料を使わずに済むため、自然農法やオーガニック農法をしている人たちは、安心安全なくん炭を効果的に使っているようです。
くん炭を購入できる店
くん炭は、身近な材料で簡単に作ることができるので、必要な量を自分で作成することもできますが、もちろんお店で購入も可能です。お近くのJAやホームセンター、農業資材を取り扱っている店舗で取り扱っています。
もし、店頭に置いていない場合は取り寄せてくれることもあるので、問い合わせてみてくださいね。
くん炭の使い方
自分で作成したくん炭でも、購入したものでも手元に準備できましたら、実際に使ってみましょう。くん炭には窒素分が含まれていないので、窒素成分を含んだ化学肥料・有機肥料と一緒に使うことで土壌のバランスを保つことができます。
定植する穴に入れる
植物を植える前であれば、定植する地面に開けた穴に入れて混ぜて使うのが一般的です。土壌の状態に合わせてバランスを調節しながらくん炭と肥料を入れ、土と一緒にしっかりと混ぜておきましょう。土壌を安定させるためには、定植する1〜2週間前に混ぜ込んでおくのがおすすめです。
育苗培土に混ぜる
保水性と通気性を持つくん炭は、苗を育てるときにも活用できます。
使い方は、土と窒素、リン酸を含む肥料を入れたバケツなどの入れ物に、くん炭を入れてよく混ぜます。混ぜ込むくん炭の量がわからない場合は、10〜20%を目安に混ぜ込んでみてください。
よく混ざった土はそれぞれポットに移し替えて使ってくださいね。くん炭の量は、育てる植物や野菜、土の性質などによっても違ってきます。
種を植えた土の上に直接撒く
自然農法ではポットなどで育苗せずに、直接畑や庭に種を植えた土の上からくん炭を撒いて使うことが多いようです。
種を植えた土の上からくん炭を撒くことによって、防虫効果・マルチ効果・泥はねを防ぐ効果があるからです。植物の根本の近くに一握りずつ撒くだけなので、どなたにも簡単にできるおすすめの方法です。
《 ポイント 》
- 最適な土壌改良剤である炭は、自宅の花壇や畑にも使うことができる。
- 使用済みの炭を小さく砕いて混ぜる。
- もみ殻を有効活用したくん炭は低コストな土壌改良材。
- 定植する1〜2週間前に定植穴に入れて混ぜておく。
- 10〜20%のくん炭を育苗培土に混ぜる。
- 自然農法では、種を植えた土の上に直接撒くことが多い。
最後に
炭は良質な土壌改良剤として効果を発揮するという肥料としての能力を持っています。適量であれば、使い終わった炭を小さく砕いた物やくん炭をガーデニングに活用して、元気な植物を育てることができるでしょう。
一方で、キャンプ場やバーベキュー場などでは、勝手に炭を地面に埋めてはいけない理由があります。それ以上分解されない炭を集中的に埋めてしまうと土に悪影響を及ぼすこと。そして、火種が残りやすい炭は火災の危険性があることがわかりました。
それを踏まえたうえで、炭を家庭菜園や花壇、鉢植えなどに正しく再利用してみましょう。