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生ハムがしょっぱい理由
しょっぱい生ハムは、生肉を美味しく保存させるために考え出された保存食の部類に入り、「生」ではありません。加熱加工されているロースハムやボンレスハムなど一般的なハムに対し、生ハムがしょっぱいのは数週間もの間、豚肉を塩漬けにしてから低温でいぶすか乾燥させて作るからです。一般的なハムと区別するために日本では「生ハム」と呼んでいますが、実際は「生」ではなく「塩で熟成された肉」というのが正解です。
生肉の菌の繁殖を防いで腐らせないようにする方法として身近にある安く手に入る塩を使って肉を漬けるようになりました。こうすることで肉の美味しさを逃がさずに、水分を出して生肉の水分による菌の繁殖を防いでいたのです。これでなぜ生ハムがしょっぱいのか、その理由はおわかりいただけましたね?
塩漬けするときの食塩の量は、食品衛生法で下限が決められています。しょっぱい生ハムは普通のハムの約3倍の塩をまぶして低温熟成してから、半年~3年くらいかけて乾燥熟成させてつくります。古代ローマの時代からこのように塩漬けすることで、肉の旨味を逃がさずに水分を抜いて乾燥させ、他のハムに比べて長期保存できるように工夫していたようです。
生肉を熟成させるのに長い時間をかけているのですから、価格が高いのもうなずけますね。
生ハムの種類
しょっぱい生ハムには以下のような種類があり、国によって作り方や食感に違いがあるようです。
ラックスハム
燻製(くんせい)にはしますが、いぶさないドイツ式の生ハムです。加熱していないのでしっとりした食感とやわらかさが特徴です。ちなみに、日本のスーパーで取り扱っている生ハムはほとんどが「ラックスハム」です。この「ラックス」という言葉はドイツ語で鮭のことで、鮭のような赤い色をしたハムという意味を指しています。
プロシュート
イタリアを代表する生ハムは、燻製している「プロシュート・コット」と燻製していない「プロシュート・クルード」の2種類に分かれます。日本で販売されているプロシュートは燻製していない「プロシュート・クルード」のことです。
塩漬けと乾燥のみで燻製しないイタリア式の「プロシュート」はやわらかく、口当たりがよいのが特徴的でスペイン産の生ハムと違い豚肉の皮をつけたまま塩漬けするため、塩分がマイルドです。
ハモン・セラーノ
スペイン式の「ハモン・セラーノ」は世界3大ハムのひとつとして高く評価され人気があります。豚肉の皮を取ってから塩漬けして熟成するのが特徴で、その分イタリア産やドイツ産の生ハムにくらべて塩気が強い生ハムに仕上がります。
《 ポイント 》
- 生ハムとは「生」ではなく、塩で熟成された肉
- 生ハムは塩漬けすることで水分が抜けて乾燥させて長期保存が可能な食材
生ハムがしょっぱいのを解決する塩分の抜き方
生ハムがしょっぱいのはベーコンやウインナーに比べて塩分の量が多い食品だからです。そのため塩分摂取を控えめにしたい場合には塩抜きをしてから食べる工夫が必要で、その手軽な方法として他の食材に塩分を移すというやり方があります。
呼び水などのように直接水に生ハムを浸けてしまうと食感が悪くなるだけでなく、生ハム特有の旨味まで逃げてしまいますからまずはそのまま使う方法を試してみてはいかがでしょうか?
きゅうりを使って塩分を抜く
きゅうりをピーラーを使って薄くスライスし、その上に生ハムをのせて30分ほど置きます。こうすることで40~50%のしょっぱい生ハムの塩分を減らすことができます。また、きゅうりには体液の浸透圧を正常にしてくれる「カリウム」が含まれていますのでそのまま一緒に食べるようにするとよいでしょう。
アボカドを使って塩分を抜く
アボカドにしょっぱい生ハムを巻いておくとおよそ2~3時間で生ハムの塩分をアボカドに移すことができます。生ハムとアボカドといえば塩気と濃厚さのバランスの相性がよく「巻く」「混ぜる」「のせる」など、使い方を工夫することでしょっぱさを解決できるでしょう。また、アボカドには「カリウム」の他に「ビタミンE」も含まれていますので取り過ぎた体内の塩分の代謝を促してくれます。
豆腐を使って塩分を抜く
しっかり水切りをした豆腐にしょっぱい生ハムを巻いて2~3時間置いておきます。そうすることでしょっぱい生ハムの塩分が程よく豆腐に移り、淡泊な大豆の味がしょっぱい生ハムの塩分と相まってちょうどいい塩梅になります。それに千切りしたシソを載せてそのまま食べる美味しさは格別です。
《 ポイント 》
- スライスしたきゅうりの上にしょっぱい生ハムをのせて30分置く
- アボカドにしょっぱい生ハムを巻いておよそ2~3時間置く
- 水切りをした豆腐にしょっぱい生ハムを巻いて2~3時間置く
しょっぱい生ハムを美味しく食べるには
大量の野菜と一緒に食べる
野菜をソースでディップして食べる「バーニャカウダ」や、野菜サラダに熟成された旨味たっぷりの生ハムを飾ってみましょう。数種類のカットした野菜にしょっぱい生ハムをのせるだけで簡単に色どり豊かで豪華な野菜サラダが完成します。
塩分が強いしょっぱい生ハムがあればドレッシングなど他の調味料を使う必要はありません。野菜本来の美味しさをひとつひとつ味わいながらゆっくり堪能してください。好みに応じてオリーブオイル、こしょう、レモン汁を加えてもいいですね。
メロン、キウイ、リンゴ、モモなどの果物と合わせる
「生ハム+果物」の組み合わせはディナーなどでちょっとしたごちそうをいただく時の定番ですよね。しょっぱい生ハムの塩気と果物の甘みや酸味の相性はバツグンでワインにもマッチするのでおすすめです。
果物は「カリウム」と「水分」どちらも豊富に含んでいますからしょっぱい生ハムの塩分を体外に排出してくれる最も単純な塩分対策になるでしょう。確かにカリウムの多い果物に巻いて一緒に食べるのはとても理にかなった方法ですね。中でもおすすめなのはパパイヤ、キウイ、メロン、リンゴ、モモ、洋なし、柿、イチジク、アボカドでしょう。
ベーコン代わりに活用する
ベーコンは高カロリーなためその代用としてしょっぱい生ハムを使うとおよそ1/3のカロリーをカットできます。気になる塩分を調味料として活かすことができるのでまずはカルボナーラでしょっぱい生ハムの絶妙な味わいを楽しんでみましょう。
《 ポイント 》
- 塩分が強いしょっぱい生ハムがあれば他の調味料は必要なし
- しょっぱい生ハムをカリウムの多い果物と一緒に食べると塩分対策になる
- しょっぱい生ハムはベーコンの代用で使うと1/3のカロリーをカットできる
生ハムはしょっぱいから塩分の摂り過ぎになる?
生ハムの塩分量について
しょっぱい生ハムは熟成期間の違いによって2つのタイプに分けられます。熟成期間が短いものが「促成(ソクセイ)」長いものが「長期熟成」です。100gあたりの塩分量を比較すると、促成タイプが2.8g、それに対して長期熟成タイプは5.6gとなります。
長期熟成のしょっぱい生ハムは、長く保存できるように1年以上かけて乾燥させてから、菌が繁殖しないように高い塩分濃度で塩漬けにするため、塩分量に大きな違いが出てくるわけです。
健康な人の1日の食塩摂取量は男性が8g未満、女性が7g未満なので、それをしょっぱい生ハムに当てはめてみると促成タイプは約270g、長期熟成タイプは約135gを摂取すれば1日の塩分量に達する計算になります。
塩分の摂り過ぎで引き起こす病気
塩分の摂り過ぎによる病気で知られている中に「高血圧」がありますが、その状態が続くと動脈硬化や心臓肥大などのリスクが高まってしまいます。また、食塩の摂り過ぎが続けば過剰に摂取した塩分を排出しようとする腎臓の働きが徐々に弱ってきて最悪の場合、腎不全になり透析が必要になる可能性も出てくるでしょう。
塩分の過剰摂取によりむくみや高血圧、腎臓病以外にも、胃がんの発症率が高まることも最近の研究でわかってきました。その一方で生ハムは良質なタンパク質の他に、鉄分、亜鉛など、女性に嬉しいミネラル類が含まれており、脂質は食肉加工品の中で最も低いので美容によい一面もあります。
ただし、むくみや高血圧、腎臓病などに支障を及ぼすこともありますので注意しなくてはいけません。美味しく味わうだけでなく塩分とうまく付き合う工夫が必要になるでしょう。
《 ポイント 》
- しょっぱい生ハムは菌が繁殖しないように高い塩分濃度で塩漬けされている
- しょっぱい生ハムはむくみや高血圧、腎臓病、胃がんの発症率が高まる可能性がある
生ハムの保存方法
生ハムの正しい保存方法
常温に置いたままだと乾燥と熟成がすすんでしまうので、店頭で買ってきた未開封のしょっぱい生ハムは冷蔵庫で保存します。そして開封した後に余った生ハムは冷凍庫で保存するようにしてください。
未開封の生ハムの冷凍での保存方法
未開封のしょっぱい生ハムは真空パックされたものであればそのまま冷凍保存できます。より保存状態をよくしたいのであれば、真空パックをアルミホイルで包んでから冷凍庫に入れるようにして下さい。アルミホイルを活用して急速冷凍させると、生ハムの鮮度を保ち、解凍後でも風味を落ちにくくしてくれるでしょう。
開封後の生ハムの冷凍での保存方法
開封したしょっぱい生ハムを冷凍で保存する方法は空気が入らないようにラップで包み、その上からアルミホイルで包みます。さらにジッパー付きの保存袋に入れて空気を抜いてから冷凍庫に入れます。空気に触れないように工夫すれば生ハムの乾燥が防げるので解凍後に美味しく戴けるというわけです。
しょっぱい生ハムを冷凍保存するポイントは未開封のものと同様に急速冷凍することですが、その理由は食材の細胞を破壊させずに鮮度や食感、風味を保つことができるからです。そうするためには冷えるスピードが速い金属でできたアルミホイルで包むようにします。
また、冷凍保存することで切りやすいというメリットもありますので、食べきれずに余らせた生ハムがあったらぜひ試してみてください。
生ハムの正しい保存期間
スライスパックされているしょっぱい生ハムは、開封した直後から酸化が始まってしまうので2~3日中に食べきってしまいましょう。また、冷凍保存での保存期間の目安は、開封したか否かで大きく変わります。
開封後に冷凍保存した場合は3ヶ月程度、未開封で冷凍保存した場合であれば1年程度が目安となるでしょう。開封したしょっぱい生ハムを冷凍保存する際に直接手で触ると雑菌がつきやすくなるため、ビニールの使い捨て手袋をするか清潔な菜ばしを使うようにして下さい。衛生面に気を配ることで保存期間を最大限に延ばすことができるでしょう。
《 ポイント 》
- しょっぱい生ハムはアルミホイルを活用して急速冷凍する
- しょっぱい生ハムは開封した直後から酸化が始まるため、2~3日中に食べきる
- しょっぱい生ハムの開封後の冷凍保存は3ヶ月程度、未開封で冷凍保存は1年程度
最後に
普通のハムと比べてしょっぱい生ハムを食べやすくする方法と塩分の抜き方について紹介しました。生ハムを製造するのに最も重要なのは塩分です。だからといって薄くスライスされた塩分が高いしょっぱい生ハムをそのまま食べると、むくみや高血圧、肝臓病などの病気が心配になってきます。
しょっぱい生ハムは野菜や果物、豆腐などと組み合わせて美味しく食べことができる理にかなった方法を紹介してみました。しょっぱい生ハムでマリアージュを楽しんだり、サラダに乗せて上からオリーブオイルをかけたりとお気に入りのレシピを見つけてアレンジしながら楽しんでみましょう。生ハム好きの方は塩分に気を付けながらぜひ参考にしてくださいね。